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第10回 三遊亭兼好 噺の会 [落語]

第10回 三遊亭兼好 噺の会
於:浅草 ことぶ季亭

三遊亭兼矢『垂乳根』
三遊亭好二郎『愛宕山』
三遊亭兼太郎『朝立二郎 噺の会に参る』
三遊亭兼好『宮戸川』
桂小すみ 三味線と唄
三遊亭兼好『井戸の茶碗』

年末恒例の一門会。毎年この会にて落語納め。
一門会といえど弟子が増えたため、けろよんさんとげんきさんは楽屋仕事で高座はなし。

兼矢さん、以前にも聴いたことがある『垂乳根』だがやっぱり面白い。
女房になる人の口調が丁寧過ぎるからとわざわざ書生さんに挨拶を考えてもらおうとする八公の前向きぶりがなんか兼矢さんぽい。
打ち上げのときに聞いたら自分で考えたストーリーなのだとか。

好二郎さん、着物生活も一年を超えたが、まだまだ和服の男性は珍しいらしくいろんな人からジロジロ見られるのだとか。
着物の話から芸者たちと飲んだりする機会があるという流れで『愛宕山』に。
持ち時間も短いだろうにと少し驚いたが、上手いこと刈り込んでちゃんと最後まで仕上げる。やっぱりこういう噺の編集は上手い。

兼太郎さん、古舘伊知郎氏のトーキングブルースを観に行ったそうで、大分感銘を受けた様子。
「今日は何の噺をやろうか考えたんですけど、今日のこの状況を実況してみたらどうかと」。ううん? 「扇子をこうやったら実況中。普通に話してたらこれは私が落語をやっているところ。で、こうやってうつむいて話してたらこれは心の声です」。はあ。
なんでしょうメタ的な要素盛りだくさんで面白いといえば面白いんだけど、んんん? これはなかなか評価が難しい?

兼好師の一席め、「今年は大谷くんを別にすれば藤井くんでしょうねえ。でもあまりに強すぎると挑戦者待ちの状態になってしまって対局が減ってしまう。それで人気が落ちるってことがあるんだそうですよ。それで50歳以上の棋士限定のタイトルを作った。藤井くんには勝てなくても、昔強かった棋士が再びタイトル戦に登場してくる。これでまた人気が出る。頭いいですね。で、羽生さんが優勝しちゃったの。会長だから表彰式で自分で自分に賞状渡してるんです」。さすが羽生先生。
「プロ棋士ってどうやって稼いでるのかとと思ったら指導対局ってのがあって、ズラッと並んだ素人とどんどん指していく。素人ったって強い人ばっかりなんですよ。それを盤を一瞬見ただけで指していく。あれはやっぱり一種のバクチなんでしょうね。だから昔から『碁将棋に凝るヤツは』となる。でもああいう人は子どもの頃から強いんでしょうね」と子どもの話になり、育ちの良し悪しの話に。
「昔はそういう育ちのいい子どもは若旦那といってろくでもないのが多いんですが、中には純情な若旦那もいて」と『宮戸川』に。
半七がお花に「私たち噂になってんですよ。『お花と半七はデキてる』とか『もうすぐ結婚する』とか」「あ、その噂流してるの私」とさらっと話すお花の狂気が楽しい。
いつもながらお花に気づいたときの霊岸島の叔父さんのニヤーーーーっとした表情がたまらない。

小すみ先生、隅田川を唄う『さわぎ』を国際化してナイル川から南米のラプラタ川まで飛ぶ。相変わらずこの人すげーーー。なんで三味線でラテンの雰囲気出せんの。

兼好師の二席め、「脱税の金額が過去最大なんですって。脱税する業種の1位はコンサルタントなんですって。……胡散臭いですからねー」と黒い笑み。
「もう『コンサルタント』って言葉だけで怪しいでしょ。『あくび指南』ならいいですけど『あくびコンサルタント』とかイヤですよねえ」と胡散臭いのと正反対の正直者の噺に入る。年の最後に聞く噺が正直者が主人公で爽やかなサゲの『井戸茶』なのはいいですね。
「若侍がなぜ屑屋を呼び止めるのか」の理由を話すのに小銭を集め「これで今日働かなくてすむ」と話す男がなんかかわいらしい。
毎度のことながら千代田朴斎と高木作左衛門の意地の通し合いをいつの間にか「……と言っておりましたので」と清兵衛さんが話していたという場面スイッチの手法が素晴らしい。

終演後に抽選会。けろよんさんとげんきさんは今日はこれが晴れ舞台。
お客の2/3に何かが当たるこの抽選会、なのにほとんど当たったことがない。
今年もまた何も当たらず……と思っていたら、最後の最後、兼好師のサインと「わたしたちは 笑うために 生きているのだ」という格言が入った扇子が当たる。よおおおおし! 今年いいことがなかった俺を神様が哀れんで当ててくれたのに違いない。
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さて恒例の自己満足120%2023年に聞いた落語集計。
今年は616席。さすがに昨年よりは減っている。昨年は披露目があったからなあ。

でもって一番聴いたのは当然のごとく兼好師で103席(54会)。これだけ聴いてても『ちりとてちん』『壺算』『不孝者』が三席ずつでほとんど重複がない。

二位は入船亭扇橋師で55席(31会)。
三位三遊亭天どん師22席(13会)。
四位と5位は15席ずつで春風亭一蔵師(12会)と入船亭扇辰師(11会)。
六位に三遊亭萬橘師11席(6会)。
七位柳亭小燕枝師10席(9会)。
参考値としてけろよんさん27席。

遊馬師を7席しか聴いてないってのがなあ。また来年。
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人形町噺し問屋 その106 [落語]

人形町噺し問屋 その106
於:人形町 日本橋社会教育会館

三遊亭兼好 ご挨拶
三遊亭けろよん『半分垢』
三遊亭兼好『干物箱』
ちんどんバンド☆ざくろ ちんどん
三遊亭兼好『二番煎じ』

本来明日も仕事なのだが、大口クライアントが明日から休みのため私も代休。
会社の大掃除もそこそこに本年の仕事終了。来年がまた大変で今からイヤな気分ではあるけれど、とっとと兼好師の落語を聴いて厄落としをせねば。

