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三遊亭小遊三一門の 雀が一羽と馬一頭 No.2 [落語]

三遊亭小遊三一門の 雀が一羽と馬一頭 No.2
於:清澄白河 江戸深川資料館

三遊亭遊七『粗忽長屋』
三遊亭遊馬『味噌蔵』
三遊亭遊三『火焔太鼓』
三遊亭圓雀『茄子娘』
三遊亭遊雀『包丁』

小遊三一門の会で遊馬師と遊雀師が出てるなんて行くしかないでしょ。最近遊馬不足が甚だしいし。

遊馬師、ケチの小咄から『味噌蔵』に。
ケチな旦那が結婚して「あったまりのかったまり」が産まれるので里へ帰し、出産祝いで出かけていく、というのが本来の流れなのだが、今日はそこらへんをバッサリカットして単に親類の婚礼で出かけるというものに。この形は初めて聴いた。
宴会の場面に多くの時間が使われ、「てぃーやてぃーやてぃーやてぃーやいささかりんりん!」と楽しそう。
「しまった、味噌蔵まで火が回った」で終わらず、さらにケチの小咄をつけた形に。

遊三師、声のハリもあり85歳とはとても思えない。遊七さんが「大大師匠がいるのはうちの一門くらい」といっていたが。
寄席でも聞くおなじみのマクラから『火焔太鼓』に。
遊三師の年齢だと志ん生志ん朝から教わったのかとも思ってしまうが、もちろん正確なところはわからない。でもだいぶ古今亭に近い感じ。

仲入り時の影ナレがどうやら遊馬師で客席の笑いを誘う。

圓雀師、「お客様からパンケーキ? をおみやげに頂きまして」。パウンドケーキかな。「みんなで食べようと開けたんですが、その材料を遊馬ちゃんがじっと見て、アルコールの文字があると『これは食べられません』って。昔あれだけ飲んでたのに、さっき高座であんなにワアワアやってたのにねえ」。そこまで断ってるんだ。大変だなあ。
「秋らしい噺を」と言われて『茄子娘』に入ったので少し驚く。『茄子娘』って夏の噺じゃないの? と思っていたが、秋茄子とかもあるから秋でもあるのか。
ほぼほぼ入船亭でしか聴かないこの噺、やっぱりちょっと変化している。茄子の精との一夜の場面で、茄子の精に「よいのか」と確認したり。どうもその一言が入ってしまうとまだ主人この宋全に理性が残っており、つい思い余って女犯の戒を破ってしまった感が下がるような気がする。

遊雀師、「なーにが『親がナスとも子は育つ』だよ、くっだらねえ……。でもこのくだらなさが落語なのよ」と笑う。
『包丁』はネタ出し。マクラもそこそこに噺へ入っていく。
一文無しの寅んべえ、計画を打ち明けられても「それはよくねえ」と乗り気ではないもののの、一文無しの弱みでイヤイヤやらされている感がよく出ている。
久次の家に上がり込んで酒を飲み始め、女房にちょっかいを出しながらもまったく相手にされていない様子がおかしい。
計画を明かされて憤る女房に気圧されて「俺に言われても……」とタジタジになる様子や、「私を女房にしてくれるかい」と持ちかけられて一瞬でシラフに戻るのがおかしい。

終演後、遊三師を除いて全員で送り出し。遊馬師と久しぶりに言葉を交わす。
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第15回 不二庵落語会 入船亭扇橋独演会 [落語]

第15回 不二庵落語会 入船亭扇橋独演会
於:阿佐ヶ谷 KTヴィラージュ阿佐ヶ谷101号室

入船亭扇橋『不孝者』『御神酒徳利』

マンションの一室で開かれる落語会。
バイクを停めるところはないということなので、時間に余裕を持っていった……はずなのになあ……。
久しぶりに開演時間を間違えた。
オートロックのマンションのため、入り口の前に主催者が待っていた。もうみんな入ったのかな? なんて呑気なことを思っていたら、もうすでに一席めの『あくび指南』のあくびの稽古に入っているところだった。マジかー……。というか主催者の方もいつくるか分からない俺のことを外で待ってたのか。それは悪いことをしてしまったなあ……。

『あくび指南』で50分近く経ってるということはだいぶ長くマクラを話してたんだろうな。
「もう一席やってからお仲入りにします。噺の席数だけは師匠に勝たないと」と言っていたので、扇辰師はこの会を二席で終わった、ということをマクラで話していたのだろう。
真打昇進してから1年経つが、この1年で三人全員が寄席でトリを取ることができたという。小燕枝師も池袋の下席でトリなんだよね。「同時に昇進した人が全員トリを取るまでの期間というのは、抜擢やひとり真打を除けば我々はだいぶ短い。もしかしたら最速なんじゃないか」とのこと。コンスタントにトリを取れる人なんて一握りしかいないわけで、披露目以来ないなんて人もそこそこいるはず。それが全員ちゃんと寄席に出番があってトリも取れるんだから当たり年だったんだろうなあ。
「最近はお芝居にも出させていただくんですけど、舞台の上で他人が話してるのってイライラするんですよ。噺家は自分ひとり。それに動きながらセリフを言わなきゃならないってのも大変なんですね。落語だったら上半身の動きだけ……下半身動かす人もいますけど。……なんか……最終的に私舞台の上で上下切ってるかもしれません。それに舞台ってあーしたらこう動いて、こう動いたらこの小道具をこっちに移動して……っていう段取りや準備がやたら多い。落語なんて当日の高座に上がってもなにやるか決めてないんですから。道具だって手拭いをどこに置こうか自由ですし……」とどうしても落語と比較してしまうようだ。
落語を知ってもらうために『笑点』という番組があり、そこに出ていた三平師に対して「あの方は落語の若旦那ですから」と若旦那噺の『不孝者』に。
別れた芸者の欣也に「今の旦那はどんな男なんだ」と尋ねるのが結構ネチっこい感じで、それが未練を感じさせる。または逆に今の旦那のことを聞いてすっぱり諦めようという荒療治なのかもしれない。

仲入りを挟んでもう一席。「運のいい人と悪い人というのがいて……」と『御神酒徳利』に。結構大きめのネタを三席掛けるとは。つくづく遅刻がもったいない。
主人公の善六さんは馬喰町の旅籠をまとめている宿屋の二番番頭だというのにかなり扱いが軽い。日本一の鴻池の支配人が泊まるようなところってことは現代で言えば帝国ホテルとか東京ステーションホテルとか? そんな宿屋の二番番頭に正直さだけでのし上がったのはすごいというか。

次回は天どん師が決まっているらしい。次回は遅刻しないようにしないとなあ……。
タグ:入船亭扇橋
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けんこう一番!第二十六回三遊亭兼好独演会 [落語]

