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三遊亭天どん独演会 〜2021年 夏〜 [落語]

三遊亭天どん独演会 〜2021年 夏〜
於:原宿 アゴスタディオ

三遊亭天どん『無精床』
三遊亭ごはんつぶ『ろくろ首』
三遊亭天どん『包丁』
三遊亭天どん『唐茄子屋政談』

ほぼ同じ時間に兼好師と萬橘師が揃って出る落語会があった。マジかー思いの外このふたりの組み合わせってあんまりないんだよなあ。行きたいがこちらも割と早いうちに予約してたし兼好師は昨日も行ったし萬橘師も先々週聴いたし、とひと月以上ぶりの天どん師を優先させる。
池袋で久しぶりにピラブカウというタイ料理屋でタイカレーを食す。ピラブカウって移転後初めて行ったけど、メニューもだいぶ変わったみたいだなあ。
炎天下池袋から原宿へと移動。人多いなあ……。まあ俺もなんですけど。それにしてもここらへんの住人ってみんなデフォルトでスミ入ってんの? 柄ワリい……。足立区とはまた違ったアウトレイジっぽさがありますな。

まず前座の前に天どん師。
「僕が連続で演るとね、疲れちゃうんで。休憩が欲しいんですよ」とのこと。兼好師も同じ理由なのか。
「あ、そうだ、先にいっちゃうと今日は古典やりますよ。僕も一席くらい新作やりたいんですけどね、主催の方から『今日は古典だけで』って言われちゃったんで」らしい。私は全然構いませんが。
「ところでみなさんの席にクリアファイルがおいてあったと思うんですけど」。天どん師の写真が入ったやつね。「主催の方が『せっかく来てもらったお客さんにお土産を渡したい』ってことなんですけど、完全に事後報告ですからね。……みなさんそこらへんに捨てないでくださいね。ヤですよ駅に行く間に道端に捨てられてたらさすがに凹みますからね。でもこれー、持って帰ってもねえ。使わないでしょ? 普段使いにこんな着物のおじさんのヤツ使ってる人いたら嫌ですよ。古新聞の間に入れて捨てるしかないでしょ」。うーん。捨てはしないけど確かに使い所がないなあ。
「こういう頭をしてるとあまりこだわらないんで千円カットなんですけど、いろんな土地に行くとそこの千円カットに入ったりするんですよ。歌舞伎町とかだと五厘刈りとかすごく上手い。……考えてみたらあそこらへんはああいう業種の人が多いんですよね。これが半端なイナカだと……もうみんな知ってるんで言っちゃうと東久留米とかだと、周りを短くすると必ず『ソフトモヒカンにしますか?』って聞かれますね。しないよ。丸くして欲しいんですけどね。なぜかボウズだと1500円とかになるんですよ。なんで技術がいるほうが安いんですかね」。確かに俺も千円カットだけど勝手にソフトモヒカンっぽい感じにされる気がする。東久留米ね。俺も7年住んでたけど、「ホントにここ東京?」っていうのどかさだからね……。普通に畑あるし。
そんな床屋の話から『無精床』に。
前にも書いたことあるけど、この床屋の大将の突慳貪なところが天どん師っぽくて楽しい。
井戸に水を汲みに行きたくない理由として井戸端にいるおしゃべりなババアにつかまりたくないというのがおかしい。

ごはんつぶさん、「いつもなら師匠の会では新作を勉強させていただいているのですが、今日は古典縛りということで」と『ろくろ首』に。
これは天どん師のだな。「さようさよう」「ごもっともごもっとも」は普通なのに「なかなか」だけ悪だくみしてる声なのが面白いんだけど、さすがにこれは師匠の面白さには敵わないか。天どん師の面白いんだよなー。

ネタ出しの『包丁』、「いわれたから演るんですけどー、ネタおろしなんで」とあまり前向きな言葉が出てこない。
確かに普通にストーリーをきっちりと追っていくという感じで、あまり天どん節を感じない。前にもネタおろしの噺を聴いたときにも思ったのだが、やはりとりあえずは基本の形を入れておいて、そこから高座を重ねて徐々に天どん師のテイストが注入されていくのだろう。

三席め、「夏らしい噺」と若旦那の勘当で『船徳』かとも思ったが。四万六千日様はもう過ぎてるのか。
南瓜売りを「みっともない」と言い放った若旦那への叔父さんのキレっぷりがすごくてこれがまた天どん師のテイストに合っていて面白い。「てぇめえこの野郎!」という一言がなんかやたらおかしいんだよなあ。
南瓜を道端にぶちまけて親切な職人の親方に助けられる場面では、「……お前勘当されたろ。勘当顔だ」と見破られる。「金はやるけど南瓜はいらねえ」といって親方を怒らせた男の「わかったよ持ってくよ。どれがいいんだ?」といいやつを選ぼうと南瓜を叩くのもおかしいが、徳の顔を見てひと目で「お前勘当か! 早く言えよ!」ところっと態度を改めるのも面白い。
長屋のおかみさんは梁が折れて無事だがぼんやりしてるというので叔父さんが医者代まで出すという太っ腹ぶり。
最後の一言に「徳三郎が一日だけ頑張ったというだけの噺」と付け加えるのがいかにも天どん師っぽいアイロニーが出ている。

帰る途中で荒川の土手に差し掛かったところでなんだかやけに夏の夕暮れっぽい感じになっていたので写真を撮っていたらいつの間にか夜に。こんなのも久しぶりだな。

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福袋演芸場 「三味線のお姉さんの苦悩」 [落語]

