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両国寄席令和6年10月3日 [落語]

両国寄席令和6年10月3日
於:お江戸両国亭

宮田陽・昇 漫才
三遊亭兼好『厩火事』

10月だってのに何この暑さ。
昨日の夜はあまりの寝苦しさにクーラーつけてしまった。どうなってんだ。

仲入り後に入ったのだがほぼ満席。王楽師の話題があるからか兼好師がトリだからか。私としては……いうだけ野暮なのでやめておきます。

陽・昇先生は安定の面白さ。
寄席の漫才って聞いてるこっちがいたたまれなくなることが多いのだが、そんなことにならない数少ないコンビ。
「『お前はバカか!?』と言う仕事があるのか!?」「……あるよ!」「じゃあ『お前はバカか!?』って言うとカネが発生するのか!?」「……発生するよ!!」ってくだり好き。

兼好師、「王楽くんが七代目の圓楽に決まりましたね。私はやっぱり五代目の印象が強いですねえ。私が入門したときにはもうだいぶ穏やかになっていましたが……。談志師匠や志ん朝師匠と同じ時代にいて、談志師匠が破天荒だというような印象ですけど、圓楽師匠がいちばんキ◯ガイでしたね」と爆弾発言を。とはいえよく聞く話ではあるけれども。
「もともとお侍の血ですから、思考が真っ直ぐなんです。たとえば『こうしたい』と思っても、普通なら周りの目や他人のことを考えて自重したりする。談志師匠も『今自分はこう見られてるな』ということをちゃんと考えてた。けど五代目は違うんです。周りのことなんてどうでもいい。よく小遊三師匠が言っていましたが、『あそこへ行きたいと思ったら、途中に赤ん坊がいても踏んづけていく』っていう方でしたね」だそうで。
「普通ネタおろしをするときはちゃんと覚えてから掛ける。志ん朝師匠や談志師匠はネタおろしが既に完成品なんです。五代目はネタおろしの時点で粗筋すら覚えてない。今日のネタ出しの『厩火事』もそうだったそうで、それを聴いた評論家の話を聞いたら、『ほとんど擬音だった』って。ずーっと『オー』『ヴァー』『ヴォー』『ドォー』だけだったそうですよ。しかもそれを両国寄席のような会場ではなく大きなホール落語会でやる。お客さんはポカーンとしてたらしい」。それはそれで聴いてみたかった気もする。
「おかみさんは『いざという時に食べるものに困らない』と茨城の農家の方をもらった。すごく綺麗な方なんですけど、訛りが抜けなくてギャップがありました」とおかみさんの話から『厩火事』に。
相変わらずおさきさんのウザさがたまらなくおかしいが、今日は特に表情が大げさで暑苦しく、そのクサさがたまらない。
「おさきさん、お前は自分で思ってるよりもいい女だよ、まだやり直せるよ」という兄貴分の言葉に「……(自分でもいい女だと)思ってますけど」というやりとりがおかしい。

五代目圓楽一門会の手拭いを作るらしく、4つのデザイン案から客の投票で決めるようだ。……まあ普通に考えれば一択なのだが、あまり圓楽一門会って感じもしないしなあ。てことでいちばん派手なものに一票入れておく。

ところで今ファミレスで晩酌兼晩飯中なのだが、隣の席で若いカップルが濃厚なイチャコラをしている。卓上には水のみ。カンベンしてくれよ……。
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入船亭扇橋の会 [落語]

入船亭扇橋の会
於:都内某所

入船亭扇橋『よかちょろ』『藁人形』『甲府い』

会場主催のクローズの会。
常連客ばかりだからか、この会はマクラがとりとめのないというかあっちいったりこっちいったりと自由な感じ。
今日は天気のグチから。今日のような日は。今日みたいな雨が降っていないのに蒸す日は着るものに困る、今日は夏物を着てるとか。まあ兼好師も11月まで夏物の着物で行くって言ってますから。
総裁選の話よりもNHKの新人大賞のほうが気になる、というところで決勝の6人の名前を挙げ、「まあ〇〇さんじゃないですか」と予想をブチあげる。「さあこの予想に乗らないか」と予想屋のような一言。これは一蔵師の影響なのか。
その後、寄席の楽屋で起きたポンコツ前座による騒動について面白おかしくグチる。「彼はいいですよ。自分がポンコツだということを自覚していない。それなのに後輩の前座に命令してるんですけど、私から見ても『ソレ違うんじゃねーか?』ってこと言ってるんですよ」だそうで。「それなのに電話で落語協会の事務員に小言言ったりしてるんですよ。すごいですよ」。そらヤバいわ。
「だから二世はヤバい」と三木助師とのエピソードなども。仲が良いらしく、前座二ツ目時代の話がどんどん出てくる。二世、若旦那の話から『よかちょろ』へと入っていく。この時点で45 分程経っていた。
『よかちょろ』は先日も聴いたばかり。蔵出しした噺を定番にしようとしているのかもしれない。しかしまあこの若旦那の可愛げのなさよ。それで花魁にはいいようにあしらわれているんだから大旦那の苦労はいかばかりか。

二席め、寄席の話題から10月上席に池袋でトリを取るときの顔付けの話など。てか昼席扇橋師で夜席一之輔師じゃん。三人集のふたりが入ってないなと思ったけど夜席に一蔵師入ってるし、こら来週の土日は池袋居続け決定ですわ。
「寄席の昼席だと30分くらい。ネタを書き出してみたら、『すぐにできるな』ってのが五席くらいしかなかった。アタシはトリネタ長いのが多いんでどうしようかなあと思ってるんですよね。噺を縮めるってのもできないし……。普段25分くらいでやってる噺をマクラで30分まで伸ばそうか、とかいろいろ考えています。その中でもトリじゃできないなと思った噺を今日やります」と『藁人形』に。
なんだか今年はよく聴く気がする。相変わらずおくまのおちついた悪女ぶりがお見事。