けんこう一番!第二十六回三遊亭兼好独演会
於:春日 文京シビックホール

三遊亭兼好『黄金の大黒』
三遊亭けろよん『間抜け泥』
三遊亭兼好『目黒の秋刀魚』
江戸家猫八 動物ものまね
三遊亭兼好『茶の湯』

国立演芸場から文京シビックホールへ会場が変更になる。会社からも家からも微妙に行きづらいんだよなあ……。今日もまた会社を抜け出そうという間際にややめんどくさいメールがくる。退社前にやめてください。見なかったことにして会社を出る。明日の俺頑張れ。

兼好師の一席め、「会場が変わりまして……。でもまあこっちの方がいろいろ便利なんじゃないですか。国立演芸場もいいんですが、終演後にちょっとどこか行こうかとなっても行くところがない。中華とインドカレーくらい。国立なんだからせめて和食が欲しかったですね」。なんもなかったからなあ。
「ここは文京区なのに野球場があって馬券売り場があって遊園地もある。笑点の収録もしているという、文京区なのにガラが悪い、というのがいいですね」。巨人ファンはおとなしいですよ。他と比べれば。
「最近は明るい話題がなくて……。藤井くんくらいじゃないですか。ロシアもイスラエルも、戦争は将棋で決めればいいんですよ」。暴力はイヤだねえ。「そうしたら日本には藤井くんがいるんで、中国くらいは取れるんじゃないですか?」とニヤリ。いります?
「普通あれだけ強いと憎まれ役になるんですが、藤井くんはそうならなそうですもんね。謙虚ですし。将棋は棋士同士が切磋琢磨しているというのがいいですね。噺家なんて足の引っ張りあいしかしない。噺家がそうなんだから噺に出てくる登場人物も同じで、『みんなで頑張ってこの裏長屋から出ていこう』なんて連中は出てこない」とずいぶんアレな住人が揃っている『黄金の大黒』に。
最近若手が兼好師から教わったんだろうなーというのをよく聴くが、兼好師自身のは3年近くご無沙汰だった。
この噺に限らないんだけど、たくさんの人物が出てくる噺だと発言をしようとして「ハイッ」といちいち挙手するのがおかしい。手を挙げようかどうか逡巡するような素振りを見せるのも楽しい。
「承りますれば」が言えない金ちゃんが、勢いあまって「〜スミダ!」と韓国語になるのは初めて聴いたかも。
大家の子に手を焼く鉄さんが、「何をしや……してくれるのかなこのクソガ……坊ちゃんは……」と本音と建前が入り混じる顔と口調のグラデーションが素晴らしい。さすがにこれが再現できてる若手はまだ見たことがない。

けろよんさん、堅実だねえ。
好二郎さんもだったけど、さらに上をいく堅実っぷりな気がする。

兼好師の二席め、「海上保安庁がどこかの人が船で酒を飲んで怒られたそうですけど、非番だったらいいんじゃないんですか。あと釣りをして怒られたとか……。いざというときは食料にもなるんだしいいと思うんですけどねえ」。そのニュースは知らなかったけど、非番なら良さそうなもんだけど。
「最近は温暖化で魚が取れなくてサンマもすっかり高級魚になってしまって……。『目黒の秋刀魚』という噺は、『何にもない田舎で、世間知らずの殿様が下魚のサンマを食べる』というのが面白いんですよ。それが今じゃ目黒は高級住宅街でサンマも高級魚。若い人には『タワマンで高級魚を食べるなんて当たり前じゃないんですか?』なんてまるで話が通じなくてやりづらいんですよ」という愚痴からホントにそのまま『目黒の秋刀魚』に。ここまであらすじとか話したんだからまさか『目黒の秋刀魚』じゃないだろ、『権助魚』とかかな? という浅はかな落語ファンの思惑を真正面からブチ抜くこの潔さよ。そらあ最近ごくごく短くなった秋、やるなら今しかないもんなあ。
この噺の殿様がこれまでどれだけ甘やかされて育てられたかというエピソードが差し挟まれており、いかにもワガママな子どもっぽい殿様がかわいい。そのガキっぽい殿様を煽る家来も家来で面白い。

猫八先生、和装姿で高座の座布団の上に座る。春の襲名興行から始めたスタイルだそうで、見るのは初めて。襲名興行、1回くらいは行っておくんだったなあ。
黒紋付の羽織の紋は猫のイラストのようだ。
「このスタイルだといつもより理屈っぽいことをいいたくなる。たとえは落語の『つる』、『オスの首長鳥が"つー"と飛んできて浜辺の松の枝にポイととまった』とありますが、……鶴はあの足では枝にはとまれないのです!」。…………あーーー! あーーーー! 言われてみれば確かに……! うわー気づかなかったーーー!
「となるとどこかで勘違いがあったんでしょう。それで私は調べました。そしたら鶴の仲間で1種類だけ枝にとまれるのがいたんです! その鶴がいるのは……」とこれ以上は猫八先生の高座で当たることをお楽しみに。
最後はいつものようにフクロテナガザルの「両足のふくらはぎが同時に攣ったオジサンの声」で〆るが、ここでももう一段階オチを加える。

兼好師の三席め、「猫八先生はさすがですね。すでに『あれ、前の名前なんだったっけ』と思うほど『猫八』の名前に馴染んでいる。まあ三席めは『つる』をやろうと思っていたのに、それを潰されてしまったんですが……」って三席めでさすがに『つる』はないでしょうが。
「動物は喋れないので、その分『敵意はない』とか『縄張りから出ていけ』とかの声の出し方などの作法が決まっている。作法というのは覚えるまでが大変ですが、一度覚えてしまえばあとは考えなくてもいいのでラクなんだそうで」と作法の塊である茶の湯の噺に。
小僧の定吉が大旦那にも臆せず「え、大旦那が茶の湯を知らないはずないですよね、子どもである蔵前の旦那さんが知ってるのに」などとガンガン詰めてくるのが面白い兼好師の『茶の湯』だが、その定吉にトンデモな茶の湯を飲ませ、悶え苦しむ様子を見てニヤリと腹黒い笑みを抑えきれないご隠居がたまらない。この表情を見るだけでカネを払う価値があります。いやマジでマジで。
この表情もそうだが、初めての点茶で椋の皮を入れたときのご隠居の驚きの表情が素晴らしい。何も言わないのに、ただ目を見はる仕草だけでこれだけ面白いというのはなかなかないんじゃなかろうか。

あー……明日の仕事やだなあ。明日の俺に今から同情するし、気が重いなあ。こんなに面白い噺聴いたのにね。
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第十一回障害者スポーツ文化支援 ラポール寄席 [落語]

