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新宿末廣亭余一会 夜の部 兼好・王楽二人会 [落語]

新宿末廣亭余一会 夜の部 兼好・王楽二人会
於:新宿末廣亭

桂伸び太『弥次郎』
三遊亭兼好『汲みたて』
三遊亭王楽『宮戸川』
瀧川鯉八『長崎』
三遊亭兼好 三遊亭王楽 対談
三遊亭王楽『佃祭』
できたくん ハッポー芸
三遊亭兼好『へっつい幽霊』

中野から新宿へ。
中野に行ったときに必ずと行っていいほど行く高円寺のタイ料理屋へ行ったら、「レジが故障中のため案内できません」とのこと。え、そんな理由ある? メモっとくだけじゃダメなの?
まあしゃあない。ちょっと時間はあくので、食後はマックとかで時間を潰そうと思っていたので昼食を兼ねてファミレスに。こないだもハシゴしたときに時間潰してたら開演時間間違えて超絶焦ったので、改めて会場である末廣亭のHPで確認。16時15分から。……半端な時間だなあ。チケットを確認すると……17時開演? おいおいチケットが開演時間間違えてるって問題じゃね? まったくしょうがないなあ……と16時くらいに行ってみると、まだ昼の部が終わってない。窓口に聞いてみると17時開演だという。……ん? チケットが正しい? 「じゃあこのHPとかチラシに書いてある16時15分て何?」と聞いたところ「ミスですね」ですと。おい。まあ遅れたのよりはいいけどさ。だったらファミレスでもうちょっと粘りゃあ良かった。

前座に伸び太さんが出てきて驚く。さっき聴いたばっかじゃん。
んー、その口跡がゆっくりで単語の真ん中あたりを微妙に伸ばすような喋り方が、さっきも書いたけど「おじいちゃんか」という感じで、昔の名人の喋り方かよ、と。「えー、噺の方にぃ出てくる人の中には、スゥー嘘ぉつくのがうまい、なんて人がおりましてぇー、チャッ、こういう人が出てまいりますとぉ、チャッ、スゥー、噺の幕が開くようで……」みたいな。理不尽なのは重々承知だが、一日に2回聴くとなんか妙にイラッとする。ごめんね。

兼好師の一席め、オリンピックの非国民ネタは昨日も聴いたとおり。
その後「こういう何人か出る会では『このネタはちゃんと聴こう』『このネタはそんなにしっかり聴かなくていいや』と分ける必要がある。演じる方も同じで、今日は浅草でも会があって、でもこっちの会があるんで流してやったの。そしたら全然ウケないの」だそうで。ホントかどうかはわからないけど、まあありそうな……。浅草の余一会のような会の場合は兼好師目当ての客だけじゃないしね。
夏の匂いに触れ、夏草の香りを嗅ぐと夏を感じるという。兼好師の子どもの頃はまだ肥溜めが至るところにあり特に学校の近くにたくさんあったという。夏休み前の教室で「先生くさーい」とやっていたそうだ。肥溜めの話から『汲みたて』に。だいぶ久しぶりで、兼好師としては結構レアな噺。
兼好師は半公と有象無象たちの間に与太郎は登場せず、あくまで両者の対立。話の前半での有象無象たちのお師匠さんに対する涙ぐましいセクハラ努力があるだけに、半公への八つ当たりっぷりがおかしい。

王楽師、前も書いたことがあるかもしれないけど……、嫌いでもないし下手だとも思わないんだけど、なんかね、聴いてもね、なんも感想出てこないのよ。自分でもびっくりするほどなんにも引っかからないというか。それこそ逆に下手だったり苦手だと思ったりすればなんか出てくるんだろうけど。
多分、教わった噺に忠実なんだろうと思う。なので不快感を与えたりすることもない代わり、兼好師や萬橘師のような工夫に富んだ噺に馴れすぎた身には物足りないのかもしれない。素人考えです、スミマセン。

鯉八師、お祖父さんがプレイボーイだったそうで、小さな村のほとんどすべての女性に手を出していたとか。お祖父さんの墓にはどこにも行き場のない女性たち5人が一緒に葬られているらしい。「……隔世遺伝はあります!」と小保方さんみたいな言い方。
そのエピソード自体は本当かどうかはわからないけど、噺は夫に先立たれた女性がお墓にいろいろ語りかけてるもの。ふたりで長崎旅行をしたときの思い出話で、長崎の名所や名物の案内にもなっている。
名所や名物を紹介するたびに「前の彼女と来た」と言われ、「前の女の話しないで!」とキレるというのがお約束。
相変わらず単に面白いだけではないという感じ。でも長崎出身でもないのにここまで作り込めるのもすごい。

兼好師と王楽師の対談、改めてふたりで話したりするのは初めてだそうで、何を話せばいいのかわからないのでトークテーマを客から募ろうとなったらしい。
で「仕事で行ったところでもう一度行きたいところ」となった。
兼好師は好楽師の鞄持ちで、入門一年めで既に奈良と沖縄以外はすべての都道府県に行ったそうだ。「笑点メンバーは東京では仕事ないけど地方にはすごい」と真っ黒な笑顔で話す。それ以降沖縄にはどうしても縁がなく、オファーがきても先の仕事が入ってるとか、悪天候で飛行機が出ないとかで未だに沖縄には行っていないのだとか。
とはいえ最近は交通事情の発達によりほとんどが日帰りで、札幌や博多の夜の会とかでもない限り泊まりはないらしい。「実は一番帰りづらいところは千葉。何度木更津に泊まったことか」。それは他の人でも聴いたことがある気がする。
兼好師は城跡が好きだといい、会が始まる前にいくことがあるという。
岐阜城では城までの山道が登山道くらいの険しさだったにもかかわらず着物姿で行ってしまったことなどを面白おかしく語る。もうマクラじゃん。

できたくんは久しぶり。
朝顔とパンダ、それに客からのリクエストで兼好師。
相変わらずの技に惚れ惚れするが、客席にコール&レスポンスを強要するのはやめてほしい。そういうの嫌いな人もいるのです。
娘さんが産まれたそうで、誕生日が一緒だった。ただそれだけです。おめでとうございます。