三席め、「そういや若旦那の話をしたときに王楽アニさんの話をするのを忘れてた。圓楽襲名することが決まったみたいですね。協会が違うんで普段はあまり会わないんですけど、近所のプールで2年連続で会った。家が近いんで。……まあ向こうはすごい豪邸ですけどね。で私が前座の頃にワキの仕事で会ったことがあるんです。前座は開演前の二番太鼓をふたりで叩くんですけど、ここに笛ができる人がいるとすごくいいんですよ。笛のできる二ツ目のアニさんが『俺笛持ってるからやるよ』なんて言ってくれるとすごく助かる。そのときも王楽アニさんが『俺笛持ってるからやろうか?』っていうんで喜んでお願いしたら『そういえば俺笛できないんだった』ってどっか行っちゃった。あれは笑ったなあ。周りの人で王楽アニさんのことを悪く言う人とか嫌いっていう人いないですからね」だそう。襲名披露には兼好萬橘が口上に並んだりするんだろうか。行かなきゃ。
扇橋師、弟子を取ったそうで。こないだ辰乃助さんがちらっと言っていたけど、本人の口から聞いたのは初めて。いろいろと苦労をしているそうで、盛大なグチと改めて扇辰師への尊敬と感謝を話していた。ちなみに扇橋師はお弟子さんの稽古に頭を抱えているそうで。
とはいえこれも縁だと縁の噺の『甲府い』に。今日は派手な滑稽噺はなく、どちらかと言えば笑いどころの少ない地味っぽい噺が並んでいる。
善吉が豆腐屋に奉公することになったときに、金公が兄貴風を吹かそうとするのが楽しい。
善吉は売り声の「がんもどき」の終わり方に特徴があり、それで善吉がきたと長屋のおかみさんたちに認識されるのがおかしい。ただ、サゲにも使われるフレーズなので、それがサゲにまで入ってたらちょっとやだなあと思ったが、流石にそれはなくよかったよかった。

15時開演なので17時半には家に帰れてプレイボールから野球見られるかなーと思ったのだが18時まで3時間みっちり。
祝☆ジャイアンツセリーグ優勝!☆
タグ:入船亭扇橋
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扇辰の弟子 定例根多おろし勉強会「辰辰辰 Vol.10」 [落語]

扇辰の弟子 定例根多おろし勉強会「辰辰辰 Vol.10」
於:高田馬場 ばばん場

オープニングトーク
入舟辰乃助『洒落番頭』
入船亭辰ぢろ『xxxx』
入船亭扇橋『よかちょろ』
入舟辰乃助『モラトリアム』

横浜から移動。
この会はネタおろしの会なので、行きたいのだがいかんせん平日なので行けたことがなく今日が初めて。ばばん場も久しぶりだなあ。

まずはオープニングトーク。
辰ぢろさんが11月に二ツ目に昇進し、「扇兆」に名前が変わるということで名前が話題の中心に。「扇兆」は辰ぢろさんの方からこれを使いたいと申し出たんだそうで。
耳で聞くだけだと「扇朝」だと思われそうだが、「朝」の字は他の一門と間違われそうなので避けたようだ。ただ同じ読みの「扇長」という名は先代扇橋師が「お前は長男だから」とか「お前は長岡出身だから」とか「長崎屋でバイトしてたから」と弟子につけたがり、皆一様に「『朝』じゃないんですか、それじゃちょっと」と断ったらしい。
「扇兆」という名前だと周りから間違えられそう、という話になり、辰乃助さんは「入舟」と「乃」の字が間違えられやすく「名前を確認されたのは200回じゃきかない」んだそうで。
「そもそもなんで『入舟』にしたの?」と扇橋師。実は扇橋師も二ツ目昇進時に「こういうものもあるぞ」といわれたそうなのだが、「絶対間違えられると思って。それにひとりだけ亭号が違ったら変に思われる。周りと一緒が良かった」とまあそうよね、と普通な理由で断っていたそうだ。「アナタは二つ返事で受けたんだろ?」「いや、二つ返事どころか四つ五つ返事くらいでしたけど……」「入舟の時もホントは『入船』だったんだよな」「扇遊師匠が高座を終えて高揚したテンションで『アンちゃん! 俺は入船の字は入舟の方がいいと思うんだけどな!』って言われて、それは二つ返事で受けました」といろいろな経緯があったようだ。
「ま、それが二ツ目ってもんだよ」とわかるようなわからないような結論に。
「それにしても『辰』の字を捨てたんだな」といじられる。「そうするとこの会も『辰辰辰』じゃなくて『扇辰扇』になるのか。いっそ辰むめも入れて『扇辰扇辰』にしちゃうか。『HUNTER×HUNTER』みたいに『扇辰×扇辰』って……」「しくじる! しくじる!」と楽しそう。
手ぬぐいは辰ぢろさんがデザインしたそうで、とても良い出来栄えだと兄弟子たちからのお墨付き。「どんなデザインか知りたい方は11月以降に祝儀を渡していただければもれなく手ぬぐいをお渡しいたします」と弟弟子への気遣いも忘れない。

さてこの会はネタおろしなのだが、辰ぢろさんのアゲの稽古が済んでないのだという。
「ま、俺も間に合ってないんだけどね」という扇橋師。「真打はいいんだよ! ……こんなところで真打を出すこともないんですけど」。

辰乃助さんの一席め、「実はアタシもアゲの稽古に間に合ってないんですよね……。師匠のスケジュールに合わなくて。でも今日の会のことを伝えたら『まあやってもいいんじゃねえか』って言われたんで大丈夫」とのこと。
辰乃助さんに限らず、この噺を聴くたびに「この番頭は洒落が上手いかもしれないけど伝え方が下手だなあ」と思う。いやそういう噺なんだけど、なんかもうちょっと言い方ってもんがあるだろう、とモヤモヤする。
そんなモヤモヤを抱かせないような上手い伝え方に聴かせるのがこの噺の工夫のしどころなのかなあとも思う。難しそうだけど。

辰ぢろさん、オープニングトークで「今日やる噺のアゲの稽古が済んでないのでお客さんの前でやるわけにはいかない。皆さんがSNSとかで書かないというのであれば……」との扇橋師の言なので、とりあえず演題は伏せておく。今日やったものがネタおろしのものなのかはわからないが、とりあえず私が聴くのは初めて。
長屋のものの噺なのだが、いくら噺の中とはいえ、猫を食う話は私のような愛猫家は笑えないしむしろ嫌な気分になる。人と話ができるようなファンタジー色の強い動物ならまだいいんだけど。
気分を悪くさせる以上の笑いがあるとか、話の流れ上どうしても必要だというものでもないんだし、まあ今のご時世、その会話はカットした方が無難じゃないですかね。