第十一回障害者スポーツ文化支援 ラポール寄席
於:新横浜 横浜ラポール

三遊亭けろよん『浮世床(本)』
三遊亭兼矢『桃太郎』
三遊亭好二郎『天狗裁き』
中喜利
三遊亭兼太郎『相撲風景』
三遊亭兼好『替り目』

二日連続でちょい遠出。
結構な大雨だったのでさすがに今日は電車で。
朝テレビを見てたらマラソンをやっていて、折り返し地点にマンホールがあるらしく、選手が何人か転倒していた。以前小雨の日に同じくマンホールで滑ってバイクでこけたことがあるので、雨の日はバイクには乗りません。

今日は弟子が勢揃いということだったのだが、昨日体調を崩したげんきさんはさすがに欠席。5人揃ったところは見たことがないので残念だが仕方がない。

けろよんさん、本を読んでくれと頼まれた男が「咳するな」「まばたきをするな」というのに紛れて「途中で帰るな。前座だからって席を立たれると傷つくんだ」と入れるのがおかしい。
「ケータイは切れ」と挟むのは上手い。前座が『浮世床』やるときはみんな入れればいいのにと思ったくらい自然だった。
本の途中でオチをつけてサゲる。この形は初めて聴いた。

兼矢さん、なんというかけろよんさんよりもハラハラしてしまうのは何故だ。まあそれが彼のいいところ(?)でもある。気がする。
今どきの姿として語られる2回めの桃太郎はだいぶアレンジがされている。「アタイは瞑想をしているんだ」とか「おとっつぁん『面白え話』とかハードルを上げて大丈夫か」とか。
というか多分兼好師に習ったんじゃないんだろうな。なんかそんなところもハラハラを加速させるが、それもスパイス。

好二郎さん、「人間、生きている⅓の時間は寝ている。……ということは前半の3人の弟子の高座のうち誰かのところで寝ているということに……」と寝ることの大切さを説いて『天狗裁き』に。好二郎さんでは初めてか。
時間が足りないのか、やや急ぎめ? 間を取らないてサラサラっと流れ、ちょっともったいないなあと感じたところもチラホラ。上手いんだけどね。

兼太郎さんが司会で弟弟子3人が回答者の中喜利。けろよんさんは初挑戦だという。
高座に4人座るとみちみち。これげんきさんがいたらどうなってたんだろ。
一問めは山号寺号で二問めは謎かけ。回答者としては筆頭の好二郎が頑張ってまとめようとし、兼矢さんは割と自由にやってる感じ。
けろよんさんは割といっぱいいっぱい? 落語とは勝手が違うようで。
兼矢さんか「いいのができました」とか割と自分でハードルを上げ、周りから「大丈夫か?」と心配されるものの結構キレイに答える。

兼太郎さんは相撲漫談。相撲の噺に入るのかと思いきやそのままマクラで終わりという感じ。前もあったけど、これはなんか肩透かし食った感じで、なんか若干もやっとするのよ。寄席ならそんなもんかと思うんだけど。まあ今日は寄席形式に近いけどね。

兼好師、「初めて弟子の噺をずっと袖で聴いてましたけど……ストレス溜まりますねぇー」と苦笑い。
ストレスの話から健康関連の話へ。小じわのなくし方などのマクラから酒の話題へ移り『替り目』に。
相変わらず酔っ払いの仕草がリアルというか細かくてそれだけで面白い。
兼好師はおかみさんがおでんやに行ってないで「元帳見られちゃった」でサゲなのだが、後半はやらないのかな。
こないだ雲助師の見事な高座を聴いたが、兼好師もすごく合うと思うんだけどなー。

帰りしなに安酒場で軽く引っ掛けながらこれを書く。もうちょっと飲みたいけど、これ以上飲むと酔っ払って家に帰ってから何もできなそうなので、帰ってから改めて飲もう。
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三遊亭兼好 独演会 夜の部 [落語]

三遊亭兼好 独演会 夜の部
於:三鷹市芸術文化センター 星のホール

三遊亭けろよん『金明竹』
三遊亭兼好『三年目』
三増れ紋 曲独楽
三遊亭兼好『佐々木政談』

ファミレスで1時間ばかりで昼席の分のブログを書き上げて会場へ戻る。
我ながらいつもながら長々とした駄文だとは思う。ただ兼好師の会の場合、あまり時間はかからない。というのも兼好師の場合、マクラにもストーリーがあるので、いくつかキーワードさえ覚えておけばそれにつられてそういえばこんなことも言っていた、次にこんな話に繋げていったと思い出す。
逆にマクラで話があっち行ったりこっち行ったり戻ったり戻らなかったりする人や、とにかくいろんな話をダラダラとする人は「何話したっけ?」とかキーワードを覚えていても「なんでこんな流れになったんだっけ?」となって時間がかかったりするのです。まあどうでもいいことでしょうが。

けろよんさん、『金明竹』は初めてかな? 松公が結構腹黒い感じ。なんでそういう印象になるのかはよくわからないけれども。言い立てのところはちゃんと言っている内容を理解して喋ってる感じがする。あくまでも私の感想です。
さすがに上方弁は多少ぎこちなさを感じる。けどまあ俺だって上方弁はまるでわからないけれども。

兼好師の一席め、「今年はずっと暑かったのに急に涼しくなって、本当に秋が短いですね。これだけ温度差があると体調を崩す人も多いのではお気をつけくださいませ。昼席にいた弟子のげんきもさっき急に具合が悪くなったので帰しました」。あらら。明日横浜で一門会があるのに大丈夫かな。「だから全然元気じゃない。……ま、私も『けんこう』といいつつ不健康なので」。……え、「健康」と「元気」っていうつながり? 「さん生(山椒)」と「わさび」みたいな?
「最近はホント春と秋が短くて。だから季節の風物詩もズレてきましたよね。昨日、今年初めて蚊にくわれました。あいつらは暑すぎると活動しませんから、ようやく動き出した。もうね、夏に動けなかったんで、あいつら吸う! すっごい吸う。夏に落語に来られなかった人たちと同じ」。? 「夏は家族に『落語? 命かけてまで聞くもんじゃない!』と説得されて出かけられなかった人たちが秋にようやく落語会にくるんです。……こういう人は寝ます。いつもなら噺が終わっったら起きて拍手をしたりしますが、全然起きない。夏に来られなかった分寝る」。……よくわかりませんが。
「それに伴って人の価値観も変わってきてますね。最近では男の脱毛が流行ってるんですってね。木久蔵アニさん……親子でバカの……もやってるんですって。カネ払って植えるんならまだわかるんですが、カネ払って抜くってね……。毛の話題でいえば、カツラは北朝鮮人とインド人が髪を売ってるんですってね。で、最近はインドで女性が社会進出してるんで、髪を売る人が少なくなって高騰してるんですって。それで北朝鮮の人が売って外貨を稼いでるらしい。なのでアメリカが北朝鮮に髪を売らないように会談を申し込んだ。それが新聞に書かれて『カツラ米朝』……。これがいいたかっただけなんですけど……」。どこから嘘なのかがわからん。
「昔は髪型を好きに決めることはできなかった。特にボウズは『暑いからボウズにしよう』なんてできない。詫びを入れるとか、亭主の菩提を弔うとか、かなりの理由がないとできなかった。それも大家さんから許可証を貰うなどしないとできなかった」そうで。『大山詣り』かとも思ったが『三年目』に。『三年目』は4年振り。あまり他の噺家さんでも聞かない。
「お前が死んでも後添えは持たない」と旦那に宣言されて「すっごい嬉しい」とニヤける女房が「……でも、本所のおじさんはしつこい。あの人に説得されたら断れないのではないか」と険しい顔をするそのコントラストが楽しい。
そのしつこい本所のおじさんに押し切られて後添えを持つのだが、婚礼当日に女房の幽霊を待っている旦那が後添えのおかみさんに「もう寝なさい」といっても「女房が旦那様より先に寝るわけにはまいりません」と頑張る。「……話が外れるんですが、昔はそうだったんですってね。今はそんなことはほとん
どない」と夫が遅く帰ってきたときの妻の対応を4パターンを挙げる。「ひとつは起きて待って小言を言う。次に待たずに寝てしまう。あとは寝ていると見せかけて寝床に入ると『どこ行ってたの』と脅かす。一番いいのは寝たふりをしていて、なにかあったら起きて介抱してくれるというパターンですが、……残念ながら1972年に絶滅しました」。
ようやく幽霊となって出てきた女房に、「恨むなら本所のおじさんのところへ出ればいいじゃないか。……出てきた? アワ吹いて倒れた?」というのが細かくて楽しい。

