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池袋演芸場 七月下席 七月三十日 昼席 [落語]

池袋演芸場 七月下席 七月三十日 昼席
於:池袋演芸場

入船亭辰ぢろ『狸札』
入船亭遊京『道具屋』
柳家さん花『初天神』
林家きく麿『ロボット長短』
笑組 漫才
橘家文蔵『千早振る』
古今亭菊之丞『短命』
古今亭志ん雀『ピストル強盗』
柳家小満ん『不明(社長と小使いの熊さん)』
伊藤夢葉 奇術
入船亭扇橋『甲府い』

千穐楽。池袋演芸場のWebをチェックしたら、新版三人衆の残りふたりも扇辰師も揃って代演。えーーーどうしようかなと思ったが、代演のさん花師ときく麿師を聴きたいなーと思って行くことにする。
結果的にはこれが大ヒット。

さん花師の『初天神』は導入部こそ同じなのだが、「わがままをいったら川へおっぽりこむからな」というあたりから徐々に変わってくる。「実際にあたいが川で溺れたらどうするの?」と聞かれた父親が「助けるに決まってるだろ。何がなんでも助ける。可愛い息子じゃねえか。そもそも川に河童なんかいねえんだ」とか、「今日はお前はわがままをいわないいい子だからご褒美に飴を買ってやろう」といいながらも働いたことがないので銭を持っておらず金坊が自分の小遣いで飴や団子を買うというどっちが親なんだかわからないという大胆な改作。いやあ面白い。

そしてきく麿師、いつものように小林旭の唄を歌い上げた後で「今日は古典をやろうと思います。落語の中に出てくる人物といいますと熊さんに八つぁんに横丁のご隠居、なかにはロボットなども出てくるようで……」と聞いたことのない導入から長さんがロボットに置き換わった『長短』。これがもう理屈抜きで面白い。何をするにも「ウィー、ガシャン、ウィウィーガシャン」と音を出しながらでないと動けないのに、長さんだから言動がまどろっこしいという。

小燕枝師の代演の志ん雀師も珍しい噺をかける。どうやら他には夢丸師しか演り手はいない様子。

で、珍品といえば小満ん師。扇橋師も演目名を知らないという。
昭和30年代頃を舞台にした噺で、パワハラ社長に似ている小使いの熊さんを自宅に招待しようとして、たまたま社長のほうが家にきたという噺。
今ならパワハラやモラハラなどといわれそうだが、いかにも昭和な感じ。白黒テレビでも見ているような感覚になる。

トリの扇橋師はスタンダードに。
目新しいものとか突飛なものとかはないが、しっかりと丁寧に語られていて安心感がある。
文蔵師から「とは」の謎が振られており、「前座さん……いや一門なので『さん』なんかいらないか、辰ぢろがですね、私が楽屋に入ったら『お疲れ様です』でも『千穐楽おめでとうございます』でもなく、開口一番『文蔵師匠から”とは”のパス出てます』って……。お前がいわなきゃスルーできたのに。ほんとイライラしてます」と憤慨しながらも、豆腐屋の売り声を教えるときに「戸はピタッと締めて……戸はピタッと……『とは』?」と組み込んでいた。

今日も炎天下の下をバイクで走る。昼は日差しが痛いほどだったが、夕方からはさほど蒸さずそこそこ気持ちよく走れる。夏はいいなあ。
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池袋演芸場 七月下席 七月二十九日 昼席 [落語]

池袋演芸場 七月下席 七月二十九日 昼席
於:池袋演芸場

春風亭一蔵『大師の杵』
古今亭菊太楼『祇園祭』
笑組 漫才
入船亭扇辰『千早振る』
古今亭菊之丞『湯屋番』
柳家さん助『夏の医者』
柳家小満ん『夢の酒』
林家楽一 夕涼み 花火 津軽三味線を弾いている私 金魚すくい
入船亭扇橋『佃祭』

黒門亭から大急ぎで池袋へ。これまでこのルートをきたことないな。上野池袋のハシゴはなかったか。

一蔵師までに間に合わないかと思ったが、なんとかおもよさんが身投げをするあたりから入れた。今日は隅田川の花火だから、テキヤ時代のマクラだったのかな。「一蔵ひとりの会」がまだ再開していないので最近一蔵師とご無沙汰。披露目のパーティーでも言っていたように、寄席が主戦場になっているようだ。

菊太楼師、京の男のイヤミな感じが大げさでおかしい。

扇辰師のハシゴも実は初めてか? マクラでも「今日はもう黒門亭で一席やってきた。……ですので今は抜け殻です。やる気が出ねえんだよ。それに一蔵も菊太楼もうるせえよ。よくあんな大声出せるな。けど楽屋じゃぐったりしてるんだよ」。
そんな扇辰師も千早が乞食に身を落としたときには浪曲仕立てで唸りまくる。

さん助師、噺に入って医者の先生が出てきた場面で「……あっ、ここで羽織を脱ぐんだった……」と大慌て。さっき黒門亭で天どん師がいってた話と偶然にもリンクする。「着なおさせてください」と改めて羽織を着、「これがライブ芸ですから。……代演なんで勘弁してください」。

楽一さん、切り絵はだいぶ上手くなったと思うんだけど、話すタイミングというか間がなんか妙。話すスピードも遅いし、妙に溜めるので、「このあとなにか言葉が続くのかな?」と待つと何もなく「……リクエスト……」となるので客もリクエストが出しにくいし、受け取るときもサッと貰って引き上げるというよりも高座の前で時間がかかる。あれは多分なにかをお客さんに話しかけてるんだろうけど、受け取った後に引き上げるタイミングを逃しているように見える。だからなんか妙にハラハラするというか……。