まずはご挨拶。
「本当にこの年の押し詰まった時期に……。今日はキャンセルが多かったんですよ。気付いたんでしょうね、『今そんな場合じゃない』って」。……あー……、うん、まあ私もそうなんですけど。今年は年賀状も一切やってないしなあ。どうすっぺ。
「今年もいろいろありましたけど、やっぱり裏切らなかったのは日大。ずいぶんお世話になりました」。主にマクラの餌食としてね……。
「アメフト部も廃部になるそうで。ちょっともったいないような気もしますが……。というかね、アメフト部がある大学って少ないんですよ。だから日大とかに人が集まる。だから、今の日大のアメフト部の部員は他の大学が引き取ったらいいんですよ。そしてそこでアメフト部を作る。そうしたらもう少し大麻も流通しやすくなるんじゃないかと……」。途中までいいこと言ってるのかと思ったら。
「まあでも『ピンチはチャンス』ですから。これを活かすようにしないと。……それでいうとアレですね、秋田県知事が愛媛のじゃこ天を『貧乏くさい』って発言して炎上しそうになったんですけど、それで『じゃこ天て何?』ってなって売り上げが上がったんですって。それで今じゃ秋田と愛媛が協力して『仲良しセット』って貧乏くさいものをセットで売ってるんですって」。調べたらきりたんぽとじゃこ天のセットのようだ。そりゃちょっと美味そうだなあ。
「あと最近ゴロゴロを自分で引いて移動することが多くて、そのせいか腰がすごく痛くなったんです。で、琵琶湖湖畔の宿で落語会があって泊めていただいたんですが、もうものすごく寒いの。温泉にも入れてもらったんですけど、浴室の窓が開いていて……。結構上にあった窓なんですけど、これは閉めないとダメだなと思っていろいろ頑張った。そのときツルッと足が滑って、顔から岩にぶつかりそうになって……。『あーコレはダメだ』と思った瞬間、体をクルッと反転させて浴槽に落ちたんです。そうしたら、体を思いっきり捻ったからなんでしょうね、……腰治ったの」とダブルピースで舞台上を飛び回る。そんなことある?
……しかし俺、仕事でかなりピンチなんだけど。コレなんとかなるのかなあ。
あとは政治家のパーティに出席した話など。「安倍派がアレだけやったんだから少なくとも国葬は取り消してほしいですよね」と話して拍手が起こる。

今日は前座さんはけろよんさんのみ。
しかしすごい勢いでネタ増やしてるなあ。それでどれも前座クオリティじゃないんだから大変だ。

兼好師の一席め、「最近の北朝鮮で娘と一緒の写真が公開されたそうで。『金正恩の前に出て写真を撮るなんて、この娘が後継者なんじゃないか』なんて言われてるそうですが……。私も娘がいますけど、そんな大層なことですか? 娘って父親より前に出るでしょう?」と納得いかない様子。
「ところでああいう独裁者って影武者がいるんですってね。だからわざとチョビ髭をはやしたりして特徴的な見た目にする。パッと見て『あ、アイツだ!』ってわかるように。でもなきゃあんな髪型にしないでしょ」と思わず納得の理由を話す。
影武者の話から『干物箱』に。
階下から大旦那に小言をくらい、ブツブツと反論する若旦那の独り言が面白い。
貸本屋の善公とは事前の打ち合わせはなにもなく、とにかくぶっつけ本番でなんとかしろという無茶振り。こんなクライアント嫌だ。
なので運座の話や無尽の話もなし。その代わり「お前の友だちの貸本屋の善公だがな。アイツはどんなヤツだ」と聞かれ、「アイツはいいヤツなんで、今度おとっつぁんからアイツに小遣いを」と答えたのに「この前お前の声色なんか使いやがって、今度やったら承知しねえと言っておけ」という大ピンチが訪れるのがたまらない。それに答える善公の苦悩がとても楽しい。

ゲストのちんどんバンドのざくろは何度か聴いたことがあるはず。クラリネットのメンバーが朝橘師の奥方らしく、その繋がりなんだとか。
私自身がクラリネット経験者なので、どうしてもクラリネットに意識が行ってしまう。

兼好師の二席め、「最近は人口が減っているそうで、秋田などは20年後には人口が半分くらいになるかもしれないんだそうですね。いろいろ対策はしてるそうですが、私は流れに任せたほうがいいと思うんですけどね。『ライフラインなどのインフラはどうするんだ』という意見もありますが、昔は『自分たちの地域のことは自分たちで』という考え方があって……」といってみれば自警団の噺である『二番煎じ』に。
前半部の見回りの場面で、「アナタは謡の先生なんだから」とか「アナタは小唄とか端唄を習ってるんだから」とかいってお爺ちゃんたちの隠し芸大会になっているのがとにかく楽しい。
後半の酒盛りの場面でもまた隠し芸大会のシーンがあるが、前半はガチの芸、後半は酒が入って乱れた芸という対比が面白い。
そしてそれはなんといっても兼好師の芸達者ぶりがあってこその快楽であることよ。都々逸をひとくさり唸るだけでこんな拍手が起きるなんてそうそうないよ。
あー兼好師が一番の贔屓で良かったー。そんなふうに思わせてくれる一席でした。
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第二十八回 東海道神奈川宿寄席 [落語]

第二十八回 東海道神奈川宿寄席
於:桜木町 横浜にぎわい座芸能ホール

三遊亭げんき『牛褒め』
三遊亭兼好『強情灸』
橘家文吾『夢金』
橘家文吾『五目講釈』
三遊亭兼好『富久』

昨日はこみち師の会など行きたい会がいくつかあったのだが、掃除や体力回復の方を優先する。その後高校時代の友人と北千住で飲み。来週も地元で会って呑むんだけどね。
でもって案の定二日酔い。ただ焼酎オンリーだったからか普段よりは全然楽だがやたら眠い。ていうか体力回復できてねえなコレ。

開演前に主催者の挨拶。
ダジャレをふんだんに盛り込み、盛大に滑りまくる。「今日のゲストは文吾さん。ぶんごうといえば夏目漱石、漱石の代表作の『ぼっちゃん』のようにネタを川に投げ込んでオチまで流れ込む……」みたいな感じ。

案の定兼好師の餌食となる。「この会は主催の挨拶も名物で。いいですね、やっちゃいけないことをすべてやってる。もう弟子が高座に出るより緊張する。『引っ込めー!』とかもいえないし……」。こうやってフォローするのも兼好師の優しさで、ある意味主催者はおいしい。
「今日はクリスマスイブなのにこうしてたくさんお集まりいただくのはありがたい。なんですか周りはクリスマスだからってカップルがどこか行こうっていうんでしょ。ほんとイライラしますよね。もしくは全財産を有馬記念に突っ込んでなんとか年を越したいっておじさんたち。だから文化的な人はここにしかいない」。
「愚痴になりますけど、クリスマスというイベントが入ってくるのはまあいいんです。でもクリスマスプレゼントっていう文化はいらなかったんじゃないですか。あれはもともと貧しい子どもたちのためになんとかしようというもので、それも毎年は貰えないんです。『なんでサンタさん来なかったんだろう』『ちゃんとお祈りしてなかったからじゃないか』……みたいなことでキリスト教の教えとか、日々の行いを正すとかのものだったのです。それがどうですか。今は毎年必ず貰えて、しかも子どもはズル賢いですから『今ウチはこれくらいのものなら買ってもらえるな』というギリギリを狙ってくるんです。そうするとせっかく貰っても『色が違う……パパ、これ取り替えてもらってきて』なんてことを言い出すんです!」とご立腹。「すみませんウチの愚痴です」だそうで。ていうかクリスマスプレゼントの本来の意味ってホントなんですか。聞いたことないけど。
「そもそも貰えなくても我慢するというのが日本人の美徳じゃないですか」と『強情灸』に。
会場が横浜だからか、「横浜の方にできたろ、峰の灸てのが」という説明はなく「峰の灸行ってきた」と近所のような扱い。
相変わらずなぜか首を左右に振りながら喋る峰の灸の術師の動きがおかしい。
灸に火が回って「ふぐっ!」となった後に「あにょね、八百屋お七……」と喋る声がすべてひっくり返ってるのもとにかく笑える。