扇橋師、「さっきはああいいましたけど、私はホントはアゲの稽古に間に合ってます。別に言わなくてもいいんですけど、シャレを本気に取られるのも……と思いまして。今日のネタは蔵出しです。前にちょっとやってみて『ああこのネタはできねえなあ』と思ってそれっきり。だからもしかしたら人によっては『聴いたことある』と思うかもしれません」。シャレの通じない俺みたいな野暮天がいるからね。
「さっきも手ぬぐいのことをいいましたが、辰ぢろは絵が描ける。たまに落語会で『前座さんも色紙を書いてください』といわれるんですが、そうするとさらさらっとものの2、3分で絵を描くんですよ。先日浦安の会でも辰がサーフボード持ってディズニーランドに向かっている絵をササッと描いた。……これは才能ですよ。辰乃助は新作を作って『こんなこと考えてるんだ』と思わせますし、辰むめはいろんな趣味があってしかもそれを極めてる」と弟弟子たちの趣味や特技を素直に(かどうかはわからないけど)称賛する。特に辰むめさんは裁縫や染め物、瞑想などの趣味があるそうで、それについて結構な時間を割いていた。
人の才能の話から金を使う才能という若旦那の話になり『よかちょろ』へ。9年くらい前にまだミュージックテイトがあった時代に一度聴いてた。
さすがにその当時どうだったかは覚えていないなあ。当時のメモにも感想書いてないし。確か『よかちょろ』の唄がぎこちなかったような気がするが、現在はスムーズに。
大旦那が若旦那からおちょくられて激怒する様が悲しくもおかしい。
しかし10年前に覚えてやってなかった噺をまたできるようになるって噺家ってすげえな。

最後に辰乃助さんがもう一席。これはネタおろしではないっぽい。
久しぶりに再開した旧友同士が、学生時代にやっていた暇つぶし(マンガやドラマの名言ランキング作成とか)をまたやるというもの。
辰乃助さん、俺とひと周りくらい歳が違うはずなのにランキングのチョイスが俺ら世代に近いんだよな……。

帰り道、夏用とはいえ長袖のライダージャケット着てるのに寒い……! いやいきなりすぎんだろ。一昨日まであちーあちーって言ってたのに。
こんなあからさまな「暑さ寒さも彼岸まで」ってある!?
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浜辺の兼好 [落語]

浜辺の兼好2024
於:桜木町 にぎわい座

三遊亭兼好『日和違い』
三遊亭けろよん『浮世床(将棋・本)』
三遊亭兼好『短命』
三遊亭兼好『お化け長屋』

昨日はグズグズとはっきりしない天気でツーリングに行くにも行けず、ダラダラと昼から酒を飲んで過ごす。
そんなに飲んでもいなかったにもかかわらず、昼寝して夜に起きても食欲がわかず、猫にごはんをあげたら寝てしまう。
寝過ぎて首と背中が痛い……。

今日もどんよりとした空模様だが、天気予報アプリによれば雨は降らないとのこと。でもテレビの天気予報だと雨マーク。どっち信じりゃいいんだ。
まあ降ったとして大したことなかろ、とバイクで向かう。

兼好師の一席め、「ようやく涼しくなってきましたが、こうなると着るものに迷う。普段から着物なので、Tシャツになったりして温度調節するということができないんです。昨日は朝涼しかったんで高座着で単を持って行ったら昼はものすごく暑くて汗ビショビショ。それで思いましたね。『もう高座着は一年中夏の着物にしよう』……と。だって最近の気候だと11月半ばくらいまで暑い日があるでしょ。で、それくらいになると暖房が入るんですよ。そうすると高座は高くて暑いんです。たとえば『夢金』なんていう冬の雪の中を船頭が『うぅ、寒みぃ……』なんて言いながら舟を漕ぐところで汗だく、なんてことがあるんです。そうなるくらいなら着物が夏のものだっていいじゃないですか。昔は『今の時期はこれを着なきゃダメよ』なんてわざわざ楽屋に言いにくる着物警察がいたんですが、最近では『もう単にしなきゃダメよ』っていう本人が袖なしワンピースとかですから。そんな人の話は聞きません。5月は紗、6月は絽、789月は甚平、とかそういうことになるんじゃないんですかねえ」。
気候の話から雨の話となり、日本はヨーロッパに比べて20倍傘を買うというようなところから『日和違い』に。
先生の「今日は雨が降る天気じゃない」という言葉を間に受けて「コイツらみんな傘持ってやンの」と笑いながら土砂降りに遭う八つぁんがなんともおかしみを誘う。
米屋で米俵を被る仕草には毎回毎回わかっていても笑ってしまう。米屋の旦那の「店の者みんな仕事はいいからおいで。……どんなに落ちぶれてもこうなっちゃいけない」というトドメもヒドい。

二席め、「昨日仕事で伺った会場の世話人のおかみさんは、最近夜にニュースを見ないんですって。腹が立つからって。確かにそうですよねえ。最近では総裁選のニュースがよく流れてますが、……9人もいてろくなのがいないってねえ。もう大谷くんが総理になるのがいいんじゃないですか。だって総理は誰でもいいんですから。周りのブレーンがしっかりしていれば。大谷くんの周りなら素晴らしいブレーンが集まるんじゃないですか。それにみなさんだって大谷くんに『頑張ろう』と言われれば頑張るじゃないですか。岸田さんに言われたって『お前がな』としか思わないでしょ」。確かに。
「それに彼なら裏金問題とかないでしょ。だって24億盗られても平気なんですよ。クリーンなんじゃないですかね。でも彼は奥さんま綺麗で完璧すぎるのが弱点。スキがなさすぎる。一点くらいは世の男たちが『これは俺が勝ってる』と思わせるところがないと。……まあ夫婦ってのは似た人同士がなることが多いですからね」と仲の良すぎる夫婦の噺『短命』に。
他の噺家だと仲が良すぎる夫婦というのは「お店のお嬢さん夫婦」なのだが、兼好師の場合は八つぁん夫婦もそうなんじゃないかと思わせる。
八つぁんにお給仕してくれとたのまれたおかみさんは口では「やーだ、何言ってんの」と言いつつも終始笑顔で楽しんでる節が伺える。
お嬢さん夫婦の仲が良いことをご隠居に教えるのにお給仕のやり方を伝えるのだが、ここでの八つぁんとご隠居の温度差がたまらない。

