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第6回 兼好集 [落語]

第6回 兼好集
於:水天宮前 日本橋劇場

三遊亭けろよん『狸賽』
三遊亭兼好『強情灸』
柳亭市寿『粗忽長屋』
三遊亭兼好『片棒』
三遊亭兼好『佐々木政談』

6時45分とちょっと平日にしては早い開始時間。
この15分がリーマンにはでかい。
定時少し前に周りを気にしつつ会社を出る。いくらフレックスでコアタイム以外は退勤自由とはいえやっぱり気を使うのですよ。
ということで結構ギリギリに到着。

けろよんさん、サゲのキーワードとなる「天神様」とか「梅鉢」についてあらかじめ説明を会話の中に盛り込んだのは親切だが、ちょっと念を押し過ぎてたかな。そういう仕込みはさらっとさりげなく入れていた方がいいと思った。

兼好師の一席め、ようやく落ち着いてきたが毎年この時期は秋のアレルギーがすごくて体調がすぐれないらしい。ただ最近はずっとマスクをしているので、花粉やハウスダストなどのアレルギーはだいぶ抑えられているとか。
それでも寒暖差アレルギーというものがあり、日によってとか朝晩で気温差が激しいと体調不良になるとか。実際にはアレルゲンがあるわけではないのでアレルギーではないそうで、要は交感神経と副交感神経の切り替えがうまくいかないことで体調に異変をきたすのだそうだ。「医者に『どうすればいいんですか?』と聞いたら、『まずは落ち着くことです』と。ん? 私落ち着いてないってこと? 『具体的にどうことですか?』と聞いたら、『感情を揺さぶらないこと』だそうで。……いや無理でしょ。落語やってたら『こんちは! こんちは! ご隠居さんいますか!』『なんだ八っつぁん、まあお上がり』……これだけでも感情はかなり違う。時には『わ、狸!』なんてやらなきゃならない。感情を揺らさないためには私は落語を辞めなけりゃならない」。それは困ります。
少し前に鍼灸医院での仕事があったらしく、本番前に共演の方が鍼や灸をやってもらったらしく、兼好師も顔に鍼を打ってもらったのだとか。「鼻詰まりが良くなるかと思ったら、もっと詰まった」だそうで。あーでも久しぶりに鍼とか行きたいなー。
鍼灸の話から『強情灸』に。
峰の灸の鍼灸師が首を揺らしながら話すのだが、なぜだかこのキャラを見ると当代の柳朝師を思い出す。理由はわかりません。この鍼灸師に向かって「おう、やっつくれい!」と見得を切る所作が鯔背。

市寿さん、好二郎さんとよく会をやっているそうで。
今日は兼好師の会のゲストなので好二郎さんの手拭いを使おうと持ってきたのだが……というマクラで、面白おかしく盛るのはいいんだけど、少し聞いただけで「あ、盛ってんな」とわかるのはちょっと……。
噺の方も別にまずいわけでもないんだけど、かといって上手いというほどでもなく。これからこれから。

兼好師の二席め、圓楽師が亡くなってひと月経つが、8月に会ったときはまだ元気だったのでまだピンときていないという。
「その日私は仕事だったんですが、高座を降りたらけろよんが『師匠……! 圓楽師匠が……お亡くなりになりました』と報告してきて『ええっ』、となった。……あのけろよんは物事に動じないので、そういう報告が非常に上手い。反対に明るい物事を盛り上げられない」。
ここから弟子別の報告シミュレーションをするのだが、これが面白い。
「兼太郎は目をくわっと見開いて、歯茎まで出して涙を流して大袈裟に言うでしょう。かといって本気で悲しんでるわけじゃない。好二郎はナルシストなので溜めるでしょうね。『師匠……』『ん?』『圓楽師匠が……』『えっえっ、何?』『……お亡くなりに……!』みたいな。兼矢は抜けてるんで『誰か死んだみたいですよ』で終わりでしょうね」。本当はあんまり笑っていいテーマでもないんだけど、なんか想像できるだけにすっごい笑ってしまう。
「六代目の圓楽師匠はずっと先のことまでキッチリ決めているような方だったのに、やっぱり自身のことは(終活的なことは)何もやってなかった。やはり自分自身のこととなるとなかなかそうはならないんでしょう」とある意味終活の噺でもある『片棒』に。
兼好師では2年以上開いている。
相変わらずカラクリ人形の仕草が上手い。この間は口がほとんど動かないのもより人形っぽく見える要素なのか。
「弔辞は本来なら友人代表だけど、おとっつぁんは友だちがいない! だから普段いがみあってる大家にやってもらおう。含み笑いで弔辞読むの」と銀次郎演ずる大家が「素食に甘んじ」で顔が歪み「ついに栄養不良により……」で吹き出すところなどは実におかしい。
三男のドライぶりにはさらに磨きがかかり「菜漬の樽は少し小そうございますが、手足は折って塩を入れれば水が出るでしょう。これが『親こうこ』」と自分で言ってしまうのがすごい。

三席め、「日本シリーズはいい試合でしたね。最近は大谷くんや村上くんの活躍もあって、野球人気が盛り返しているらしいですね。やっぱり連日テレビに映ってると子どもに人気が出る。私の子どもの頃はよくテレビでプロレスが流れてましたから。どうでしょう、ここにいる私と同年代の人の半分が4の字固めをかけられて、後の半分はコブラツイストをかけられてたんじゃないですか?」。私は兼好師より少し下の世代なのでブームはそれほどではなかったが、やっぱりコブラツイストはかけられてたなあ。
やっぱり子どもはよく見るものに憧れて人気が出る、と噺に入る。
兼好師の場合、佐々木信濃守のお供についている三蔵がすっとぼけたキャラで、吟味与力でありながら口が軽くて失言の多い粗忽者。生真面目で子どもの遊びでさえ許さない、というタイプのお供もいいが、こういう通常の侍にはないゆるい人物がいるのも兼好師らしい。
そんな三蔵がいるからか、白吉と奉行との問答で「ふたりでも与力」がある程度で身分や金で転ぶ、というような与力の悪口はなし。そういうマイナス要素を減らしているのも兼好師らしい。

会場先行での次回チケットも購入。また18時45分か……。
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真打昇進襲名披露興行 令和四年十月三十日 [落語]

真打昇進襲名披露興行 令和四年十月三十日
於:池袋演芸場

入船亭辰ぢろ『道具屋』
三遊亭わん丈『星野屋』
ホンキートンク 漫才
柳亭市弥 改メ 柳亭小燕枝『棒鱈』
春風亭柳朝『猫の皿』
五明楼玉の輔『つる・改』
ダーク広和 奇術
入船亭扇辰『悋気の独楽』
柳亭市馬『高砂や』
真打昇進襲名披露口上
ロケット団 漫才
春風亭一蔵『風呂敷』
三遊亭圓歌『やかん工事中』
柳家小団治『ぜんざい公社』
林家正楽 紙切り 若駒 三人集 ハロウィン
入船亭小辰 改メ 入船亭扇橋『宿屋の仇討ち』