文吾さんの一席め、文吾さんも開演前の挨拶に苦笑い。「こうやって主催者から紹介されることもたまにある。こないだは広島の高校に師匠と一緒に呼んでもらったとき、師匠は珍しく『芝浜』をやると張り切っていたんですが、先生が落語好きだったのかストーリーからオチまで全部生徒に説明してしまった。『それではどうぞ』と言われて『できるか! アイツに全部やらせろ』って怒ってました」。
ケチと欲張りの違いの話から『夢金』に。
ガッチリと骨太な感じでしっかりと聴かせる。「欲の熊蔵」の船上のボヤキに強欲さが滲み出ている。

文吾さんの二席め、こちらもガッチリきっちりとした噺をしっかりと聴かせる。
講談部分ももちろんなのだが、居候先でのおかみさんとのバチバチのやりとりも楽しい。

兼好師の二席め、「金は天下の回りもの、といいますけど回ってこないですねえ。……ま、裏金では回ってるんでしょうけどね。そもそも選挙ポスターとかに『美しい日本』とか『日本を豊かに』とかいってるから腹が立つんですよ。『キックバック!』とか書いてあれば許せるんですけどね」といって大爆笑。いや許さないしそもそも投票しないですけどね。
年末らしいお金にまつわる噺で『富久』に。
兼好師の久蔵は芝の旦那の出入り止めに困っていながらもどこか飄々としていて悲壮感を出していない。
家の大神宮様に願をかけ、お下がりのお神酒を飲んでいるときも「アタシは千両当たったら……」とその使い道を滔々と語る。「たばこやのみいちゃん、あの子を女房にします」と夫婦喧嘩やいちゃいちゃしているところを延々と話して「……ていう暮らしがしたい」という妄想がやたらおかしい。まあ宝くじ買ったら一度はそういうことを考えますわね。徐々に呂律が回らなくなっていくその様子がホント上手い。
芝の旦那の家に火事見舞いに行くことを近所の棟梁に勧められ、出入り止めが許されたときに「ありがとうございます! 棟梁!」と棟梁への感謝を口にし、「計略通り」などと言わないのが兼好師らしい。
火事見舞いの応対をしているときに直接のセリフとしては出てこないが、みんなが久蔵の出入り止めについて触れているのが久蔵の応対でわかるのがおかしい。中には「ああ若旦那、前に言っていた碁番の上で踊る片足かっぽれを今度お教えします……講釈の方がいい!?」などと文吾さんのネタを拾うのもさすが。
本家から届いたおでんを串から食べる仕草も見事で、練り物やこんにゃくの弾力が見えるよう。
富くじが当たるまでにも見どころが多すぎて、兼好師の芸達者ぶりを再確認できた一席。『富久』ってそんなに好きな噺じゃないんだけど、こんなに面白いんだと思いました。
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日暮里だだらくご vol.39 [落語]

日暮里だだらくご vol.39
於:日暮里 日暮里サニーホール

入船亭扇橋『短命』
柳亭小燕枝『夢の酒』
柳亭小燕枝『鈴ヶ森』
入船亭扇橋『文違い』

門仲から日暮里へ。
1時間ちょっと間が空いたのでファミレスに入って「シェアする落語」の記事を書き上げる。ファミレスだとあの分量を1時間で書けるんだよなあ。なんで家では書けんのか。っていろいろ誘惑がありますからね。猫とか漫画とか酒とかテレビとか。

いつもは平日の会なのだが、今回は日曜なので開演が30分早く18時半から。ただし会場が使えるのは18時からで、開場まで15分しか時間がなく大急ぎで設営したそうだ。なのに扇橋師が会場入りしたのは18時15分だったそうで。

扇橋師の一席め、そんな状況を話して「設営をアニさんと主催の方だけでしていただいた。『アニさんすみません』と謝ったものの、その時の小燕枝アニさんの『……いいよ』というあの目が怖かった。久しぶりに前座の頃に戻った気がします」とあまり本気さを感じさせない反省の弁。
「……この会は市弥と……」と言いかけ、「……久しぶりに『市弥』って出てきた。まあ『市弥と小辰の会』だったんですけど……」と本当に気分が巻き戻ってしまったのだろうか。
電車で見かけたカップルの話から化粧の話題に移る。先日の舞台に出演した際に自分でメイクをしなければならなかったそうで、今までしたことがなかったからまるでわからなかったそうだ。まあ大概の男はそうでしょうなあ。
女性の美しさへの欲求を賛美しつつ「一方で『美人薄命』なんてこともいいまして……」と『短命』に。
先日聴いたときと内容自体はそんなに変わっていないんだけど、だいぶ一蔵色が薄れたような印象を受ける。なんでだろ。ご隠居が「……短命だろ」という直前に「ンフッ」と意味深に笑うところがやっぱりおかしい。
途中で「……今気づいたけど客席に子どもがいる!」となったがもう終盤に差し掛かろうかというところでさすがにどうにもならない。

小燕枝師の一席め、まずは開演ギリギリにきた扇橋師へのグチというか呪詛というか文句が止まらない。「椅子も全部私が並べて! そんでプログラムのチラシ挟み込みが間に合わない。で、この会のプログラムって真ん中から2つに折ると『仲入り』のところに折り目がくるようになってるんで、少しずらして折ってるんです。それをあの男は真ん中から折りやがって。そもそもこの会が始まってから10年経ちますけど、アイツが椅子を並べているところを見たことがない!」と激昂。このホールには舞台左上に窓があるのだが、そこが開いて扇橋師が「……悪かったよ」と謝罪。なんでそんな高いところから上から目線の謝罪が。絶対反省してないヤツだこれ。
謝罪が入って少し冷静になったのか、寄席の話に。
現在鈴本と浅草に師弟で掛け持ちをしているらしく、浅草では小燕枝師の後ろが市馬師だそうで。「持ち時間が短くなっても、『お前は縮めたりしないで思った通りにやれ。時間を縮めたりするのは俺たちジジイがやるんだ』って言ってくれる。カッコいいなあ! って思いますよね」と師匠愛に溢れる。
競馬に勝った小燕枝師のご尊父が浅草の楽屋に差し入れをし、その差し入れを馬風師におそるおそる持っていった話なども。
小燕枝師の『夢の酒』はとにかくお花がちょっとイカれていて、それがとても楽しい。大旦那に「倅は夢の話だと言っているが」と問われ、目が泳ぐところなどはたまらない。倅の夢に行くのは淡島様に頼るのではなく「気合で」というのも無茶苦茶で好き。