れ紋姐さんは先ほどと独楽回し自体は同じなのだが、漫談(?)は結構変わっていた。まあ回さない回さない。

兼好師の二席め、「面白い姐さんですね……」とれ紋姐さんについて触れると舞台袖かられ紋姐さんが登場。舞台で使用したハロウィンの帽子とマントを身に着け、消毒液を噴霧しながら高座の後ろをウロウロ。「……いいから帰りなさい」と兼好師が苦笑い。「あんな姐さんですけど、……」と話すとまた出てくる。
「最近の子どもたちが『将来なりたいもの』が変わってるみたいで、YouTuberとかが上位なんですってね。大谷くんの頑張りで野球選手が盛り返したり、藤井くんのお陰で将棋棋士なんかも出てきているらしいですが、最近は『総理大臣になりたい』って子がいないらしいですね。まあ民主主義ってそうなんですよ。皆さんの周りで優秀な人ってどれくらいいました? せいぜい1~2割でしょ。普通の人が3割くらい。後はおバカなんです。その中から選ばれる人たちですからたいしたことないんです。そこからさらに選ばれていくんで、バカが濃縮されていくんでしょうかね……。岸田さんもね、なんか面白くないんですよ。麻生さんとか森さんみたいにどこかおちょくれるところがある人は面白いんですけど、岸田さんは落語にもならない」。
憧れの職業のごっこ遊びから『佐々木政談』に。
兼好師のこの噺は佐々木信濃守の部下の三蔵がいいキャラをしていて楽しい。
白吉の父親が常識人で、白吉がなにかとんでもないことを言い出すたびに気絶するのがおかしい。
問答の場面で白吉に与力の悪口を言わせるような問いをしないのも兼好師らしい。

夜はさすがに肌寒い。キッチリと上着を着込むが足のほうが寒い。とはいえ股引にはまだ早いしな……。
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三遊亭兼好 独演会 昼の部 [落語]

三遊亭兼好 独演会 昼の部
於:三鷹市芸術文化センター 星のホール

三遊亭けろよん『転失気』
三遊亭兼好『短命』
三増れ紋 曲独楽
三遊亭兼好『へっつい幽霊』

ちょっと遠いので電車で行くかバイクで行くか少し悩む。今日は昼夜どちらの回も行くのでまーたブログの更新に時間が取られる。電車で行けば少しでも書けるし、行きは本が読める。朝起きたら薄曇りだったので、こんな天気なら電車で行くかーと思ったが、いざ出かける段になって太陽が出て雲が薄くなってきた。
んー、だったらやっぱりバイクかー! と結局バイクで。金木犀の香りがそこかしこからほんのり漂ってくるし、空気は爽やかだし、やっぱり気持ちいい。

けろよんさん、なんかもうどんどん上手くなっていくなあ。前座2年目でしょ?
「んんんんん、え、なに?」というような聞き方が兼好師っぽい。というかやっぱり一門はみんなそういう細かいところが似るよね。

兼好師の一席め、「最近は明るい話題が少なくて……。藤井くんくらいじゃないですか。すごいですよね、八冠ですよ。そもそもプロになること自体がすごいことなのに、さらにその中でタイトルを全部獲ったんですよ。本来他の棋士を目の前にして『このヘボども』っていったっていいくらいの立場ですよ。でも彼は謙虚だからそんなことはしない。名人になった時だったか、記者に『登山でいえばいま何合めですか』って聞かれて『森林限界くらいですかね』って答えたんですよ。そもそも噺家は『森林限界』って言葉すら知らない。ウチの師匠なんて『森林限界はわからないけどお酒なら八合ぐらいいけるな』っていってましたから。普通ならこんなに強かったら悪役というか、『誰が彼を倒すんだ』という楽しみが出てくるんですけど、彼は悪役にならないですからね。なれないというか。半分寝ているラクダみたいな……」。なんかわかる。渡辺明九段とか悪役っぽかったけど。
「そうなるともう悔しいからなんか失敗してほしい。結婚とか……。結婚くらい『九冠は無理だったね』とか言いたい。野球の大谷くんも『あんなボール球に手を出した』とか。でも藤井くんにしても大谷くんにしても、あれだけ謙虚で頭が良くて人が良さそうな人のところには釣り合う人がくるんでしょうね。最近結婚した羽生結弦くんもはおかみさんの情報が全然出なかったんですが、8歳上なんですってね。……あ、私、週刊誌の見出しの情報だけでしゃべってますからホントかは知りません。そしたらウチのマンションの結弦ファンが『だったらアタシでもよかったじゃない』って……。アンタ32歳上でしょ! でも羽生くんの奥さんはすごいお嬢様なんですってね。見出しの情報によれば。やっぱり釣り合う人じゃないと無理なんですよ、朝起きたらきっと3回転して『おはよう』って言ってくるんですよ」とどういう偏見?
夫婦は釣り合うという話題から『短命』に。
何度聞いても八っつぁんの焼香の場面はおかしい。「焼香が終わった後にご遺族に『ご馳走さま』っていうとドカンとウケる」ってのはなんというか平和だなあ。
短命のわけをいろいろと説明して、目をくわっと見開いて「短命だろう」というご隠居と、それを見てポカンとする八っつぁんの表情のコントラストも楽しい。