いよいよ定席の大千穐楽。
今日は混むかなと思いいつもより早めに着いたのにいつもより後ろに並ぶ。みんな早いなぁ。
今日はこれまでの中で一番よくない席になってしまった。とはいえ池袋なんで、端っこでもない限りそんなに変わんないけどね。

わん丈さん、その出番で披露目で『星野屋』!? と思ったが、明日のNHKの新人演芸大賞で掛けるらしい。頑張って。

小燕枝師、「昨日は私がトリだったんですが、芸協の小痴楽師匠と昇也師匠が高座返しをするという……。さらに出囃子を止めてふたりで漫才をしてた。ふたりが引っ込んだ後に改めて高座返ししてましたからね。高座返しの高座返しって意味わかんない。だから今日は私も好きにやらせてもらいます」と『棒鱈』。
小燕枝師のはお国自慢の唄が『クイカイマニマニ』とかの民族音楽なので、まあ悪ふざけっちゃあ悪ふざけ。とりあえず今日でひと区切りなのではっちゃけたか。さらに『ユポイヤイヤエーヤ』とか『マサビリビリ』も初披露。ボーイスカウトのキャンプファイヤーのときの唄ですな。客席も大盛り上がり。
さらに料理も棒鱈ではなく、南米の胡椒を使ったもの。さすがにそれは覚えられなかった。

ダーク広和先生、千穐楽だからかいつものTシャツにジャケットではなく、手品師らしいタキシードに。手品もいつものロープマジックではなく、カード。カードを扇のように広げるファンカードをメインに、カードがどんどん出てくるスタンダードマジック。

扇辰師、「昨日は高松で仕事があって、日帰りもできたんですがね……。打ち上げにも出てくれと言われて、こちらも好きなもんですから飲みましてね……。またよく飲むんだ。夜中の2時くらいまで飲みましたかなぁ。で、さっき帰ってきました。なので体調は最悪です」。
定吉が振る舞われるお菓子がまんじゅうではなく甘納豆というのは初めて聴いた。砂糖の一粒一粒まで丁寧に舐める仕草がおかしい。
さらに店に戻った定吉がおかみさんから問い詰められている時の圧がすごい。

市馬師は入れ事もない本寸法の『高砂や』。まあ何が「本寸法」なのかよくわかっていないんだけど。やっぱりノドがいいとこの噺は映えますなあ。

仲入りでTシャツがXL2枚だけ残っているということだったので初めて1枚買う。ピンクなあ。まあ好きな色でもあるし、猫の毛が目立たなくていいか。その後無事完売したとのこと。Tシャツが完売したのは初めてだそうだ。

口上はなんと三人集が勢揃い。
大初日に続き大千穐楽に三人とも上がるとは。
玉の輔師が司会で、上手から市馬師、扇辰師、小燕枝師、扇橋師、一蔵師。残念ながら一朝師は不在。
おそらく急遽上がることになったんだろう、玉の輔師の口上も「3人は実はそんなに仲が良くない。グッズの制作費で揉めてました。……えー、適当なことを言っています」とやや困り気味。
扇辰師も「先程も申し上げました通り体調不良です。いろいろ言うことも考えてきたんですが……台なしです!」だそう。いつものように「ネタによってはアタシよりもいんじゃねえかと……」といっていたところで今日は市馬師がウンウンとうなずく。
定席の最後だからか、新真打たちも市馬師から「お前らもなんか言え」と特別なはからいを。一蔵師、小燕枝師、扇橋師とそれぞれ今日までの感謝と仲間への思い、これからの意気込みを熱く語る。なにこれなんかやたら感動的で泣きそうなんですけど。
さらに三本締めでも「お前らも締めてヨシ」と祝われる立場ながら全員で三本締め。何から何まで特別な口上でした。

一蔵師、異例ずくめの口上に「ちょっと泣きそうになりました」だったそうだ。
「今日はね、常滑でダービーの決勝戦があるんですよ。一号艇が〇〇で、二号艇は✕✕、三号艇が☆☆で、……」と話すがもちろんまったくわからない。「その出走がちょうど扇橋が上がる頃なんですよ。池袋は地下なんで電波の入りが弱くて動画が見られない。なのでトリが出るときは袖でみんなで拍手して送り出すんですけど、今日はその時間は上に行って動画見てます」と相変わらず。
「この三人はね、ホントに仲がいいんですよ。……前座の頃は扇橋さんのこと大嫌いでしたけどね。でも二ツ目に上がってからはこんなに気が合うのか! と思うくらい一緒にいて、よく呑みにも行きました。……でもね、落語の世界では先輩が全額払うというしきたりがあるんです。……いままでどれだけ払ってきたか……!」と兄貴エピソードから『風呂敷』に。一蔵師の場合、酔っぱらいの弟分がすべてわかっているというサスペンス風のサゲもあるのだが、さすがにそっちは披露目には向かないと思ったのかスタンダードなサゲに。

小団治師、令和の時代に『ぜんざい公社』かよ! とも思ったのだが、なんだかこれはこれでこの時代錯誤感が面白い。私が子どもの頃よりももうひと昔前の感じで、レトロというか。

正楽師、三人集の注文に「彼らはいつも仲良しなんで、違うのを切ってやろう」と小燕枝扇橋に叱られる一蔵、という構図を。

扇橋師、「ホントに一蔵アニさんも小燕枝アニさんも楽屋にいないんですよ。というか師匠も帰った。『疲れた』っていって。なので師匠よりも上手くできる噺を演ります! ……というのは師匠はやらないからなんですけど」と喜多八師から教わったという『宿屋の仇討ち』を。
途中でちょっと間違えて自分でセルフツッコミを入れたりしながらも、神奈川宿の宿屋の二階で繰り広げられる大騒ぎが楽しく描かれる。
「いはーちー! なんだこのどんちゃん騒ぎは! 『クイカイマニマニ』とはなんだ!」とか「姐さん、踊るからかっぽれ弾いつくれ! イケメンかっぽれじゃねえよ!」とかちょいちょい小燕枝師をいじるのが楽しい。
二階の侍である万事世話九郎の、夜中の激怒ぶりと朝の爽やかさの落差もいい。