三席め、真田広之の『SHOGUN』がエミー賞を受賞したことを受け、「なにがすごいってドラマ1話で日本の大河ドラマ1年分の予算を使ってるんですって。ホラ『えぇ~!』っていうでしょ。もう大河ドラマもつまんないですよ。いつも同じなの。私会津若松出身なんですけど戊辰戦争でいつも会津が敗けるの」。そりゃ史実ですから……。「大河ドラマも5話とかにしてそこに予算をつぎ込めばいいんじゃないですか」。全5話って果たして”大河”ドラマというんだろうか……。
「私アメリカってそんなに好きじゃないですけど、彼らの陽気さ、ポジティブさは見習いたいですね」と陰と陽の話から幽霊噺の『お化け長屋』。私は2年ぶり。時期的に今年は今日で最後かな。
普通繰り返しの場面の1回めの仕込みの部分は面白くないものだが、ここにも笑いどころをいろいろと盛り込んでくるところがさすが。結果的に全編笑いどころがあるというのが素晴らしい。
長屋全体で新しい住人を追い出す作戦中、「じょうろで雨をシトシト降らせてくれ」という注文で「じょうろ持ってきたけど水入れてくるの忘れた。……いいか口で。シトシトー、シトシトー」で「雨が降ってきやがった」となるのがおかしい。なんでそれが通じるんだ。

さて今日は久しぶりにハシゴなので高田馬場へ移動。
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真打昇進披露興行 令和六年九月二十一日 [落語]

真打昇進披露興行 令和六年九月二十一日
於:鈴本演芸場

春風亭一花『やかん』
林家八楽 紙切り 文金高島田 古今亭伝輔 真打披露目
五明樓玉の輔『都々逸親子』
古今亭志ん輔『替り目』
すず風にゃん子金魚 漫才
橘家圓太郎『強情灸』
むかし家今松『壺算』
アサダ二世 奇術
春風亭一朝『芝居の喧嘩』
真打昇進襲名披露口上
ホンキートンク 漫才
柳家花ごめ『不安な母』
柳家さん喬『そば清』
柳家小菊 粋曲
古今亭始 改メ 古今亭伝輔『幾代餅』

落語協会秋の新真打披露目の大初日。

八楽さん、切るのが速いがしゃべりも上手い。リクエストで「真打披露目」が上がると「今(伝輔師を)切ったじゃないですか」と笑わせる。

志ん輔師、開口一番に「伝輔のヤツには親戚が多いようで……」と満員の客席に志ん輔師一流の感想を述べる。
「これから45日披露目が始まる。……飲むんでしょうなあ。そればかりが楽しみで。最近は立ち飲みなんてのが増えて若いお姉ちゃんが飲んでたりしますな。立って飲む酒が美味いのかってねえ……美味いんだよねえ。どうやって飲んでも酒は美味い」と酒呑みの話から『替り目』に。
細かい仕草とか顔の作り方とか、やっぱり上手いなあと思う。これが円熟味というものなのか。

一朝師、ちょうど久しぶりに『芝居の喧嘩』聴きたいなーと思っていたところだったので嬉しい。小気味よくポンポンと語られる口跡は何度聴いても心地よい。

真打昇進披露口上は司会が玉の輔師で下手から圓太郎師、伝輔師、志ん輔師、さん喬師。
後幕はドラゴンボールのスカウターを装着したアニメ調の伝輔師を描いたもの。手が木目調のからくり仕立てになっており、結んだ印からなにやら気が放出されているというようなもの。今どきですなあ。
さん喬師、会長就任一発めの口上なわけで、なにかあるかと思ったが特にこれまでと変わりなし。さん喬ドミノもなかった。
志ん輔師は自身の真打昇進時の改名のエピソードを語りながら「伝輔」の名前について話す。

新真打の最初の高座は花ごめ師。「古典は伝輔さんがやるでしょうし、私がトリのときは古典をやるんで、今日はやりたいように新作をやります」と噺に入る。
二十歳のバースデーに娘から母に向かって「実は私はあなたの本当の娘じゃないの」と打ち明ける噺。もちろんウソのドッキリなのだが、それを母が信じてしまうというもの。あーこういう一度信じちゃうと人の話聞かない人いるよねーともどかしくなる。

始さん改メ伝輔師、「新真打の中で私がいちばん下っ端なのになぜ大初日なのかというと、スケジュールです。師匠の」だそうで。……いや大初日は9月21日って決まってるのにそんなことある?
「何やろうかと思いましたが思い入れのある噺を」と『幾代餅』に。清蔵の生真面目な感じがよく出ており、幾代との一夜が過ぎたあとの変わりっぷりも楽しい。
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人形町噺し問屋 その113 [落語]

人形町噺し問屋 その113
於:人形町 日本橋社会教育会館

三遊亭兼好 ご挨拶
三遊亭げんき『味噌豆』
三遊亭けろよん『初音の鼓』
三遊亭兼好『夫婦岩』
コント山口くんと竹田くん コント
三遊亭兼好『百川』

有給取って4連休。
とはいえ明日からは雨続きらしいのでバイクで出かけるなら今日しかない。
ということでツーリング先として大好きな千葉へ。日本三神宮のひとつの香取神宮へ行ってみる。
途中のパン工房リヨン小麦館というパン屋で休憩兼朝食を摂る。クリームパンが売りらしく、200円以上とクリームパンとしてはお高めだがこれが美味かった。カスタードクリームなのだが、濃厚でオムレツかってくらいトロトロ。サービスのコーヒーもいただいて大満足。おすすめする割には写真も撮ってない。

香取神宮で無事参詣も済ませ、鹿島神宮と対となっている要石も見る。

茨城の潮来に移動して行列のできる定食屋へ。運良く並ぶこともなく入店でき、名物マグロ丼。いろんな部位がたっぷりと乗り、特に炙った刺身が美味い。
DSC_1571.jpg
Nikon Df

その後また千葉に戻ってインスタで見た野菜の直売所に移動。野菜も買うがあんころ餅が有名らしくそれも買い食い。なるほど餅も柔らかくて美味い! ……ちょっと今日食い過ぎだな。

