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新宿末廣亭8月余一会 夜の部 気の抜けない落語会(特選、個性派集合) [落語]

新宿末廣亭8月余一会 夜の部 気の抜けない落語会(特選、個性派集合)
於:新宿末廣亭

林家十八『つる』
春風亭一蔵『堪忍袋』
古今亭駒治『山手線慕情』
鈴々舎馬るこ『八幡様とシロ』
三遊亭兼好『ちりとてちん』
蝶花楼桃花『ナースコール』
笑福亭たま『憧れの人間国宝』
三笑亭夢丸『附子』かっぽれ
林家きく麿『あるあるデイホーム』

こいつぁ……。
今日はさほど仕事も忙しくなく、多少余裕があるのでなんか夜にいい会がないかと思ったら、こんないい顔付の会があったと当日の朝気づく。
しかも梅屋敷寄席に兼好師出るじゃん! こりゃー午後休取っちゃおっかなー! と浮かれていたところ、会社行ってみたらそこまで暇ではなかった。チッ。
それでも4時過ぎに早上がりするくらいなら問題なさそうだったので周囲に根回しして早く上がる。

前売りは指定席で当日は自由席だという。そんなんどうやるんだろ? と思っていたら、前売りで残った席に「自由席」と書かれた付箋を貼って好きな席に座れということらしい。椅子席は残っていたのは20席足らずだったっぽい。最後列の3列にポツポツと自由席がある程度。桟敷は多少空いてたっぽいが。

一蔵師、鉄板のなな子さんinサイゼリヤのマクラから。細々とちゃんとアップデートされている。
抑揚の強弱を意図的につけようとしているのか、普段聴いているのよりもちょっと誇張されすぎなような……。

駒治師、今日勝ち抜いたのは日暮里駅。お客の投票結果によって噺の展開を変えているのだろうか。でもまあ会場が五反田でもない限り投票結果はあまり変わらなそうではあるが。
多分この噺を聴いたことのない人にはなに言ってるかわからないだろうとは思うけれど。

馬るこ師はいつも聴きたいなーと思っているんだけど、なかなか巡り会わないというか。
いや聴きたいなら積極的に行けよと思いつつ、他の贔屓を優先してしまうというね。好きな噺家ベスト20には必ず入ってるんだけど、ベスト10を追いかけるので手一杯で追っつかないという感じ。小せん師と並んでもっと聴きたいランキング上位なんだけれども。
『元犬』の改作というか、シロと同列で八幡様が出張ってくる噺。
なんつーか八幡様が『勇者ヨシヒコ』シリーズの佐藤二朗の仏っぽい。面白いけどどうしても佐藤二朗。

兼好師、こないだも話していた甲子園の慶応に対するモヤモヤを。場内大爆笑ってことはやっぱりみんな「慶應」で「爽やか」で「エンジョイ!」にモヤモヤしてるんだろうなー。
「でも世の中はこういうみんなに受け入れられる人と受け入れられない人とに分かれる」と世辞の上手い・下手で扱いが変わる噺の『ちりとてちん』に。
相変わらず世辞の上手い金さんの挙動が大袈裟でおかしい。ご隠居の「ああこれは世辞だな、とはっきりわかるのに悪い心持ちがしないのがいい」という言葉通り、金さんの言動によってイヤな気分になるどころかなんだかほのぼのとした心持ちになれるのがとてもいい。こういうところが兼好師を推してやまない所以です。

桃花師、この噺ってもしかしたら女性がやるよりもオッサンがやった方が面白いのかなーと。
白鳥師が池袋で客に激怒されたというパンツネタも女性がやるとなんか中途半端に生々しいというか。

夢丸師、この噺は夢丸師でしか聴いたことがない。
というか他にやっている人はいるのかな? 元は国語の教科書にも載っている有名な狂言だから噺としてはよくできていると思うんだけど。まあその分オチは読めるというところはあるのだけれど。
「去年もこの会でこの位置に顔付けされた。トリのひとつ前は『ヒザ代わり』といって色物の人がつとめる場所なので、普段はやらないんですけど踊りを踊ってみたらすごい空気になった。もう二度と踊らないと心に決めたのに、今年も同じ出番……。てことはまた踊れと言われてるんだと思って踊ります。『気の抜けない落語会』というタイトルの会ですけど、ここが一番気が抜けない時間です!」と着物の裾をまくり赤い股引を見せてかっぽれを。ところでかっぽれのリズムって微妙に2拍で割れないような……。手拍子するとなんか微妙にズレていくように思うんだけど気のせい?

きく麿師、いつものように小林旭を歌う。……のはいいんだけど、すっごい髪が短くなってる……。なんかしくじった? ってくらい。まあ昔とかは知らないのでなんともいえないのだが。
ネタはデイホームで以前は女性利用者からモテモテだったのに、新しい男性利用者にその地位を奪われて捻くれた男性の噺。新しい利用者はピピ竹井という元芸人で、彼に対抗するためにレクリエーションで漫談を披露するというもの。毎回「ヒロコさん、朝メシ食べたっけ? ……食べたんだって!」というツカミからあるある自虐ネタを振る。「冥〜土の土産に聞いていけ〜♪」というブリッジがおかしいが、ストーリー上スベってるという流れなのでネタ自体が微妙。ちょっとよくわからなかったかな……。

久しぶりに電車で新宿にきたのでちょっと呑んで帰る。夜の新宿は久しぶりだが、やっぱりこの街はいいなー。
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第9回 兼好集 [落語]

第9回 兼好集
於:浅草 浅草見番

三遊亭けろよん『つる』
三遊亭兼好『祇園祭』
春風亭㐂いち『しの字嫌い』
三遊亭兼好『お菊の皿』
三遊亭兼好『船徳』

最近家の水道をひねると給湯器も使っていないのにお湯が出てくる。普通にシャワーとして浴びても全然平気なくらい温かい。それだけ地中近くの水道管の水が温められているんだろうなあ。しばらくおいといたら冷たくなるかと思ったら全然冷たくならない。蕎麦とかうどんを茹でても冷水での締めができない。こんなん初めてだなあ。

前回までは日本橋劇場でやっていた兼好集だが、今回は浅草見番。ここに来るのも久しぶりだ。

けろよんさん、やっぱり上手いなあ。前座としては他の協会でもここまで上手いのはなかなかいないのではと思う。聴きやすいし間のとり方もいい。まだ先の話だが、二ツ目になったらどういう進化をするのか興味深い。