小燕枝師の二席め、羽織も着ずに高座に上がる。「さっき楽屋に戻ったら『来年の目標は”遅刻をしない”』って……。当たり前だろ! こっちはそれが普通なんだ!」と再燃した模様。
「縁起を担いで泥棒の噺を」と定番の導入から『鈴ヶ森』へ。内容は扇橋師のものと似ているようだ。
親分さえ「ここを知って通ったか知らずに通ったか。知って通ったんなら命はねえ。知らずに通ったんなら命は助けてやる。そのかわり」という口上が言えずにあわあわとなり、途中で「あー、15分前に戻りたい!」と思わずこぼす。そんなハプニング(?)も楽しい。

扇橋師の二席め、『文違い』は初めてか。
「客席にお子様がいるときはネタ選びもそれなりに気を使うのです。それが今日はみんなふさわしくないようなネタばかり。……なので今日はもう振り切ろうかと」と開き直りのようなことをいって噺に入っていく。
なんかあんまり初めてという気がしない。そもそも『文違い』自体そんなに何度も聴いた噺ではないのだが、なんだろ落ち着きっぷりとか、おすぎの悪女っぷりとかが既視感を生むのかもしれない。

昨日は生ぬるい感じだったのに、日が暮れると季節通り寒くなる。いよいよバイクに厳しい季節がやってまいりましたなあ。
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シェアする落語 第34回 三遊亭わん丈 [落語]

シェアする落語 第34回 三遊亭わん丈
於:門前仲町 深川東京モダン館

三遊亭わん丈『来場御礼』『魚の狂句』『芝浜』

いよいよクソ後輩が会社を去り、俺の負担が倍増する。
さらにその上に仕事が入るとか、みんなで俺を殺そうとしてるのか。
さらにクライアントのクソ担当のカスハラがひどく、上司や社長を巻き込む事態に。クソ担当は仕事できない上に責任感もなく、コイツのせいでクソ後輩が飛んだと思われる。まあクソ後輩が置き土産にクソ担当の悪行一覧を残してクライアントの上司に送られることになったから、さっさと配置換えになっちまえ。
でもって昨日も休出。あまり頭を使わない画像加工が主な作業だったので喜多八師の落語を聴きながら。私は集中力があまり長く続かないのだが、落語を聴きながらだと作業に飽きても「ちょっとネットでも見るか」とかにならないので結果的にずっと作業を続けられる。そしてアマプラが三田落語会を配信してるのでいろいろ聴けるのがありがたい。

さて久しぶりの「シェアする落語」。噺家さんを撮影できる時間をとり、その写真をネットなどにシェアするという試みを行なっている。前回もわん丈さんの会だった。
わん丈さんは昨年も出演され、「真打昇進前にもう一回出たい」と言っており、「じゃああと2~3年後に」と言っていたら急遽今日しかなくなってしまったそうだ。抜擢されたからね。

一席め、『翔んで埼玉』の話から地元滋賀の話に。「埼玉の人はイジられることに耐性があるから笑って許すけど、滋賀はそうではない」と滋賀の荒れ具合を滔々と語る。曰く警官がストーカー的な行為をするため「犯人」と呼ばれているとか、アンケートに「滋賀を舐めるな」と書かれ、次の年にそのことを同じ会場で言ったら「だから舐めるないうとるやろ」と書かれ、「まさかリピーターになっていただけていたとは」など。
落語会の会場にずっと携帯を鳴らしているオバサンがいて、よく見たら自分の母親だったというところから母親とわん丈さんの会話となり、どうやらマクラではなくそれが噺の本編だったようだ。
いかにも関西のオバチャンらしいけたたましくベタな会話が続き、さながらひとり漫才。さすが関西人というか笑いの手数が多く、ずっと飽きさせない。

一席が終わってシェアタイム。主催の四家氏との対談で、この間は撮影可能なのでバシャバシャ撮る。いつもならば二席終わった後でなのだが、今日は変則らしい。

抜擢真打という端から見れば華々しい栄誉なことのように見えるが、実際には大変なことばかりらしい。仲の良かった二ツ目の兄弟子とも溝ができたり、挨拶回りで上の師匠をしくじったりとかもすでにしているそうだ。
天どん師は「俺が出て謝ったほうがいいときは言って」と言ってくれて実際に一緒に謝ってくれるそうだが、「だから天どん師匠に迷惑をかけたくないんですよ。でも協会は段取りとか何も教えてくれない」とグチが止まらない。「天どん師匠はおそらく歴史上一番速く口上に上がるんですよ。普通弟子の真打昇進は15年くらいかかるから、自分が昇進して20年くらい経って師匠側として上がるのに、天どん師匠は10年くらい。それにキャラ的に自分より天どん師匠の方がイジりやすいから、上の師匠は絶対口上で師匠をイジるのがわかるんですよ」。その予想もどうなのと思うが、私と同じく天どん師の口上を楽しみにしている人が多いんだそうだ。
扇子も竹が取れなくて全然作れずに大変だとか、ぶっちゃけお金のこともあるから一度は断ろうと思っていたとか、裏話的なことがどんどん出てきて止まらない。
真打昇進後のビジョンなども。今は年間1500席やっているそうだが、もっと自分のやりたい仕事を選んでいくそうだ。1500席ってすげえな。
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Nikon Df

少し間をとって二席め、「他にやろうと思っていた噺があったんですけど、三席めに『芝浜』やりたいんですよ。で、私この後鈴本の出番が5時にあるんで、4時11分の電車に乗らなきゃ間に合わない。なので5分でできる噺を」と『魚(うお)の狂歌』を。もともと上方の噺で春蝶師から習ったそう。女房にわからないように、色街の名前を魚の名前を盛り込んだ川柳で表そうというもの。吉原新宿池袋渋谷と、どこにも上方の名残が見られないけど……。

三席めは予告通り『芝浜』。
先日一蔵師でも聴いたのだが、わん丈さんも財布を拾うところを描かない古今亭の型。一時期は誰を聴いても三木助型だったのだが、流行りが変わったのだろうか。
そして軽い。魚熊は割合あっさりと夢であることを受け入れるし、お得意先もクドクドと説教などはしない。
革の財布を出されても、「あれは夢だったんだ」と逆に受け入れないというのは初めて聞いた。そんなだから女房の告白を聞いても怒りもしないし、あっけらかんとしている。重苦しい場面がなく、人情噺というカテゴリではない感じ。
これはこれでわん丈さんのスタイルに合わせた『芝浜』なんだろう。

終わったのは4時11分。……電車の発車時間ですなあ。
終演後に駐輪場で身支度をしていると着物のままのわん丈さんが飛び出していくのが見えた。
まあタクシーなら30分くらいで着くんじゃないかなあ。
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雑司谷 拝鈍亭 講談と落語の夕べ [落語]

雑司谷 拝鈍亭 講談と落語の夕べ
於:護国寺 本条寺

入船亭扇橋『御神酒徳利』
一龍齊貞鏡『赤穂浪士外伝 天野屋利兵衛』

会自体は知っていたが、行くのは初めての会。
扇橋師と貞鏡先生で浄財1000円からってすごいな。
受付に行っても何も言われないので、「あの、ご浄財は……」と聞かれて初めて「こちらにお願いします」と言われる。
名前のとおり音楽家のハイドンを聴くためのホールのようで、住職の趣味なのだろう。
浮世絵風のハイドンの絵が飾られ、その近くにはなぜかおしどりの針金ハイドンが飾られている。
住職が開始の挨拶をするも、最後は咳き込んでうまく話せない。大丈夫?