兼好師の二席めの『へっつい幽霊』はネタ出し。
「バカは死ななきゃ治らない」とはよくいうが、この「バカ」というのは博打のことだ、といって噺に入る。
兼好師の『へっつい幽霊』が面白いのはいつものことではあるが、やっぱりなんだかひとつひとつが面白いんだよなあ。
冒頭の上方の男が幽霊が出たと騒いでるときに、道具屋から「友だちのとこにでも行けばいいでしょう」と言われ、「まだ上方からこちらに出てきたばかりで友だちおらへん」といった後に「……ホントいうと上方にもおらへん」とポツリというところとか。
幽霊が「手のひらを上に向けることは幽霊の決まりでできないんですよね。あと手を胸の上に上げることとか」といいながら、博打に負けて「どぅあーーー!」といいながら頭を抱え、「手ぇ上にあがってんじゃねぇか」と突っ込まれるところとか。なんか知らないけど、なんだかとても面白いのですよ。多分これが腕なんだと思う。

末廣亭の周りにはずいぶんと酒を出す店が遅くまでやっているようで。行きたいのはやまやまだけどね……。百合子のお膝元でよくやるなあ。
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らくご長屋 宮治六連続独演会 令和3年7月31日 [落語]

らくご長屋 宮治六連続独演会 令和3年7月31日
於:中野 なかの芸能小劇場

桂宮治 ひみつの時間
桂伸び太『鮫講釈』
桂宮治『船徳』
桂宮治『メルヘンもう半分』

真打に昇進して12時半からの会に出世したそうだ。
まずは「ひみつの時間」と称したご挨拶、ここ最近のフリートークはみんな揃ってオリンピックなのだが、やっぱりどうもみな一様に歯切れが悪い。まあおそらく客席の中にも反対派はいるだろうし、やはり能天気に騒げるような空気でもないし、ということなのだろう。……いや、反対派はあんな狭い空間の落語なんてこないか。ちゃんとステイホーム守ってるだろうし。オリンピックはダメだけど落語はいいなんてダブスタは言わないだろうし。
昨日のたけ平師もそうだが、某不倫オリンピアンは噺家からはいじりやすいようで、「本来あれだけの実力があって人気もあって、でもみんな離れていって、それを挽回するはずだったのに……予選落ちって。あれスポンサーも戻ってこないですよ」と黒い笑み。
「でもあのメンタルはすごい。メンタルの強さなら金メダルですよ。あの人と志らく師匠の伯山のメンタルの強さなんなの? 見習いたい」。
大体そのオリンピアンと伯山と小痴楽師のワルグチ。途中で入ってきた客に「あっ、そこ空いてますよ。大丈夫、もうピークは過ぎたんで」と話の腰が折れたところで「今日は次があるからあまり長いことやらないでくれって言われてたんだ。……まだ話したいこといっぱいあるのにー!」と我にかえってそこで打ち切り。

伸び太さんは2年ぶりくらい。
初めて聴いたときはホール落語で話すのは初めてだったようだが、今ではすっかり慣れている様子で出鱈目講釈の言い立てもスムーズ。まああれは内容が間違っていたところで止まりさえしなければOKというものだが、つっかえたりもしない。中手も起きていた。
ただ息を吸う「しぃーっ」という音と、間々に入る舌打ちが大きすぎる。大御所おじいちゃんじゃないんだから。あれは耳障りだなあ。

宮治師、伸び太さんの成長ぶりを喜びながらも「今日『船徳』やるよって言ってあるのに『鮫講釈』やるって正気か」と戸惑った様子。船の噺がつくからね。
冒頭の場面は親方の方から若旦那に「なにか働く気はねえんですか」と問う『湯屋番』や『五目講釈』のような形。『船徳』としては珍しい。
親方に呼ばれた若い衆が聞かれてもいないのに自白するシーンでは、兄貴分である八五郎が親方の前でかなり強めに張り倒し、親方の方が心配になっている。宮治師なのでかなりのやり過ぎ感があり、実際にあったら訴えられるぞというギリギリぶりが楽しい。
船を出すときには「腰を張る」という仕草で妖しい腰の振り方をして「子どももいるのに!」という下ネタで笑いを取ったかと思うと、大川へ出た場面で扇子で艪の「ギィッ、ギィッ」という音を出す渋い技を見せる。
サゲは大幅に変わっており、へたり込んだ若旦那に代わって……と意外な方向に噺がいく。

二席め、高座に上がった時点で「終演時間まであと7分」。
どうすんのかなーと思っていたら客席が暗くなっていき、高座もスポットライトだけに。浅草の煮売酒屋の描写が出てきたところで『もう半分』かと気づくも、あと5分でできんの? という疑問とともになんか微妙に違うような気がする。
噺が少し進むと、煮売酒屋の主がアンパンマンでかみさんがバタ子、客の爺さんはバイキンマンという『アンパンマン版もう半分』。
ええとなんか検索してみても白鳥師が作った噺の粗筋とか全然ヒットしないんだけど、どうもムーミンというのが実際の噺っぽい。アンパンマンver.というのはどうも白鳥師のTwitterを見るに、どうやら夜の新作の会で掛ける予定の噺っぽい。予行演習? しかしキャラクターとサゲは違うものの、ストーリー自体はオリジナルとほぼ変わらず。アンパンマンキャラがちょいちょい出てきて笑いは起こるが、噺自体は龍玉師が演るようなハードな流れ。つーか俺アンパンマンが始まった頃はすでに中学生か高校生で、子育てもしてないのでまともに見たことないんだよなあ……。
終わってみたら終演予定の時間より20分ほど過ぎていた。たっぷり。
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ひぐらし亭 夜席 21年7月30日 [落語]

ひぐらし亭 夜席 21年7月30日
於:日暮里 にっぽり館

おしゃべり 三遊亭萬橘 林家たけ平
林家たけ平『宮戸川』
三遊亭萬橘『茶金』

せっかくの有給なのでもうひとつ行ってしまえ。
緊急事態宣言中なのにな。
ちょっと時間はあくので一度家に戻り、意を決してバイクで日暮里に向かう。もう今日は雨は降らない。天気予報は信じない。