そんでもって温泉に入って途中で梨を買って帰宅し、猫にオヤツあげたらすぐに家を飛び出す。我ながら忙しないねえ。

まずはご挨拶。
「この夏頑張った人といえば……今日はもう大谷さんでしょう。彼の場合、『いつ達成するんだろう?』とワクワクさせてくれる暇がない。ポンポンポンと今日3本ホームラン打ったんでしょ? もうちょっと楽しませてくれても……」と大谷でしかあり得ないようなクレーム(?)。確かにいつの間にかって感じだもんなあ。
「私、大谷さんは『チーターみたいに速いゾウ』というイメージでしたけど、そういうわけじゃないんですってね。彼のすごいところは、データ社会のアメリカで、膨大なデータを覚えて体に定着させてそれを状況に合わせて実行できるところなんですって。で、データを体に定着させるためには質のいい睡眠が必要なんですって。彼は睡眠にすごいお金掛けてるんですってね。……で、実は落語もデータなんですよ」。会場中から「えぇ?」と声が上がる。「皆さん『えぇ?』と思ってらっしゃいますけど、例えば上手い前座とそれほどでもない真打が何日か一緒に回ると、イマイチな真打の方が勝つことがあるんです。一席だけなら前座の方が面白い、というときもあるんですが、長い期間で見るとやっぱり真打は経験を積んでいる。こういう場所でこういうお客でこういう気候ならこういう噺がウケるかな、というデータが頭の中に定着してるんです」。なるほどなあ。「だから仕事がない師匠はデータがない。しかも打ち上げで酔い潰れるまで飲んで倒れ込むように寝るから睡眠の質が悪い。だから食事付きの会で平気で『禁酒番屋』演ったりする」。もちろん冗談なんだろうけど、圓楽党の上の人たちならやりかねないと思っちゃうからなあ……。

「あとは兵庫の斉藤知事ですかね。あれだけ全員からダメ出しされてるのにへこたれないのは見習いたいですよ」とくさす一方で、「日本のマスコミは『いじっていい人がいた』と見つけると徹底的にやりますから。『実はこんないいこともしてます』とか言い出して、賞味期限を伸ばそうとしてるでしょ」とマスコミにもチクリ。最近マスコミ信用できないからなあ。「でもあの人落語聴いても笑わなそうですよね。他人に共感できないから滑稽噺で笑ったり、人情噺で泣いたりできないでしょ。さん喬師匠の『芝浜』とか聴いても真顔で『……え、もらった酒を飲んじゃダメ、ってこと?』とか言いそう」。あの人はモンスターですから……。

「それからこの夏頑張ったといえば私ですよ。今年もエアコンなしで乗り切った」。すっげ。正気ですか。ウチは猫も心配なので昼もつけっぱですわ。「夜に窓を開けてるといろんな声が聞こえてくる。政治批判おじさんとか。あとどうもうちのマンションの住人の中で暴走族に入った子がいるらしくて家の前でブァンパパブァンパパやってるんです。こないだ『オイ早くしろよ』って声が聞こえてきたんですけど、『ちょっと待てよ、今お母さんに聞いてくるから』って……。どうです、ウチのマンションには暴走族だけど親孝行がいるんです」。そうかなあ?

短髪になってサッパリしたげんきさん、噺の方も上達しているようで、その過程を見られるのも楽しい。小僧が味噌豆を山盛りよそってそれを食べる仕草もサマになっている。

さっきの兼好師の話の「上手い前座」ってのはこの人だろうなというけろよんさん、やっぱり上手いよね。
とはいえ師匠の『初音の鼓』を何度も聴いてるからね、その差は如何ともしがたく。自分で書いててヤな客だなあマジで。

兼好師の一席め、皇居の馬車倉庫が小火になっても陛下が「皆さんに怪我がなければよかった」と仰ったエピソードを受け、「まんま『厩火事』じゃないですか、楽屋じゃ『陛下も落語聴くんだな』ってもちきりでしたよ。そうじゃないと思いますが……。あのお方は本当に人がいいんでしょうね、皇后の雅子様もそうですが……」と皇室のおふたりから夫婦の縁の話に。
「よく『赤い糸が』と聞きますが、これは中国の月下老人の故事が元になってるんだそうで」とその月下老人の話をマクラに。そこでは夫婦になるのは「赤い糸」ではなく「赤い縄」で繋がってるのだとか。
噺は昨年に擬古典の会で兼好師用に書かれたものらしい。
お互いに不平不満があり大家に訴えるも結局は仲が良すぎるというからという『堪忍袋』と『厩火事』を混ぜ込んだような噺。
夫婦喧嘩の末、どちらが長屋を出ていくかを綱引きで決めようというもので、とにかく兼好師の人物の切り替わり方とか人物描写の上手さ面白さを堪能できる。

コント山口くんと竹田くん、行列のできるラーメン屋のラーメンが不味すぎる、というコント。どこまでがアドリブかわからないが、竹田先生のギャグが滑ったときの空気がすごいことになっていた。
けれども最終的には爆笑の高座でさすがの貫禄を見せる。

兼好師の二席め、先日牛久で仕事があったそうで、その際に牛久大仏にも連れて行かれたという。あら奇遇
「いやあ奈良平安時代にできたとかならともかく、昨日今日できたんでしょ!? それにそもそも信仰もないんで……と思っていたんですが、いざ実物を見ると瞳孔が開きました。『デカっ!』って……。私でさえ手を合わせましたから」だそうで。
「ああいうのは実際に自分の目で見ないとわからないですね。山王祭の象の山車も実際に見てみたらすごく大きくて驚いた。昔の人はもっと驚いたでしょうね。大きいし、見たこともないような動物をかたどった山車が出てくるんですから。昔は今よりも祭りを楽しんでいたんでしょう」と祭りの準備の噺の『百川』へ。
兼矢さんのをこないだ聴いたばかりだが、兼好師は4年ぶり!? そんなに開いてたか。
百兵衛さんは訛りが強い上に早口で、語尾の「ヒェッ!」が強いので噺を聞き慣れている私も聞き取れない。それを喰らわされた江戸っ子たちのぽかんとした表情が楽しい。
さらには「バテレンの言葉がわかる」というインテリキャラの金ちゃんまで登場。くわいの金団を見た百兵衛さんが「あんちゅうもんかね」と尋ねたのを「わっちゅあねーむ……名前を聞いてるんだ」と解釈するのも楽しい。
くわいの金団を丸呑みするところのくだりを丁寧に行い、どの言葉がどういう行動に掛かっているのかを筋道立てて解説してくれるのでわかりやすい。ご通家には「説明しすぎだ」とか言われちゃうのかしら。
百兵衛さんが百川の奉公人だとわかったあと、一転江戸っ子が超早口でまくし立て、それに百兵衛さんがぽかんとしてしまうという攻守交代が起こり、その対比が面白い。いろんな仕掛けを用意してんなあと感心してしまう。

こないだ兼矢さんに梨を渡したので師匠にもお土産。でかいから手荷物になっちゃったかな……。
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しのばず寄席 9月16日 昼の部 [落語]