れ紋先生、10年以上前に初めて見てすっかりファンになったのだが、なんせフリーのためかわら版に名前が出ておらず、追っかけようにもどこに出ているかわからない。今日は5年ぶりに見られて嬉しい。
それにしてもまあしゃべるしゃべる。しゃべってばかりで全然独楽を回さない。曲独楽界のアサダ二世か。
「兼好師匠は羽生くんのことを話してましたけどアタシは宇野昌磨くんの方が好き」とか知りませんがな。

兼好師の二席め、「金がすべての世の中とはいいますが、この前は学校のプールの水を出しっぱなしにしてしまった先生が、校長先生と一緒に給料から半額払うことになったんですって。あとどこかの役所で税金を3千万くらい取りはぐれて、それを担当者が弁償することになったそうです。『ミスしたんだから当然だろ』と思うかもしれませんが……。でもそれだったらいつも思うのは、オリンピックだとか万博だとか、最初は『この予算でやります』っていっていたのに、いつの間にか140億とか上乗せされてるんですよ。そのお金はどこから出てるんですか。そのお金を政治家の先生が出すべきなんじゃないですか」。それは確かに。会場から拍手が起きる。「140億もあったら日本中の学校で水出し放題ですよ」。
「お金に気が残りながら死ぬと幽霊になる」というところから『へっつい幽霊』に。
最初に道具屋に泣きながらへっついを返品しにくるのが上方からの男なのだが、どうしてもその話し方が上方落語かのように聞こえて楽しい。たまさんとかそんな感じ。
へっついから出てきた大金を半額もらっても最初の約束の50銭を忘れない若旦那に、「自分では商いに向いてないといっているが、そういうところが商人なんだ。今からでも親に詫びを入れて家に戻れ」と諭すのが優しさがある。
左官の長兵衛の幽霊は軽く頼りない感じなのだが、幽霊になった理由を話す時だけおどろおどろしくなる。それを熊さんに脅され、「スイマセン、こういう時は重々しく話した方がいいのかと思って!」と言い訳するのもおかしい。

夜席までの間にファミレスに入って急いでここまで書き上げる。Bluetoothキーボード持ってきただけはある。
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和室カフェ 其の三十 [落語]

和室カフェ 其の三十
於:神保町 らくごカフェ

トーク
入船亭扇橋『一目上がり』
立川笑二『すきなひと』
立川笑二『帰り道』
入船亭扇橋『井戸の茶碗』

まずはオープニングトーク。
この会の最大の特徴である「行ってみようやってみよう」が再開され、今回は「リアル脱出ゲーム」。
扇橋師曰く「これまでの中でベスト3に入るくらい楽しかった」そうな。
歌舞伎町に脱出ゲーム専用のビルがあるそうで、ホラー映画をテーマにした脱出ゲームに挑戦したとか。参加者は2〜4人で、参加人数が増えてもそれほど料金に影響ないということで扇橋師がこういうゲームに詳しい緑太さんを、笑二さんは女性枠としてだん子さんを連れてきたという。「初めて会うから、いきなり挨拶されて最初誰だかわからなかった。笑二さんが親戚のオバチャンを連れてきたのかと思った」。
「ホラー仕立てなんでお化け屋敷も合わせたような作りになってるんだけど、私(扇橋師)は怖がりなんでいちいちビックリして『うわぁっ』って声を出しちゃう。だん子さんが一番冷静だった。『あ、ここに数字でてますよ』って」「ほら年齢を重ねると動じなくなるんですよ」などと失礼なこともチラホラ。
結局は最後の引っ掛けにまんまと掛かり、脱出自体は失敗だったそうだ。
朝イチで行って正味1時間くらいだったので、そのまま新宿のボードゲーム専門店へ行き、殺人事件をテーマにした『マーダーミステリー』というゲームも行ってきたという。
「いやー楽しかったなあ」「アニさんずっといってましたね」というくらい楽しかったらしく、お題を出した私(もうお一方いたそうだが)からしたら嬉しい限り。

扇橋師の一席めの『一目上がり』は真打昇進後は初かな。八五郎のキャラがどこまでも軽薄なのがいい。

笑二さんの一席め、友人宅に招いてもらったものの、そこは友人かストーキングしている女性の家で……という開始3分で不穏な空気になる笑二ワールド全開の噺。
これ以上はネタバレになってしまうのでここでは書けないけど、どんどん怖くなっていく。阿刀田高とか道尾秀介のような、日常のはずがいつの間にかおかしな空間にいるようなそんな怖さのある噺。

仲入り後に再びトークコーナーがあり、次回行くところを決める。
開口一番扇橋師が「怖えよ! なんであんな噺を作れるの!?」「いやー、どうしてもラブストーリーになっちゃうんですよねえ……」「ラブストーリーじゃねえよ!」と我々の代弁をしてくれる。
お客から事前に集めて挙がった案をふたりで検討していく。
「今回初めて案の中に『屋形船』がなかったですね」「そもそも噺家は仕事で乗りますからね。しかもろくな思い出がないのですぐ却下される」。
「人間ドックね……アニさん協会で受けさせてくれるんですか?」「そんなことするわけない。会社じゃないんだから」「最大派閥なのに……」「そもそも芸人がそんなもの受けるはずがない。それに嫌でしょ、もしなんか見つかって『ガンでした』とかだったら」。
中には「BASEジャンプ」なんて案も。これTBSの『クレイジージャーニー』で取り上げられてたやつでは? 「なんですか、これ?」とふたりに聞かれ、案を出した人がビルの上からパラシュートをつけて飛び降りるスポーツだと説明する。「そんなのどこでやるんですか?」「日本じゃできない。ドバイとか……」「落語会の企画で行くわけないでしょ!? (発案者)さんがお金全額出してくれるんですか?」「いいよ」「……やめよう『いい』っていわれたら行かなきゃならなくなる」。つーか普通に死人が出るスポーツだから体験でできるはずもなく。
私の出した案は「一蔵師を講師に迎えて競艇体験」。笑二さんはまあまあ興味を示してくれたものの、扇橋師は「俺は連れてかれたことあるもの。もうさ、目ぇバッキバキで怖いんだよ。噺家の目じゃない。今はボートが仕事になっているからいいんだけど。俺あのアニさんに歯向かったことないけど、『噺家としてやっているときはその目はやめなさい』って言ったことがある」そうで。「それに講師に迎えたらこの会に一蔵アニさん呼ばなきゃならないじゃない。そしたらもうあのアニさんの会だよ」と2次審査までも届かず。
結局は市原ぞうの国へ行って象に乗ってくるという案に決まった。これ結構遠いんじゃなかったっけ? でもまあ象にはタイで何度か乗ったことがあるけど、楽しいですよ。象カワイイし。……それ以上になんかあるかなあ!? 多分餌やりとかふれあいとかあるけど、オジサンふたりで行ったら目立ちそうだなあ……。