まずはおしゃべり。
たけ平師、オリンピックの話題を振られるも「名前読めないよね!」とオッサン丸出しの発言を。まあ読めないけども。「名前覚えられないから漫談にも使えないんだ! こっちは昭和なんだよ!」。そうすね。あと最近の前座はみんな顔が似すぎててたけ平師は見分けがつかないという。なんとなくわかる気がする。「最近は(萬橘師を指して)こういう顔いないから」「こういう顔ってなんだよ!」「もう俺らの頃はエースだったからね」「エースってなんだよ……」。萬橘師は近い年代の人達には容姿イジられるなー。
「それと最近はみんな名前が変わるんだけど、携帯の名前の変え方がわからない」というたけ平師。そこまでの機械オンチも珍しいというか。「『緑太』は何人もいるから、俺の携帯に入っている緑太はどの緑太かわからない」そうで。前座名だからなあ。「こないだそれで大しくじりよ。好二郎が地方で『プロレス落語』なんてのに出るのを見かけたから、『お前プロレス落語なんてやるんだって?』と電話したら『たけちゃん間違ってるんじゃない?』って。兼好師匠に電話かけてた。あの人昔好二郎だったから。それからもう平謝りよ」。萬橘師は大笑い。「好二郎はね、アイツに小言いうのが気持ちいい。『好二郎テメエこの野郎!』って言えるから」。だいぶ溜まってるものが……。
某オリンピアンが不倫で使ったホテルが足立区で、それを地元のみんなで見に行った話などをたけ平師から出る。足立区だったんだ。「セコなホテルなんだよ。通りをもう一本いったところにあるホテルだったらもうちょっとマシだったんだけど」だそうだ。そうなんだ、知らんかった。今日負けちゃったみたいだけど。つーかそんなご近所さんだったんだね。
夏の予定が潰れたースイカ割りがしたかったーという茶番からビーチボールのスイカを出し、「落語家なんだから言葉を割ろう」ということに。……んん? たけ平師が出したお題の「ラクゴ」を割ると「裸」「苦」「誤」になって「裸になるくらい貧乏で苦しくて道を誤った」ということだとか。んんー。このほかにもいろいろな単語を分解していたが、なかなか難解というか。
このおしゃべりネタはいつもホワイトボードを使って行うのだが、萬橘師はいつもホワイトボード用マジックのキャップを開けっ放しにするため、オチの前あたりで文字が書けなくなるらしく、たけ平師からガチ説教を食らう。

たけ平師、若手の頃の辛かった仕事の話をマクラに。
海老名家は某鉄道系百貨店とつながりがあるらしく、その百貨店からの仕事が回ってくるという。デパ地下の新しいスイーツ売り場に並んでる人たちに「退屈だろう」と小咄を聞かせるというサービスを行ったことがあるらしく、その仕事が一番辛かったという。
「あの人達は好きで並んでるんだから退屈なんかじゃないんだよ。それなのにわざわざ『スミマセン』って声かけて『パンツ破けたよ』『またかい』ってやらなきゃなんない」。ステージとかじゃなくて個別!? それはキツい……。聞かされる方も……。
「中には『大変ですね』と言ってくれるとか愛想笑いとかしてくれる人もいたんですけど。一番傷つくのは、イヤホンしてる人にわざわざイヤホン外してもらって『パンツ破けたよ』ってやるんですよ。その後無言でイヤホンつけられるのが一番辛かった」。いやそうなるよ。
『宮戸川』はお花たちよりもやはり叔父さん夫婦のやり取りが面白い。叔父さんの「すべて呑み込んだ」ニターとした顔もおかしい。

萬橘師、今日は茶碗繋がりですな。『茶金』は高座で聴くのは前に他の人で一度だけあったきりで、そのときはなんか政治ネタとか織り込まれて白けたらしく全然覚えていない。
萬橘師はもちろんそんなクソ野暮なことはせず、ちゃんと面白いことを最優先させる。
京都人のイヤミな感じと江戸っ子の向こう見ずな感じの対極さが面白い。
茶金さんが首を傾げた茶碗をなんとか手に入れようとする攻防や、茶金さんの店の番頭さんにねじ込んだやり取りなどもどこか江戸vs京都の匂いがする。どうにか茶金さんに取り次いでもらおうとする必死さが楽しい。

ところで今日座った場所は、演者の前に張った透明なシートのためのポールがちょうど演者の顔にかかる位置で見づらかった。大失敗。次は気をつけねば。

……ほーらやっぱり雨降らない。これはバイクで正解だった。
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亀戸梅屋敷寄席 令和三年七月三十日 [落語]

亀戸梅屋敷寄席 令和三年七月三十日
於:亀戸 亀戸梅屋敷 藤の間

三遊亭しゅりけん『金明竹』
三遊亭ぽん太『大師の杵』
三遊亭真楽『壺算』
三遊亭兼好『湯屋番』
三遊亭萬橘『井戸の茶碗』

今週は思った以上に仕事が暇だったのでもう一日休みを取る。
そして久しぶりに亀戸梅屋敷寄席に。これ来たかったんだよなあ。
開場時間15分後に行ったらすでに満席。うええ? みなさんお仕事は? いや俺もだけれども。
しゅりけんさんがなんとか一席分作ってくれ、ギリギリ入れた。顔つないでおくのは大事だ。入れなかったら会社休んだ意味が半減しちゃうからね。まあこの顔付けならむべなるかな。兼好萬橘両エースを仲入り後にまとめて入れるとは。おかげで出演者全員が「こんな景色初めて」と口を揃えていたくらい。

しゅりけんさん、いやあ上手くなったなあ。言い立ても実にスムーズで、1回めはとにかく早口に、2回めは松公にわかるようにゆっくり始めるが「兵庫のぼんさんが〜」あたりでギアを入れ替えて一気にトップに持っていく。3回めもおかみさんに伝えるために最初はハッキリと。4回めはハナからトップギアと、ちゃんと毎回話し方が異なる。まったく噛まずに中手までもらう。
『味噌豆』や『八九升』でつまづいてハラハラしたのが遠い日のよう。といってももう3年以上前だけど。
今や立前座……とはいえ今は前座ふたりしかいないんだよなあ。昇進どうすんだろ。

ぽん太さん久しぶり。……あれ二ツ目昇進後は初か。ずいぶん開いたなあ。
『大師の杵』を高座で聴くのは初めて。先代圓楽師のCDで聴いたことがあるくらいかな。
ぽん太さんが達者なのは入門前から知っているのでハラハラはしない。
弘法大師、つまり坊さんの噺なので「ごめんなさいねぇ、こんなね、いやらしいお坊さんみたいなね……」と文菊師のモノマネを入れてくる。「すみません、やりたかっただけです」といいながらずっとやっていたので気に入ったんだな。まあ似てるっちゃ似てる。