幕が閉まった後、高座でも毎回三本締めが行われているのだが、今日はさらに「ばんざーい、ばんざーい!」という声や「胴上げだ!」という声が聞こえてきた。果たして扇橋師は胴上げされたのだろうか。
バイクを駐めていた脇に偶然一蔵師(のかはわからないが)の車が置かれており、どうやらお引越しで忙しい様子。表出たら花輪などもすでに取っ払われており、急いで国立演芸場に向かうようだ。忙しそうだったので一言二言だけ交わすだけにして帰宅。
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第64回三田落語会 夜席 [落語]

第64.回三田落語会 夜席
於:浜松町 文化放送メディアプラスホール

古今亭菊一『出来心』
三遊亭遊雀『初天神』
三遊亭兼好『不孝者』
三遊亭兼好『粗忽の使者』
三遊亭遊雀『淀五郎』

高田馬場から一度戻り、バイクを置いて浜松町へ。
そのままきたかったのだが、会場の周りにバイクを停められる駐輪場が見つからず、あってもすごく高い。そもそも浜松町なら定期があるからわざわざ駐輪場代を払わなくてもねえ。

この会、昼にもさん喬文菊二人会があって、間違ってそっちも買ってしまっていた。うーーん、まあ嫌いってわけじゃないから行ってもいいんだけど、とはいえわざわざ行くほど好きってわけでもない。寄席で入ってたらお得だなあと思う程度。ダメ元で定価でチケット救済サイトに出してみたら速攻で売れた。お陰でチケットぴあのシステム料だけの損害で済んだ。ありがとうチケット購入してくれた人。お陰で天どん師の会に行けました。

さて菊一さん、ガタイも良くて顔もなんだかハーフっぽいイケメン。調べてみたらロシア人とのハーフなんだとか。で、東大院卒。わー。なんでまた。他人がどうこういう問題でもないけど。
とはいえ噺もきっちりしていてちゃんと面白い。

遊雀師の一席め、「この会は初めてお邪魔しました。出たかったんだよ。この会だけだよ、めぼしい会で出てなかったの。これで大体のいい会は出たことになる」とヨイショなんだか本音なのか。
「でもさ、この会に出る人ってみんな本格派。『子どもの頃からずっと落語聞いてました』みたいな人ばっかり。昼に出てた人とか……偉いほうの人じゃないよ!? あとは三三ちゃんとか菊之丞とかさ。俺なんて二十歳の頃に名古屋で友だちに誘われて初めて落語を聞いたんだから。志ん朝仁鶴二人会。初めてにしちゃあいい会に行ってるでしょ?」。いいなあ志ん朝師生で聴いてみたかったなあ。
「でもさ、さっき楽屋で兼好ちゃんに聞いたらアイツは26歳で初めて落語を聞いたんだって。……勝った! で、初めて聞いたのが柳昇師匠だって。なんでうちの協会にこないんだ!」。
初参戦の一席めは得意ネタの『初天神』。飴玉のくだりはなく、団子の攻防をじっくりと。金坊のぐずりぶりがリアルでとにかくおかしい。えずきかたとか。遊雀師は子どもがいないはずなのになんであんなにリアルにできるんだろ。
団子を買った後も蜜をなめながら「久しぶりに食うと旨いな。……俺が買ったんだ。食いたきゃ働け」というのも大人気なくて面白い。

兼好師の一席め、「久しぶりに遊雀師匠の『初天神』を聴きましたが、聴くたびに『うちの子があんなのじゃなくてよかった』と思いますね」と素直な感想。
「私もこの会は久しぶりで。一度終わった後に復活したところでコロナになってね。地方だと『昔落語家になりたかったんだけど諦めて地方に残りました』っていうようなおじさんが始めたような会が多いんですが、そろそろそういう方が高齢になってきた。で、あの年代の人たちって後輩を育てないんですよ。だから会を維持するのが難しくなってきたところにコロナがきて『じゃあこの機会にやめましょうか』ってことが多くて。そんな中を復活した三田落語会は本当にありがたい。なんか執念みたいなものも感じますね、『本格派以外を使ってでも!』っていう……」と遊雀師を引き継ぐ。
「今日は五代目圓楽の命日でお墓参りにも行ってきたんですが……。六代目も亡くなって、我々『圓楽一門会』なのに圓楽がいないという……。しかし五代目は貫禄がありましたね。私が入門したときはまだ47歳でしたよ。それでアレだけの貫禄がありましたからね。……私これで52ちゃい!」とダブルピース。
「圓楽師匠が楽屋に入ってくるだけでピシーっと締まりましたね。六代目もそういうところはありましたが、五代目は特別でしたねえ。……私なんて楽屋へ入って20分くらい経って『いたんですか!?』っていわれる」。昨今はパワハラだなんだといろいろ厳しいが、こういう緊張感があるのはいいことなのかとも思う。
「圓楽の名前を継ぐような人がいないんですよねえ。五代目六代目とテレビであれだけ売れたんで、誰が継ぐにしても『誰!?』ってなるでしょ」と親子関係の噺に。
遊び過ぎの若旦那を、大旦那が飯炊きに扮して迎えにいったら昔のお妾にばったり会うという噺。
これまで聴いてきたパターンでは堅物だとおもっていた旦那に昔お妾がいたという唐突感があったが、今日のは「倅の唄はヘタだね。一度お師匠にちゃんと習ってから芸者に崩し方を教らなきゃ。……あの頃は楽しかったね」のように「昔は遊んでいた」という背景が描かれ、より自然になっていたように思う。こういう細かいディテールが上手いなあと思う。

二席め、マクラに何度も出てくるご母堂の話で健康のためにスクワットを始めたらしい。以前は兼好師の名前が出るまでにも時間がかかっていたらしいが、足を鍛えるとこういうことも改善されるらしい。
そんな「粗忽」なところから『粗忽の使者』に。
私の中で一位二位を争う好きな噺で大変嬉しい。こんな全編楽しい噺ある!?
「弁当! この馬はやけに小さいの」「それはお屋敷の赤犬でございます」「どうりで噛む」とかその絵面を想望するだけでおかしい。
留めっこが治部田治部右衛門と田中三太夫との会話を盗み聞きしてそれを仲間に伝えるという形のため、留めっこと侍たちの場面転換があるのだが、そのグラデーションが本当に上手い。これこそ落語のいいところというかすごいところだよなあ。

遊雀師の二席め、「落語ってすごいね。あんな人いないよ。それであれを『粗忽』で括る?」と至極真っ当なご意見。
「今は歌舞伎もいろいろあって楽しみだね」と芝居の話題に。私はこちらには暗いのでほぼわからなかったが、「團十郎の襲名に中車は出てくるのか」くらい。
おそらく過去一で笑ったのが遊雀師の『蛙茶番』だったので少し期待したのだが、本格的(?)な『淀五郎』に。
淀五郎が自分の芝居を見た親方が袖で渋い顔をされた場面で、「これは辛いよ。自分も経験あるけど、最初は機嫌がいいからニコニコしてるんだけど、5分もすると渋い顔になって、しまいには頭を抱えられて……」って小遊三師はそんなことしないだろうから前の師匠か……。でもまあそういうものなんだろうなあ。
入れ事もなくキッチリキッチリと。爆笑ものだけでなくこういう噺もビシッと聴かせてくれるのもさすが。