扇橋師、「今日が一番力が入ってる。……まあ明日も似たようなことをいうんでしょうが」。
久しぶりに制限のない夏で各地で祭も賑わうというところから『佃祭』。扇橋師では小辰時代含めても初めて聴く。そうだっけ? 何度か聴いたような気もするんだけど気のせいか。
長屋の連中が悔やみを言いに来る場面で、与太郎の悔やみがいちばん心に刺さるという演出もどっかで聴いたことあるんだけどなあ。扇辰師……でもないような気もするし……遊馬師だったかな?
あと次郎兵衛さんが戻ってきたときに「じゃあ次郎兵衛さんはいままで女と酒を飲んでたってことですかい?」と話をややこしくするのも誰ので聴いたんだっけなあ。
ありの実のところはなく、無事に帰ってこられてよかった、糊屋の婆さん早桶いるかいというところで「『佃祭』というお話でございます」でサゲ。扇橋師らしく綺麗にまとめられている感じ。

外に出てみるとまだまだ日差しが強い。池袋の路地裏はバンコク感が強くてちょっと楽しい。
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黒門亭 第一部 3760回 [落語]

黒門亭 第一部 3761回
於:落語協会2F

柳家しろ八『子ほめ』
三遊亭ごはんつぶ『スクキャット』
入船亭扇辰『蕎麦の隠居』
林家時蔵『新聞記事』
三遊亭天どん『鰻の幇間』

暑ーーー。
バイク乗ってると爽やかでいいんだけど、直射日光がキツい。それにバイクだと汗がすぐ乾くので脱水に気づきにくくて実は結構危険だと聞いたことがある。気をつけねば。
でも服が汗だくになるのは困るけど、やっぱり夏はいいですな。夏生まれでタイ好きというのもあり、夏が一番好き。道路の照り返しの熱を受けながらどこかから何かが饐えたような匂いが漂ってきたときに目をつぶればそこはもうバンコク。排気ガスの匂いが混ざれば尚良し。
開演15分前に着くとどうやら最後のひと席だったようで、開いている座布団が一枚しかない。危なかった。この顔付けなら混むだろうとは思っていたけれど。最終的にはお膝送りをしてあと2~3人追加。座布団席ならではですな。

しろ八さん、落ち着いた語り口で声もいい。じっくりと聴けてこれはなかなかの期待株なのでは? と思っていたら、番頭さんと「顔が黒くなった」と話している場面で「……このあと何いうんだったかな」と八公が仕込んできたことを忘れたという演出なのかと思ったら本当に忘れたらしい。えええ。『子ほめ』なんて前座の必修みたいなもんじゃないの。慌てつつも八公と番頭さんが協力して次の場面へ。
ところがここでも「赤ん坊はどこだ」「そこにいるだろ」「……小せえな」といきなりやってしまい、「お祖父さんと間違える」というボケを潰してしまう。大慌てで「もう一回やらせてくれ」と長屋に入るところから。
ただこれがまあウケる。堂々と「間違えた」と言い放ち、あまつさえ言い訳までするという図太さが楽しい。
さらに降りる際にめくりをめくるのだが、おかしなめくり方をしてごはんつぶさんの「三」の字が隠れ、しろ八さんの「八」が見えたままになっており「遊亭ごはんつぶ八」になってしまっている。

ごはんつぶさん、髪を伸ばして後ろにまとめており、その端正な顔立ちもあって今どきの女子っぽい。こういうこと書いてもルッキズムだのジェンダーハラスメントとかになるのだろうか。
さておき、客席のざわめきが気になったようで、「どうかしましたか?」と高座を降りてめくりを見て「なんだコレどうなってるんだ? ……(めくりのすぐ上の隙間にめくりを差し込んでさらにそれを一番上に回してる)学校で裁縫を習ってるような気になりますが……」。高座に戻って「でも私もこないだまで前座でしたからわかるんですが、黒門亭の前座になるって大変なんですよ。9時半くらいにここへきて準備して、しかも前座はひとりしかいないので楽屋での師匠のお世話とか太鼓とか全部ひとりでやらなきゃいけない。それを一部と二部どちらもやって、さらに夜は鈴本へ行って仕事をする。……ということはですよ、彼は今日の中で今が一番コンディションがいいんです。それでアレ。……2部も聴いてみたくなりませんか」。気になるなあ。今日はそのまま池袋行くから聴けないけど。
噺はスクワットをする猫、スクキャットを飼っていると自称するふたりの会話がメイン。猫は外飼いなので自由に出かけられ、どうやら二重生活をしていたんですねえという会話の中で、この分だともうひとりいるんじゃ……となる。猫飼いとしては外飼いすんなと思うが、これが重要なポイントとなる。

扇辰師、そうかなーと思っていたらやっぱりそうだった。まあこの噺をやるのは現在扇辰師しかいないので、扇辰ファン以外の人には珍品を聴いてもらえるしこういう会のこういう出番ならまあそうなりますわね。「今やってて一番楽しい噺」らしいし。

時蔵師、「最近の黒門亭も変わりました。まさか前座が一番ウケるとは……。昨日は私も独演会で『鰻の幇間』やったんですがね、……やったら怒るだろうなー」。それはそれで面白い気はするけれど。