しのばず寄席 9月16日 昼の部
於:上野広小路亭

柳亭楽輔『火焔太鼓』
三遊亭花金『風呂敷』
三遊亭兼好『一眼国』
瞳ナナ 奇術
春風亭柳之助『文七元結』

今日は朝から曇り空でバイクはパス。
車で買い出しへ。新米が出ていたので5kg買ったが、いつもよりも1000円近く高い感じ。うーん。
買ってきたピザでビールをグビリと飲んでから落語へ。

……体調悪かったのかなあ。たった缶ビール1本だけのアルコールで全寝。
兼好師だけは頑張って起きて聴いたが。
しかもうつらうつらとかじゃなくて結構がっつりめに寝てた気がする。
もちろん途中で寝ちゃったことはないわけじゃないけど、ここまでずっと寝てたのは初めてじゃなかろうか。
失礼いたしました。
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三遊亭兼矢落語会 ~負けてたまるか!?(自分に)~ [落語]

三遊亭兼矢落語会 ~負けてたまるか!?(自分に)~
於:新宿三丁目 シン・道楽亭

三遊亭兼矢『桃太郎』『茶の湯』『百川』

昨日はインスタで見つけた茨城坂東市の蕎麦屋まで。1500円で蕎麦食べ放題という変わったサービスをしている。
小さめのせいろで蕎麦が出て、3枚で一人前とかなんとか。
食べ終わったら5枚とか10枚とかを追加注文するのだが、どうも厨房ひとりホールひとりで回してるようで全然出てこない。5枚とかすぐに食べ終わってしまうので、待ってる方が長い。
肝心の蕎麦はロットごとに出来不出来があるような感じ。美味しく茹で上がってる時もあれば伸びてるときもあり。最初は5枚ずつ頼んだのだが、とにかく待っている時間が長い。なので3回めくらいのおかわりで「10枚で」と頼んでしまう。
それにしてもせいろが積み上がっている光景は壮観。落語好きとしてはもちろん『そば清』や『蕎麦の隠居』が思い出される。
さてようやく蕎麦が届いたのだが、ちょうど同時くらいに満腹感を覚える。まあ蕎麦だし食えるだろ、と思っていたのだが残り2枚ではち切れそうに。あーそば清さんもこんな気持だったのかしらなどと思いながらもなんとか詰め込む。
……それにしても茨城だからなのかもしれないが、店にいたオッサン堂々とビール飲んでたけどアンタらバイクだろ。店のオバちゃんがカワサキのZに乗るとも思えんし。そういうのホントやめてほしい。
で、夜からは高校時代の友人と飲み。ちっとは腹もこなれるかと思ったが、超満腹のまま。居酒屋では何も食えずひたすら酒だけを飲む。なんかそしたら変な酔い方をしてしまった。

朝になりハラの動きも戻るかと思ったが、イマイチちゃんと動いてない感じ。今日はバイクで千葉の方まで行って飯を食う。やっぱりツーリングするならチバラキですな。で今日も定食のライスが炒飯でおかわり自由、というボリュームが売りの店に行ってしまう。昨日食いすぎたのに何やってんだか。

千葉の西部は梨が名産のようで、松戸や鎌ケ谷で梨農園の直売所が軒を連ねておりどこにも客がたくさん入っている。親父の墓のある埼玉の騎西も梨が名産なので、いつもは墓参りの帰りに梨を買ってくるのだが今年は行かない予定なので千葉で梨を買う。たくさん買ったので兼矢さんにもおみやげに持ってくか。

とまあすっかり前置きが長くなってしまったのだが道楽亭へ。席亭が亡くなってからは初か。

圓楽一門会は東京の東をホームにしているのであまり新宿には馴染みがないという兼矢さん。鳳月さんと落花山さんとの会を新宿でやっていたそうで、その時の思い出話をマクラに。企画ありの会だったそうだが、その企画がことごとく尖りすぎていて3回であえなく終わったのだとか。
一席めの『桃太郎』、最初の親子のスタンダード桃太郎で「おい金坊?」という問いかけがちゃんと寝た子に対してかけるようなトーンでいい。たまに寝た子を起こすように「おい金坊!」ってやってる人いるけどアレはちょっと。
二組めの親子はクセ強め。子どもが瞑想していたりアジテーションしていたり。それにいちいちツッコむお父つぁんもおかしい。

二席め、足立区から葛飾の水元に引っ越したそうで。……なんでそんなとこに。たまに水元公園とか行くけど、バイクでも結構遠いぞあそこ。「葛飾区のことよく知らないんで、どんなところなんですかって聞いてみたんですよ。そしたら『んー、足立区みたいなところ?』といわれました。治安が悪いのかと聞いたら今はそれほどでもないそうですが、昔は有名な悪い学校があったんだそうで。こないだ散歩してたら知らないおじさんに『おう、クスリやってるニイちゃん、その後どうした』って聞かれました。水元には誰かクスリやってたニイちゃんがいたみたいです」だそうで。
「今は鶯谷というと汚いイメージがありますが」そうか? いやまあきれいなイメージもないけど。「昔は根岸は風光明媚なところだった」と『茶の湯』に。
茶の湯道具の適当な名前が「チャスクウーノ」とか「シャカシャカくん」とか適当すぎるのが面白い。
「茶の湯なんだから上品に」といいつつ茶釜の蓋を開けようとして「あっつ! ……クソっ!」と叫び「一回は汚い言葉を使ってもいいんだ」というルールがすごい。
三軒長屋のくだりはカットで知人の訪問へ。
茶の湯を知らないという人が適当にやっていたらご隠居のお流儀とまったく同じになり、暑い茶碗を持って「あっつ! ……クソっ! ……ああこれは失礼を……一回ならいい?」とトレースしているのがおかしい。

三席めはアレンジ少なめの『百川』。少なめとはいいつつ結構入ってるけど。
前回の会のときも書いたんだけど、単に間違えたのか話の順番がちょっとおかしなところがある。たとえば今日の場合だと「顔を潰さねえで貰いてえ」というセリフが金団を飲み込んだあとに出てきた。やっぱりこのフリがあって「そこをどうか、『潰さずに』飲み込んでもらいてえんで」と強要されてくわいを飲み込む羽目になるという順番は変えられないと思う。
まあ単純に間違えたのだとしたら、何事もなかったかのように流せるようになったのはすごい。前座の頃になんの躊躇もなく「あっ間違えた! やり直していいですか?」とやっていたときと隔世の感がある。
百兵衛さんは「うしっ!」強め。朴訥感も兼矢さんらしい感じ。