兼好師の一席め、浅草見番は前座の頃に好楽師の鞄持ちで着たことはあるが高座に上がるのは初めてだという。「いいですねえ、趣があって。どうやら雲助師匠がここが大好きだそうで、そう考えると国宝に近づけたような気がします。もっとも自転車でこられるからなんだそうですが……。それから萬橘くんもここでやってるそうで。そうなると私もゆくゆくは汚くなるかも……」と相変わらずの萬橘師いじり。
昨日の高校野球に触れ、「なんですかね……。いいんですよ、もちろん素晴らしいことなんですけど、なーんかこうモヤモヤするというか……。ねえ、こう髪の毛サラサラーってして陽にも焼けてなくて、爽やかで、『エンジョイ!』なんて言っちゃって。『練習は一日2時間しかしません!』で実際に優勝までした。彼らはとても素晴らしいんですけど、でもなんかモヤモヤするんです。わかりますよ、高校球児はなにも考えずに『ばっちこーい』とかいってる時代ではないのです。しかし、彼らはここがピークではないのです。だって彼らは野球があろうがなかろうが慶應なんですよ。これから大学に入って、一流企業なんかにも入っちゃって、40代50代で大きなプロジェクトを任されて、そのときに『えっ、部長ってあのとき甲子園で優勝した……?』なんて言われ続けるのです。一方破れた方はどうですか。50代になって近所の居酒屋で『この人甲子園に出たことあるんだよ』って言われるときが人生のピークなわけです。どうですか」。そういわれましても。
「まあでもこれは僻みなんでしょうねえ。自分がそんなに僻みっぽいとは思いませんでしたけど……」と誰しも自分にないものに対して僻みがあるところから『祇園祭』に。確かにこれはお互いがお互いの地にコンプレックスがあるからこその意地の張り合いなのかもしれない。
京の男のネチネチとした話しぶりが凄まじく、それだけで笑いが起きる。これだけで底意地が悪いというのが伝わってくるんだからすごい。なにかいうと最後に怪鳥のような笑い声を出すのだが、これがイヤミな気分を洗い流してくれる。
また嫌味をいうときの一瞬の表情も見事。さらにそれを見て顔をひきつらせる江戸っ子の表情もまた素晴らしい。

㐂いちさん、余計な入れごとなどもなく、きっちりきっちりと堅実に聴かせる。しかしまあこの噺を聴くたびにこの清蔵という男はご主人相手にマウントを取って何がしたいんだろうと思う。雇い主凹ませていいことなんてなんもないのに。

兼好師の二席め、「夏といえば怪談ですが、今年の怪談といえばビッグモーターでしょう。夜な夜な工場の中で社長も預かり知らず靴下に入れたゴルフボールの音がゴーンと響き……、店舗の周りではなぜか街路樹が枯れてゆくという……」。兼好師は今年はほんとビッグモーターざんまいで楽しそう。
マクラの続きとして兼好師の口調のまま『番町皿屋敷』を語り、それが終わると「……とこれが『皿屋敷』だ」とご隠居のセリフとなって噺に入っていくのが兼好師の手法。こうやって入る人は他には知らない。
「じゃあ見に行こう」と連れ立った若い衆の中で、「やめようよ、お菊さん怖いよ。皿数えるんだよ!? 俺もこの間女房に『出かけてくるからお皿洗っといて』って言われてて洗ってたんだよ。そしたら女房のお気に入りの皿を一枚割っちゃって」……と話す男がおり、まあオチはすぐに読める恐妻家のくすぐりが入るのがいかにも兼好師らしい。
初回にお菊さんが現れたときに結構な大きな音で太鼓が鳴り、かなり驚く。というかその後すぐに三味線が入ったのでハメものとわかったが、楽屋でなにか落としたのかと思った。
舞台慣れし始めたお菊さんが、「なぜ恨めしいのに『鐵さん』とさん付けをするのかと言われましたが、それは名前であって敬称ではないのです」とマクラのような小咄をするのがおかしい。それがどんどん大掛かりになって寄席形式になっていくのが楽しい。前座がいて一つ目小僧が上がり(「一つ目小僧なのに階級は二ツ目」)、から傘お化けが太神楽、という隙のない顔付け。
お菊さんが変にアイドルっぽくなっていないのがいい。たまにやりすぎる人がいるけど、これくらいの「普通の酔っぱらい」になっている程度のほうが好き。

三席め、「夏が長くなったので、5月から10月くらいまで夏の話ができる。秋なんてホント短いので『目黒の秋刀魚』なんてやる暇がない。そうすると夏の噺を増やさなければならないんですけど、もう私は今年、夏の噺やり尽くしちゃった」。これは「同じネタは都内近郊ではひと月以上開ける」というマイルールを課している兼好師ならではの悩みだろう。同じ日の違う会で同じ噺を掛けるなんて他の人では珍しくもないし。
「で、手帳を見ていたら『あれ、この噺やってなかったっけ。本来なら最初にやるような噺なのに』っていうのががあったのでそれをやります」と『船徳』に。
若旦那が「船頭になりたい」と親方に直談判するときに「こないだ一緒に吉原に行ったことをおかみさんにバラす」と脅すのがおかしい。それが親方から呼ばれて仲間の悪事をペラペラと話す兄貴分を気取る男の入れ知恵というのがまた。
若旦那の船頭が船を出そうをいうときに、竿をさして踏ん張りながらお尻をプリッと突き出す仕草がこれまた楽しい。「まだもやってるじゃねえか」というツッコミに「おかみさんお願いします、手を汚したくないんで」というセリフに甘ったれで見栄っ張りの若旦那がよく現れているように思う。

次回は内幸町ホールだとか。開演時間は同じなのに、「終演時間が遅くなる」とわざわざ断りを入れてるってことは、なんか大物ゲストとか大掛かりなイベントとかが予定されているのだろうか。
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三遊亭兼矢の色々ひとり会 [落語]

三遊亭兼矢の色々ひとり会
於:中野 なかの芸能小劇場

三遊亭けろよん『狸賽』
三遊亭兼矢『紙屑屋』
三遊亭兼矢『らくだ』

久しぶりの中野の午前の会。……いやこないだも特別公演できたか。とはいえ最近は特に追いかけてる二ツ目さんもいないしな……と思っていたら兼矢さんの会があるじゃないですか。
意外、といったら大変失礼だけど、結構お客が入ってる。半分以上は入ってるんじゃないだろうか。二ツ目二年目の会の初回としたらかなりのいい滑り出しではないだろうか。

幕が開いて『前座の上がり』が鳴り、ん? と思っていたらけろよんさんが登場。
「兼矢アニさんの『色々ひとりの会』ということなんですが……すでにひとりじゃない」。それは思いました。
「『色々』ってなんですかね。私が予想するにポスターにキリンの絵が描いてあったんで、キリンが出るんじゃないかと。まだキリンは楽屋入りしてないようですが、今ごろ上野から電車に乗ってるんじゃないですかね。兼矢アニさんとキリンを楽しみに……」と動物の噺に。
なんだかいつもの兼好師の会のときよりものびのびとやっているように見える。やっぱりすぐ上の兄弟子とだとリラックスできるのだろうか。