天どん師はネタ出しの『鰻の幇間』。もうコレ絶対面白いやつじゃん。ボヤき芸の天どん師が、騙されたと知ったときの一八の嘆くところをやっているのを想像しただけでもう面白い。
「今日は僕はね、マクラで羽織を脱がないことだけを気をつけてやりますよ。幇間とか侍の噺は羽織を脱がないほうがいいんですけど、ついマクラで脱いじゃったりするんですよ。そうすると後で大変になりますからね、気をつけないと」。そんなところだけを気をつけるって。
二階のお座敷に通されると、隣のいい座敷にお祖父さんが寝ているというのは初めて聞く形。
天どん師の嘆き節は予想を裏切らずに面白かった。仲居さんの口調が独特で、必ず尻上がりになりそれによってイラついているのがおかしい。
「なんだこのお猪口。兵隊さんが出征のときに配ったやつだろ。こんなもの出すなよ、もはやこの兵隊さんがどうなったのか気になるだろ」「隣で寝ておりますぅー↑」「隣の爺さんかよ!(敬礼)」というやり取りが天どん師らしくて好き。

さて急いで池袋に向かわねば。
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けんこう一番!第二十五回三遊亭兼好独演会 [落語]

けんこう一番!第二十五回三遊亭兼好独演会
於:国立演芸場

三遊亭兼好『浮世床(将棋、夢)』
三遊亭けろよん『かぼちゃや』
三遊亭兼好『天災』
RIO ウクレレ
三遊亭兼好『大山詣り』

日程がめちゃくちゃキツい案件を2本なんとか提出までこぎつける。のはいいんだけど、提出前日に社長が見せろと言い出し、あれこれダメ出しを喰らう。23時過ぎまで残業してなんとか修正し、提出当日に再度見せたら「昨日よりマシになった」ですと。はああああ? なんだそりゃ。これでもしクライアントから評判が良ければ自分のお陰、評判が悪けりゃ俺のせいか。あーもーマジやってらんねえ。あーイライラする。
昨日が提出日だったので今日は定時前に上がる。ホントは有給でも取りたかったんだけど。

兼好師の一席め、「暑い中これだけの方に来ていただいて本当にありがたい。これだけ暑いと自分が考えてるよりも疲れてるのでお気をつけください。……そんな中、BIG MOTORの社長、いいのが出てきましたねえ。ああいう人は3か月にひとりは出てほしい」と満面の笑み。そりゃあ兼好師があんなネタキャラを逃すはずがない。
「ゴルフボールを使って車を傷つけたことを『ゴルフを愛する人を冒瀆した』って……。そこ!? っていう感じ、たまらないですね。社員はあの会見を見て一斉に『ファーーー』ってなったでしょうね」と実に楽しそうにうまいことをいう。
「夏らしいことといえば、高校野球の予選も盛んですが、最近ではもう8割は坊主じゃないんですってね。私らの頃は100パーセント坊主でしたが。でもあれも戦争時の影響らしいですよ。戦時下でも学生に野球をやらせてあげたい、だからあれは遊びでやってるんじゃない、軍隊でも役立つんですよという理屈で坊主頭で行進もやるんだとか。昔は坊主というのは大変なことで……」という話の流れから、あれ『大山詣り』? 一席めから? と思ったら床屋の方に流れて『浮世床』に。
兼好師の『浮世床』は実に4年ぶり。そんなに聴いてなかったっけ?
女にモテたという話をするときの話し手と聞き手のテンションの上がりっぷりがおかしい。こちらはそれが夢の話だとわかっているから余計になのかもしれないが。

二席め、「雲助師匠が人間国宝になられたのは我々は嬉しい。『柳家じゃなくていいんだ!』と……。『なら三遊亭でもいけるんじゃ?』と希望が持てる」。確かに次はさん権あたりかと思っていたら雲助師というのはちょっと意外だった。けどなんの違和感もないし、いい人選だと思う。何より弟子が全員売れっ子というのもすごい。後進を育ててるという点では一朝師もアリかと思うけど。
「我々噺家は先輩の小言を素直に聞けないところがある」というところから『天災』に。これは2年ぶりくらい。あまり季節に関係のない噺のようにも思えるが、噺の中で「夏の雨は馬の背を分ける」という言葉があるからか、夏に聞くことが多いようだ。
天災の説明時、広い原なかで雨が降ってきたら、というところで八五郎が「オツな年増が『傘に入ってらっしゃいよ』『いいのかい』……」と長々と妄想を語るのを泳がせておいていいところで「そんな女は通らない!」とぶった斬る紅羅坊がおかしい。
長屋の熊に「アナタ柳のような心持ちになれませんか」を教えようとして「アナタ柳家になりませんか」というのもマクラと繋がっていて面白い。

ウクレレ奏者のRIOさん、ウクレレといえば小さなものを想像していたが、ギターとの中間くらいの大きさのエレキウクレレ。
オリジナル曲に加え、『ふるさと』や『となりのトトロ』、『飾りじゃないのよ涙は』を披露する。これらの知ってる曲ももちろんいいんだけど、オリジナル曲がまた
照明も派手に。

兼好師の三席め、ここで『大山詣り』。一席めのマクラと繋がっているのだろうか。
季節の噺なので掛ける回数はさほど多くないのだろうが、年に一、二度は聴いているような気がする。
暑さに弱いと自称する兼好師であるが、今日はあまりの暑さで調子が上がらなかったのだろうか。
もちろん面白いのだが、「先達っつぁん」を「大家さん」といっていたり、いつもなら絶対に外さない間が微妙にズレていたりとなんだかちょっと違和感があったかなあ。とはいえ他の人がどう思ったのかはわからないので、あくまでも個人的な感想です。というか個人的感想以外はないけど。
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池袋演芸場 七月下席 七月二十三日 昼席 [落語]