さて次回は……昼席が扇辰扇橋、夜席が一之輔一蔵!? なにこの大好物! やべえな通風になるんじゃねえかコレ!? もちろん会場で先行発売してる前売買わなきゃ。……え、現金のみ? えーっと……やべえ昼に天どん師の会に行ったから5千円しか持ってない。最近電子マネーで払うことが多いから現金をあまり持ち歩いてないんだよね。幸い兼好追っかけ仲間がいたので2千円借りて無事購入。この歳になって他人からカネを借りるとは……。
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三遊亭天どん独演会 新作大全 [落語]

三遊亭天どん独演会 新作大全
於:高田馬場 ばはん場

三遊亭ごはんつぶ『わけがあって』
三遊亭天どん『いつもの歌』
三遊亭天どん『横松和平』

隣町に有名なコッペパン屋があり、こないだNHKの『72 hours』にも出ていた。
行ったことはなかったので、じゃあ朝メシに買ってみっかと行ってみる。バイクなら10分もかからないし。
並ぶというのは知ってたが、まあそうはいってもコッペパン、10分〜15分くらいだろ、と思っていた。
……まさか1時間も待つとは……。
というか私は食い物で並ぶというのがまったく理解できないタイプで、ラーメン屋に並んでる人々を冷ややかに見ている方だった。それがコッペパンで並ぶとは……! つーか並んで10分くらい経った時点でピクリとも動かねーな、と思った時点でやめときゃよかった。でも注文も聞かれちゃったからなあ……。
まあね、コロッケパンもメンチパンも揚げたてのコロッケとメンチで確かに美味しいよ。でもまあ……正直コロッケパンとメンチパンなので、「想像したよりもはるかにうめぇ~!」なんてことはなく、「ああ、美味いね」くらいがせいぜい。少なくとももう朝に行くことはないかな。
おかげで整体の予約をキャンセルする羽目に。俺の首肩は限界を迎えているというのに。

ごはんつぶさん、今日は「新作大全」ということで前座も新作ができるのでモチベーションが高いんです、と急にやる気をなくした若手社員に理由を尋ねる噺の『わけがあって』に入る。
やる気をなくしたのは10億が当たったからで、当たった証拠として500円のコンビニのシュークリームを丸呑みにする、という場面があるのだがそのときの表情がおかしい。
そういや明後日から二ツ目じゃなかったっけ。おめでとうございます

天どん師の一席め、「今日は前座一席、僕が新作二席やりますよ。……皆さん『コスパ悪いな』とかお思いでしょうが。今日はね、コンディションいいんですよ。だからもっとやってもいいんですけどね」。ぜひお願いしたいところではありますが。
「落語協会っていう怖い協会がありまして、『5時から末廣亭の代演に出てください』っていうんですよ。で、僕は『自分の会があるから』っていったんですけど、『どこでやってるんですか』『馬場です』『……近いですよね?』っていわれて。いや、その後に野球もあるっていったんですけど、神宮って信濃町なんですよね。『ちょうど真ん中じゃないですか、新宿』っていわれて。チケットも2枚あるんで後輩誘ったら嫌われてるんですかね、誰も捕まらないの。志ん五くんだけが行けますって。『でも俺末廣亭で代演なんだよー』っていったら『それ俺の代演です』って。おいー! お前野球行けるんなら代演しなくてもいいんじゃねえか?」。志ん五師の代演で天どん師ってお得じゃね?(多分そこじゃない)
「僕の上の部屋がリフォームしてるんですよ。朝の9時から始めるんで、最近はドリルの音で目が覚めてたんですがようやく終わったみたいでね、そうするとそれはそれで寂しいというか。慣れって怖いですね」と駅前のロータリーで路上ライブをやってる人に「新曲じゃなくていつもの(聴き慣れた)歌をやってくれ、あのクソみたいな歌」と迫られる噺。
これだけ聞くと客の方がおかしいように思うのだが、ミュージシャンの方もだいぶおかしいのでかなりカオスな感じに。おかしな人たちのおかしなやり取りに振り回される感じが楽しい。

二席め、昔のゲーム『ザナドゥ』のロゴが大量にプリントされた羽織を着て登場。
「去年師匠が亡くなるという嬉しいニュースが……これ笑ってくれないと僕が本当にそう思ってると思われるんで笑ってくださいねー。でー、この羽織はもともと師匠がゲームのメーカーの人からもらったんですよ。ゲームが好きでしたから。師匠は羽織着ないんで、生前から『ください!』っていってたんですけど、ずーっと『お前にはあげない』って。で形見分けでようやくもらってきたんですよ」だそうだ。まあ圓丈師もエピソードを聞く限り今ならパワハラといわれても仕方ない理不尽ぶり。しかし今落語界の一部で騒がれているような事態にならなかったのは、この一門の弟子たちが「まーたなんかいってら」くらいな感じでまともに受け止めてなさそうなのが逆に良かったのかも。やっぱりだいぶ際どいことも「シャレ」ですませる世界では、真面目すぎるのも難しいんだろうなあ。
噺は圓丈師作のもの。夫婦漫才では売れずに解散した夫婦が、リポーターとナレーターになろうとナレーターの練習を繰り返すというもの。有名な立松和平をもじって、「横松和平」と名乗り、立松和平風の語りでナレーションを行う。しかもBGMつき。
最初の2~3ネタは面白いのだが、それ以降はちょっと長いように感じたかな。
しかも特にサゲはなく、普段は納豆巻きを食べる仕草をしているところで幕が閉まっておしまい、というものらしい。ところがばばん場では幕がないので、「えー納豆巻きを食べながら高座を下ります。今日はありがとうございました」といいながら高座を下りていく。シュールだ……。でもまたそこが面白いのが新作ならでは。朴訥とした立松和平風の話し方というのも天どん師と合っているように思う。
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三遊亭白鳥・三遊亭兼好 二人会 [落語]

三遊亭白鳥・三遊亭兼好 二人会
於:渋谷 伝承ホール

三遊亭白鳥・三遊亭兼好 オープニングトーク
三遊亭兼好『熊の皮』
三遊亭白鳥『最後のフライト』
三遊亭白鳥『マキシム・ド・飲ん兵衛』
三遊亭兼好『河童の手』

池袋から渋谷へ。
普段渋谷にはほとんどこないし、きてもバイクが多いので新しくなった渋谷駅の中が全然わからない。新南口の方に出たかったのだが、いつの間にか宮益坂の方の出口に出てしまう。なんか方向感覚がつかめなくなるんだよな……。
幸い時間に余裕はあったので問題はないのだが、これ時間なかったら焦るよなあ。