兼好師もこの客の入りに目を丸くし、「おあとの萬橘くんが『一生懸命やっている』ように見える噺をやってくれるでしょう」といじる。
返す刀で「緊急事態宣言が出て、オリンピックもやっているさなかにこんなところで落語を聴いているなんて、『非国民!』と言われても仕方ないですね」と客席もいじる。「でも個人的な感想ですけど、落語好きの人ってそういうふうに周りから『非国民』と言われることが好きっていう人が多い気がします」。なんかわかる。なんかちょっと斜に構えてみるとか「変わってるね」といわれることが好きな感じ。もちろん私は違いますけど。
「ただ今年はオリンピック反対派の人も多いので、さほどオリンピックを見てなくても『非国民!』と非難されないんですよねえ」とちょっと残念そう。
どこまでもポジティブな若旦那の妄想に会場はずっと笑い通し。このキャラはやっぱり兼好師じゃないと出ないなあ。
妄想の中の「湯屋の親方が昼のおかずの鮭を喉につまらせて死んだ」という話を客にそのまま話してしまうというのがおかしい。さらに話の最後に親方が「近所の人がみんな香典持ってやってくる」と小言をいって伏線を回収するのが面白い。
噺の中に雷のシーンがあるのだが、それまでずっと外で鳴っていた雷がその時はタイミングが合わずに鳴らない。さすがに天は空気を読まない

萬橘師、「もうみんなアレで満足したでしょ? 笑うってのも体力使うんだよ。まあ先輩の命令は絶対ですから一生懸命やってるように見える噺をやります」といって井戸茶に。
萬橘師の井戸茶は5年ぶりくらい。久しぶりだなあ。
正直清兵衛さんが思ったことをすぐに口に出すという、正直というかバカというか……。しかも結構口が悪い。でもこのキャラが萬橘師と合っていて楽しい。
千代田卜斎から仏像を預かった後のシーンで「くずーい……」と声を出した途端に外の雷がひときわ大きく鳴り、「……。『湯屋番』まだ続いてんのか!?」と叫ぶのも楽しい。
仏像の五十両騒動が収まるときに、井戸の茶碗が譲られるシーンがバッサリと抜ける。……いやいや、これ抜けちゃったら後の話につながらないからカットしちゃだめなシーンでしょ。まあ平日の昼間に亀戸まで落語を聴きに来ているような人たちだからみんな知ってるだろうけど。ちょっと珍しい。

今日は雲行きが怪しいので電車で来たのだが、結局は雷は鳴ったものの雨は降らず。とはいえ道路も濡れてるしやっぱちょっとは降ったのか? こういう天気は困るなあ。
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しのばず寄席 令和3年7月26日 [落語]

しのばず寄席 令和3年7月26日
於:お江戸上野広小路亭

立川半四楼『一目上がり』
桂紋四楼『粗忽の釘』
日向ひまわり『清水次郎長伝 小政の生い立ち』
三遊亭萬橘『四段目』
松廼家八好 幇間芸
昔昔亭桃太郎『雑俳』
瀧川鯉八『藪の中』
三遊亭兼好『蛇含草』
一矢 相撲漫談
三遊亭好楽『風呂敷』

昨日1回めのコロナワクチン接種を行う。
副反応が起きたときの万一の備えとして今日も休みを取り、結果的に5連休に。
幸い注射を打った場所の周りが打撲に似た鈍い痛みがするだけで、その他は何もなし。熱も出なければ腕が痛くて上がらないということもない。
そんじゃま、と目をつけていたしのばず寄席へ向かう。
こないだ逃した萬橘兼好コンビに鯉八師や好楽師も顔付けされているのだから豪華だ。まあ俺はそんなに鯉八師得意ではないけども、他の寄席ではあり得ない組み合わせ。月曜の昼間だというのに結構な入り。30人以上は入っている。

半四楼さん、老けてんなーと思ったら49歳なんだとか。会社員として20年過ごし、趣味としてやっていた落語にどっぷりハマって3年前に入門したのだとか。はあー。立川流で真打になる頃は70とか? すげえなあ。しかもひまわり先生によると東大卒なんだとか。はあー。じゃあたっぷりと貯蓄してアーリーリタイヤみたいなモン? ゲスい想像でスミマセン。

萬橘師も1回めのワクチンを打ったという。
「副反応というものがあって。あれは若い人ほど辛いんだってね」。おーう……。
「私もね、副反応あったんですよ。何かというと頭がボーっとして何も考えられない。落語がギリギリできないくらい。いつもだったら寝ててもできるような噺ができない。で、いつ打ったかということなんですが……。今日の噺の出来が悪かったら昨日ってことですよ」。そうきたか。
萬橘師の『四段目』は初めて。いつものような大胆な改変はないが、ああ言えばこう言うの定吉が理屈っぽい萬橘師のキャラに合っていて楽しい。

八好師匠、現在6人しかいない浅草幇間だそうで。ちょっと調べたら今年から伸治一門に加わって芸協入りしているらしい。
落語ではよく聞くが、実際の幇間芸を見るのは初めて。座敷で芸者さんが披露する芸と芸の間に行うのが基本だそうで、ひとつひとつは短め。
手ぬぐいを使った一発芸的なものからパントマイムっぽいものまで。前身はパントマイマーだったそうで。

桃太郎師はタバコが吸いづらい昨今のグチを延々と。俺も元喫煙者だからわかるけどさ、多分今の世の中じゃあ受け入れられないだろうなあ。今はタバコ吸ってていいことなんて何もないからなあ。今や喫煙は貴族の嗜みだと思ってもらうしかないね。

鯉八師、……これはまた難解な……というか「これ面白いの?」という感じの噺。4人のモノローグだけで噺が進んでいくという、「歌丸師匠が提唱した『落語とは会話の妙である』に反旗を翻した」噺。
一言一言のネタは面白いフレーズもあるのだが、それでもやっぱりなんというかわざわざ心をザラつかせるネタは私的には諸手を挙げて面白いとは何となく言いづらい感じ。とはいえ「これが好き」という人もいるんだろうな、っていうのはわかる。ブルーチーズとかのような。パクチーは私は大好きなので例えとしてはあまり使いたくないけれども。

兼好師、オリンピックが始まったが賛否両論なのでマクラとして取り上げられる話題がなくて困っているという。唯一菅総理がちょっと気が抜けることができたのがよかったのではないか、とのことですけど、開会式で気ぃ抜きすぎて天皇陛下の開会の儀のときに座りっぱなしだったのを俺は見てたからね。そもそもたかが運動会の実行委員長でしかないバッハが陛下と同じ位置に座るとかナメてんのか。……まあこれはあくまで私の個人的な感想だけど、多分皇室大好きな兼好師だって思ってるんじゃないかなあ。しらんけど。
閑話休題。
そんなわけで最近の楽しいニュースとしてはニシキヘビの脱走だという。「あれだけいろんなところ探してたのに結局は屋根裏にいたっていう。総理とか知事があれだけ『STAY HOME』っていってたのに守ってたのはヘビだけって」ととても嬉しそう。
ニシキヘビの話から『蛇含草』に。面白いのはもう決まっているので特にアレが面白いコレが面白いというのはないのだけど、今回は餅の曲食いで「今年だけの技」として餅をスケボーに見立て、トリックを決める仕草で座布団の上で正座のままジャンプ。『六尺棒』以外で初めて見る。兼好師も今日の午前中にオリンピックのスケボーを見ていたに違いない。