笑二さんの二席め、「ナンパじゃない」といいつつ、女性に声を掛け続ける男の独り言を延々と。最初はナンパを無視されてるだけかと思ったが、段々と状況がおかしくな方向に。
これ以上はネタバレになってしまうのでここでは書けないけど、どんどん怖くなっていく。阿刀田高とか道尾秀介のような、日常のはずがいつの間にかおかしな空間にいるようなそんな怖さのある噺(2回め)。

扇橋師の二席め、「だから怖えって! さっきの噺は『帰り道』というらしくて、一席めの噺の前日譚というか、世界が繋がってるんですってよ」と情報を提供してくれる。
「私の方はお古いところでお付き合いを願っておきますが」と「麻布の茗荷谷に屑屋でもって……」と『井戸茶』の定番導入に入るとなぜか客席から笑いが起きる。なんでかはわからない。もしかしたら「無事にいつもの落語の世界に帰ってこれた」という安堵の笑いだったのかもしれない。
おそらく扇辰師仕込みのピシッとした端正な世界に戻される。井戸の茶碗を細川のお殿様が三百両で買い取られたあとに「前例にならってお前が百両、わしが百両、千代田氏が百両」と三等分しようとするのは扇橋師でしか聴いたことがない。まあ清兵衛さんは受け取るはずがないんだけど、ちゃんと頭数に入っているのが偉い。
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鳴り物入りの会 雲助・一朝・兼好三人会 [落語]

鳴り物入りの会 雲助・一朝・兼好三人会
於:人形町 日本橋社会教育会館

オープニングトーク
三遊亭たたみ『洒落番頭』
五街道雲助『替り目』
三遊亭兼好『風の神送り』
春風亭一朝『もう半分』

昨日は寄席の後にひとり焼肉。
ふた月に1回くらい「自分お疲れ」てことで自分にご褒美的な。
ひとりで大いに呑んで食っていると、斜め前の席にかなりの巨漢の二人組が。見たところ私と同じくらいの歳周りの上司と若い部下、みたいな感じ。最初のうちは和気藹々と食べていたのだが、途中からなにやら説教タイムのような感じに。注文用のタブレットを手元に置きつつじっと説教を聞く若手。「なんか言えよ」と言われて出てきた言葉が「ライス中で」。
その前まで「焼肉にはライス大盛りでしょ」みたいなことを言っていたので、多分彼なりの遠慮というか反省だったのだろう。

その後にブログを書きつつ録画していたラグビーを見たのでかなり寝るのが遅くなってしまった。
朝猫にご飯をあげて二度寝していたら出かける時間に。

最近のオフィス10の会はトーク必須なのだろうか?
兼好師はともかく、雲助師と一朝師にトークするというイメージがないのだが。
登場してきたお三方、真ん中の椅子を勧める一朝師を固辞して上手側に雲助師が座る。というかひとりだけスリッパだったから目立つのが嫌だったんじゃないかと邪推する。
香盤的に兼好師が司会進行役に。「よりによってトークの嫌いな3人が集まりました」。やっぱりそんな感じですよねえ。
「もはや必要ないでしょうが名前の紹介を……」と雲助師から話すが、オフィス10の会を体調不良で延期したらしく、そのお詫びから。一朝師は「私からは特に連絡事項はございません」とにべもない。
「というわけで今日のトークは沈黙が多くなると思います。それを防ぐためにお客さんから質問を受け付けてまして……」と兼好師が箱をゴソゴソ。「あの、この間を繋いでいただいてもいいんですけど……」とお二方に振るもそっぽを向く重鎮たち。「うん、繋ぐつもりはない、と」とすっかり諦めモードに。
「えー、最初は……コレなにも書いてないですね。次は……コレも質問はなくて演目のリクエストしか書いてないですね。出演者も出演者なら客も客ですよ。無口なお客さんが集まってるようで……」と困惑気味。
ようやく出てきた質問は各師に向けて「継ぎたい名跡は」。……えー、兼好師はともかく、雲助師や一朝師はここまで名前が大きくなって今さらある? 雲助師は「披露目とかしなくていいなら今月は圓生、来月は志ん生みたいに継ぐけどねえ」「月番みたいですね(兼好師)」。一朝師は「ない」「柳朝はもう継いでる人がいますからね。小朝とかどうですか(兼好師)」「いらないよ!」と苦笑い。兼好師は「ウチは圓生と圓楽があるんですが、圓楽がゴタゴタしている。ウチの師匠が勝手なことをマスコミにいってますけど、根拠はないですからね」と釘を刺す。
次は「昨日亡くなった志ん橋師匠との思い出」を雲助師と一朝師に。宙に目線を泳がせつつ雲助師は「うーん。仲は悪くなかったけど改めて思い出といわれるとなあ」。一朝師も「年は向こうが上なんだけど、入門は4年くらい遅かったんだよね」。「小里んちゃんと仲が良かったんだよね。『御神酒徳利』って呼ばれていつも一緒にいた」「頑固でね、悪意固地だった。一度口にしたら絶対に曲げない。小里んちゃんも同じでね。昔、みんなで飲んでたらさん遊師匠、当時の小燕枝師匠が『おい勘弁しろよ』っていってきて。『どうしたんですか』って聞いたら『アイツら"フグが高いか安いか"で喧嘩してるんだよ。食ったこともねえくせに』って」。いいなあ、昭和の噺家だなあ。
最後に「モーニングルーティンはありますか」。雲助師がまた「ない」で済まそうとするところを兼好師が「何かないんですか、必ずコーヒーを飲むとか」「コーヒーきれえだよ」と新しい雲助師情報が入る。ようやく「起きたら目薬をさして腰にバンテリンを塗る。もうジジイだよ」と引き出し、雲助師と一朝師がキャッキャとはしゃぐ。一朝師は「仏壇にお燈明をあげます。ウチは神棚じゃなくて仏教なんだ」だそうで。「それで『いい噺家になれますように』って拝むんだよ」。え、これ以上に!? さすがに兼好師も驚いた様子。「ホントですか!?」「ホントだよ、あとは『兼好のバカが治りますように』とかな」「ああ……ありがとうございます?」。
出番前に袖でなにかやるルーティンはあります? という兼好師の追加の質問に、一朝師は「人」を3回書いて飲むのを今でもやっているのだとか。意外。「一度それを忘れて真ん中くらいまで出て行ったのを引き返したことがある」とか。雲助師は「袖で『イヤだなあ』っていいながらあくびをする。それを一回お客に見られた」そうだ。人間国宝でも出番前はイヤなんだ……。こっちも意外。