さて白鳥師と兼好師という異色の組み合わせの二人会。前回の第1回めに兼好師に断りもなく白鳥師が「兼好が僕の噺を演ります!」と宣言し、今日の会が決まったという。
まずはオープニングトークで圓楽師が亡くなったことに触れ、ここ1~2年で六代目圓生の直系がほとんどいなくなってしまったことが話題となる。「鳳楽師匠は元気なの?」という問いに「元気は元気ですよ」と歯切れの悪い兼好師。
「そうなると、系図でいうとアナタが一番近いんですよ」と兼好師に指摘される白鳥師。
「でもマスコミ的には圓生よりも圓楽の方が上だと思ってるんだろ? 圓生って落語界で一番大きい名前なのに」。まあそんな感じですね。
そんな感じで誰が圓生を継ぐのか、というか兼好師と白鳥師で圓生圓朝を継ぐ算段を話す。
「でも俺は落語界のベートーヴェンになろうと思って」と突拍子もないことを言い出す白鳥師に兼好師も目をパチクリ。「なんかベートーヴェンも前は自分で弾いてたんだろ? そんで後から作曲した曲を他の人に演奏してもらってたって聞いて。だから俺も作曲家というか他の人にやってもらおうかと思って。だって最近『豚次』を一之輔や三三がやると満員御礼なのに、俺がやると客が入らないんだよ」だそう。まあ彼らの場合は古典派が新作をやるっていう珍しさがあるからなあ。今日もそうだけど。
一方の兼好師、「原稿とDVDが8月くらいに届いて、それで安心しちゃったんでしょうね。原稿は常に持ち歩いてるんですけど、全然読んでなかった。で、ようやく読んでみたらDVDとぜんぜん違うの。もう全然覚えられなくて。今もまだ覚えてない。だから今日の一席めはだいぶ上の空だと思います」だそう。

というわけで兼好師の一席め、「白鳥アニさんの噺には『本人以外がやったほうが面白い噺』と『本人じゃなきゃ面白くない噺』がある。今日のは後者。原稿読みながらあーしたらいいかな、こうしたらいいかなと全然まとまらない。……なので一席めは寝ててもできる噺を」と『熊の皮』に。
どうやら本当に上の空らしく、今までにないくらいちょいちょい間違えていた。もちろん噺が崩壊するような間違いではないけれど、兼好ニストの耳はごまかされませんよ。

白鳥師の一席め、……正直に言うとよくわからない噺。
ただ、用意してきたギャグがウケなかったりすると「今日の客はどういう客かわからない。味方かと思ったらすぐ敵になる」と頭を抱え、ウケるとすごく嬉しそうにしているのが面白い。

二席め、「もうこの噺は30年くらい前に作って、他の噺家が普通にやっているのでもうほぼ古典といっていいんじゃないか。自分自身ではほとんどやらなくなったけど、久しぶりにやります」と『マキシム・ド・飲ん兵衛』。
玉の輔師が披露目でほとんどこれなので最近は正直昼寝タイムになっているのだが、作者本人で聴くとやっぱりちょっと違う。だいぶ店主のおじいちゃんがヨイヨイ。

兼好師の二席め、「上る前は不安ばかりでしたが、もうここまで上がっちゃうと楽しくなるのね」と覚悟を決めた様子。
最初の一言めは「この噺は古典です。……だって原稿にそう書いてあるんだもの」。
舞台は江戸時代でいわゆる擬古典というような噺。
母親に甘やかされてきた若旦那、愛想を尽かした番頭が店を辞めようとしたときに「あの子は目利きの才能がある、三両で仕入れたものが百両で売れる」と母親が言い張り、ならば実際に仕入れをしてみなさい、というストーリー。
正直本当に古典っぽくてどこまでが白鳥師の原稿で、どこからが兼好師のアレンジかわからない。ただ随所に「原稿にはこんなシリアスな場面はなかった」とか「こういうことをすると古典的に締まる」とかいろんなメタ発言があって兼好師の工夫がうかがえる。
でもホントに古典ぽくまとまってるし、「掘り出し物です」と言われたらすんなり信じるかも。サゲも含蓄があってキレイに落ちるし。

次回もまた今日急遽決まったらしい。また平日だけど一応予約。
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真打昇進襲名披露興行 令和四年十月二十四日 [落語]

真打昇進襲名披露興行 令和四年十月二十四日
於:池袋演芸場

入船亭辰ぢろ『道灌』
柳亭市若『饅頭こわい』
ホンキートンク 漫才
柳亭市弥 改メ 柳亭小燕枝『転失気』
入船亭扇蔵『たらちめ』
林家彦いち『ねっけつ!怪談部』
ダーク広和 奇術
入船亭扇辰『紋三郎稲荷』
柳亭市馬『二人旅』
真打昇進襲名披露口上
ロケット団 漫才
春風亭一蔵『蛙茶番』
三遊亭圓歌 『方言あれこれ』
柳家権太楼『代書屋』
立花家橘之助 浮世節
入船亭小辰 改メ 入船亭扇橋『三井の大黒』

有給。
いろいろやりたいことやらやらなきゃならないことやらが重なってるのに何もできてない。ブログも滞る。なのに落語にはガスガス行く。あー。
月曜の昼席だというのに満席。どうやら主婦層が多めの様子。

小燕枝師、小僧が主役のこの噺、「愛嬌の小燕枝」が掛けるとより無邪気な感じが出ているように思う。盃だと騙すのも悪意というよりもイタズラっぽい感じ。

ダーク広和先生、「代演なのに半分くらい出てますー」とのこと。確かに前回きたときはロケット団の代演で今日はストレート松浦先生の代演。

口上は彦いち師が司会で上座から市馬師、扇辰師、扇橋師。
彦いち師が「落語協会会長の入船亭……」とやってしまい、「会長の入船亭市馬です。……憧れがあります」。
それに対して扇辰師も「柳亭扇辰です。……憧れがあります」と返す。
扇橋師が入門願いに来たときの様子などを話す。

一蔵師、前半部を巻き巻きで納めて後半部へ。
「小燕枝が屁を垂れて私がこれから大変なことになります。扇橋さんはどうなるのか」と謎の圧をかけて着物を捲る。
バカ半の大道具を見せられた棟梁の娘の「おとっちゃんのおとっちゃんよりもおとっちゃん」という一言がおかしい。
噺全体を通してバカ半の大暴れぶりがとにかく楽しい。一蔵師似合うなー。