好楽師、前の一矢さんからのネタを受けて相撲ネタでマクラを。熊本出身の正代関が優勝したときは一門の九州出身者を集めて祝賀会を開いたのだとか。店の女将に「今日はどんな集まり?」と聞かれて答えたところ、「あらー大関はいつ来るの?」と聞かれて何も答えられなかったとか。「本人には会ったこともない。私達の祝賀会なんてそんなもんばかりです」。まあそうでしょうねえ。
兄貴分のメチャクチャなことわざの解釈にキョトンとするおさきさんのリアクションがなんとも味わい深い。

終わってもまだ明るい。アメ横では呑める店がたくさんあってちょっと心が動かされるも……。ちょっと席同士が近すぎるんだよなあ……。せめてもう少し離れてりゃなあ。
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三遊亭天どん独演会 〜2021年 夏〜 [落語]

三遊亭天どん独演会 〜2021年 夏〜
於:原宿 アゴスタディオ

三遊亭天どん『無精床』
三遊亭ごはんつぶ『ろくろ首』
三遊亭天どん『包丁』
三遊亭天どん『唐茄子屋政談』

ほぼ同じ時間に兼好師と萬橘師が揃って出る落語会があった。マジかー思いの外このふたりの組み合わせってあんまりないんだよなあ。行きたいがこちらも割と早いうちに予約してたし兼好師は昨日も行ったし萬橘師も先々週聴いたし、とひと月以上ぶりの天どん師を優先させる。
池袋で久しぶりにピラブカウというタイ料理屋でタイカレーを食す。ピラブカウって移転後初めて行ったけど、メニューもだいぶ変わったみたいだなあ。
炎天下池袋から原宿へと移動。人多いなあ……。まあ俺もなんですけど。それにしてもここらへんの住人ってみんなデフォルトでスミ入ってんの? 柄ワリい……。足立区とはまた違ったアウトレイジっぽさがありますな。

まず前座の前に天どん師。
「僕が連続で演るとね、疲れちゃうんで。休憩が欲しいんですよ」とのこと。兼好師も同じ理由なのか。
「あ、そうだ、先にいっちゃうと今日は古典やりますよ。僕も一席くらい新作やりたいんですけどね、主催の方から『今日は古典だけで』って言われちゃったんで」らしい。私は全然構いませんが。
「ところでみなさんの席にクリアファイルがおいてあったと思うんですけど」。天どん師の写真が入ったやつね。「主催の方が『せっかく来てもらったお客さんにお土産を渡したい』ってことなんですけど、完全に事後報告ですからね。……みなさんそこらへんに捨てないでくださいね。ヤですよ駅に行く間に道端に捨てられてたらさすがに凹みますからね。でもこれー、持って帰ってもねえ。使わないでしょ? 普段使いにこんな着物のおじさんのヤツ使ってる人いたら嫌ですよ。古新聞の間に入れて捨てるしかないでしょ」。うーん。捨てはしないけど確かに使い所がないなあ。
「こういう頭をしてるとあまりこだわらないんで千円カットなんですけど、いろんな土地に行くとそこの千円カットに入ったりするんですよ。歌舞伎町とかだと五厘刈りとかすごく上手い。……考えてみたらあそこらへんはああいう業種の人が多いんですよね。これが半端なイナカだと……もうみんな知ってるんで言っちゃうと東久留米とかだと、周りを短くすると必ず『ソフトモヒカンにしますか?』って聞かれますね。しないよ。丸くして欲しいんですけどね。なぜかボウズだと1500円とかになるんですよ。なんで技術がいるほうが安いんですかね」。確かに俺も千円カットだけど勝手にソフトモヒカンっぽい感じにされる気がする。東久留米ね。俺も7年住んでたけど、「ホントにここ東京?」っていうのどかさだからね……。普通に畑あるし。
そんな床屋の話から『無精床』に。
前にも書いたことあるけど、この床屋の大将の突慳貪なところが天どん師っぽくて楽しい。
井戸に水を汲みに行きたくない理由として井戸端にいるおしゃべりなババアにつかまりたくないというのがおかしい。

ごはんつぶさん、「いつもなら師匠の会では新作を勉強させていただいているのですが、今日は古典縛りということで」と『ろくろ首』に。
これは天どん師のだな。「さようさよう」「ごもっともごもっとも」は普通なのに「なかなか」だけ悪だくみしてる声なのが面白いんだけど、さすがにこれは師匠の面白さには敵わないか。天どん師の面白いんだよなー。

ネタ出しの『包丁』、「いわれたから演るんですけどー、ネタおろしなんで」とあまり前向きな言葉が出てこない。
確かに普通にストーリーをきっちりと追っていくという感じで、あまり天どん節を感じない。前にもネタおろしの噺を聴いたときにも思ったのだが、やはりとりあえずは基本の形を入れておいて、そこから高座を重ねて徐々に天どん師のテイストが注入されていくのだろう。

三席め、「夏らしい噺」と若旦那の勘当で『船徳』かとも思ったが。四万六千日様はもう過ぎてるのか。
南瓜売りを「みっともない」と言い放った若旦那への叔父さんのキレっぷりがすごくてこれがまた天どん師のテイストに合っていて面白い。「てぇめえこの野郎!」という一言がなんかやたらおかしいんだよなあ。
南瓜を道端にぶちまけて親切な職人の親方に助けられる場面では、「……お前勘当されたろ。勘当顔だ」と見破られる。「金はやるけど南瓜はいらねえ」といって親方を怒らせた男の「わかったよ持ってくよ。どれがいいんだ?」といいやつを選ぼうと南瓜を叩くのもおかしいが、徳の顔を見てひと目で「お前勘当か! 早く言えよ!」ところっと態度を改めるのも面白い。
長屋のおかみさんは梁が折れて無事だがぼんやりしてるというので叔父さんが医者代まで出すという太っ腹ぶり。
最後の一言に「徳三郎が一日だけ頑張ったというだけの噺」と付け加えるのがいかにも天どん師っぽいアイロニーが出ている。