兼矢さんの一席め、「けろよんくんとはよく飲みに行くんです。飲んでるときの話題はまあ寄席のワルグチが多いですね。こないだも『金払いが良くて落語がうまくて優しいアニさんはいないもんですかね』っていうんです。……どうやら私はそういう兄弟子ではなかったようです」。圓楽党だとアニさんと呼べる二ツ目少ないけど大丈夫?
「この会を始めるに当たって席亭からなんかやってくれといわれまして……」。あ、これ新しく会を始めるみんなにいってるんだ。「『色々』って私もわかってないんですけど……『ニュースを斬ってくれ』といわれました。私はそんなキャラじゃない」。それこそ兼好師っぽい切り口だけど。
「えーと、最近は積立NISAというものがあるそうで、お客さんに『兼矢さん、積立NISAはやったほうがいいよ。お金に困ってる人は特に』といわれまして。……私『お金に困ってる』なんて言ったことないんですけど……伝わってしまったんですかね……。でもですね、噺家にはいいシステムがあって、『そうですよねアニさん』『アニさん今日の高座最高でした』『アニさんごちそうさまです』っていっておくとお金を出してもらえるという……『積立アニいさん』……こんなんでいいですか。怒ってません?」というような感じの小咄? をいくつか。……微妙にどれもニュースじゃないような……。
『紙屑屋』は私は遭遇率が低くてレアな噺。大師匠の好楽師で何度か聴いた覚えがある。
居候の若旦那が働けと促される場面から『湯屋番』かとも思ったが。居候先のおかみさんのイヤミな感じがおかしい。
しかしこの噺、やる方は大変だろうな。いろいろ都々逸やら覚えるものが多いしテンションの上下も激しいし。

二席め、マクラも振らず大ネタに入る。いつの間にかこんな大きな噺を覚えてたんだなあとしみじみ。なんどもいってるけど俺は親戚のおじさんか。
らくだの兄貴分に脅されて大家のところに行ったときに酒と肴を要求し、怒鳴られてそのまま長屋に帰ってしまった。つまり「死骸のやり場に困っております。こちらに持ってくるついでに死骸にかんかんのうを踊らせてみせます」という脅しなし。まあ単純に仕込み忘れなんがろうけど、完全に逆恨みでいきなりかんかんのうで嫌がらせをしているという形になり、それはそれで兄貴分の理不尽さが際立って面白い。

終演後はお見送りに出ていて、久しぶりに話す。「久しぶりですね」といわれてしまった。ごめんね、基本土日じゃないと行けないのよ。かわら版みても平日が多いんだよなあ。さらに土日祝でもその日に師匠の予定と被っちゃうとそっち行っちゃうしね……。11月23日に2回めが決まっているのだが、兼好師の予定がまだわからないのでちょっと保留。まあ10時からなので被りはしないだろうけど、12時に横浜とかだったらありえそうだしな……。
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人形町噺し問屋 その104 [落語]

人形町噺し問屋 その104
於:人形町 日本橋社会教育会館

三遊亭兼好 ご挨拶
三遊亭げんき『孝行糖』
三遊亭兼好『館林』
檜山うめ吉 粋曲
三遊亭兼好『河童の手』

本来は代休だったのだが仕事か終わらずに結局出身。来週こそは代休の代休を取らなければ。
といいつつせっかく出勤してるのに早めに上がって落語に行くというなんだか本末転倒のような気もするが。

まずはご挨拶。
「雨男の私がついに台風が避けるようになった。この成長を見てもらいたい。しかしこの台風は遅い。自転車くらいの速度なんですって。そしたら楽屋ではいいお爺さんの師匠たちが自転車の話ばかりしてる。『自転車ったって誰が漕ぐかによるよなあ』とか」。そういう話かなあ?
「噺家の楽屋なんてそんなもんで、毎年お盆に横浜でやってる会があって、そこで年に一回木久蔵アニさんに会うんです。……普段普通の落語会では会わないですから……。それで、今木久蔵アニさんが全身脱毛してるんですって。それを聞いた楽屋の全員、皆五十代ですよ、揃って毛の話ばっかり。遊雀師匠なんかは『俺は自分でこう剃ってる』とか、一之輔くんは『私頭はこんなですけど体毛はないんですよ』とか。……ホント不毛な話ばっかり」。上手い。
「今年は花火も復活して、足立区の花火は私の家のすぐ近くなんです。集まるのは三々五々ですけど、終わると皆一斉に北千住に向かって帰る。マンションの上から見てて気持ち悪くなるくらい。どうなんでしょう、2万発の花火らしいですけど、これを7月1日から8月31日まで、毎日あげたらどうですか。1秒1発上げるとして、5分で300発。2か月でちょうど2万発くらいになるでしょう。毎日夜の7時になったら5分間花火を上げる。そしたらあんなに一気に人がこないと思うんですがねえ」。地元民はいいけど、区外からお金は落ちなさそう。……でもあの1日で足立区になんかお金入るのかな。
その他にも大阪に行ったら外国人ばかりだったという話や、兼矢さんと一緒に宮崎に仕事に行ったら、車の運転手がなかなかの強キャラだったという話など。宮崎の運転手の話は落語に出てくる権助そのまんま。悪い人ではないんだろうけど、たぶん横にいたらイラッとするんだろうなあ。それを兼好師のあの口調で語られるから面白いけれど。

げんきさん、聴くたびに持ち時間が長く難しい噺に。もう『孝行糖』まで教わったの!? とはいえこの噺はトントンとテンポよく聴きたいが、まだまだ重さがあってこちらも乗り切れない。まあそこらへんは追々。