池袋演芸場 七月下席 七月二十三日 昼席
於:池袋演芸場

柳家十八『つる』
入船亭扇太『ぞろぞろ』
柳家さん花『幇間腹』
古今亭菊太楼『粗忽の釘』
笑組 漫才
橘家圓太郎『化け物使い』
橘家文蔵『のめる』
柳亭小燕枝『金明竹』
柳家小満ん『馬のす』
林家二楽 紙切り 桃太郎 コタツにウルトラマン ゴールデンレトリバー
入船亭扇橋『藪入り』

土日が2回含まれるいい日程。
ホントは昨日も来たかったんだけど、残念ながら休日出勤。
4年ぶりの足立の花火も見られず。まあ花火はどうでもいいんだけど。夜遅く帰ったのに人混みがすごくてげんなりする。ウチから会場は近いんだけど、裏の家とかマンションのせいでまったく見えないのでなんのありがたみもない。花火が初めてのココアが音でビビってなければいいんだけど。

先日見つけた池袋から少し離れたところにあるタイ料理屋でグリーンカレーの辛さ追加を食してから池袋演芸場に向かう。久々に尻が不安になくらいの辛さのカレーを食って満足。

今日はお目当てである一蔵師と扇辰師は代演。おおーい。まあそれでもいい顔付ではあるけどさ。まあ来週に。

扇太さん、茶店の老夫婦ではなく、荒物屋の父娘の方。詳しくは知らないが、柳家はこっちなんだろうか。

代演のさん花師、若旦那も一八もとにかく軽い。その軽薄な陽気さが面白い。サゲは本来のものよりわかりやすいものに変えられていた。

菊太楼師、「箒を寝かせておくと、その家に争いが絶えない」という理由までいったのは初めて聴いた。だいたいみんな「箒は寝かせておくもんじゃないっていうから釘打って」程度なのに。そして実際、箒を寝かせておくことでこの後のドタバタが始まるんだからあながち間違っていないのかも。

圓太郎師、「寄席のトリに『扇橋』という名前があるのはいいですな。ピリッとする感じがいたします。当代も名を残す噺家になると思いますが、やっぱり先代にはお世話になりました」と昔イラン人が売っていた改造テレホンカードを受け取ったためにイラン人につけられた話などを振って「その師匠に教わった話をやります」と『化け物使い』に。
杢助をこき使う場面はなく、化け物屋敷を買ったという場面から。このご隠居は単に頑固なのではなく、使用人に暑くはないか寒くはないか腹は減ってないかなどの気遣いもできる人で結構優しい。一つ目小僧にも腹が減ってるなら餅を焼いてやろうという演出は初めて聴いた。大入道やのっぺらぼうも出ず、一つ目小僧のみというのも初めてかな。

文蔵師、前も聴いたことあるんだけど、やっぱり兼好師のと似ている。

小燕枝師、「襲名して10ヶ月くらい経ちますけど、まだ慣れませんね。漢字も難しいし。前座二ツ目の頃は市弥(市也)という名前だったんで『イッチー』とか呼んで調子乗ってたんですけど、『こえんし』だと……『こえちゃん』てのもねえ。臭そうだし……」。
噺の言い立ては結構怪しくて転びそうになったのをなんとか踏ん張った、という感じ。本人も焦って苦笑い。

小満ん師、こういう特に盛り上がりがあるわけでも大げさな仕草があるわけでもない噺が、あの淡々とした芸風によく合っていると思う。

二楽師、「コタツにウルトラマン」というトリッキーなお題に面食らいつつもウルトラマンファンのこだわりを細部に入れながら時間を掛けて切り抜く。
続いてのお題は子どもからのリクエスト。同時に「大谷翔平」も出たのだが、子ども優先ということで犬になったのだが、結局飼い主役に大谷翔平も切り抜いてB面をリクエストした人に渡していた。

扇橋師、うーん、『藪入り』はこないだ聴いたばっかりだしなあ。最近は以前よりは「嫌い」と印象は減ったが、とはいえそんな好きという噺でもないので。こういうときって書くことに困るんんだよな……。
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第6回 天にどんと陽が昇る 三遊亭天どん&宮田陽・昇落語漫才落語会 [落語]

第6回 天にどんと陽が昇る 三遊亭天どん&宮田陽・昇落語漫才落語会
於:日本橋 お江戸日本橋亭

オープニングトーク
宝井優星『今昔物語より 間違えられた魂』
三遊亭天どん『ろくろ首』
宮田陽・昇 漫才
宮田陽・昇 落語漫才『お菊の皿』
三遊亭天どん『カベ抜け』

約3年半振りに開催される会。
前回はコロナ禍直前の2019年の年末に開かれ、それ以来だそうだ。私も前回行ったけど、もう全然覚えてないな……。
とはいえ楽しい会だということはわかっているのでもちろん予約。会場が日暮里から日本橋に変更になった。

まずはオープニングトーク。
この3年半の間にお互いに師匠を亡くしたそうで。「天どん師匠も師匠がね、」といわれると「ああ、ウチの小三治ね」とボケる。
陽・昇先生の師匠は江戸売り声の宮田章司なんだ。初めて知った。自宅で亡くなったそうなのだが、その直前におかみさんが「陽・昇呼ぶか?」と聞いたら首を横に振られたらしい。というか弟子は誰も呼ばれなかったとか。ストレート松浦先生も門下だったんだって。
天どん師も圓丈師匠が身罷ろうとしているときの弟子の反応などを。というか圓丈師は北千住の病院にいたそうな。