権太楼師の『代書屋』は面白いと評判を聞いていたので聴けて嬉しい。なんだろ、話が通じないのは同じなのだが、それがさほどイライラしない。

扇橋師、池袋の初日は『ねずみ』だったそうだから、甚五郎噺連続か。てことは次は『竹の水仙』かとも思うが、こないだ一蔵師がトリで掛けてたからな。
珍しくちょいちょい間違える。さすがに疲れが溜まってきたか。池袋が終われば全員出演は一段落なのであと少し頑張ってほしい。
いよいよ前売で購入したチケットもあと1枚。
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浅草演芸ホール 十月中席前半 [落語]

浅草演芸ホール 十月中席前半
於:浅草演芸ホール

昼席
桂蝶の治『勘定板』
三遊亭遊史郎『善光寺由来』
カントリーズ 漫才
三遊亭藍馬『狸札』
神田蘭『歴史講談 樋口一葉の巻』
国分健二 漫談
桂歌若『旅行日記』
立川談幸『初天神』
きょうこ マジック
三遊亭遊三『ぱぴぷ』
京太・ゆめ子 漫才
桂小南『ん廻し』
古今亭寿輔『生徒の作文』
三遊亭遊馬『鏡ヶ池操松影』

夜席
桂伸都『弥次郎』
笑福亭希光『犬の目』
マグナム小林 バイオリン漫談
三遊亭遊子『反対俥』
春風亭昇也『時そば』

落語協会新真打披露目興行が始まって以来の土日で初めてパス。そんで行くのがまた寄席ってちょっとやべえな俺。特に今年は歯止めが効いてない。そらカネなくなるわ。

昼間の浅草、ガラガラかと思ったら結構入ってる。半分くらいは埋まってる感じだが、浅草に来た人がふらっと入ってみた、という感じがすごい。
あとずっとざわざわしてる。噺に入ってもなんかゴソゴソ。
まあしょうがねえかーと半ば諦めてはいたのだが、遊三師のときにすごい大きな声が聞こえる。さすがにうるせーななんだよと思って振り返ってみたら、高座中に電話に出てるジジイがホントにいた! しかも耳が遠いからか、電話の向こうの声もこっちに聞こえるほどデカい! ……いやー、マクラで噺家が話してるのは何度も聴いているが、ホントにいるとは思わなかったわ。

ヒザはボンボンブラザーズのはずなのだが、「なんか来れなくなった」と言って寿輔師が長めに。浅草ゆるいな。
寿輔師のときに子どもたちが何人か入ってくる。
あー、これはアレか、『こども落語』のCDを出してるからか、子どもに遊馬師の人気は高いらしい。5ちゃんの芸協のスレで見たのだが、紙切りで子どもから遊馬師のリクエストが出たのだとか。
なるほど、じゃあ子どもにもウケそうな滑稽噺でもガツっとかましてあげてください、遊馬師匠! と思っていたら5日連続物として掛けているらしく『鏡ヶ池操松陰』! ……いや、それ、そこだけ聴いても正直ワケわかんないし、そもそも面白い噺じゃないし……! ていうか浅草の昼席で連続物とかチャレンジング過ぎない!? ほらー案の定子ども飽きてぐずってるしー! とかそういう天然ぽいのもまた遊馬師らしいか。しかし遊馬師のインスタで「普通にやろうか連続物やろうか迷ってる」というのを見ていたので少し不安はあったのだが、ホントにやるとは。

いやはや浅草はカオスです(褒め言葉)。
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第44回 僕のらくご道 三遊亭天どん独演会 [落語]

第44回 僕のらくご道 三遊亭天どん独演会
於:中野 なかの芸能小劇場

三遊亭天どん『新作(パワハラ)』
三遊亭ごはんつぶ『新作(運命の出会い)』
三遊亭天どん『新作(笑点に出たい)』
三遊亭兼太郎『五目講釈』
三遊亭天どん『三軒長屋』

池袋から中野へ。
そろそろバイクが寒くなってきた。股引とヒートテックが必要な季節が近づいてきましたな。

まずはご挨拶。「もうね、落語どころじゃないんですよ。いま日本シリーズやってるんですよ」。あー。まあ巨人ファンなんで興味ないっす。まあヤクルトは巨人の次に好きだけどさ。「村上くんすごくないですか。22歳で三冠王ですよ!? 村神様って言われてるんですよ!? ……興味ないですか。でもやめませんよ。小川くんてのが投げてるんですけど、全然投げないんですよ! ずっと球持ってるの。早く投げろよ! って思うんですけど」などと本当に止まらない。
「今日はふう丈くんとか呼ぼうかと思ったんですけど都合が合わなくて。……わん丈!? やですよあんなに前向きになりすぎて目がバッキバキになってるヤツ。そしたら、兼好さんとこの兼太郎くんがきてるんで『着物持ってるのか? カバン見せてみろ! オラァ! 持ってるじゃないか!』ってなったんで出てもらいます。僕が休みたいからなんですけどね」。兼太郎さんはちょっと予想外だったな。
自宅のトイレが壊れたために水道屋を読んだら明らかに輩がきたという話も。挨拶が「ウェイ」だったそうで、巨人に移籍する前の中田と同じくらいの金ネックレスをしていたとか。「巨人に移籍する前の中田と同じくらいのしてましたらから」とまた野球の話に。

一席め、天歌さんの騒動をマクラに。
正直他一門のことには口は挟めないそうで。まあそうだろうなあ。
ただ、圓歌師も天歌さんもド天然なのだという。例を挙げると圓歌師が「噺家には体力が必要だ」といい出し、弟子たちを自宅の周りでランニングさせたという。「天歌くんね、真面目なんですよ。彼がなにをしたかというとタイムを測りだした。そんで真面目に走らない他の弟子に腹を立ててましたからね」。……なんというかほんとに言われたことを100%額面通りに受け取ってしまって、他の人なら聞き流すようなことも全部受けてしまったのかなあ。それが積もり積もって今回の騒ぎになってしまったのか。私は部外者だから本当のところは分からないが、内部でどちらも見ていた人の直接的な意見が聴けるのは貴重だ。
他にもいろいろいっていたが、センシティブな話だし「天どん師がこんなことを言っていた」とねじれて伝わってしまってもまずいのでこの程度にしておきます。
で、「これ半年くらい前にたまたま作った噺なんですけど、もう今後できなくなってしまうかもしれないのでやっておきます。師匠が生きてたら作りそうだなあと思いました」と師匠からパワハラを受けていた若手真打が、自分の弟子から訴えられるのを怯えている噺を掛ける。……わータイムリー。というか半年前って最初のアクションがあった頃では……?
弟子に向かって「これはパワハラか?」といろんな行動を聞くのだが、それは多分天どん師が圓丈師にされたことなのでは……というリアリティがある。
「なんで俺はこんなことをされたのに弟子にはやっちゃダメってなってるんだ。それで下からは訴えられるかもしれないって何だそれ!」と憤懣やるかたない様子。笑ってはいたけれど、これは実際結構深刻な話で、弟子を取りたがらなくなってしまう。そうなったら、落語の文化が先細りになってしまう。というか私も天どん師と2歳くらいしか離れてないのだが、我々の世代、いわゆるロストジェネレーションはなんかいつもこういう貧乏くじを引かされているような気がしてならない。
で、結局噺の中で師匠が編み出した解決法はというと、弟子に弟子入り志願するというカオスな構図に。さらに大師匠も登場し、カオスはどんどん加速していく。こういうパラドックス的な噺はいかにも天どん師っぽい。