扇橋師も「私はこちらにお邪魔するのは初めてなんですが、最初に聞いた時は『変な名前』と思ってました。それに失礼を承知でいえば、お寺の本堂の片隅でやってる地域寄席だろうと……。だけどお寺の前にきて、『これは違うな』と思いました。なんですかこの会場は。私は音楽に詳しくはないですが、ハイドンを聴くためにこのホールを建てたんでしょう? しかもいろいろイベントをやっていて、ネタ帳が4冊もあるんですよ。量がおかしい」と驚いた様子。
「話し始めて気づきましたけど、音響完璧ですね。というかここ私が借りたい。使わせてほしいですね。このホールのこけら落とし、小三治師匠だったそうですよ。でも宣伝とか全然してなかったからお客さんが10人しかいなかったんですって。そんなことあります? 小三治を10人で聴くって……。私がその場にいたかった」と会場に対する賛辞が止まらない。
「貞鏡姐さんは芸歴はちょっと上なんですけど、年齢は私のほうが上で。久しぶりに会いましたけど、なんていうか……まあ簡単に言っちゃえばキレイな方ですよ。もうそのまま銀座に送り込んでも大丈夫。その方が紋付の黒い着物を着てるとですね、楽屋がピリつくんですよ。極妻がいるって。まあこれもそのまま銀座に送り込んでも大丈夫な……。しかもなんですか、人妻の色気もある。それに楽屋がうまい具合に狭いんですよ。そうするとどうしても必ず視界の中に入るんですよ。今、私は貞鏡を振り払うので精一杯です。……私はここに出てきてから一体何を話してるんでしょう」って知らんがな。
いろいろ話しているうちに運の良い悪い、縁の話になっていき、おやおやコレはもしかするとアレかなと思っていたらやはり『御神酒徳利』だった。二週連続。
普通ならガッカリするところだが、今日に限っては全然そんなことはなかった。というのももともと好きな噺ということもあるが、やっぱり扇橋師の完成度の高さがそのまま満足度に繋がっている。先週していた細々とした言い間違いが直ってるのを確かめるという楽しみ方もできる。ヤな客なのは自覚してます。反対に言い間違いかと思っていたら今日も同じだったので間違いじゃないのかと思ったり。
大阪で荒行を積んだ満願の日、「わかるわけねーよ! 荒行をしてわかったのは断食すると腹が減るってことと水垢離すると寒いってことくらいだ」とこぼす。「断食すると腹が減る」というのは一蔵師も入れているが、水垢離の部分は他の人では聴いたことがない。先週聴いたときから入っていたが、オリジナルを加えたのか。
たっぷり1時間近くの熱演。

仲入りが入って貞鏡先生。「今、真打昇進披露興行の最中で、噺家は真打になると『師匠』、講談は真打になると『先生』と呼ばれるようになるんです。なので皆さん、今後私のことを呼ぶときは『貞鏡ちゃん』ではなく、『貞鏡閣下』と呼ぶように」とのお達し。イエスマム。
「私はここに出るのが7年ぶり。その間にも何度かご住職からお話は頂いてはいたんですが、その度に妊娠していたという……。ここのご住職に電話をいただくと次の子をすぐに授かるご利益があるんじゃないかと……。ここ鬼子母神ありましたっけ?」。てか7年で子ども4人てすげえな。
「今日はここのお寺のカフェで取材があったものですから黒紋付でいたんですよ。そしたら扇橋さんもいて、あの人、黒のダブルのスーツでいるんですよ。それで『アネさん、おつとめご苦労さまです』って挨拶してきて……」。まあ扇橋師は私服スーツじゃないと思うな。まそんなことはどうでもいいことですが。
「この拝鈍亭はちゃんとした釈台があるのが嬉しい。張り扇で叩くといい音がするんですよ。釈台があるところなんて珍しいですから、いつもはポータブルの釈台を持ち歩くんですよ。それだと音があまり……。そこへ行くとこの釈台はたまらないですね」とパンパン叩く。
張り扇の使い道などを説明しながら修羅場をひとくさり読んで中手をもらい、ダブルピースであざとく喜びを表すなど和やかな雰囲気。
「冬は義士、夏はお化けで飯を食い」と本題に入っていく。
赤穂浪士の名前を読み上げる場面では途中で中手が入るも「拍手ちょっと待って」と演者からストップがかかるという珍しいことが起こる。途中で入るとわからなくなってしまうらしい。「こないだ『笑点』でやったら、3人めで拍手が入っちゃって。おかげで前半24人いるところを20人しかいなかった」そうで。やっぱり中手のタイミングって重要よね。たまに落語でも「ここじゃないだろー」というところで拍手が起こり、演者が戸惑ってるのを見ることがある。以前『時そば』で最初のそばのひとすすりで中手が上がり、その後そばを食べるシーンで必ず拍手が入ってすごく困っていたケースもあった。
後半はちゃんと全員揃ってから拍手が起きる。
お裁きで実子を拷問に掛けると脅されても、男の義理を貫くために話さないというもの。このお裁きに出てくる「松野河内守」は『鹿政談』に出てくるお奉行と同一人物なのだろうか。
腹からの芯のある太い声で、会場の音響もありものすごく耳に心地よい声とその声量に圧倒される。

骨太の二席でございました。
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三遊亭兼好・桂宮治 年忘れ落語会 [落語]

三遊亭兼好・桂宮治 年忘れ落語会
於:亀有 亀有リリオホール

三遊亭兼好 桂宮治 トーク「キンミヤ大好き!」
三遊亭けろよん『かぼちゃや』
三遊亭兼好『宗論』
桂宮治『プレゼント』
桂宮治『元犬』
三遊亭兼好『やかんなめ』

ボーナス出たのはいいけど三割持ってくってホント泥棒だな増税メガネ。
しまむらとユニクロで冬用の服を買い足す。いやまあもっといいもの買えるくらいは出たけれども、あまり服にこだわるタチではないのでこれで充分です。