兼好師の一席め、「最近は我々噺家はビッグモーターと日大にお世話になりっぱなし。とはいえビッグモーターの店舗前の街路樹を枯らそうとしていたのは我々圓楽党は大きなことを言えない。というのも、五代目の圓楽師匠が立てた若竹という寄席は全然お客が入らなかった。なんでかと思っていたら、駅を出て若竹を見ると看板が街路樹で隠れてるとお客さんに指摘されたんだそうで。激情家の圓楽師匠ですから、ノコギリで街路樹を切ろうとした。さすがに弟子に止められて、『街路樹に虫がいっぱいつくと区が伐採してくれますから、虫を増やしましょう』とアイデアを出された。そうかってんで虫を集めていたら、その間に若竹が潰れちゃった。虫を集める前にお客を集めることを考えたほうがよかった」。ごもっとも。
「日大は定期的に話題を提供してくれますね。林真理子さんは半分は『なんで私が』と思ってるでしょうけど、あとの半分は『いいネタ貰った』と喜んでると思いますよ。これで大学の内幕の小説書いたら売れるでしょうね。先代学長、日大のドンが裏で糸を引いてるって噂もありますし。大河ドラマいけるんじゃないですか。『せごどん』に続いて『日ドン』なんて」と楽しそう。
「上に立つものはいろんなことを想定して、危機管理をしなければならない。幕末の頃は黒船がきたことで庶民にも危機感が生まれたようで、落語に出てくるような熊さんや八つぁんも剣術の道場に通っていたそうで」と『館林』に入る。
「武者修行」を「無茶修行」と発音するときの八つぁんの顔がなぜか目を閉じて鼻の下を伸ばしながらなのがおかしい。
この噺を聴くたびに思うのだが、途中まではよくある知ったかぶりでうまくいかないオウム返しだったのに、最後にいきなりスプラッターホラーになる落差がものすごい。逆『団子坂奇談』というか。

うめ吉姐さんはいつも通り。

兼好師の二席め、唄や踊りにも流行り廃りがあるようで、先ほどうめ吉姐さんが踊った『茄子とかぼちゃ』はあまり踊る人がいなかったという。
噺も同様で、『館林』などは好楽師が前座の頃はやたら流行っていたそうだ。今じゃコンスタントに高座に掛けるのは兼好師と一之輔師くらい? 正楽師が知らなかったくらいだからなあ。
「最近では新作でも『擬古典』というのが流行ってますね。江戸時代が舞台の新作。現代を舞台にすると、携帯なんかも半年で古くなってしまう。舞台が江戸ならそれより古くなることはないですし、ある種のファンタジーなので多少のウソを入れたところで『そうはならないだろう』となりにくい」。先日若手の擬古典の会のゲストに出演し、そこで兼好師も擬古典を一席やったようなのでその噺かとちょっと期待したのだが、さすがに間隔が短すぎてそれはなかった。
「あの白鳥師匠が作った擬古典をやってみようかと……」と『河童の手』に。昨年の白鳥師との二人会で聴いた以来。
冒頭に「この噺は古典です。……そう言えと白鳥師匠の原稿に書いてあった」とわざわざ断るのがおかしい。
甘やかされて育てられた若旦那が、いよいよ愛想を尽かした番頭を引き留めるために『三両の元手で百両の値打ちのあるものを3日の間に仕入れてくる』というミッションに挑むという噺なのだが、そこでさんざん偽物や無価値のものを持ってくる。その中で「これはどうだい」「これは?」「CDだよ、三遊亭白鳥の『柳田格之進』。稽古中のを隠し録りしたもので珍品だろ、本物だよ」「……確かにこれは本物のようですな」「どうだい、これは百両の価値があるだろう」「本物だろうが白鳥の普通の古典にはなんの価値もありません!」というくすぐりがたまらない。
以前に聴いたときも思ったが、この噺はこのまま古典として定着できそうな気がするなあ。こまごまとしたくすぐりに時事ネタや現代ネタを入れることで古臭くもならないし。こういうの聴くとやっぱり白鳥師ってすごいんだなと思う。もちろん兼好師の腕があってのことであるというのも兼好ファンとしては譲れないところではあるけれど。圓朝(圓鳥?)襲名も現実味を帯びてたりして。
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三人集あっさり解散特別公演 第三夜 [落語]

三人集あっさり解散特別公演 第三夜
於:赤坂會館 6階稽古場

オープニングトーク
春風亭一蔵『夏泥』
入船亭扇橋『蒟蒻問答』
柳亭小燕枝『粗忽長屋』
春風亭一蔵『死神』

二ツ目昇進直後の頃からやっていた「新版三人集」というユニットだが、ひとまずは一区切りということで解散とのこと。
3日間あったのだが、本来昨日一昨日は岩手へ行く予定だったのでチケットを取っていなかった。初日は扇橋師と扇辰師の独演会をハシゴしたのでまあいいか、と。
昨日はせめて旅行っぽいことをしたいと思い、高速に乗って茨城の海の見える温泉へ。高速久しぶりに乗った。普段近場への買い物とかしてないけど、たまにはエンジンをぶん回した方がいいのかな。帰ってきたのは夜になったので落語はパス。
なので当初の予定通り最終回のみ。
つったって「新版三人集」という名前がなくなるだけで、同期三人会は今後もやるだろうし……。主催がエムズじゃなくなるだけなので、客の立場からすると「ええっ、最終回!?」って感じじゃないと思う。実際来週は北海道に3人揃って行くらしいし、ばばん場でも三人会あるし。本人たちでさえ「年末には『帰ってきた三人集』とかあるんじゃない? (エムズ社長の)加藤さんならやりかねない」と特別感はあまりない。

まずはオープニングトーク……なのだが小燕枝師がいない。遅刻とのことだが浅草での出番があるらしく、毎日遅刻しているらしい。「いやー、アナタとふたりでトークができるのかと心配だったんですけどなんとかなるもんですね」と一蔵師が扇橋師に向かっていう。「なんでですか、今までだってふたりでトークしたことあるでしょ」と扇橋師はいうが、確かに三人集のトークのときは一蔵師と小燕枝師の後ろにいてたまに話すという印象だったしなあ。
「どうですか最近は。高校野球ですか」と水を向けられた一蔵師、「もうね、この時期は一番舟券買ってない!」と相変わらずハマっている様子。一方扇橋師は野球にまったく興味がないので全然響いてない様子。「じゃあ来年行こう! 一之輔アニさんをエスコートしたようにアナタを連れきましょ」と提案されるも「え~~~~いいですよー……」とまったく乗り気でない。「そもそも甲子園は行ったことありますもん」。高2の頃に母校が甲子園に出場したそうで。「応援は任意だってことだから最初は『行かない』っていってたんですよ。そしたら両親に『そんなことは一生に一度あるかないかなんだから』と諭されて直前に『やっぱり行きます』と担任に言ったんですけど、直前過ぎてバスの座席がなくて他のクラスのバスに乗らされた。しかも私文系クラスだったのに理系クラスのバスで誰も知ってる人がいない。しかも一番後ろの席。そんなの不良の席じゃないですか。で、夜中に出発だったので消灯すると不良たちが後ろの席に集まるんですけど、『コイツ誰?』みたいな感じで囲まれて……」というところで小燕枝師が「スミマセンでしたあ!」と到着。「今ね、扇橋さんのおもしろ漫談のオチ直前なのよ」「あ、そうなんですか」とそのまま客席の座布団席に座り、トークを眺める小燕枝師。スマホを手から落として「お客さん! スマホ落とさないで」「スイマセン! あ、写真撮っていいですか」と迷惑な客になりきる。無事にオチまでたどり着いた後に小燕枝師も交えてトークになる。
つか小燕枝師の着ているTシャツがすごい。
https://www.houyhnhnm.jp/news/379119/?image_page=3