福袋演芸場 「三味線のお姉さんの苦悩」
於:池袋演芸場

オープニング
三遊亭わん丈『紙入れ』
三遊亭ぐんま『宗論』
入船亭小辰『高砂や』
柳亭市好『狸札』
春風一刀『シーソーゲーム 勇敢な恋の噺』

久しぶりの福袋。
今日はわん丈さんの企画で、「噺をわざと延ばして、さらにお囃子のお師匠さん(おっしょさん)に頼んでハメものを入れてみよう」というものらしい。
オープニングトークでわん丈さんが企画の説明と参加者をひとりずつ呼んで鳴り物を渡す。ここは撮影可だというので遠慮なく撮る。たまたま一眼レフを持っていっていたのでよかった。

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わん丈さん NikonDf

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ぐんまさん NikonDf

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小辰さん NikonDf

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市好さん NikonDf

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一刀さん NikonDf

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五人揃って NikonDf

トップバッターのわん丈さん、前座の頃、かわいがってもらっていた菊之丞師の自宅でごちそうになった際に「なにか覚えたい噺ないの?」と聞かれ、酔った勢いで「『紙入れ』を覚えたいです。それに菊之丞師匠のを」と言ったそうで、これはありえないほどの失礼な話なんだそうだ。へえ。そもそも前座は『紙入れ』をやってはいけないんだそうで。艶っぽい噺だからかな。
それでも菊之丞師は「いいよいいよ、いつでも稽古においでよ」と言ってくれ、風呂に入りに行ったそうだ。すると奥さんの藤井彩子さんとふたりきりになってしまい、「あれ、これもう稽古始まってんのかな?」と思ったとか。「もちろんそんなことはなかったので無事に今ここにいられるわけですが……」。
新吉とおかみさんは不義密通未遂ではなくやっちゃってる形。脱いだ羽織を体の前で揺らし、「みなさんは今落語の新しい歴史を見ているんです。羽織で掛け布団を表現しているという……」。ちょっと生々しい。
逃げ出して「旦那に見られていたらどうしよう……そうだ殺そう」とおっかなないことを思いつき、翌朝旦那を刺してしまうところでハメモノが入る。が、刺したのは夢でそれ以外は普通に進むが、最後にまた上方版とも違う形でどんでん返しが入る。面白い。

ぐんまさん、オープニングで「古典の『宗論』をやります」と言っていたが、まあそんなはずもなく。
のっけから「ウィー!」といいながら人差し指と小指を立てた拳を掲げながら高座に上がり、手ぬぐいを振り回しながら客にアピール。
ようやく座布団に座り「なんですかこれは?」「スタン・ハンセンに決まってるだろう!」だそうで。俺プロレスあまり詳しくないのでよくわからないけれども。
親父が全日本プロレス派で息子が新日本プロレス派の闘いを描く。まあ宗教っちゃ宗教か?
高座の上を駆け回り、最後には座布団を息子に見立ててジャイアントスイングを8度回す。
そんな無茶苦茶をやりながら、座布団を戻すときに縫い目を気にした様子を見せるのがおかしい。噺家の性なのか。

そんなカオスから一転して小辰さん。
出囃子の「いっさいいっさいろん」をずっとBGMのようにループでかけつつラジオDJ風にトークというかマクラというかを始める。今回の企画を聞いてハメものが入る噺としては『たちきり』しか持っていないのでそうしようかと思ったそうだが。結局はなんとかなるだろうと『高砂や』をネタ出ししたが、ハメものが思いつかないのでこのような形にしたとぶっちゃける。
ラジオにきたハガキを読み上げるという形(「ハガキって古いな! 今はメールだよ!」とセルフツッコミ)で「そろそろ噺に入ったほうがいいんじゃないですか?」「会のタイトルに『苦悩』と入っているのに全然苦悩させていない」とSっ気を見せる。たまにちょろっと出すよね。
噺が終わった後も「曲が終わった後」風に再度DJに戻る。

市好さんはこの企画自体に戸惑いがあったようで。
ほぼいつもの通り。市好さんのいつもは知らないけども。
ハメものどこに入ってたかな……。

一刀さんは新作のネタおろし。
この企画をわん丈さんから聞いたときに、「『みんな古典やるみたいやねん』『誰か新作やってくれへんかなー』っていうんですよ。それ翻訳すると『やれ』ってことですからね。『じゃあ僕やりますよ』って言ったら『ホンマに? ネタおろしいける?』って。ネタおろし!?」とかなりのムチゃぶりだったようだ。
「お師匠さんに謝らなければならないことがある。ネタ出しで『シーソーゲーム』と出していたのでミスチルの『シーソーゲーム』を弾けるように練習してきてくれたそうですが、一切出てきません!」といい、せっかくだからと一節弾いてもらう。
「先にいっておくと、女性は嫌悪感を抱くかもしれません。まあシモネタというか……」というネタは、喫煙所で会った上司と部下が呑みに行くかどうかを延々と押し問答するというもの。最初は部下の方から上司を誘ったのに急にキャンセルしようとしたり。理由はなんとなく察せるものの最後まで明かさないのでちょっとイライラする。こういう噺って初回はいいけど2回め以降に聴くとどうなんだろう。
幕が閉まるとわん丈さんの「シモネタやないか!」という声が聞こえる。わん丈さんは普段関西弁なんだね。まあ滋賀出身だしそりゃそうか。
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