まずはふたり揃ってトーク。
「三遊亭兼好です」「神田伯山です」「絶対違うわ」「あんなに性格悪くない」とのっけから飛ばす。
「兼好師匠には前座の頃からお世話になっていて、協会は違うけどずっとかわいがってもらっていた。着物畳んでたんですよ。こんな一緒に上がれる立場じゃないんですけど……」と宮治師。
「でも今は『笑点』で好楽師匠のお世話してるんで。今日も収録してきたんですけど、好楽師匠、足の爪剥がしてるんですよ。私、肩を貸しながら登場したんですよ。1月にその模様が流れますから!」「ホントすみません。お世話になります」。好楽師匠何をしてるんですか。
「兼好師匠、最近冷たくないですか」「だってホラ、最近一之輔寄りだから」とジャブの応酬が続く。
「兼好師匠、ふだんトークとかしないですよね」「しないねえ」「それが今日はやってるというのは、実はこの会にスポンサーがついたんです。……我々のギャラは変わらないですけど」。それがキンミヤ焼酎の宮崎本店らしい。というかこの会のチラシがキンミヤのパッケージのパロディみたいになっていて、兼好宮治でケンミヤだからかと思ったがそういうことか。
「私の実家、ビルのオーナーでして。飲食店も入ってたんですよ。で、キンミヤのオリジナルグラスに『宮』って入ってるんですけど、私は本名『宮』っていうんで、ウチのオリジナルだと思ってた」と宮治師。え、お坊っちゃまだったの?
「今日はキンミヤの会長さんもいらっしゃってる。なので皆さんにもお土産があります。凍らせてそれを好きなもので割ると氷で薄まらないという『シャリキン』になるパウチを全員分用意していただきましたのでお持ち帰りください!」とのこと。こんな大きな会場でお土産付きは珍しい。

けろよんさん、名前でひと笑いきたのはひさしぶり?
本来夏の噺だとは思うが前座には関係ないのか。

兼好師の一席め、「今日は17時という中途半端な時間なのに皆さまお集まりいただいて。昔は落語会は夜じゃないと人が集まらなかったんですが、最近では平日の昼間の方がたくさん入るんです。……高齢化、なんでしょうねえ」。リーマンの俺には羨ましい話で。
「もう12月だというのにあまり年末の感じがしないのはやっぱりこの暖かさですかね。今日なんかも昼間は汗ばむくらい。こないだウチに蚊がいたんですよ。もう少しすると『蚊がいるよ……冬だね』なんてことになるかもしれません。ただクリスマスツリーが出るとクリスマスの気分になりますね。カップルがいちゃついてるのを見るとほんとムカつきますけど、日本人は宗教にいい加減ですね。ただ、旧統一教会みたいなのはありましたが……。二世の問題なんかもありました。ただ二世がダメだとなると、伝統芸能の世界は大変ですね。歌舞伎とか物心つく前から舞台に立たせて、アレも一種の洗脳じゃないですか? お能の世界でも子どもの頃からいろいろ仕込むそうで。そりゃあ幼い頃から英才教育を受けていれば、子どもは伸びますわね。……ただ落語はなぜか二世に才能は受け継がれないようで……」と黒い笑いから親子の宗教対立を描く『宗論』に。
相変わらず「我々の信ずるところの主イ…………エ~~スは」を溜めるところが理屈抜きにとにかく楽しい。今日は溜める溜める。

宮治師の一席め、「今日も『笑点』の収録行ってきたんです。『よくすぐにあんなに答えられますね』と言われますけど、あれ放送の3倍くらい答えてますから! そんなにすぐ答えられないですよ。みんなが手を挙げないところを、仕方ないからあまり面白くない答えでも若手が間を繋いで答えてるんですよ。それを放送できる分の面白い答えが溜まったなと思ったらフロアディレクターから『次の問題に』と指示が出るんです。あとは編集ですよ。そんな中、本当に答えた分しか放送に使われないのが好楽師匠なんですよ。全然答えない。『ホラディレクターから”好楽さん答えて”ってカンペ出てますよ』といっても『宮治くん僕見えない』ってホントに言いましたからね! あの師匠から兼好師匠をどうやって育てたんでしょう」。
そのほかにも宮治家のこれまでのクリスマスエピソードや広島でタクシー強盗になってしまった話などをマクラに。
今日はキンミヤのお土産が全員分にあるからか、化粧品のサンプルを地方の量販店で配るという噺の『プレゼント』。
おそらく化粧品のセールスマンだった宮治師の実体験? をもとにとにかくサンプルを配りながらセールストークをマシンガンで喋りまくる。噺の中に実際の化粧品の名前をパロった製品名が出てくるのだが、女性には大ウケで男性はポカンとする。私も雪肌精のパロディくらいしかわからない。
前半はとにかく捲し立て、後半はいきなり湿っぽいというか。……うーーーん。ぶっちゃけていえば正直面白くない。ちょっとチープすぎるというか。人情噺というのでもなく、なんか単純にいい話みたいな感じに。なんかもう一捻りあるのかとも思ったのだけれども。

二席めは宮治師では初の『元犬』。ちょっと意外というか聴いてなかったっけ?
人間になったシロが「恥ずかしい」と胸と股間を隠すが、「……落語は想像力……」といって客席のひとりに向かって股間を隠していた手を放す。
口入れ屋の上総屋にはすべて話しており、上総屋も半信半疑ながらもシロの耳の後ろの匂いを嗅いで「お前シロだな!」と確信するのがおかしい。「これをみんなにそのまま話したら私が病院に連れて行かれるから」と皆には教えない。

兼好師の二席め、ご母堂が膀胱がんで手術をされたそうで、「初期だったんで手術も簡単で、次の日には歩き回れるくらい元気になったんです。膀胱がん専門の病棟というのはないので、空いている部屋に入れてもらって。それが脳の手術をした病室だったそうで、その病室の方に向かって『頭が悪かったんですね』と言ったそうで……」。天然だそうだから言いそう。
病気の話から「今の時代になくなった病気に男の疝気に女の癪」と『やかんなめ』に入る。
相変わらずやかん頭の武士の感情の乱高下が楽しい。
頭を舐められているときのリアクションや、奥方と女中にお礼を言われているときの激昂ぶりなど、とにかく見どころがたくさんで楽しい。

終演後にパウチのキンミヤ焼酎のお土産を頂いて帰る。ホッピーがいいんだけど、焼酎が1パックだと外が余っちゃうな……。さてどうするか。
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第10回 兼好集 [落語]

第10回 兼好集
於:内幸町 内幸町ホール

春風亭朝之助『啞の釣り』
三遊亭兼好『紙入れ』
三遊亭兼好『文七元結』

打ち合わせが1日に3つも入り、特に3つめが長引いて定時に上がれず。
クソ野郎の後輩のせいで仕事もパンパンで、少しでも片付けるべく一旦は行くこと自体を諦めたのだが、せっかくチケットを取ったしこの会は皆勤なので遅れながらも内幸町ホールに。
前座と兼好師の一席め、ゲストの二ツ目は捨てる覚悟だったが、朝之助さんの途中に間に合った。
けろよんさんは『弥次郎』、兼好師の一席めは『高砂や』だったようだ。『高砂や』は5月に聴いたから、と自らを慰める。