ごはんつぶさんも新作のネタおろし。
出会いのない男子が、交差点でぶつかったことで恋に落ちるというベタな出会いをするために友人に協力してもらいながら奮闘するというもの。
ごはんつぶてこういう男女ものというか「モテ」関連の噺多いな。
実際にはモテそうなんだけど。

天どん師の二席め、一席めの一門の後年譚? 一席めの時点から20~30年経っており、人間国宝になり100歳を迎えた大師匠が入っている病院か施設にお見舞いに行くところから。
人間国宝にまでなったのに「『笑点』にはいつ出るの?」と言われ続けており、「『笑点』に出たいなあ~」と言い続けるだけという噺なのだが、これが面白い。
天どん師の「別に本当に『笑点』には出たいわけじゃない」という本音ものぞかせつつ、噺家は常に言われ続けてるんだろうなーとうかがえる。

兼太郎さん、「さっきマクラで『カバン見せろ』って言ってましたけど、アレ本当ですからね。今度新作をやる必要があって、勉強させてもらおうと思って挨拶に行ったら開口一番に『着物持ってるのか』って聞かれましたから。『……いえ』『そのカバンはなんだぁ』『……ちょっと登山に』『嘘ぉつけぇ、見せてみろ! あるじゃないか!』って言われまして……」。
兼太郎さんの『五目講釈』は初めてか。伯山のモノマネなども含め、講釈のマネゴトの様子がなかなか上手い。「なかなか」ってのもエラソーで失礼だけど、じゃあスゲー上手いのかといったらそれはそれで講談師に失礼だし。難しい。微妙に力んでいるようないつもの調子が、講釈にはピッタリ合うような気がする。

天どん師の三席め、「兼太郎くんは兼好くんのところの弟子でね」。兼好師を君付けで呼ぶ人って珍しいな。
「兼好くんは僕より入門は後なんですよ。でも圓楽党は昇進が早いんで、彼のほうが先に真打になったんですよ。ま、それはいいんですよ団体が違うから。けどね、いろんな人が出る落語会の場合、僕のほうが先に上がったり、彼のほうが仲入りとか重要な位置にいるんですよ。まあね、それもいいんですよ、正直楽だから。でね、二人会とかやるじゃないですか。そうすると『兼好・天どん二人会』って彼の方の名前が先に出るんですよ。そんなのちょっと調べればわかるじゃないですか。……と僕のケツの穴が小さいことがわかったところで……」と噺に入る。正直どちらのファンでもあるので、そのへんのバランスは微妙なところではあるんだけど、あの口調とあのテンションでいわれるとなおさらおかしい。
『三軒長屋』は好きな噺なのだが、なかなか掛からないので嬉しい。
棟梁の家の二階で若い衆がケンカをしているワチャワチャしているところや、剣術道場で武張ったふたりがドタバタやっているところなど、なんでかわからんけど天どん師がやるだけで面白いんだよなあ。なんだろう、このクセになる独特のテイスト。
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真打昇進襲名披露興行 令和四年十月二十二日 [落語]

真打昇進襲名披露興行 令和四年十月二十二日
於:池袋演芸場

春風亭貫いち『狸札』
春風亭一花『のめる』
ホンキートンク 漫才
入船亭小辰 改メ 入船亭扇橋『金明竹』
春風亭柳朝『一目上がり』
林家彦いち『遥かなるたぬきうどん』
ストレート松浦 ジャグリング
春風亭一朝『鮑のし』
柳亭市馬『藪医者』
真打昇進襲名披露口上
ダーク広和 奇術
柳亭市弥 改メ 柳亭小燕枝『あくび指南』
三遊亭圓歌『やかん』
柳家権太楼『つる』
立花家橘之助 浮世節
春風亭一蔵『竹の水仙』

いよいよ池袋までやってきた。
なんだかんだで都内定席のうち池袋がいちばん馴染みがあるような気がする。
狭さや席の取りづらさはよくわかっているので開演1時間前に並ぶ。その甲斐あって良席が取れた。
予想通り立ち見が出るほどの満席。
そんな中、良席を3席もキープしている人たちがいた。空いてるならともかく、それはマナー違反だろう。遅くしか来られないのであれば、先に来ている人に席を渡すのが当然。結局その席にきたのは1時間も経った後。こういう人にはなりたくないものだ。
立ち見の客でもはあ? ってのがいて、仲入り時に始さんがTシャツを売りに客席にきたときに「立ち見だから買わない。私後期高齢者なのに立ってるのよ」とか言ってる。座りたきゃ早く来い。公共機関でもないのに図々しいこと言ってんなよ。ただ始さんも「あー席は早い者勝ちですんで」と相手にしてなかったのがよかった。
なんというかさすが池袋だなあ。

一花さん、以前聴いたときはどことなくわざとらしかったが、だいぶこなれてきた印象。

ホンキートンクもボケが利さんのときのネタを使わず、新しくなっていた。
弾さんのツッコミが派手に叩くのを多用していて、なんでこのご時世にわざわざそっち行くのかなあと。

扇橋師、そろそろトリ以外で掛ける噺に重複が出るようになってきた。そら50日分のネタを用意するのは無理だろうからなあ。50日1日も休まず、1日一席ずつというのもこれまでにない経験だろう。
松公が上方弁の男に何を言われても「まつこう!」としか答えず、男も松公が何か言おうとすると「松公やな。覚えたよ」と困惑しているのがおかしい。