前座の優星さん、流行病で亡くなった山田郡(やまだごおり)の娘のところに閻魔の使いの鬼が行くのだが、その家に置かれていたお供えを食べてしまい、その恩返しとして娘を死なさずに鵜足郡(うたりごおり)にいる同姓同名の他の娘を閻魔のところに連れて行く。ところが替え玉が閻魔にバレて……というもの。途中でネタを飛ばしそうになったが、なんとかこらえる。これが今日、後々まで影響を及ぼす。

天どん師の一席め、「今日は怪談っぽいテーマということでね、何が一番怖いかってさっき優星くんがネタを飛ばしそうになったところですよ。まだ準備ができてないのにもう俺が出なきゃいけないのかって焦りましたよ」。
「この会場には思い出がありましてね、二ツ目の頃に『大江戸台風族(おおえどタイフーン)』っていうユニットを組んでましてね、主にここで活動してました。調子乗ってCDとか出しましてね、ジャニーズとかに曲を提供している人に作曲を頼んだらお金なくなってここの楽屋で音入れとかしてたんですよ。そのときに鬼丸っていうラジオで悪口をいうっていう仕事をしている人が……この話つまんないですか。皆さん全然興味ないじゃないですか」。そんなことないけどまあ鬼丸師にはあまり……。
天どん師の『ろくろ首』は好きな噺。「さようさよう」「ごもっともごもっとも」「なかなか」の「なかなか」だけいい声になるのがおかしい。
お屋敷の猫と遊んでるときに「猫の顔を両手で包んで耳の後ろの方にグッと引っ張っても猫は意外と嫌がらない」とか「耳を触るとピコピコと耳を動かすが、左右一緒に同じ動きをしない」とかホントの猫好きか猫を飼っていた人じゃないとわからない情報を挟んでくる。天どん師は猫好きなのか。猫と戯れる手付きも割とリアルなんだよなあ。

陽・昇先生は一席めはいつものように秋田ネタから幅広く。陽さんが優星さんの「山田郡」を気に入ったようでそこかしこに挟んできて、昇さんが「味を占めるな」とたしなめるのがおかしい。

二席めの落語漫才はこれまでと同じように昇さんが『お菊の皿』のあらすじを説明していき陽さんが茶々を入れて脱線していくというスタイル。
あまりの陽さんのアドリブに昇さんがネタを飛ばし「ネタが飛んだよ」「山田郡?」「うるせえ!」というやりとりがおかしい。どこからアドリブなのかはわからないけど。

天どん師の『カベ抜け』を高座で聴くのは初めて。CDに入っているのでネタ自体は知っているのだが。
本来は噺に入ってサラリーマンの主人公が「あーあ疲れたー」などといいつつスーツを脱ぐ仕草と一緒に羽織を脱ぐのだが、マクラで羽織を脱いでしまっており、「あー間違えたなあー。ネタ飛ばしたりするとうつるんだよ……」などとブツブツ。ただ誰かが間違えるとみんな間違えるというのは噺家あるあるらしく、以前兼好師も似たようなことを言っていた。
事故死した幽霊が呪う相手を間違えて主人公のところに来たというところで「山田郡? あの噺聞いたときに完全につくなーと思ったんだよ」とボヤく。なんかみんな優星さんに引っ張られているのがおかしい。もう若手というより中堅の二組なのに。
幽霊が登場するときに両膝立ちになって足をバタ足のように動かしてドロロロロ……とうすどろのように鳴らす「足うすどろ」がおかしい。「前座さんにうすどろを頼むのを忘れた」そうだが、こっちのほうが面白くていいんじゃないかなあ。

これまで3回行ったが、毎回ハズレのないコスパの高い会。年一とかじゃなく、もっと頻繁にやってほしいなあ。
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第二十七回 東海道神奈川宿寄席 [落語]

第二十七回 東海道神奈川宿寄席
於:桜木町 横浜にぎわい座芸能ホール

三遊亭げんき『八九升』
三遊亭兼好『熊の皮』
春風亭一花『お菊の皿』
春風亭一花『四段目』
三遊亭兼好『不孝者』

あっつー。いや暑いのは好きだからいいんだけど、こらあタイと変わらん暑さですな。
ブログがたまって電車の中でも書きたいんだけど、NHKラジオで小痴楽師の番組のゲストに兼好師が出ており、その聞き逃し配信が今日までだったので行きの電車内で聴く。二ツ目昇進直後の音源が流されたのだが、『蛇含草』はその頃にはもうほとんど固まってたんだな。それにしても声が若い。

げんきさん、聴く度に少しずつ成長が見えるのが楽しい。

プログラムでは一花兼好一花兼好だったが、やはりというか兼好師が先に出てくる。まあ階級が違うからそういう番組なのかもしれないが、兼好師は二ツ目さんとでもABBA方式にするよ。というか単純に仲入りとトリだと大変だからかもしれないけど。
兼好師の一席め、「暑い中ここまできてくれて、もうそれだけで嬉しいですね。特に昨日一昨日は少し涼しかったのでこたえますね。こないだ鹿児島に行ってきて、確かに南国だから暑いんですが、まだ木陰に入ったり少し高いところに行くと涼しくて逃げ場がある。東京や横浜の都会には逃げ場がないですね。だから寝ましょう。今日は前座を含めて五席ですが、そのすべてを楽しもう、なんて考えちゃダメです。寝て体力を温存しないと。五席のうち二席でいい、とそんな気持ちでいましょう。なので私を聞いて、一花ちゃんで寝て、仲入り後にもう一度寝て、最後を聴くとかでいいんじゃないですか」。まあ私はそれでも構わないけれども。
「ご存知の通り一花ちゃんは旦那さんも噺家。私は両親が公務員の家で育ったので、夫婦が同じ職場にいるということが信じられない。特に噺家だと夫婦で同じように売れないとね……。だって亭主にポチ袋は渡せないでしょ」。まあ今でも結構格差を感じるけど……。馬久さんも面白いと思うけどね。
落語ではおかみさんが強くて亭主がぼんやりしている方が多い、と『熊の皮』に。亭主をこき使いながらもなぜか嫌な感じをさせないのがすごい。