帰る途中で荒川の土手に差し掛かったところでなんだかやけに夏の夕暮れっぽい感じになっていたので写真を撮っていたらいつの間にか夜に。こんなのも久しぶりだな。

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福袋演芸場 「三味線のお姉さんの苦悩」 [落語]

福袋演芸場 「三味線のお姉さんの苦悩」
於:池袋演芸場

オープニング
三遊亭わん丈『紙入れ』
三遊亭ぐんま『宗論』
入船亭小辰『高砂や』
柳亭市好『狸札』
春風一刀『シーソーゲーム 勇敢な恋の噺』

久しぶりの福袋。
今日はわん丈さんの企画で、「噺をわざと延ばして、さらにお囃子のお師匠さん(おっしょさん)に頼んでハメものを入れてみよう」というものらしい。
オープニングトークでわん丈さんが企画の説明と参加者をひとりずつ呼んで鳴り物を渡す。ここは撮影可だというので遠慮なく撮る。たまたま一眼レフを持っていっていたのでよかった。

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わん丈さん NikonDf

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ぐんまさん NikonDf

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小辰さん NikonDf

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市好さん NikonDf

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一刀さん NikonDf

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五人揃って NikonDf

トップバッターのわん丈さん、前座の頃、かわいがってもらっていた菊之丞師の自宅でごちそうになった際に「なにか覚えたい噺ないの?」と聞かれ、酔った勢いで「『紙入れ』を覚えたいです。それに菊之丞師匠のを」と言ったそうで、これはありえないほどの失礼な話なんだそうだ。へえ。そもそも前座は『紙入れ』をやってはいけないんだそうで。艶っぽい噺だからかな。
それでも菊之丞師は「いいよいいよ、いつでも稽古においでよ」と言ってくれ、風呂に入りに行ったそうだ。すると奥さんの藤井彩子さんとふたりきりになってしまい、「あれ、これもう稽古始まってんのかな?」と思ったとか。「もちろんそんなことはなかったので無事に今ここにいられるわけですが……」。
新吉とおかみさんは不義密通未遂ではなくやっちゃってる形。脱いだ羽織を体の前で揺らし、「みなさんは今落語の新しい歴史を見ているんです。羽織で掛け布団を表現しているという……」。ちょっと生々しい。
逃げ出して「旦那に見られていたらどうしよう……そうだ殺そう」とおっかなないことを思いつき、翌朝旦那を刺してしまうところでハメモノが入る。が、刺したのは夢でそれ以外は普通に進むが、最後にまた上方版とも違う形でどんでん返しが入る。面白い。

ぐんまさん、オープニングで「古典の『宗論』をやります」と言っていたが、まあそんなはずもなく。
のっけから「ウィー!」といいながら人差し指と小指を立てた拳を掲げながら高座に上がり、手ぬぐいを振り回しながら客にアピール。
ようやく座布団に座り「なんですかこれは?」「スタン・ハンセンに決まってるだろう!」だそうで。俺プロレスあまり詳しくないのでよくわからないけれども。
親父が全日本プロレス派で息子が新日本プロレス派の闘いを描く。まあ宗教っちゃ宗教か?
高座の上を駆け回り、最後には座布団を息子に見立ててジャイアントスイングを8度回す。
そんな無茶苦茶をやりながら、座布団を戻すときに縫い目を気にした様子を見せるのがおかしい。噺家の性なのか。

そんなカオスから一転して小辰さん。
出囃子の「いっさいいっさいろん」をずっとBGMのようにループでかけつつラジオDJ風にトークというかマクラというかを始める。今回の企画を聞いてハメものが入る噺としては『たちきり』しか持っていないのでそうしようかと思ったそうだが。結局はなんとかなるだろうと『高砂や』をネタ出ししたが、ハメものが思いつかないのでこのような形にしたとぶっちゃける。
ラジオにきたハガキを読み上げるという形(「ハガキって古いな! 今はメールだよ!」とセルフツッコミ)で「そろそろ噺に入ったほうがいいんじゃないですか?」「会のタイトルに『苦悩』と入っているのに全然苦悩させていない」とSっ気を見せる。たまにちょろっと出すよね。
噺が終わった後も「曲が終わった後」風に再度DJに戻る。

市好さんはこの企画自体に戸惑いがあったようで。
ほぼいつもの通り。市好さんのいつもは知らないけども。
ハメものどこに入ってたかな……。

一刀さんは新作のネタおろし。
この企画をわん丈さんから聞いたときに、「『みんな古典やるみたいやねん』『誰か新作やってくれへんかなー』っていうんですよ。それ翻訳すると『やれ』ってことですからね。『じゃあ僕やりますよ』って言ったら『ホンマに? ネタおろしいける?』って。ネタおろし!?」とかなりのムチゃぶりだったようだ。
「お師匠さんに謝らなければならないことがある。ネタ出しで『シーソーゲーム』と出していたのでミスチルの『シーソーゲーム』を弾けるように練習してきてくれたそうですが、一切出てきません!」といい、せっかくだからと一節弾いてもらう。
「先にいっておくと、女性は嫌悪感を抱くかもしれません。まあシモネタというか……」というネタは、喫煙所で会った上司と部下が呑みに行くかどうかを延々と押し問答するというもの。最初は部下の方から上司を誘ったのに急にキャンセルしようとしたり。理由はなんとなく察せるものの最後まで明かさないのでちょっとイライラする。こういう噺って初回はいいけど2回め以降に聴くとどうなんだろう。
幕が閉まるとわん丈さんの「シモネタやないか!」という声が聞こえる。わん丈さんは普段関西弁なんだね。まあ滋賀出身だしそりゃそうか。
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けんこう一番!第十七回三遊亭兼好独演会 [落語]

けんこう一番!第十七回三遊亭兼好独演会
於:国立演芸場

三遊亭兼好『大安売り』
三遊亭しゅりけん『道灌』
三遊亭兼好『悋気の独楽』
小さい侍 バイオリンパフォーマンス
三遊亭兼好『応挙の幽霊』

とりあえず忙しさのピークは抜けた。明日からは連休だしメインのクライアントも来週は夏休み。さらに社長も夏休みだから開放感がハンパない。
定時よりもちょっと早く上がって国立演芸場へ向かう。