打ち上げもあるようだが、バイクなのでもちろんパス。梨を渡して帰る。
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三遊亭兼矢の色々ひとり会 [落語]

三遊亭兼矢の色々ひとり会
於:中野 なかの芸能小劇場

三遊亭兼矢『手紙無筆 兼矢Special ver』『崇徳院』『ちりとてちん』

先週は雨でバイクに乗れなかったので、この会の後にどこか行こうかと125ccではなく250ccで出かける。
と信号待ちをしている間にエンジンが止まる。おおっ!? え、なんで? クラッチつないでないよな? エンジンをかけようとしてもプスプスいうだけ。ええ? んな買って半年も経ってないのに壊れる? とりあえず交差点から離れてスターターを押すと弱々しくもエンジンが回りだしたのでアクセルをぶん回してエンジンをかける。
バッテリーでも上がったか? けど買ったときに新品に変えたはずだし、2週間乗ってないだけで上がるなんて考えられない。でも125ccのバイクのエンジンが掛からなくなったときと似てるんだよな。うーむ。
とりあえずその後エンジンは大丈夫そうだが、不安だな。
そんなトラブルもあり開演に10分ほど遅れる。もー。

一席めがすでに始まっており、マクラを逃す。どうやら『手紙無筆』のようだが、なぜか八五郎がお清さんという女性から好意を持たれているというストーリー。
「あっしのどこが好きだっていうんですか?」「おう、書いてあるぞ。『あーう八五郎! アタシが好きなのは……』」「手紙と会話してるじゃないですか……」というような感じの会話が続く。
これは発明だなあ。たしかに『手紙無筆』は兄貴分も八五郎もどちらも書いてあることがわかっていないので、好きなようにストーリーを作ってしまってもいいわけだ。
お清さんから好意を寄せられているとのぼせ上がった八五郎が調子に乗って兄ィを怒らせ、そこからさらにストーリーがめちゃくちゃになっていくのが面白い。最初を聴いてないので前提がわからないのが悔しい。

二席めはネタ出しの『崇徳院』。
「アタシの妻は鬼嫁でして」という奥様の話から「一目惚れというものはある。人間一目惚れをしてるときはチンパンジーと同じくらいの知能になるらしいですよ」とどこまでホントなのかわからないうんちくから噺に入る。
んーーー、八っつぁんが若旦那から恋患いの話を聞いて、相手がどこの誰かがわからないということを把握したうえで大旦那に報告に行っているっていうのがちょっとなあ。これ「なんだ、そんなことですか。じゃあそのお嬢さんとくっつきゃいいんでしょ!?」と相手がわかっている前提で安請け合いをし、大旦那から「で、相手は誰だ」と聞かれて肝心の相手がわからないということがわかって自体の深刻さに今更ながらに気づくというところが面白いんであって、最初から八っつぁんが若旦那に向かって「相手が誰かわからないんじゃ探しようがないじゃありませんか」と言っちゃったら盛り上がりに欠ける。
それと「もし相手が見つからなかったらお前は磔獄門だ」と大旦那がいうが、これも「お前を主殺しとしてお奉行所に訴える」という「お上の力を借りて」というのが重要なんだと思う。大旦那が磔獄門しちゃったら単なる私刑になっちゃうし。
八っつぁんがお嬢さん探しに回るのが床屋ではなく湯屋に変わっているのが兼矢さんの工夫か。「お湯に浸かりすぎてミシュランの化け物みたいになってる」というくすぐりが入る。ところで当時の湯屋の洗い場に鏡はあったのだろうか。ないような気がするんだよなあ。こういう細かいところがいろいろと気になりだすと噺に集中できなくなるので、変える必要がないんであれば無理して変えることもないと思うのだけれども。

仲入りのあとは恒例の質問タイム。「『甘党ですか辛党ですか』? いいですね、私に興味がないというのが伝わってきますね。私はなんでも食べますけど、あまり甘いものは食べないですね。……あっ、お客様にいただくものは食べますよ。急に意地汚くなったみたいになってますけど。『趣味はなんですか』? 最近は瞑想にハマってます。でも物事を考えてると失敗したこととか前座の頃の恥ずかしいこととかを思い出してすぐにやめちゃうんですけど」などなど。「『兼好師匠は優しい師匠だそうですが、しくじったこと、激怒されたことはありますか』。……優しい? ……うんまあそうですね、確かに激怒されたことはないです。でも逆にああいう人のほうが怖いんですよ。『バカヤロー!』って怒鳴られればこっちも『ハイッ、すみません!』って謝れるんですけど、笑いながら『キミはヤバいね』って言われる方がよっぽど怖い」。あー……。兼好師はお弟子さんにもホントにあの調子なんだなあ。
なお次回にやってほしい噺のリクエストは私のが通った様子。こりゃあ期待ですな。

三席め、兄弟子の鯛好さんは何でも食べるそうで、好楽師の家にあった賞味期限10年すぎのカニ缶を食べたのだとか。「後日、アニさんあの缶詰どうでしたって聞いたら『あんまり美味くなかった』って。当たり前ですよねえ。このことからウチの一門では『腐ったものは鯛好に食わせろ』、これを縮めて『腐っても鯛』というようになった」と腐った食べ物の噺に。
お世辞の上手い金さんはテンションが高いが、たまに自分の言ったシャレで「……はぁ」と落ち込んでしまうのがおかしい。
その金さんに最初は豆腐の腐ったものを旦那が食わせようとするというのは珍しい。
さすがに拒否されて、「冗談だよ、おい清、これを瓶か何かにしまって……」となぜかそれを保存しようとしてから「裏の六さんに食わせよう」となる。
いやそれはちょっと順番がおかしいでしょ。なんで使い道も思いついていないうちに瓶に入れようとするのさ。シャレでも金さんに食べさせようとして拒否されてじゃあ六さんに、となって瓶にしまうならともかく、瓶にしまってから六さんを思い出すのは理屈に合わない。
落語ファンなんて子狸が喋ったりサイコロや札に化けたりしても受け入れる程度の理屈しか持ち合わせていないけど、やっぱり噺の辻褄が合わないのは気になるよ。その小さな引っ掛かりのせいで噺に集中できなくなってしまうのはもったいない。
なお六さんは毒づきながらも美味しいものを食べて表情を抑えきれない一蔵師のと同じタイプのひねくれものだった。