一花さんの一席め、「兼好師匠の会ということで緊張しております。私の名前はそこのメ◯ラに書いてありますとおり……メ◯ラって言っちゃった。もうカミカミです」とのこと。
「先ほど兼好師匠にも言っていただきましたが、私はコロナ禍に結婚したんですよ。なので結婚式もできていない。そんな中、新婚旅行がてらおいでよと新婚寄席を開いてくれた方がおりまして……5日の日程の中、2日めに私が陽性になりました。高熱が出て……車に乗った状態でPCR検査を受けてそのまま待ってたら宇宙服を着た医者が車まで来てウィンドウを少し下げた状態で『陽性です』って……。もう隣りにいるんだからダンナも陽性ですよ」と夫婦で大変だった様子。夫婦で占いに見てもらった話などもして、『お菊の皿』に。
やはりお菊を演じるのは女性の方が自然で楽しい。

二席め、学生時代は演劇にのめり込んでたといい、そこでは演出から出演まですべてができるところだったそうだ。「ひとつだけ苦手だった分野が衣装。どういう組み合わせがいいのかとかまるでわからなくて……。今日も羽織と座布団が同じ色になってる」と苦笑する。
お芝居の話から『四段目』に。
やはり女性が演じると自然に見える小僧の噺。こういう演目選びは上手いなあ。
定吉の無邪気さとちょっとしか狂気がうまく合わさっているように見える。

兼好師の二席めは昨日扇橋師でも聴いた『不孝者』。実は昨日扇橋師を聴きながら、「いいんだけど、兼好師匠の素晴らしいの聴いてるからなあ……」という思いも頭の中に少しだけあった。ヤな客。自覚はあります。
とはいえやはりこれは大旦那と同じく、ある程度の歳を重ねないと出せない味わいがあるだろう。
恨み言を言うまいと抑えながらも言葉の端々から未練が滲む欣弥と、それに戸惑いながらも昔の女の変わらぬ心に安堵する大旦那の表情が素晴らしい。これはもう芝居ですな。

終演後も日が高く野毛で一杯と洒落込もうかと思ったが、暑いしなんだか人はいっぱいいるしであえなく退散。
酒は家にたくさん常備してるし、わざわざ外で飲むこともねーか。
ブログ書いてないの溜まってるから書かなきゃなーと思いつつ帰りはNHKラジオの『真打共演』で兼好師とこみち師の落語を聴きながら電車で過ごす。漫談のナオユキさんて初めて聴いたけど、こんなに面白いんだ。今度どこかに聴きに行こうかな。
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なかの演芸長屋 席亭和希十を偲ぶ追悼寄席 2部 [落語]

なかの演芸長屋 席亭和希十を偲ぶ追悼寄席 2部
於:中野 なかの芸能小劇場

ご挨拶
春風亭だいえい『たがや』
玉川太福『男はつらいよ 第20作寅次郎頑張れ』 曲師 玉川みね子
入船亭扇辰『藁人形』
入船亭扇橋『不孝者』
柳亭こみち『徳ちゃん』
柳家さん喬『船徳』

引き続き第2部。
1部と2部の間が30分しかない。隣の松のやで慌ただしく昼メシをかっ込み会場に戻る。
2部もまずはご挨拶から。何度か入退院をしていたそうだが、最初に倒れたときの顛末などを。

当然ながら皆また先代との思い出話をマクラにネタに入る。

だいえいさん、噺家の褒め方で地名を出すという定番の入り方から『たがや』に。季節の噺ですな。
玉やは庶民が贔屓で鍵やは武士や上流階級が贔屓で武士の褒めようを実演する。
たがやの啖呵は啖呵というよりしっかりと言い聞かせるという感じ。ペラペラっとまくしたてるより爽快感は低いが伝わる感じはする。

太福師、先代との思い出として「電話に着信があったけど留守電も入ってないので折り返さなかったら『何で折り返さないんだ!』と烈火の如く怒られた。普段そんな感じじゃないんですけど……。40過ぎてそんな他人に怒られることなんてない。私を最後に怒ったのは和希さんじゃないですかね。……でも正直に言えばそんなにいうならひとことくらい留守電入れてくれれば……」。
1部の和泉師もそうだけど、やっぱり元ネタを知らないことにはね……。俺寅さんひとつも見たことないからまるっきりわからない。しかも登場人物が多く、誰が誰やら……。後の扇辰師やこみち師には「モノマネ芸」とからかわれていた。

扇辰師も「アタシはあまりちゃんと話したことがない」としながら、「楽屋ではみんないってます。十って書いてあれで『とおる』って読むんだー……って。みんな初めて知った」。確かに読めないよなあ。
扇辰師の『藁人形』は5年ぶり。そんなに聴いてなかったっけ?
おくまの冷たいあしらい方や甥の甚吉の鯔背ぶりが扇辰師の端正さによく合っている。やっぱり扇辰師はこういう抑えた感じが好きだなあ。