兼好の一席め、コロナ禍で弟子入り志願も少なくなったが、この間名古屋で久しぶりにきたので出身を聞いたらウガンダだったと時事ネタをマクラに。「持ち上げるのが得意だといっていた」は上手い。「彼がオリンピック期間中隠れ切れたら永住権、みたいなゲームの方が競技より面白かった」というのもわかる気がする。こんなドッチラケな空気じゃ楽しめないしなあ。
スポーツ絡みで相撲の話題となり白鵬にも触れる。「品がないとかいろいろ言われましたけど、横綱ってのはまずは勝たなきゃいけないんじゃないですか。どうなんでしょ、品があっても負けっぱなしの横綱なんて嫌でしょ」というがどうなんでしょうね。品を保ちながら勝つのが横綱であって、片っぽしかできないんじゃ横綱じゃないんじゃないですかね。相撲興味ないんでよくわからないけれども。
そこから『大安売り』に。関取が噺家から相撲取りに転身したという設定は、ここ何度か聴いたときから加わっているが、今日はさらに町内の若い衆に声を掛けられたときに「ヨイショ」と持ち上げていた。さらに「四十五日でワシの負け。その心は、ひとつきはん」と「その心は」と加わってより噺家感を出し、若い衆をイラ立たせるのがおかしい。

しゅりけんさん、今月の浅草の余一会で兼好師が出るのだが、チケットを売るのを忘れていたそうで、割安で販売するとのこと。
その会なー、「三遊落語まつり」と銘打って昼夜で三遊亭の亭号の噺家ばかり出るというヤツね。あるのは知ってるんだけど、昼の部は11時半から16時まで17人出て、その中で俺が聴きたいのはサラ口のわん丈さんと1回めの仲トリの兼好師、ヒザ代わりの天どん師だけというね。あとは特に……という顔付けで、これはさすがにキツい。なのでさすがにパス。それに同じ日の末廣亭の余一会は兼好王楽二人会なのでそっちに行きます。というかヒザ代わりの位置に天どん師って。
さてしゅりけんさん、八公がやたら愛嬌がある。「お恥ずかしゅう」でやたら女形を意識してシナを作るのがおかしい。

兼好師の二席め、昔はお妾さんというものがあったがバレるまでが楽しかったんでしょうね、と『悋気の独楽』に。
旦那に「出かけてくる」と言われ、目をカッと見開いてアゴをゆらゆら揺らして応じるお内儀さんが面白怖い。そのお内儀さんに呼ばれながらも「そちらに入ってしまうと取り返しがつかなくなりそうなので」と物陰から御用を聞こうとする定吉がいい。この一歩引いたところからものを見ている定吉が、三人の大人たちのドロドロした部分を見せつけられているという構図が面白い。
細かいことだが、辻占の独楽を定吉がねだらずにお妾さんが「古くなってきたからあげる」と渡してくれるのがいい。いくら子どもとはいえ、初対面の人に、それもご主人の前でいきなりものをもらおうとするとするのはちょっとどうかなあといつも思っていたので。とはいえその分まんじゅうは勝手に3つも4つも食べてしまうという図々しさは見せるのがおかしい。

小さい侍さん、カスタマイズしたエレキバイオリンをルーパーというエフェクターに繋ぎ、ひとりで音を重ねてバンドのように音を作っていくというパフォーマンス。
ギターではテレビとかでよく見るけど、バイオリンというのは珍しい。
ルーパーを使ったパフォーマンスを高座で見るのは初めてだが、足でエフェクターをバチバチ踏むのが慌ただしく、そっちが気になってというかうるさくて曲が入ってきにくい。ストリートには向いてそうだけど。

兼好師の三席め、青森のお寺にある応挙の掛け軸が真筆だと認められたそうで、兼好師はその掛け軸の前で一席やったことがあるという。やっぱり改めて本物だとわかって嬉しい、と『応挙の幽霊』に。
商いがあったからお祝いに、とひとりで酒盛りをするシーンがあるが、その酒がなんだかやたらに美味そうに見える。「いいヤツだよ」と小僧に指定しているからかもしれないが、なんだろう、忙しさの山を越えた自分とシンクロしているのだろうか。
幽霊が酒を呑むときに、手を表に返せないので「うらめしや」の手つきで湯呑みを持つのだが、それが『茶の湯』の茶碗を持つような仕草になってそれも楽しい。

なんだか久しぶりに日本酒が呑みたくなってしまい、帰りに成城石井で「いいヤツ」の酒獺祭を買ってひとりで呑む。
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第二十回 上原落語会 夜の部 三遊亭兼好兼太郎親子会 [落語]

第二十回 上原落語会 夜の部 三遊亭兼好兼太郎親子会
於:代々木上原 ムジカーザ

三遊亭兼太郎『藪入り』
遠峰あこ 唄とアコーディオン
三遊亭兼好『木乃伊取り』

東大島から代々木上原まで23区の東から西へ横断する。
時間があるので東大島の会が終わって会場近くのミスドで時間を潰す。ミスドすごい久しぶり。ちょっと前にCMやってた新製品食べてみたかったんだよねー。地元だとフードコートにしかなくてちょっと行きづらいのでいい機会だからと食べてみる。うん美味い。予想通りの味といえばそのとおりだけど期待を裏切らないというか。
えっと19時からだから結構ここで時間潰さなきゃなーと思っていたのだが。ある程度時間が経ったときに開演時間を確認したら……ん? 18時開演? あれ? 今17時20分ですよ? ここからバイクで1時間くらいかかるよ? ……ギャース! まーたやっちまったーーー! 慌てて店を出て可能な限り頑張って会場へ向かう。頑張ったものの5分くらいしか短縮できず。前座のしゅりけんさんの『大安売り』は聴けなかった。
とはいえ兼好追っかけ仲間に聞くと兼好師の型ではなかったとか。なーんでよー。あんなに面白いお手本がすぐ近くにあるのに。というか逆にやりにくいのかな。まあ近いうちに聴く機会はあるだろう。

遅れたのは悪いことばかりでもなく、出番前の兼太郎さんとばったり会ったり受付で兼好師匠とも会ったり。兼好師と言葉をかわすのもかなり久しぶり。去年からお見送りや打ち上げが全然ないからなあ。

さて久しぶりの兼太郎さん、「この企画を聞いたときには『まだ早いんじゃねえか』と思ったんですけど」とのことではあったが。
親子会であることから実の親とのエピソードからご自身のお子さんのことも。昔の親子関係から『藪入り』に。藪入りは1月16日と7月16日で、「今日はこの噺を親子会でするベストなタイミング」とのこと。
口跡や顔芸に近い表情の使い方はこれまでと変わらない。が、なんかしらんがこれまでより確実に面白い。何でしょうねえ。
夜っぴて明日の予定を語っているところはちょっと中だるみがしがちだが、それを感じなかった。父親が語る荒唐無稽なプランは兼太郎さんのようなちょっとわざとらしい感じのほうが合っているのかもしれない。
当日の朝、長屋の表を掃き掃除しているところで長屋の連中と殴り合いの喧嘩にまで発展するのが面白い。
亀が帰ってきてからは展開がスピーディー。割とすんなりと「お店の金に手を付けた」ということを呑み込むし、あっという間に手が出る。親が子を疑う時間が短めなのであまり心がザラつかないのがいい。