兼好師の二席め、「不倫というと暗いけど、間男というと明るくていい」と『紙入れ』定番の出だしに。というか兼好師の言い方ひとつですよね。「夢はNHKで『間男』と言われるのを聞くこと」だそうですけどそりゃ無理だ。ドラマならあるかもしれないけど。
「結婚はお互いピークの時にするから、あとは落ちるだけですから。お互い『え、コレ?』という時点で結婚すればいい。あとは上がるだけですから。……ま、ずっとそのままかもしれませんけどね」と黒い笑みを残しつつ噺に入る。
相変わらず間男相手のおかみさんの用意周到な罠と、新吉の真っ直ぐな抜けっぷりの対比がおかしい。
罠にハマった新吉への笑い声は、これだけでこの噺を聴く価値がある。

三席めの『文七元結』は5年ぶり。久しぶりに聴きたいと思っていたから嬉しい。
佐野鎚のお内儀の小言がビシッと凛々しく決まる。
そんな中、女物の着物を着た長兵衛が「女形がはばかりから出てきたような形」とお内儀や文七にまで言われてしまうのがおかしい。
文七に五十両やるときも、クサくなりがちな長時間の逡巡や、外連味たっぷりの仕草などはまったくなく、「……しょうがねえな、ほら」みたいな感じでやり取りはごく短い。恩着せがましさや未練は感じず、江戸っ子の男意気を見せる。
文七のお店の番頭さんが何も知らないふりして吉原に詳しいくすぐりもいろいろな口の滑らせ方をしていて楽しい。
身請けされたお久が佐野鎚のお内儀や藤助と一緒に戻るのは今のところ兼好師でしか聴いたことがなく、大団円。

懲りずにまた平日の次回のチケットを買う。が、手持ちの現金が50円足りず、知り合いに100円借りる。いい加減落語チケットもキャッシュレス化してくれればいいのに。
とりあえず利息として一眼で撮らせてもらった兼好師のオフショットを送る。兼好師の写真が通貨がわりに使えるのは兼好師追っかけ仲間のみ。なお私は素人で日本一兼好師を一眼で撮ってるという自信がありますので、写真が欲しい方は私にお金を貸せばいいと思います。

イライラする一日だったが、兼好師のいい噺で少し腹も収まる。
さらに扇橋師も花形演芸大賞の大賞を獲り、一蔵師も銀賞を獲ったという報を見、完全に機嫌を直す。よかったなあ。
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入船亭扇橋独演会『噺す男』 [落語]

入船亭扇橋独演会『噺す男』
於:下北沢 シアター711

入船亭扇橋『短命』『死神』『御神酒徳利』

今日はとにかく疲労回復に努め、外出は最小限に。
下北沢は久しぶり。バイクだと駐輪場を見つけるのが大変そうだし高そうなのでおとなしく電車で。
日曜の夜の会の記事を書くのに時間取られると明日に響くので帰りの電車でできるだけ書こうという狙いもある。
2年前にも下北沢の小劇場で扇橋師(当時は小辰だったが)で会があったので同じ会場かと思っていたが、違っていた。
シアター711は聞いたことはあるが来たのは初めて。関係ないけど誕生日が7月11日なのでなんか711という数字には反応してしまう。

開演前に影ナレが入るが明らかに扇橋師の声。
「そうです、入船亭扇橋です。私、この会の主催の娯楽百貨の方にお声掛けをいただきまして、お芝居に出させていただきました。スズナリという小屋が聖地だそうですが、このシアター711はその隣。……ほぼ聖地、のようなものでございます。で、今日のこの会には趣向がございます。今日はマクラが一切ございません。本来ですとマクラを話しながらお客さまの様子を見て噺を選ぶのですが、それもございません。……あまり話すとこの影ナレがマクラになってしまいそうなのでこれくらいにいたしますが……。それと本日の前半は拍手がございません。後半になって『ああそうだったな』と思い出していただければ……」。拍手がない?

すると舞台が暗転し、小屋の中は真っ暗に。
明かりがつくとすでに高座に座った扇橋師が「どうしたい八つぁん、バカなご立腹だね」と宣言通り一切のマクラがなく『短命』に入っている。なるほど拍手をする隙がない。
扇橋師の『短命』は初めて。というかこれ多分一蔵師のだな。一蔵師が得意としているから掛けていなかったのか、面白そうだから一蔵師から教わったのか。というかあのふたりなら「アニさんあの噺やっていい?」「おーいいぞ」で済ませそうだけど。一蔵師の『短命』は数えきれないほど聴いただろうし。
もちろん細かいところに工夫が入っている。
ご隠居が「……短命だろ」と少しためていうときに必ず口角が上がって含み笑いをしながら話すのはいかにも「今は艶っぽい話をしてるんだよ」と言っているようでご隠居の照れを感じる。この笑い方がわざとらし過ぎず薄過ぎず、ちょうどいい感じ。
どうにも察せない八つぁんの手を取って解説するご隠居が楽しい。

サゲを言い終わると拍手をする間もなく暗転。
数秒後に明転すると羽織を脱いだ扇橋師が「何が『俺は長生きだ』だ。カカアはうるせえし、いっそ死んでやろうか」と『死神』に。
これまた拍手する間がない。
扇橋師の『死神』は一度だけ聴いたことがあるのだが、こんなだったか覚えてない。
『死神』は地の語りの部分が結構多いのだが、できるだけ会話形式にして地を少なくしているようだ。
インチキ医者として金が入るようになった八五郎に対して「そんなことしてないで、ちゃんと植木屋として汗水垂らして働いておくれよ」と女房が頼むが、一席めとキャラ変わってないか。まあ子どもが産まれて母親として目覚めたということかもしれないが。
一席めでも思ったが、やはり扇橋師は表情の表し方が上手いと思う。わざとらし過ぎず、かといって見逃しをさせず、といった絶妙な塩梅。
死神に穴蔵へ連れて行かれるときに、一段降りるごとに高座の照明が少しずつ暗くなっていくのがいかにも演劇小屋らしい。
蝋燭部屋に入って倅の蝋燭を見つけた八五郎に「数多ある蝋燭の中で、その蝋燭に目を付けるか。……そういうヤツだから俺ぁお前を助けてやろうと思ったのに」というセリフがちょっと意味深。
特に死神の妨害もないのに「あっ……消えた……」で暗転。そして仲入りに。

仲入りが終わるときにまた影ナレ。「後半はいつも通りにやります。芸人は皆様の拍手で生きているところがあります」とやはり拍手なしという特別なシチュエーションには扇橋師自身も戸惑っているっぽい。

三席めもマクラなし。正直このブログ書くのもだいぶラク。
最後はもはや十八番? の『御神酒徳利』。いよいよ時期ですなあ。
巻き込まれ型主人公の善六さんの困惑ぶりを十分に楽しむ。
というか江戸の旅籠を取り仕切るような旅籠の二番番頭なんだから今でいえば星野リゾートの重役くらいの立場なんじゃ……。そんな立場に「正直だけで今の地位を手に入れた」というのもすごいことなのでは。

久しぶりのシモキタなので少し散歩して飲み屋とかにも行きたいところだが、明日も早く行って打ち合わせなんでとっとと帰る。仕事行きたくねえー。

タグ:入船亭扇橋
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第42回 宝寄せ [落語]

第42回 宝寄せ
於:六郷土手 宝幢院

三遊亭げんき『味噌豆』
三遊亭兼好『短命』
柳家わさび『三井の大黒』
柳家わさび『券売機女房』
三遊亭兼好『不孝者』

最近休日出勤が続くほど忙しい。基本的に休日は落語に行きたいので平日にギリギリまで頑張って土日を休むようにしているのだが、もうそれでは間に合わなくなってきた。
そんなさなか、今週になって後輩が今月いっぱいで退職するとのこと。しかも有給消化するので、実質残り2週間。……はいい? ……で、その中途半端な状態のその仕事、どうするつもり? ……ていうか聞くまでもないよね、俺にそのまんま流れてくるよね。まあ事情は聞いてないけど、いろいろあるんでしょう。クライアントや上司に対して腹に据えかねる事もあったのかもしれない。でもね、そういう事情なんかをすべて無視した上で正直な感想を言わせてもらえば、

やってくれたなあテメエ! ふざけんじゃねえブッ◯すぞこの野郎!