扇橋師も二ツ目時代にお世話になったことや、最初に倒れた直後に当時の小辰さんの会があったことなど。そういやそんなこともありましたね。
親の仕事を引き継ぐという二代目を親孝行だといい、「落語に出てくる二代目、いわゆる若旦那は親不孝者が多い」と『不孝者』に。
扇橋師もまた端正に。
旦那との誤解が解けた欣弥が旦那の膝に手を置いてつねるときの色っぽさがたまらない。そしてそれにニヤける旦那のだらしなさが楽しい。

こみち師、「なんですかね、扇辰師匠と扇橋さん、師弟で辛気臭い……」と容赦がない。
先代席亭には「『こみちのすべて』という会をやらせていただいて。これ落語二席と踊りと唄があるんですよ。……まあ『やれ』っていわれたんで……。で、マイクなんかのセッティングとか大変なんですが、それを席亭がやっていて……。『ネタ早く決めてください、準備が大変なんですよ』みたいなことを言われたことがあるんですけど、……いやアンタがやれっていったんですからね!」といろいろ大変だったようだ。
「寄席にはいろんなところがあるんですけど、ムニャムニャ演芸ホールってところなんて『よっ、ババア!』なんて声掛けがウケるんですから。寄席にコンプラなし!」と開き直った感じ。
『徳ちゃん』なんてコンプラあったら絶対にできない噺だよなあ。寄席にコンプラの風が入ってこないことを望む。「オラとチッスすべ、チッス」と迫るのが面白いが、でもやっぱりこの噺はムサい男の噺家がやった方がリアルで面白いのかも。

さん喬師、知っていてわざとなのか先代について「じゅうさん」と話す。
実家は本所ということで、先日も浅草に行ったとか。7月10日に行ったようで、四万六千日様とほおずき市のことを話して『船徳』に。
船宿の親爺と船頭になりたいと交渉するところからフル版でたっぷりと。
……6時間落語聴きっぱなしで、寄席のように色物もないのでさすがに疲れてしまった。小刻みにスイっと意識が飛ぶ。もったいないなあ。

帰宅途中、環七が微妙に混んでいる。うーん、ちょっと行儀悪いけど、すり抜けさせてもらうかとひょいっと車線の真ん中に出たところで後ろから白バイにサイレンを鳴らされる。ええっ、すり抜けでキップ切られんの!? 別にここ車線変更禁止のオレンジラインでもないのに!? とマジかよーこのままなら次の更新でゴールドに戻れるはずだったのにとガックリしながら止められる。すると「〇〇橋から右折しました?」と聞かれ、それは本当に私ではないので「違います」というと「じゃあごめんなさい、私の勘違いです」とあっさり引き下がられる。なんだよ~~~~。「でもすり抜けは危ないから気をつけてくださいね」と釘を刺される。でもまあいい、ホッとしたので許す。白バイには何度かビビらされたが、キップを切られなかったらそれですべてを許せるのは不思議だ。
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なかの演芸長屋 席亭和希十を偲ぶ追悼寄席 1部 [落語]

なかの演芸長屋 席亭和希十を偲ぶ追悼寄席 1部
於:中野 なかの芸能小劇場

ご挨拶
鈴々舎美馬『美馬と閻魔』
古今亭文菊『浮世床(夢)』
三遊亭兼好『青菜』
隅田川馬石『臆病源兵衛』
弁財亭和泉『嵐の初天神 落語の仮面 第二話』

落語の企画会社オフィス10の先代社長が昨年亡くなり、その追善興行。先週と今週の二日間、それぞれ午前と午後の二公演ずつ行われる。
今日は私も午前と午後どちらも参加する。

まずは席亭他界以前にもいろんな噺家から「お嬢」と呼ばれ、たびたび開演前の影ナレをいじられていた二代目席亭である娘さんのご挨拶。初日では「湿った空気にしたくない」とやらなかったそうだが、今日は挨拶をしたほうがいいと思い直したそうな。本日の噺家さんたちと先代とのやり取りや、亡くなられた直後に公表するかを相談した話など。直後に文菊師、馬石師の会があり、また美馬さんの勉強会が始まったのだという。その後に兼好師の会もあり、兼好師に相談したところ、「美馬さんの勉強会が始まるというのはおめでたいことなのだから、それまでは公表しないでおきなさい。それで私の会のときに発表すればいい。そうしなさい、ね!」と教師に諭されるように諭されたという。さすが兼好師ですなあ。

なので、今日のマクラは各々先代との思い出をメインに。
聞いていて思ったのは、若手ほど先代に恩というか思い入れを持っていて、上に行くに従って淡白というか「それほど話したことがない」という感じになっていくこと。まあそりゃあ若手からすれば「自分の会を開いてくれるイベンター」というのは若手からすれば数少ない恩人だろうし、売れている師匠方からすればたくさんいる中のひとりという感じなのかもしれない。
また、若手にはいろいろと気にかけていたようで、コロナ禍で会がなくなっていた頃には二ツ目以降にコロナ禍ボーナスを配っていたという。それは皆「あれは本当にありがたかった」と口を揃えていた。
客席を半分にして再開した後も、真打にもそれまでと同額のギャラを支払っていたという。やはり他ではギャラが下がることも珍しくなかったようだ。
噺家ファーストだったんだね。

ということでマクラも若手ほど長くなる。
一席めの美馬さんは15分ほど感謝とこれからの意気込みなどを時折り涙声になりながら述べていた。
さてすっかり重苦しくなってしまったこの空気をどうすんのかなーと思ったら、美馬さんがある師匠から壁ドンされたのだが、それが失敗して顔に頭突きを食らわされたのがもとで閻魔のもとにやってきたという噺に。「私死にました? ……あーやっぱりなー、さっきそこで知り合いに会ったんですよねー」と先代席亭と会ったという小ネタを挟む。
さすがに端々から湧き出るネタや言葉が若々しい。