あこさんも久しぶり。
兼好師の出身地である会津の民謡『会津磐梯山』を唄う。会津で唄うと必ず冒頭の「ハァーーー」の音程が違うと指摘が入るという。
花魁の一日をアイドル風に歌った『花魁エブリディ』は以前聴いたときはまだできたてだったのだが、だいぶ完成したようだ。

兼好師、落語界に入ってから初めて携わったのが「好楽王楽親子会」だったそうで、そのあとに「木久扇木久蔵親子会」「正蔵三平兄弟会」があったために親子会というのは本当の親子でやるものだと思っていたらしい。そのときに「さん喬喬太郎親子会」のチラシを見て「ええっ!?」と疑問を持つようになり、「雲助白酒親子会」で、「あ、これは違う」と気づいたとか。
親子というと襲名の問題も出てくるが、「うちの好楽一門は間違いはないでしょうね。以前に一門で呑んでいたときに酔った師匠に『誰か俺の名前いるか?』と聞かれたときに全員『あ、いりません』と答えてましたから」とのこと。まあ好太郎師か王楽師じゃないですかね。
大きな襲名となると、実力と人望が必要で、実力がある人は後輩からの人望がなく、人望がある人は実力がイマイチ、ということが多いとか。それと襲名するとなるとその後はその一門に名前がいってしまうという問題もあるらしい。襲名する人の実力と人望が素晴らしくても、弟子がポンコツだと「将来あのポンコツに名前が行くのか……」となって襲名に反対されることもあるらしい。「なので私が圓生になるためには兼太郎に頑張ってもらわないと……」とのこと。兼太郎頑張れ超頑張れ。兼好師匠のために。
冒頭の場面で大旦那に呼び出された棟梁が「ああーっとなんにも言わねえで。〇〇のことでしょ?」というがそれがすべて的外れで「まだやってなかったのか?」と小言を食らうのがおかしい。
以前は若旦那がなんかヤな感じだったのだが、今回はあまりそれを感じない。
清蔵の田舎者の真っ直ぐさがいい。
若旦那が「わかった、帰るよ」となった後の肩の荷が下りた清蔵のリラックスっぷりが楽しく、特にかしくがきてからのうじゃじゃけぶりがたのしい。座敷の芸者に「なんか弾いてくんちぇ。『会津磐梯山』できる? できない? 『花魁毎日』は?」とあこさんの演目をちゃんと拾うのもさすが。
手を握るときの力加減の妙が素晴らしい。しかしこの状態を「ノラこいてる」っていう表現いいなあ。いかにも落語っぽい感じ。

しかし久しぶりに原宿代々木新宿東新宿池袋を通ったが、人すげえな……。マスクしてない人も多いし、こらあ減らないはずだよなあ。
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第16回東大島亭 柳亭市弥 入船亭小辰二人会 [落語]

第16回東大島亭 柳亭市弥 入船亭小辰二人会
於:東大島 東大島文化センター

入船亭小辰『初天神』
柳亭市弥『夢の酒』
柳亭市弥『棒鱈』
入船亭小辰『井戸の茶碗』

梅雨明け夏の初日。スカッと夏空が広がって気持ちいい。ああタイ行きたいなあ。
この会は1年ぶり。前回は電車だったが今日はバイクで。汗がすぐ乾くのがいいが、日差しがもろに当たって暑い。でもそれがいい。夏はいいね。

小辰さんの一席め、自宅で息子さんをくすぐって遊んでたら跳ねた息子さんの頭が顎に当たって思い切り舌を噛んだとか。「身内から攻撃をくらうとは……。今日はリハビリです」だそうで。
子どもの話題からそのまま『初天神』に。
団子屋との会話で「『あんこにしますか蜜にしますか』? 蜜だよ蜜蜜蜜蜜!」となぜかおとっつぁんが謎の蜜推しをするアクシデント(?)が。その後あんこにしろと修正を図るが、金坊は「蜜がいい。さっきおとっつぁんが蜜にしろって言った」と自分で傷口を広げる。こんなミスも珍しい。

市弥さん、しん平師の映画『落語物語』の第二弾に出演するそうで、オムニバス形式の第三話めの主役だという。
二ツ目にスポットを当てた話で、市弥さんの役どころは周りのいろんな女性に手を出すイケメン落語家だそうで、ヒロインは先日の花形演芸会で聴いた杏寿さんだとか。「私37歳ですよ? 杏寿さんは詳しくは知らないけど、女優上がりだから27くらい? 恋愛なんてだいぶ前に捨てたから、まずはそれを取り戻さなきゃならない。しん平師匠に『見つめあえ』とか『肩を抱け』っていわれても照れちゃって……」と羨ましいことを抜かす。
「最近は落語どころじゃなかった。小辰さんも言ってましたが、今日はリハビリです」とのこと。ふたり揃って。
映画の話から「さて」という感じで割と強引めに夢の話へ移動する。夢に五代目小さん師が出てきて話をしたことがあるそうで、「市馬師匠はどんな前座でしたか?」と聞いたところ「アイツは女々しいところがあった」と答えたそうだ。そんな夢を見た次の日に市馬師に会い、その話をしたところ盛大にしくじったという。「いい夢を見ても言わない方がいい」と『夢の酒』に入る。
お花の悋気ぶりやヒステリックさが振り切れていて楽しい。

二席めの『棒鱈』は以前にも聴いたことのある薩摩藩士が『クイカイマニマニ』や『サラスポンダ』を唄うバージョン。
検索してもあまり引っかからないということは結構レアネタなんだろうか?
客席みんながポカーンとなる空気が楽しい。

小辰さんの二席め、「さっき兄さんが『打ち上げがなくなったから家で飲むようになったけど終電を気にしなくていいので酒量が増えた』といってましたけどね、あの兄さんはそもそも終電を気にしたことはないですから。むしろ終電がなくなってからが始まりですから。……まあ私も同じなんですけど」だそうで。
いつものように千代田卜斎と高木作左衛門の堅さがいい。
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