しかない。いやオメーにどんな事情があるとかもう関係ないよ。事実としては11月の残業時間が100時間を超えた俺がさらに忙しくなるってことだよ。……これ俺マジで死ぬんじゃないか。他の社員もヘロヘロでドミノが起きかねないぞコレ。というか俺が辞めたい。うちは住宅ローンも終わってるし、猫3匹が養えるだけの稼ぎがありゃいいのでこんな命削って働かなくたっていいんだ。……ま、俺は普通に責任感があるんで、仕事が中途半端な時期に辞めるとかできないけどな。

ああイライラする。
こういうときは兼好師です。
バイクに乗るときにAmazon Musicにどぶろっくのプレイリストを作成して大音量で聴く。テレビでもよくやってた『もしかしてだけど』とか『〇〇な女』とかの歌ネタを集めたアルバムだが、ホントに歌が上手くてネタがド下品なのに聴き惚れてしまうし、そしてド下品ぶりが最高。何回繰り返して聴いても飽きない。おすすめ。

久しぶりの宝寄せ、以前は本堂で行われていたのだが、今回はおそらく法事のときに家族が待機する部屋を2部屋ぶち抜いて。高座もおそらく住職がお経をあげるときに座る少し15センチくらいの高さの台というこじんまり感がすごい。これで兼好師とわさび師で1000円という激安。最近こういう会に行くことが少なくなったなあ。コロナが落ち着いて復活してきたのが嬉しい。

げんきさん、『九日十日』と『味噌豆』を。聴くごとに一段一段上手くなっていくのを感じる。

兼好師の一席め、「私もこちらは久しぶりですけど、この部屋でやるのは初めて。いいですね、この部屋。しかも高座も全然高くなくてすごく近い」。これが昔のお座敷芸のスタイルだったんだろうなあ。「なんていうんでしょう、穏やかな百姓一揆の相談?」。
万博の話題から「あれもうダメでしょう。これからもっと撤退する国が出てくるんじゃないですか。今は焼き場がすごく少なくなっているらしいんで、会場を焼き場にしたらどうですかね。各国のお弔いが選べるとか。『やっぱり仏教は落ち着くね』『うちは鳥葬で……』なんて」。お寺ジョーク?
「万博を開く、ということ自体が今の考え方と合わないんじゃないですかねえ。昔と今では価値観が変わっている。何が幸せなのかという考え方も変わる。長生きだけが幸せではないという考え方もある」と『短命』に。
先日も聴いた噺ではあるが、やはりこの狭いスペースの近い距離で聴くとまた違う。表情の動きもよく見えるし、声の通り方もマイクを使ったときと異なる。これはすごい贅沢なことではないだろうか。
短命の訳をようやく悟ったときの仕草や表情をじっくりと見られてしみじみと楽しい。

わさび師の一席め、マクラも一切振らずに『三井の大黒』に。
あのペターっとした髪型やめたのね。というかその反動なのか髪をまったく手入れしていないように見える。というか後頭部にすっごい寝癖ついてる。
ボーっとした感じのぽんしゅうの雰囲気がわさび師と合っているような気がする。
甚五郎の正体がわかったあとの小僧の権次の変わり身がおかしい。

わさび師の二席めは打って変わってマクラを振りまくる。
着物の色がげんきさんと被り、「私が高座返しをしてるような……。というか彼は18歳だそうですよ。なんなんですかあんな母性本能をくすぐりそうな感じは。私が芸歴20年そういう風にやってきたのに……」。そうだっけ? なんか病弱キャラとかだったような……。まあそれも「放っておけない感」を出すためのものかも。
「今日は兼好師匠と一緒ということで、私も時事ネタマクラとかを観客のひとりとして楽しみにしてたんですが、こんなライバルがいたとは……。さっきも師匠から『楽屋の障子閉めて』と言われたらちょっと建て付けが悪かったんですかね、『うんしょ、うんしょ』なんていいながら苦労しながら閉めてるんですよ。こりゃ勝てないなと……」。げんきさんそんなにひ弱なのか。
「最近ファストフードとかだと番号で呼ばれることがありますが、あれはいいですね。私は周りから軽く見られることがあるんですが、そういうときに使える技があるんです。たとえば『34番の方ー』と呼ばれたとします。そうしたら『ハイッ!』と力強く返事するんです。そして『34番、いただきます!』というと『この人は最近まで番号で呼ばれるような施設で過ごしていたんだと思われる」。まさかまさか。
注文繋がりで『券売機女房』に。町中華店主の老夫婦が、常連客から「券売機くらい入れた方がいいよ」と勧められ、夫がDIYで作った券売機の中に妻が入るというもの。「音声認識」といつう触れ込みだが、そら婆さんが入ってるからねというめちゃくちゃ感が楽しい。

高座を降りるときに高座返しをしかけるというおまけつき。

兼好師の二席め、「わさびくん、一席めでは『こんなこともできるんだぞ』ということを見せたかったんでしょうね。でも二席めでは我慢できなかったみたいで。こういうところが日大なんでしょうね」と笑う。
「最近は喬太郎師匠とか志らく師匠、わさびさんと日大の人と一緒に仕事をすることが多いんですよ。日大といえば今はいろいろと世間を騒がせていますね。パワハラとか。パワハラというと、吉田沙保里さんいらっしゃるじゃないですか。彼女のレスリング道場での子どもへの指導がパワハラ的だといわれて、最近ではあまり表に立ってはやってないようですが……。彼女はレスリングから離れれば乙女なのですが、あれだけ強いというのは試合中は半分ケモノなのです。百獣の王のライオンだってヌーの群れに会ったら親ではなく一番弱い子どもに行くのです。そうしたらどうですか。子どもに行くでしょう」とわかるようなわからないような。
『不孝者』は最近聞いたばかり……と思ったけど4ヶ月以上空いていた。
大旦那と欣弥が別れた理由がややあっさりとしたものになっていたり、よりを戻そうとするまでの経緯も少し簡略化していたような気がする。いろいろ試行錯誤が繰り返されている感じ。

帰りもどぶろっくの歌で癒やされながら帰る。
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