文菊師もマクラ長め。
先代よりも娘さんの方が長かったが。
高座の直前に「愛ってなんだと思います?」と問われ、「なんで今そんなこと聞くの!?」と思いながら必死に答えたということを15分ばかり。
でもいつものナルシストマクラよりも全然いい。とはいえなんとなく空気が重い感じに。

兼好師はやはりというか、さすがというか、重苦しい感じなどは一切感じさせず、カラッと大爆笑に持っていく。
「裏の楽屋では和泉さんが美馬さんのことを『顔小さいわねぇー。ゲンコツぐらいしかない』と絡んでイジメてた」などとさんざんいじって笑って笑って空気を一変させる。さすがですね。
兼好師はオフィス10が発足した2016年当初からずっと朝10時からの会をやっており、私も欠かさず通っていた。私は午前中に中野で落語あるときは高円寺まで行ってタイ料理ランチを食べて帰るというルーティンだったのだが、最近はなくなっちゃったなあ。
兼好師の『青菜』は一年ぶり。やはり植木屋の女房の存在感がものすごく、「お前……それ裸に浴衣だろ? そんでそれ俺のフンドシじゃねえか。腰巻きくれえつけろよ。だから近所の子どもたちから『相撲のオバちゃん』ていわれるんだよ」という植木屋の嘆きがおかしい。「お前お屋敷の奥様みたいに三つ指つけるか? ……お前のは仕切りっていうんだよ、怖いよ」と続けるのが最高。

馬石師、オフィス10での会の思い出を。ネタリクエストの会があり、そこで『臆病源兵衛』が選ばれたそうだが、その直前に雲助師の会があり、そこで『臆病源兵衛』を掛けていたのだとか。師弟の会が続くので両方とも聴くお客も結構いたそうで、「師匠の後に同じ噺をするって……。師匠に言っておけばよかったかなあ」とボヤくも、その時の噺を。
『臆病源兵衛』を高座で聴くのは初めて。
死んだ人間を「棺桶に詰めて寺の前に置いておきゃあ誰かが供養してくれるだろう」というのはすごい。
そんなバカな、というストーリーだが、馬石師のあのほわんとした語り口で話されるとなんとなく納得してしまう。

和泉師、「なんですか、あの兼好師匠は。確かに美馬ちゃんは顔がゲンコツくらいしかありませんよ。さらに二ツ目昇進の準備が忙しくて頬がちょっとこけてきていたから『大丈夫?』って聞いていたんですよ。それがああいう風に『イジメてた』って……。ああYahooニュースってこうやって作られるんだなって……」。Yahooニュースだからってフェイクニュースばかりとは限らないけどね。「しかも高座から降りてくるときに『上がるときに美馬ちゃん蹴りながら行け』とかいうんですよ。できるわけないでしょ」。やってたら面白いのに。
「文菊アニさんとか兼好師匠は次の仕事があるんで仕方ない。でも馬石師匠は次ないんですよ。ただ早く帰りたいだけなんですよ。それでトリを取れって……」と暴露される。
出囃子が『白鳥の湖』だったのでそうかなーと思っていたが、先代席亭のときに1周演り、2周めの第一話を始めたところだったそうで、続きを二代目からリクエストされたとのことで『落語の仮面』。
やっぱりこういうパロディものは元ネタ知らないと全然わからんね。元ネタとの比較で「コレをこう変えてきたかぁ〜」てのが醍醐味だと思うけど、比較ができないしなあ。
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しのばず寄席 令和5年7月9日 [落語]

しのばず寄席 令和5年7月9日
於:お江戸上野広小路亭

桂壱福『猫と金魚』
立川談吉『看板のピン』
三遊亭兼好『桃太郎』
キラーコンテンツ 漫才
桂伸治『鰻の幇間』
玉川奈々福『仙台の鬼夫婦』
瞳ナナ 奇術
三遊亭楽麻呂『寝床』

扇辰師の東和寄席から一度家に帰ってバイクを置いて電車で上野広小路亭へ。ホントはバイクで行けたら楽でいいのだが、あそこらへんはバイクを置くところがない。駐禁を切られるリスクを犯すよりは定期もあるんだし電車で行ったほうがいい。

お目当ての兼好師、客席に子どもがいたからか、「小児は白き糸のごとし」という落語でしか聞かない格言から女子校での学校寄席や、娘さんの長女と次女の違いとかアメ横に連れてったときの話など鉄板のマクラを振って『桃太郎』に。
金坊の軽妙な昔話の解説が楽しい、思わず聞き入る一席。

伸治師、あのニコニコとした好々爺的な風貌からキレた一八のイヤミな小言が出てくること自体がなんだか面白い。

奈々福先生、やーよかった。もうなにがどういいのかってのはそこまで語るには私の経験値が足りないのだが、とにかく唸るコブシが心地よい。奈々福先生の『仙台の鬼夫婦』は6年ぶりか。
浪曲を聴く度に今度木馬亭に行ってみるかと思うのだが……、ここで奈々福先生の過去に聴いたときの感想を読み返してみたら、いつも今日とほぼ同じことが書いてある。「なにがいいとは説明できないけどとにかくいい」「木馬亭に行こうか」って毎回書いてあんの。我ながら進歩がねえなあ。

瞳ナナ先生、魔女っ子キャラやめたんじゃなかったっけ。それはポロン先生か。今日はとにかく「マホーでピョン」も堂々と。あの絵に描いたスプーンを曲げる手品どうやってんだろ。
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