一席めは一蔵師。「小燕枝さんは浅草、扇橋さんと私はいま鈴本で出番を頂いている。この三人集での切磋琢磨がなければそんなことにならなかったと思っています。それにヨイショじゃないですけど三人集のお客様というのはいいお客様でね。ついつい甘えちゃって……」と初日は『たがや』で45分、昨日は『青菜』で1時間やったらしい。なっが。
「私は自他ともに認めるサイゼリヤンですから。この会場で連続で会をやるときは一日はサイゼリヤで打ち上げをしようじゃないかと。昨日も行ってきたんですけど……。でね、私の頼むものは決まってるんです。以前いつものようにオーダーしたら、その店の店長がやってきて『あの、どの店の店長の視察ですか』って聞かれた。それくらい完璧なオーダーなんです」ってそんなオーダーあんの?
噺は昨年の真打披露興行2日め、扇橋師初日に聴いた以来。
泥棒に入られた方の男が最初は弱々しく礼儀正しい感じではあるのだが、どんどん図々しい本性を出していくさまが面白い。泥棒も「俺はそんなに悪いやつじゃないんだ、ホラこれだってニセモノだ」とバネで引っ込むタイプのドスを持っているのがおかしい。

扇橋師、「先ほど一蔵アニさんがサイゼリヤの話をしてましたけど、もうね、ほとんどのもの食べてるんですよ。昨日なんか3人で会計が18000円ですよ。私もサイゼリヤはよく行くほうですけど、家族3人で腹いっぱい食べて5000円行ったことないですよ」。俺もよく行くけど割としっかりめに酔って腹いっぱい食ってだいたい2000円とかだもんなあ。コスパすごすぎるんだサイゼリヤは。
扇橋師の『蒟蒻問答』は二ツ目最後の会で聴いて以来か。
売っぱらってしまった象牙の袈裟輪のかわりに戻す前のお麩がつけられており、それがちょいちょい出てくるのがおかしい。

小燕枝師、浅草の住吉踊りに顔付されており、今日あったことの裏話を聞かせてくれる。橘之助師に諭されるベテラン真打の様子など、聞いて想像するだけで楽しい。
「いまだに『イケメンかっぽれ』やれといわれて……で、『私ももう39ですし、他の若手のイケメンがいるじゃないですか』と断ろうとしたんです。そしたらベテランに『お前は生意気だ』と。『イケメンだといわれたくてもいわれなかったモンの立場も考えろ』といわれました。その言葉に私は求められているうちはずっと踊り続けようと決意しました」だそうで。
『粗忽長屋』はなぜか聞いているうちにそそっかしい兄貴分の言い分を受け入れてしまいそうになる。兄貴分と弟分の、本人たちは切羽詰まっていると思っている、呑気な会話が小燕枝師の雰囲気と合っていて楽しい。

トリは一蔵師。「さすが扇橋さんと小燕枝さんは後輩なので、昨日の仕返しとして長々とやったりしない。昨日なんて今の時間でようやく仲入りくらいでしたから」。どんだけ長くやってたんだろう。座布団席だったら腰が大変なことになってそう。
「この三人集の会は三夜連続とか五夜連続とか多くてキツかった。中でも一番キツかったのが『御神酒徳利』をネタおろしする会。その頃は忙しくて本番5日前からやっととりかかった。その間にもボートの仕事とかもあって、レースの合間に稽古するという……。だからそのとき一緒にいたスポーツ新聞の記者は私のことすごく勉強熱心だと思ったんじゃないですかね。で本番当日の朝までかかってようやく覚えた」。え、それって誰に教わったってことになるんだろう。アゲの稽古とかってしないの? よくわからん。
趣味の博打の話から『死神』へ。死神が登場するときに「アバラが浮き上がるほど痩せて……いない」となり、「死神ってのは痩せてるんじゃねえのか!」というツッコミに「喬太郎! ……歌武蔵! ……一蔵の死神は太ってる」というのがおかしい。
一蔵師の主役の男はとことんクズで、おかみさんが人格者というのが他の人と少し違っている。結局はクズは死に、いい人がそのまま他人を助け続けるという、ちょっとだけいい話というか救いがあるというか。

最後に三人揃ってご挨拶。「最後だっていうのに『死神』ってどうなんですか」「一席めに『殺せー殺せー』っていってて、次が寺の噺、その後に人が死んだ噺で最後が『死ね! 死ね!』って言ってるって……」と見事に縁起の悪いというかそんな噺が揃っていた。
最後は三本締め。
最後はせっかくなのでお見送りに出ていた三人を撮らせてもらう。まあ機会は今後もありそうだけれども。

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RICOH GRII
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入船亭扇辰独演会 〜扇辰落語手帖〜 [落語]

入船亭扇辰独演会 〜扇辰落語手帖〜
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰ぢろ『やかん』
入船亭扇辰『団子坂奇談』
入船亭扇辰『井戸の茶碗』

扇橋師の会に引き続き師匠の会へのハシゴ……というか居残り? 扇橋師の終演から15分くらいしか空いてない。かけもちする人も多いんじゃないだろうか。

辰ぢろさん、「ひと仕事終えた扇橋アニさんがTシャツと短パン姿で袖で見てる……」といったところで「お前いうなよー」と扇橋師が乱入。
辰ぢろさんもだいぶ達者になってきたなー。

この会も特色を出したいということを席亭にいわれ、「なにかプレゼントしましょう」といわれたそうな。「プレゼントって? って聞いたら手ぬぐいとかどうですかっていわれたんだけど……。いやいいんだけどさ……最近の諸物価高で手ぬぐいも結構なお値段するのよ。オフィス10で買い取ってくれるの? って聞いたら『それはちょっと……』だって。結局俳句を詠んでそれを色紙に書くってことで落ち着いた。まあそれならアタシも筆ペンのインクくらいしかかからないからね。で、最初は1名ってことだったんだけど、色紙は2枚持ってこられて。『書き損じ用です』ってことだったんだけど、書き損じなかったから」と急遽2名にプレゼント。「今日はプログラムに番号が書いてあるんですって? じゃあ抽選箱から番号を引いて決めるのかと思ったら『用意してません』って。『師匠お好きに決めてください』って。不精だろお」。確かに。扇辰師の誕生日である16日から16、59歳であることから59に。かすりもせず。「当たったおふたりが番号を聞いた途端にパッと顔が明るくなった。どうやら喜んでもらえたようでよかった」。