終演後、バイクにやや不安はあるものの、バッテリー切れなら充電を兼ねて遠出をしようかと思い奥多摩まで。
10年前、初めて原チャリじゃないバイクを買ったときに行ったきり。そのときに行ったもえぎの湯に向かう。奥多摩に行くには途中、というか工程の4/5くらいが新青梅街道なのだがこれがもうホント楽しくない。どんな道でも信号の塩梅なのか自分の前に車がまったくおらずに快適に走れることが多少はあるものだ。新青梅街道にはそれがない。都心から都下までずっと車がびっしりと走っており、さらに短い間隔で信号があって結構な頻度で引っかかる。そのため、6速あるギアのうち、ほぼほぼ4速くらいまでしか上げられない。新青梅街道はみずほ寄席に行くときに使うが、これまで車や125ccのバイク、つまりオートマに乗っていたときはそれほど感じなかったが、ギア付きに乗っているときはこれがそんなにストレスになるとは……。
しかも道幅が狭いので、混んでいてもすり抜けもやり辛い。まああんまり好きじゃないんでもともとそんなにやらないけど。
もうみずほ寄席行くとき以外はこの道使わない。
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第12回 兼好集 [落語]

第12回 兼好集
於:浅草 浅草見番

三遊亭兼好『孝行糖』
三遊亭けろよん『釜泥』
三遊亭兼好『野晒し』
春風亭だいえい『位牌屋』
三遊亭兼好『鰻の幇間』

昨日久しぶり仕事でやらかす。
いやまあやらかすのは日常茶飯事なのだが、いつもなら他のスタッフが、とかクライアントだって、とかあるんだけど昨日のは純度100で俺が悪い。というか俺しか悪くない。あー始末書かなあコレ。
ということで作業し直し。一応作業やデータ授受は一段落はしたので会社を出たかったのだが、そういう時に限って同僚から質問がきたり、相棒の同僚が離席してて帰ることを伝えられなかったり。いつもなら何も言わずに帰るんだけど、なにしろ俺100のミスだけに万一この後になにかあったらアレなのでせめて帰ることくらい伝えておかなければ。
戻ってくるのを待ってたら予定よりも10分以上会社を出るのが遅くなってしまった。しかも会場は浅草見番。会社からも駅からも遠い……。
この会は前座が最初なはずだが、前回は兼好師が最初に上がったし……。約5分ほど過ぎて会場へ到着。げんきであれ! となんか別の意味に取れる願いを掛けて2階へ上がったが、願いも虚しく兼好師であった。なんだかいろいろ語弊のある一文だな。

おそらく「暑いところから涼しい会場に入ると寝る」とここ最近の定番の導入を話していたと思われる。
「最近総裁選をやってますけど、あれを聴くと寝ますね。特に石破さん。あの人の声は寝るのにちょうどいい。こないだテレビを見てたら家族全員で寝てた」。
寝るのにいい声があるように売り声にも買いたくなる声、買いたくない声がある、と『孝行糖』に。
何度も聴いてるしそこそこの頻度で聴いてるのに毎回毎回面白いってのは一体どういうことなのか。
孝行糖の売り声をどうする、と尋ねられた男が「……やってみせましょうか?」と言いだすときの一拍タメるタイミングが絶妙。まさに「お前がやりたかったんだろ」というツッコミが活きるタイミングというか。
しかもその売り声の手本が上手いんだ。口上の中で強弱や抑揚がつけられ、ホントそれだけで聴く価値があると思わせる。実際売り声で中手が起きるってそうそうないよ。
与太郎の「お向こうの金ちゃんと同い年」もこれだけで爆笑が起きるんだから。

二席め、「携帯の普及で電話番号を覚えるなんてことはまるでしなくなった。タウンページもなくなるようですね。会社員時代に営業先の電話番号がわからなくなって、得意先近くの公衆電話のタウンページで探したらそのページだけ破られてた。結局遅刻して怒られましたねぇ」とサラリーマン時代の思い出話を。
「その当時、営業の上手い先輩がいて、その人の趣味が釣り。一緒に営業車に乗るとマイ釣竿が積んであって、営業を終わらせて釣り堀に行くんです。……釣りをしたいから営業を早くまとめてたのかも……」と釣りの話から『野晒し』に。
コツとのあれやこれやを妄想して、水たまりに顔を半分突っ込みながらひとりでニヤニヤ語っている表情がたまらない。息継ぎをしながらというのもおかしい。
圧巻はさいさい節。コブシが効いて実に上手い。これをやりたくて噺を選んだのではないかと思うくらい。
コツは茂みに3体ほどあるというなかなか凄惨な現場ではあるが、最近読んだ椎名誠のエッセイによると江戸時代はホントにそれくらいそこらへんに死体が打ち捨てられていたんだとか。
「どのコツにしようかな……。白くて小さいのにしておくか。いやでもコツがやってきて『おじちゃん』……なんてのはダメだな」などとやってる能天気さが楽しい。

だいえいさん、『位牌屋』は私の中でレア噺。兼好一門以外で聴いたのは初めて。……とはいえまあ噺のテーマといい内容といい、一般的にウケるような噺じゃないよなあ。
さらに子どもがタバコ吸ってるし、現代のコンプライアンスがんじがらめの世の中にケンカ売ってるような噺ですな。

兼好師の三席め、「最近は米が足りないそうで。そうするとお客様から『大丈夫か、米はあるか』といただいたりする。いい商売だなあとおもいますね。我々はいただくだけですけど、これを商売にしているのが幇間」と『鰻の幇間』に入る。
『鰻の幇間』は今シーズン2回め。
これもまた酒を飲んで「美味い!」という前に一拍開く間がたまらなくおかしい。ホント絶妙。酒を飲むたびに毎回一瞬真顔になるのも笑える。
お新香を食べるときになぜか蕎麦のようにズゾゾッとすすっており、切れてなくて繋がってるんだろうなーと予想しながら聴く。このお新香を結構何度も一八が食べ続けているのもおかしい。予想通り切れてないお新香だったが、きゅうりだけじゃなく大根までその状態だったというのが最高。

せっかく浅草に電車できてるんだからちょっと飲んでくかと思ったが、目指した店は満席。
しょうがないので北千住に戻り、久しぶりの居酒屋に入ったら学生っぽいのが超絶デカいけたたましい笑い声を撒き散らしている。たまらずノイキャンイヤホンしても耳に刺さるってすげえな。カンベンしてよ……。
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