雲助師、この三連休で師匠を含めて雲助一門コンプリートだなあ。私的には珍しい。
いきなり寒くなって酒が恋しくなると酒の小咄から『替り目』に。
俥屋に車を勧められるところからおかみさんにコッソリ感謝を伝える場面、うどん屋、新内流しまでフルに。
扇橋師がよく後半までやるが、後半部は結構あっさりめだし、前半部もカットされていることも多いので、最初から最後までフルバージョンで聴いたのは初めてかも。
鳴り物はもちろん新内流しの場面で入る。都々逸や小咄混じりの新内、「景気良くかっぽれをやっつくれぃ!」と座布団の上で上半身だけでかっぽれを踊る。これがまたピシッとしていてカッコいいんだ。いやあいいもんを見た。
それに新内をタップリとやることによってサゲの「あそこはいけません、ちょうど銚子(調子)の替り目です」という言葉にダブルミーニングがあるとわかる。

兼好師、「トークが嫌いなはずなのになんで引き受けたのかと思ったら、雲助師匠が会を延期したから席亭に頭が上がらないだけだった。まあ理由がわかってよかった」。
「この会は『鳴り物入りの会』ということで、私あまり持ってないんで『七段目』にしようと思ってたんです。そしたら『それは午前の会で馬石師匠がやられるので』と断られた。さてどうしようかと考えて、そういえばウチの師匠がたまにやってる『風の神送り』って噺に鳴り物があるなと。最近では演る人が少ないんですが、稽古してて思ったんですけど、演る人が少ないってのは理由があるんです。面白い噺ならみんなやるんです」。兼好師だから大丈夫。
「さっきのモーニングルーティンの話じゃないですけど、私は朝がダメなんです。鼻シュッシュしたり目薬したりといろんなことしなくちゃいけない。なんでしょうかね、病気というのは『病気をするから気が塞ぐ』のか、『気が塞ぐから病気になる』のかわからないですね。例えば昨日のラグビーもずっとテレビで集中して見てて、あ、だから昨日全然稽古してないの、アルゼンチンにされたトライはすごくもったいないんですよ。逆に日本のトライは非常に美しい。それで大差になれば途中で諦めて稽古もするんですけど、最後まで『もしかしたら』と思わせてそれで負けてしまった。すごく悔しくてガッカリする。こういうときに病気になるんです」。なんか途中でしれっと言い訳しなかった?
『風の神送り』は6年以上前に確かに好楽師で聴いていたようだがまったく記憶にない。その時の感想も「面白くないわけじゃないけど面白くもない」みたいなことを書いていた。
先日読んだ小説にたまたま『風の神送り』をモチーフにした話があったのでサゲの意味を理解できてよかった。
風邪が流行っているので人形に風の神を乗り移させてそれを川に流してしまおうという噺で、町内の若い衆が鳴り物に伴って囃し立てると人形がだんだんと動き出すのだが、その動きがさすが。『片棒』のからくり人形ほどの派手さはないが、徐々に動きが大きくなっていくさまなどは見ていて楽しい。

一朝師、「急に寒くなって今さら怪談噺でもねぇだろうって思いますがね。でもこの噺は本来は冬の噺なんですよ。雪が降ってますからね」とのことだがそうだったんだ。これまで酒屋の亭主が追いかけていくシーンは雨の場面だとばかり思っていたのだが、季節に合わせて雨に変えていたのだろうか。
それにしても一朝師にあまり怪談噺のイメージがないので『もう半分』は新鮮。噺のテイストもあるからなのか、それともオープニングトークがあったからなのかは分からないが、今日は「イッチョウケンメイ」は封印し、最初から重々しく。
こういうピカレスク譚はそれこそ雲助師の得意分野かと思ったが、一朝師もさすがのひとこと。あの小さい体でも迫力あるもんなあ。
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池袋演芸場 十月上席 十月八日 夜席 [落語]

池袋演芸場 十月上席 十月八日 夜席
於:池袋演芸場

春風亭貫いち『喧嘩別れ』
三遊亭ごはんつぶ『DJ寿限無』
蜃気楼龍玉『ぞろぞろ』
寒空はだか 唄うスタンダップコメディー
弁財亭和泉『何もしない日曜日』
古今亭駒治『山手線慕情』
風藤松原 漫才
林家彦いち『遥かなるたぬきうどん』
柳家小ゑん『ほっとけない娘』
古今亭志ん五『魚男』
隅田川馬石『鮑のし』
翁家和助・小花 太神楽
三遊亭天どん『折衷案』

昼に行きたい会もあったのだが、ブログが滞っており、そこにさらに落語会へ行くとさすがにいろいろと支障が出そうなので自粛。明日も2つ行く予定だし。
ブログが滞ってるからという理由も本末転倒な気もするが。こんなほとんど誰も知らないようなブログ、何かと戦ってるわけでもなければ主義主張があるわけでなし、まったくもって自己満足以外のなにものでもないので特に続ける理由もないのだが、なんとなくやめるきっかけも失ったというか。

貫いちさん、「普通前座というのは古典しかやってはいけないという寄席の不文律があるんです。しかし天どん師匠の芝居ということと、お席亭のご厚意で前座も新作をやっていいと……。これは前代未聞だそうです!」。
まあごはんつぶさんも前座時代に寄席で新作をやってたような気もするが、この天どん師の芝居は(特に池袋では)前座や色物を含めて何をやってもいいという空気がとても素敵。天どん師は「アイツら俺を舐めてる」とブツクサいうかもしれないが、これが天どん師の大きな魅力だと思う。みんな天どん師に甘えてるわけで、ホントに慕われてなきゃこんなことできないでしょ。

ごはんつぶさんほ昨日に続いて『DJ寿限無』。昨日聴けなかった最初から聴けて嬉しい。
この人は売れるだろうな。多分あと数年後は二ツ目の筆頭となって、抜擢とかもされるかもね。ビジュアルもいいし、売れない要素がない。「見習いの岸くん」時代から聞いてた俺からすればその時は感慨深くなるのだろう(古参ヅラ)。

龍玉師は、まあ、寄席ではこのネタよね、という『ぞろぞろ』。

はだか先生、池袋で聴ける日がこようとは。とはいえ何も変わらずいつものはだか先生のいつものネタを。
これがいいんですよ。タワータワー♪

駒治師、今日は日暮里が勝ち。まあ山手線の上半分に属す池袋だからね。駒治師、「よかった。こないだ大森でこの噺をやったら以外に五反田が勝って、稽古してなかったから全然できなかった」。やっぱりそんなこともあるんだね。