扇辰師の一席め、先日喬太郎師との会で『鰍沢』をリクエストされたそうで、「こんなクソ暑い中でだよ!? いややるけどさあ……」。いやあ真夏にあの雪の寒さを思い出させるのは扇辰師の腕ならではですよ。「今日はやらねえよ? けど同じような涼しくなる噺をしましょうか」と『団子坂奇談』に。
今までは単におきぬ自身になにかわけがあって赤ん坊の腕をかじっているのかと思っていたが、父親のあの落ち着きぶりを見ると一族でそういう血なのか、たとえば鬼の一族だったりするんじゃないかとかとも思えた。

二席め、「一席目の『団子坂奇談』、落語の中でももっともくだらない噺です。こないだもSNSに『本当にくだらないですね』と書かれた。そういうこと書かないでくださいね」。だそうで。
「寄席とかなら一席めの噺を掛けたらこの噺を掛けたりはしないのですが」と『井戸の茶碗』に。話の筋などはまるで違うと思うが、元とはいえ侍と町人が出てくる噺だからだろうか。
扇辰師ではあまり当たらない噺なので嬉しい。やっぱりこういうキチッとした噺は端正な芸がよく合う。

この後に新版三人集の会もあるのだが、さすがに1日3つ掛け持ちはちょっと。3日間公演で千穐楽は行くし。
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十代目入船亭扇橋の"一語一会" 独演会 [落語]

十代目入船亭扇橋の"一語一会" 独演会
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭扇橋『寿限無』『麻のれん』『佃祭』

本来だったら4年ぶりに岩手へ行って法事だったのだが、このタイミングで岩手の親戚が3人流行病に。大事をとって法事は中止になる。久しぶりに新幹線に乗れると楽しみにしていたがこればかりは仕方ない。
じゃあ落語行くかーと思ったのだが……なんかやる気が起きないというか……あーーーなんだかメシを食うのすらめんどくさい。なんだこれなんかヤバいんじゃ……。家の掃除とかやりたい気持ちはあるんだけど、やる気が湧かない。
うーーーん。朝起きて猫にご飯あげたらどうにもなにもする気がしない。メシも食わずダラダラと買ってあったマンガを読んだり。
中野で昼に落語を聴くときはいつも行く高円寺のタイ料理屋でレッドカレーとヤムウンセンを食べたところで少しテンションが盛り返すも、まだ上がりきらない。なんか変な感じ。

一席め、「この会は初回なんで席亭から『何かテーマを』といわれたんですけど『なんでもいいですよ』と。いわれたらなんでもやりますよと。そしたら私の落語協会のプロフィールに『扇辰の弟子、九代目扇橋の孫弟子です。師匠や大師匠の噺をやったりやらなかったりします』と書いているんですけど、チラシに『やったりやらなかったり』の『やらなかったり』に取り消し線が入れられていて『やったりやったりします』にされてるんですよ。なので師匠と大師匠の噺をするんですが……私は大師匠に直接噺を教わってないんですよ」とぶっちゃける。
「大師匠の鞄持ちもしたことはありますが、もちろん私から『噺を教えてください』なんていえない。大師匠、師匠と私の三人で旅の仕事があったときに『ここだ!』と師匠を通してお願いしようとしたらその晩に大師匠が倒れた。まあ倒れたといっても重症ではなかったんですが、それでも稽古をお願いできるような状況ではなく、大師匠が快復した後は師匠が忘れてるという……。まあ大師匠の噺は師匠がやってますから、『大師匠がやっていた噺』ってのはできるんですよ。でもそれは師匠から教わった噺だし……。大師匠がやってて師匠がやってない噺があればいいんですけど、ないんですよ。その時点でこの企画はもうすでに破綻してるんです」。おやおや。
「大師匠がよくやっていたいわゆる『入船亭の噺』ってあまり儲からないというか……。苦労する割にはそれほどウケないんです。でも大師匠はそれがいいとよくやっていて、師匠はそんな大師匠が好きで入門したと何かで読んだことがあります。その師匠が好きで入門したんで、私もそのケはあるんでしょうけど……。それからね、私は師匠の噺をあまり覚えないようにしてるんです。師匠の噺ばかりだと、師匠との親子会とかでやるネタがなくなってしまう。もちろんやってもいいんですけど……。だから私は年に一回、ご褒美的に師匠に噺を教わるんですよ。なのに辰之助はホイホイ教わる。また師匠も『おおいいぞ、どんどんやれ』って人ですから教えてくれるんですよ……。いやいいんですけど、『えーお前その噺を教わるの?』って思うんですよ」。いろいろ葛藤があるようで。
「この会場は思い入れがある。見習いのときに師匠の独演会で初高座で上がったところですから」と扇辰一門では最初に教わる噺の『寿限無』を。真打昇進間近にも「初心を忘れないために」みたいな感じで聴いたな。扇辰一門は和尚さんではなく、横丁のおデコボコ。

二席め、「そもそも大師匠の噺ってある程度歳を重ねた人がやるからこそなんていうんですか味があるというかおかしみがあるというか。そういう噺が多いじゃないですか。それをこんなハナタレの若造がやったらどうなるのかをこれからお見せします」と『麻のれん』に。
確かに扇辰師のイメージが強いけど、一之輔師とかもやるし、あまり歳食った人のやる噺というイメージはないかな。
……なんか枝豆食う時間長くない? どんだけ山盛りの枝豆なんだというか。これを延々食ってる場面が面白くなるのが年の功なんだろうか。

三席め、「前半に喋りすぎましたね。すぐに噺に入らないと間に合わない。それに師匠も楽屋入りしちゃうし……。いくつになっても師匠は怖いです。……いや怖くはないですけど、やっぱり緊張はします」だそうで。
先日池袋のトリで聴いたものとほぼ同じ。入船亭だと長屋の連中が次郎兵衛さんの体の特徴を聞いて「たま命」の入れ墨が入っているというくだりはないんだね。
「しまい船が沈んだ」という表現が「しまい船がしもった(しぼった?)」というのは他では聞いたことがないなあ。
タグ:入船亭扇橋
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三遊亭白鳥・三遊亭兼好 二人会 [落語]

三遊亭白鳥・三遊亭兼好 二人会
於:渋谷 伝承ホール

三遊亭白鳥・三遊亭兼好 オープニングトーク
三遊亭白鳥『ナースコール』
三遊亭兼好『氷上滑走娘』
三遊亭兼好『のめる』
三遊亭白鳥『真夜中の襲名』

会社で仕事中に今日この会があったことに気づく。うー明日までに終わらせておくべき仕事があるんだけど仕方ない。少しだけ残して会社を飛び出そうとしたところに微妙なトラブル。あーーもう。
しかし会社から渋谷は思っているより近い。割と余裕を持って会場へ着く。
大荒れだった天気もあって蒸し暑さがすごい。