彦いち師、自身がヒマラヤに行ったときの周りの反応をマクラに。『遥かなるたぬきうどん』、寄席で最後まで聞いたことないんだよな。

一朝師、やはり師の啖呵は聴いていて心地よい。

市馬師の噺は初めて聴いたかも。
今いろいろ大変だろうが頑張ってほしいところ。

口上、彦いち師が司会で上座から市馬師、一朝師、一蔵師。
高座は末廣亭より広そうだが、並ぶ人数は少ない。そのためひとりひとりの口上が長く取られていた。

小燕枝師、市馬師から着物を貰った話をマクラに。この話をすると市馬師が乱入するのがお約束になったようだ。「今日はもう帰ったはずなのに!」。

披露目の期間はだいたいネタが固定されているが、権太楼師の『つる』を聴けたのは嬉しい。

一蔵師、これまでさんざんネタにしていた入門志願のマクラだが、やはり現地で聞くとちょっと違う。気がする。
昨日は扇橋師が『ねずみ』を掛けたそうで、2日連続の甚五郎ネタ。「明日は小燕枝さんですけど、1日で『三井の大黒』覚えてくるかもしれませんよ!」。んなバカな。
口は悪いが気のいい主人と血の気の多い綿貫権十郎とのやりとりがおかしい。一蔵師、この「血の気が多い侍」が似合うな。
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真打昇進襲名披露興行 令和四年十月十六日 [落語]

真打昇進襲名披露興行 令和四年十月十六日
於:浅草演芸ホール

昼席
入船亭扇ぱい『一目上がり』
春風亭一花『金明竹』
玉屋柳勢『やかん』
ジキジキ 漫才
柳亭市弥 改メ 柳亭小燕枝『元犬』
柳亭左龍『宮戸川』
ホームランたにし 漫談
春風亭柳朝『熊の皮』
三遊亭圓歌『やかん工事中』
マギー隆司 奇術
林家彦いち『睨み合い』
鈴々舎馬風 漫談
すず風にゃん子金魚 漫才
春風亭一朝『牛ほめ』
真打昇進襲名披露口上
入船亭小辰 改メ 入船亭扇橋『鋳掛や』
ロケット団 漫才
入船亭扇辰『たらちめ』
五街道雲助『狸賽』
立花家橘之助 浮世節
春風亭一蔵『ちりとてちん』

夜席
春風亭貫いち『からぬけ』
林家あんこ『つる』
春風亭三朝『洒落番頭』
林家正楽 紙切り 相合傘 虫の音 ハロウィン
神田茜『初恋閻魔』
古今亭文菊『浮世床(本)』
江戸家小猫 ものまね
柳家わさび『券売機女房』
林家しん平 漫談

普段週末の家事は土曜にまとめてすることが多いのだが、昨日は一日中出かけていて何もできていない。
なので朝にバタバタと掃除洗濯買い物図書館などを済ましていたら、昨日よりも遅くなってしまった。が、昨日と同じ席に座れた。やっぱり昼席の最初からってのはハードルが高いのかもしれない。

一花さん、毎度の物販のお知らせから。「オヤブンから『Tシャツ売ってこい!』と言われてるので……。みなさんこの件もういいよとお思いかもしれませんが……」。大変だねえと思いながらももうお約束みたいなものだからなあ。
2回めの言い立てでピタッと止まってしまうというハプニングもあり。

柳勢師、「噺家というのは不思議なもので、ひとりが間違えると後の人がつられるように間違える。この後の人たちが間違えないようにするには私にかかっている」と壮大なフラグを立てる。
案の定「八ヶ岳」という言葉を噛んでちょっとつっかえる。普段ならスルーされてしまう程度だろうが、事前にフラグを立てていたものだから観客も見逃さない。
がっくりとうなだれ、「一花のばかーーー!」。

小燕枝師、人間に変わり上総屋と一緒にご隠居のところへ行くところから。
シロの無邪気な感じが小燕枝師の「キラキラ」と相まって明るく楽しい雰囲気になっている。
「もとは居ぬか」というスタンダードなサゲではなくちょっと変わっていた。最近はそっちのほうが多いような気がする。

にゃんこ金魚先生の高座でゴリラのものまね中にミカンを差し出す人が。
ゴリラの金魚先生が受け取り高座で食べる。え、いいの? 浅草ゆるいな。
というか差し出したのが中学生くらいの子で、なんでそのくだり知ってんだと別の意味でも心配になる。余計なお世話ですね。

口上、彦いち師が司会で上座から馬風師、圓歌師、一朝師、一蔵師、扇辰師。
つーか口上に上がるんだ……。正直この人に上がってほしくないなあ。
協会も見ないふりして押し切るつもり? もう今後笑えないよ。
そんないろいろざわついている状態の中で、一蔵師は「披露目だからとかまったく気にしない。早く戻って披露目の手伝いにこい!」と侠気あふれるTweetをしている。
もうこっちが泣きそうになったわ。
私も「なにもこの時期に」と思ったし文句もいったが、本人がこう言うならもう何もいえない。
これぞ親分、もう一生贔屓にする。

扇橋師は得意ネタ。
もう何度も聴いているし、どこが変わったとかではないのだが、やっぱり披露目という特別な空気だからか、なんか違うような気がする。なんだろうこの感じ。なんかこう悪ガキたちもいつもよりはしゃいでるような心持ちになる。たぶん気のせい。
浅草は下の方から見上げる形になるからか、悪ガキ共が一列に並んで「どぅわあぁ~~~」と走ってるときに白目になっていることに初めて気づいた。

雲助師、やっぱり博打をやっているときの仕草などがカッコいい。

橘之助師、いつもよりも長めに。過去の名人の出囃子を聴かせてくれる。黒門町文楽師の『野崎』や五代目小さん師の『序の舞』などを。今ちょうど図書館で寄席囃子のCDを借りて勉強というか聴き分けができるようになりたいと思っていたので嬉しい。ていうか『序の舞』と『勧進帳』と『中の舞』って何が違うんだ。

一蔵師の『ちりとてちん』は2年近くぶり。一時期はよく聴いていたが。
寅さんのヨイショぶりも六さんの偽悪っぷりも一蔵師のキャラによく合っている。
ご隠居に「頼みがある」と言われて「行きます! 懲役!」と「行かねえよ! 懲役!」と返すふたりがおかしい。

浅草は披露目の興行でも入れ替えしないというので夜の部にも残る。

あんこさん、八公が友だちの家でつるの由来を話すとき、「オスがつーっと飛んできて浜辺の松へポイと止まった」って正しくやってない……? 正しいけど間違ってんぞ。しかもやり直しの場面でもまた正しくやってたような?

正楽師匠、「ハロウィン」というお題もジャック・オー・ランタンと魔女、幽霊を切り抜く。後ろのお囃子も『スリラー』だったようで、「これマイケル・ジャクソンじゃない?」と気づいた様子。

文菊師は相変わらずこってりと。
上手いんだけど、ちともたれそう。

しん平師はたらこやタピオカ、浅草風景などをポンポンと歯切れよく繰り出して面白い。

ここらで7時間ほど経過、さすがに腰が痛くて帰宅。
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