風藤松原、アニソン以外のネタを初めて見たかも。

小ゑん師、以前こみち師で聴いたことのある『ほっとけない娘』を。鎌倉のお寺デートの道順と仏像の名前を滔々と並び立てているところは『黄金餅』のよう。これは鎌倉の観光案内にもなるし、鎌倉市は小ゑん師にお金を払ったほうがいいと思います。

馬石師、甚兵衛さんがお隣からお金を借りる場面もなく、おかみさんがすでに五十銭を借りてきており「ここに五十銭あるからね、これでお祝いの品を買ってきて地主さんから一圓もらうの」というところから。地主さんも鮑を突っ返したりせず、なんというか優しい世界。いかにも馬石師らしい。

天どん師、今日も「この芝居中はろくなことがない」とブツブツ。「8日めあたりがいちばんやる気が出ない」とまあいつも通りの愚痴っぷり。
噺は中華料理屋に食事に来た夫婦がお互いの食べたいものの意見が合わなくて対立するというもの。特に夫のほうが妻の食べたいものに対して「そんなもんウ◯コみたいなもんだよ!」と連呼するという、トリネタでこんなに「う◯こ」を連呼する噺は初めてじゃなかろうか。もうね、ホントね、いい加減にしなさいよ。まったくもってくだらなくって面白い。もう「何が面白い」とかどうでもいいわってなる。
夫婦の言い争っているところに店主が折衷案を提示すると「ナイスセッチュー」と指差すのがまたウザ楽しい。
とにかく聴いた後で四の五の言わずに「ああ面白かった」といえるくだらなさ。落語っていいですね。
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池袋演芸場 十月上席 十月七日 夜席 [落語]

池袋演芸場 十月上席 十月七日 夜席
於:池袋演芸場

三遊亭ごはんつぶ『DJ寿限無』
柳家㐂三郎『徳ちゃん』
ウクレレえいじ ウクレレ漫談
柳家花いち『アニバーサリー』
古今亭志ん五『出目金』
林家正楽 紙切り 相合傘 天どん師匠 パンダ
林家彦いち『つばさ』
柳家小ゑん『ぐつぐつ』
三遊亭わん丈『花魁の野望』
春風亭一之輔『新聞記事』
翁家和助・小花 太神楽
三遊亭天どん『新作(長宗我部元ちこ)』

亀有から大急ぎで池袋へ。途中江北橋通りというところを通らなければならないのだが、これが信号ひとつひとつ今止まっているところが青になったら次の信号が赤になるというクソ仕様。まあスピードを出さないためなんだろうが、かなりイライラする。
急いではみたものの、ごはんつぶさんが始まっていた。

ごはんつぶさん、私が入ったときは通常の『寿限無』でいえば最後の方。だが長い名前をICレコーダーに録音して近所に配るという前提から覆す流れに。しかも途中から早送りをするので「キュルキュル」となり、名前まで「ウチのキュルキュル」となるのがおかしい。さらにそこからターンテーブルまで登場し、寿限無を使ってボイパでラップまで。これは今まで聴いた『寿限無』改作の中でもかなり面白い。

㐂三郎師、花魁の強烈さがパワーアップしており、主人公の噺家を追いかけるときの仕草が大コモドドラゴンみたいな感じになっているのが面白い。

さっきの会でも聴いた彦いち師、一日に2回聴くのは珍しいな。パラレルワールドという考え方がある、と話の流れからさっきと同じ噺かなともちらっと思ったが異なる噺だった。そういや彦いち師はそういう「ちょっと違う世界に迷い込む」という噺が多かったような。3年半振りくらいに聴いた。この世界ではまだ圓丈師が存命なようだ。

小ゑん師のオリジナル『ぐつぐつ』を聴いたのは9年振り。

わん丈さん、「さっき電車を降りたら師匠も一緒の電車だったらしくて。普通だったら挨拶をするんでしょうけど、挨拶しないで後ろを着いて行ってみたんですね。そしたらずっと両手で携帯をいじってるんですよ。あれ、師匠ってもしかしたら女子高生なのかな? って。まあ否定する材料はありませんから、女子高生の可能性はあります」。ないよ。「で、パッと顔を上げて1000円カットの店に入った。あ、これは女子高生ではないな、と。でも混んでたのかすぐに出てきたんですよ。なのでまだ女子高生の可能性はあります」。さっきから何を言ってるんだこの人は。どんな師弟関係なんだ。
大岡越前が吉原にいった記録がない、よっぽど事務所の力が強かったに違いないといいながら、妻として花魁を身請けした噺。このギャル風の元花魁が「お捌きをやってみたーい♡」と言い出し、弱みを握られている大岡越前が渋々やらせるというもの。めちゃくちゃになるのかと思いきや、そこそこ公平なお捌きをしているのがおかしい。

一之輔師、ご隠居の落とし噺に気づかずに悲しみ続けるという型をちょいちょい見るが、その型をやり始めたのは誰なんだろう。私は一之輔師で初めて聴いて腹が捩れるほど笑った。やっぱりこの人は面白い。

天どん師、今回の芝居はいろいろとトラブルがあるそうで、「初日には携帯を忘れました。今日は一之輔くんに『この後なんかあんの』って聞いたら『家にカツオがあるんで帰ります』って。おい先輩が誘ってるんだぞ」といってるところに私服姿の一之輔師が客席に入ってきて「じゃ、帰りますんで」「おいお前カツオがあるから帰るってなんだ!」とじゃれ合う。「アイツ『やっぱり土佐のカツオは厚みが違うんですよ』とか言ってるんですよ。知らねーよバーカ」とまあいずれにしても大したトラブルではないのでは……。
昨日行ったスナックで、常連のオバサンにでかい声で「この店にはイケメンがいねえなあ!」と言われたことなど。「一緒に行った西やんていうのはまあダメなんですよ。てことはですね、『イケメンがいない』ってのはね、僕のことなんですよ。すごく腹が立ちますよね。で、今日はずっとイライラしてして、それを携帯にメモしてたんですよ。で、いい男になるために髪を切ろうと思いまして。それくらいしかいい男になる方法が思いつかなかったんでね。でもいっぱいだったんで入れなかったんですよ。……まさかそれを預かり弟子に尾行されてるとはね」。
噺は地下戦国アイドル長曾我部元ちこが結婚することにショックを受けたファンが、タイムスリップして1週間だけ前に戻り、結婚のきっかけとなったライブ中の怪我を防ごうとするもの。
ステージの途中でデビュー曲『大きいお兄さん』を歌うのだが、これが「大きいお兄さん、上から目線が大好き~♪」などとドルオタをいじる内容となっており、最後に槍を構えて「刺すぞ、刺すぞ、刺すぞ」と凄むのがいかにも天どん師らしくてたまらない。

終演後、表に出ると肌寒い、というかバイクに乗るともはや寒い。2週間前まで半袖短パンでバイク乗れたのに。秋短すぎだろ。
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