まずはふたり揃ってオープニングトーク。
「聞くところによると兼好、お前家でクーラーつけてないんだって?」「あー、苦手なんですよ。家では扇風機を3台使って……」「そんなの熱風をかき回してるだけだろ。暑くないの?」「暑いですよ、でもそれよりもクーラーに弱いんで」「お前それ熱中症になるおじいちゃんの言い分だぞ……家族は何もいわないの?」「あー、だからカミさんは扇風機を我が子のように常に抱えて動いてますよ」。
白鳥師も自転車に乗ってるときに熱中症になりかけ、「視界が急に狭くなって道が輝いて見えて向こうに師匠が見えた」そうな。
出身の大学の話になり、兼好師から「(白鳥師の母校の)日大は大変ですね。やっぱり当時は大麻やってたんですか?」とアブない話が振られる。「俺はやってないけど〇〇同好会は893の集まりで……」なんて物騒なブラックジョークも語られる。白鳥師が昔パプアニューギニアで体験したある植物の根を水の中で叩いてその水を飲むという話になり、「……客席引いてるじゃねえか! この話は全部ウソです!」となる。はてさて。
白鳥師は「真理子ちゃんもかわいそうだよなあ、彼女のせいで薬物が広がったわけじゃないのに謝らされて。理事長になんかならなければ謝る必要なんかなかったのに。……でも『ルンルン』の頃は好きだったんだけど、最近ムカつくよね!? 『どこそこでフレンチを食べた』とか……」などと林真理子の擁護なんだかワルグチなんだか。
「次回やるときはまた前回のように兼好に俺の噺をやってもらって。兼好に合いそうな噺の音源を送っておくから。『蜆売り』とか。『こんな素晴らしい”蜆売り”があるんだ……』ってなるから」「なんかルンルンよりムカつくんですけど」と両師らしい応酬が楽しい。

白鳥師の一席め、「たくさん新作を作っていると、ある時期はよく掛けていたのに突然ピタッとやらなくなる噺がある。時代に合わなくなっていったり……。今日はそんな噺をします。5年ぶりくらいかな」と『ナースコール』に。
この噺どっかで他の誰かで聴いたと思ったんだけど、記録にない。天狗連でも聴いたことはあるんだけど、和泉師とかであったような気もするんだけどなあ。記憶違いか。
ちょっと足りない与太郎的なキャラの新人看護師みどりちゃんが主役の噺で、途中でエロオヤジの入院患者が「パンツを見せろ」というセクハラ的なギャグがあるのだが、先日それを池袋でやったら最前列のオバサンに「今はそういう時代じゃない」と高座の途中で説教をされたらしい。というような自虐ネタ(?)なども交えて。どこまでも破天荒でちょっとヤバい領域まで突き抜けたキャラが楽しい。

兼好師の一席め、最近の暑さに触れ、「こんなに暑いとイライラしてゴルフボールで車を傷つけたくなるのもわかる」と時事ネタを挟む。「今だと藤井さんと大谷さんくらいしか日本人を癒す人はいないんじゃないですか。藤井さんの名人就任式には会場の羽田空港に400人くらい集まったんですって。……白鳥師匠とふたりで林真理子のワルグチ言ってこの程度のお客さんしか集められないのとわけが違う」と自虐で笑いを取る。
「大谷さんも成績がすごくて顔も良くてスタイルも良くてそれでいて性格もいい。あそこまでいくと妬ましいとさえ思えないですもんね。以前だとそのラインに羽生結弦くんもいたんですよ。でも今では癒やされる人もいないんじゃないですか」と黒い笑みを浮かべる。
「結婚したのに奥さんの情報が全然ない。だから奥さんへのワルグチも言えないのでモヤモヤしてる人が多いんじゃないでしょうか。奥さんの写真があったりすれば『そんなにかわいくない』とか『美人だけど性格が悪そう』とか言いようもあるんですけどそれもできない。……それに会場を見渡してみると……この中には羽生くんと結婚できる人はいません。それに息子とか孫とかにできる人もいません。だから本来は羽生くんが結婚しようがどうしようが関係ないはずなのにモヤモヤしてるんじゃないですか」と説く。なるほど?
「まあでもあれだけのナルシストですから、奥さんは美人ではないはず。『自分を見て』という人がふたりいても合いませんから。多分癒し系じゃないですかね。羽生くんが好きな癒し系……くまのプーさんみたいな女性かもしれません。白鳥師匠が女装してるような」と容赦がない。
フィギュアの話題からそのまま『氷上滑走娘』に。今年は2月に一度聴いていて、年に二度というのは珍しい。
相変わらず座布団の上でのフィギュアスケートの表現が秀逸。年々細かくなっているような。

二席め、「一席めを袖で聴いてた白鳥師匠に『新作派にくる!?』と声を掛けられましたが丁重にお断りしておきました」。
「最近ではら抜き言葉なんかもだいぶ容認されてきているようで。ただ我々噺家はやはり昔の話をするんで、普段からカタカナの言葉を話さないように心がけてる。『トイレ』といわずに『はばかり』とかはよく注意されましたね」というところから噺家の言葉遣いに染められた娘さんのエピソードをマクラに振って口癖の噺へ。
相手の半公をすごく嫌なヤツとして描き、仲の悪いふたりとする人もいるが、兼好師の半公は「え、俺そんなこといってた? そりゃあすまねぇ、気をつけらぁ」とカラッと明るくいい人。
八公がご隠居に相談するときも「アイツはズル賢いところがある」などといわず、「アッシはそそっかしいでしょう」とあくまで自分がすぐに負けそうなのでという話に持っていく。
それだけに鰻屋の開店祝いのくだりもカラリと自然な流れで騙され、このふたりの関係性が微笑ましい。

白鳥師の二席め、「兼好さんの一席め、新作だったので驚いた。聞いてみたら年に一回くらいしかやらないそうで、そんな噺を新作の私との会だからやってくれたんでしょう。嬉しいじゃないですか、だってあんなフィギュアの仕草をクーラーの効いてない家の中で稽古してきてくれたんですよ」。たしかに想像してみるとシュールでそれだけでおかしい。
「私も普段やらない噺をしようかと。この噺は作ったのは2009年ということは覚えてるんですが、それから14年ほとんどやっていない」そうで。
上野動物園で芸人ならぬ芸動物としてふれあい広場で働くパンダうさぎのピョン吉は、いつかはパンダの大名跡である「カンカン」を襲名したいと思っているのだが、その年に生まれたシャンシャンが継ぐことになり……というシャンシャンが産まれたことに合わせて作った噺なのかと思ったら、「襲名に親が出てくるなんておかしい」とか「襲名は客に認められることも大切だが、仲間内から認められなきゃダメなんだ!」とか。その年はどっかの二世が名跡を継いだらしく、「あのときは芸人は誰も認めていなかった。その披露興行の最中にこの噺を掛けたら席亭から出入り禁止になった」そうで、皮肉とブラックユーモアが効きすぎたパンチのある一席。いやすげえわ。

次回は兼好師がまた白鳥師のネタを掛けることを約束していたが……、次回の日程はまだ決まってないのかな。前回前々回は終演時にチケット予約を受け付けていたのだが今回はなし。とりあえず待っていよう。
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入船亭扇橋の会 [落語]

入船亭扇橋の会
於:都内某所

入船亭扇橋『芋俵』『禁酒番屋』『夢の酒』

かわら版などにも情報を出さず、チラシなども撒かない、会場の常連客に向けた会。会のタイトルも別にちゃんとあるんだけど、まあ一応。
俺自身もそんなに常連というわけでもないんだけど、扇橋師の会は小辰時代からちょいちょい行ってる……というか扇橋師がらみでしか行ってないな……。席亭からメールでお誘いいただいて予約する。扇橋師はGoogleカレンダーでスケジュールを公開しているのでそれを頼りにしているのだが、この会はそのスケジュールにも含まれていない。実はそれで前回予約していたにも関わらず、当日ド忘れしていて別の会へ行ってしまうという大失態を犯してしまった。今回は予約と同時に自分の予定として組み込んでおいたので時間に余裕を持って到着。

一席め、息子さんが足を剥離骨折をしたために扇橋師が自転車で学校に送り迎えをしていたそうで、そのエピソードなどをマクラに。そのほかにも小春志師についてなどと雑多なおしゃべりが広げられ、なんというかホーム的なリラックスしてる感じ。
扇橋師の『芋俵』は初めて。そもそもあまりそんなに頻繁に聴く噺でもないけれど。
軽くさらりとしていながらも、間抜けな泥棒たちの会話など笑わせどころはしっかりとしていて落語を聴いたという満足感がある。

二席め、先日の池袋でのトリの芝居に触れ、5日めに小満ん師も誘って打ち上げに行った話を。大先輩である小満ん師に声を掛けるというのは緊張するらしく、どうやって誘ったのかを実演する。小満ん師は機嫌よく飲み、打ち上げの間ずっと話しっぱなしだったという。「あの師匠が若手に気を使ってくれてずっと話をしてくれている。二時間半ほとんど喋りっぱなし。もちろんありがたいし楽しいんですけど、我々はほとんど喋ってない。そうすると少しフラストレーションがたまるというか……なので二次会、三次会……と深夜まで続いていく。打ち上げなんて一次会だけでいいですね。ここまでいくと次の日の高座に障るんですよ。小燕枝アニさんは自分でも『メロメロだァ』と言ってましたし、一蔵アニさんはズルいから『親子酒』をやってた。酔ってるからだろ! という……」と酒の話から『禁酒番屋』に。
水カステラを検められる酒屋の手代の目が泳いでいる表現が上手い。
最近は番屋の侍が「あの、ここな」という人は少ないが、扇橋師は言う。のはいいんだけど、そもそもこの「あのここな」ってどういう意味なんだろ。他の噺で聴いたことがないと思う。

三席めはいかにも入船亭という『夢の酒』。
とかいいつつ、扇遊師や扇辰師、扇蔵師ともそれぞれちょっとずつ違うのでその違いを探すのも楽しい。扇橋師は大旦那が昼寝をする際に淡島様のおまじない「われたのむ 人の悩みの なごめずば」をちゃんという。これいわない人多いよね。

終演後は最近珍しく打ち上げ付き。一瞬参加しようかと思ったが、まあ昇進披露パーティーでも一言も発しなかったくらいのプロぼっちが参加してもひたすらビールを飲むだけになるので遠慮する。扇橋ファンのコミュニティもできあがってるっぽいしね。
タグ:入船亭扇橋
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両国寄席令和5年8月3日 [落語]

両国寄席令和5年8月3日
於:お江戸両国亭

三遊亭鳳志『松山鏡』
西ゆかり 奇術
三遊亭兼好『死神』

社内のシステムがうまく動いてないので仕事にならぬ。そろそろこのシステムやめない? 切り替えて1年以上経つけど今んとこメリットが何ひとつ見つからないんだけど。

仲入りが明けた直後に受付に着くも、誰もいない。少し待ってみるが誰も戻ってこない。んーーーしゃあないとりあえず入っとくか。

西ゆかり先生はお初。
派手派手ないかにもマジシャンという出で立ちにハトが乗ったシルクハット?
「私のことを知ってる方……結構いる。いつもと同じネタやりますんで地獄の15分をお過ごしください。私のことを知らない方……これも結構いる。ウザいキャラでやってるんで!」との宣言どおり客にガンガン絡んでいく。
いつもはこういうキャラ好きじゃないんだけど、彼女は面白かった。
スケッチブックに描いたトランプの絵が動くのってどうやってるんだろ。

兼好師、昨日は札幌での仕事だったそうで。
「涼しいかと思ったら32℃あった。しかも北海道は普段は涼しいんでクーラーがない施設も結構あるんです。だから暑い。札幌に行った意味がない」とボヤく。
「そんな暑い会場から『打ち上げに行きましょう』と……。主催の方はご夫婦なんですが、ススキノの高級店……は通り過ぎてラブホテル街に連れて行かれまして。おいおいこの夫婦何を私に見せるつもりだと思っていたら『ここ、首を斬られたところですよ』と……」。そんなもん知りたくないなあ。「おかげで『死神』を思い出しました」だそうで。
ドクロに大鎌という死神のイメージはヨーロッパからのもので、落語の『死神』もそれを元に作られたものだという。実際圓朝師が作った最初の稿では『捻くれた男が名付け親を死神に頼み、その子が育ったのがこの噺の主人公』というストーリーなのだとか。確かにその型、兼好師で聴いたことあるなあ。ただその型はあまり世間に受け入れられなかったようで、次第に現在よく聴く型に変化していったのだという。
……とまあ前振りはいいのだが……。噺に入るとなんかどうも間が変というか……思い出しながら話してる? という感じ……。もちろん噺のクオリティとして木戸以下なんてそんなことは決してあり得ない(というか今日はまだ木戸銭払ってない)が……。まあそんな日もあらぁな。
今日は死神と主人公との間には特になにか縁があるというわけではなく。ただ、話がループするという演出は兼好師のオリジナルなのかな。

帰り際に木戸銭を払おうと思うもまた受付に誰もいない。大丈夫かこの寄席……。楽屋まで行ってようやく払う。楽しんだ対価はちゃんと払いますよ。まあこの寄席にくる人はみんなそういう人だとは思うけどね。
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