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真打昇進披露興行 令和六年三月三十日 [落語]

真打昇進披露興行 令和六年三月三十日
於:鈴本演芸場

金原亭杏寿『ざるや』
鏡味仙志郎・仙成 太神楽
三遊亭天どん『ドライブスルー』
五明楼玉の輔『紙入れ』
ニックス 漫才
春風亭一之輔『初天神』
鈴々舎馬風『楽屋外伝』
柳家小さん『長屋の花見』
江戸家猫八 動物ものまね
柳家三三『つる』
真打昇進披露口上
林家二楽 紙切り 桃太郎 じゃあわん丈
林家正蔵『一眼国』
林家つる子『片棒』
立花家橘之助 浮世節
三遊亭わん丈『河童鍋』

広小路亭がハネたあとにそのまま鈴本に。ちょうど会場時間だったので並ばずにスムーズに入れた。
うまい具合に前の方の真ん中の席が空いていたので遠慮なく入れてもらう。今日は土曜で鈴本の千穐楽ということもあるのか満員御礼だそう。
開演前に緑助さんが落語協会黙認誌『そろそろ』の行商をしていたので一冊購入。かなり売れたようで「えっこんなに売れると思ってないから全然持ってきてない」と慌てて楽屋に在庫を取りに行くほど。「昨日は5冊しか売れなくて(『そろそろ』無責任者の)玉の輔師匠にキツめのお小言を頂いたので、今日は胸を張れます」だそう。

天どん師、わん丈さんの師匠なのにこんな浅い出番なんて。でも他の顔付けを見るとしょうがないのかあー。理事でもないもんねえ。
『ドライブスルー』は絶対に聴いたことがあるはずなんだけど、このブログには出てきてないなあ。天どん師はブロク始めてから高座で聴き始めたので聴いてるなら絶対に書いてるはず。CDで聴いたかと思ったんだけどCDにも収録されてないんだよなあ。なんでだ。テレビで見たのかなあ。
看板が木で隠されたために民家がドライブスルーに間違われるという、もうそれだけで「んなわけねーだろ」と面白いシチュエーションなのだがそこにどんどん客が来る。これがまたばっかんばっかんウケる。申し訳ないけどファンが集まるはずの独演会でもこんな爆笑されてるのは見たことがないくらい。
「チーズバーガーセット? そんなもんあるわけねーだろ。……待てよ。チンするのでいいか? 飲み物は? コーラ? ……あるよ」「コーラ開いてるじゃないですか」「ウチの女子高生の娘の飲み残しだ」「じゃあ千円で買います」ってのは引かれてた。俺は大爆笑だけどね。

ニックスも今まで見た中で一番のウケ。
妹のトモさんが姉のエミさんのツッコミを「そうでしたか」と流すギャグがあり、以前はネタ中に1回くらいだったのが何度も繰り返される。それをエミさんが一度パクったらまあウケる。

一之輔師、二ツ目時代にはまあ数え切れないほど聴いた『初天神』だがすげえ久しぶりに聴いた。え、12年ぶり? マジ?
聞き飽きてた頃は「今日もこれかよー」と思ってたものだが、一之輔師自体を聴くことが少なくなってしまい久しぶりに聴いたらやっぱり面白い。


真打昇進披露口上、司会は三三師で下手側から三三玉の輔正蔵わん丈天どん小さん馬風各師。
玉の輔師の口上で「本来の圓丈師匠が亡くなって、本来こういうときは一番弟子が預かるものなんですが、らん丈師匠は存在感がない。白鳥師匠は金に汚い。丈二師匠は危険です。『危険なじょうじ』……。そういうわけで天どん師匠のところに……」。
おそらく史上最速で祝う側に回った天どん師、いつものような毒舌やイヤミなどもなく、ちゃんと師匠としての口上を。毒舌もちょっと期待したのだが、やっぱり天どん師がオトナだった。

二楽師、はさみ試しで切った桃太郎を欲しがった人が3人おり、そのうちのひとりが子どもだったため、「じゃあ君にはリクエストを切ってあげる」と神対応。……なのだが、その子が「えー……」とモジモジしてなかなか注文をしない。
「ゴメン、君だけにそんなに時間かけられないんだ」という二楽師にやっと出た注文が「じゃあわん丈」。
「君、『じゃあ』って言ったね!? しかも呼び捨て!? わん丈さーん、いる?」とわん丈さんを呼ぶ。「このお子さんのリクエストが『じゃあわん丈』ってことなんでね、モデルになって」「『じゃあわん丈』!?」と高座のわきにわん丈さんを座らせる。
「……わん丈さん、君も大人ならちょっと付き合いなさい。なんで揺れないの」などさんざんいじられつつ高座姿を。その脇に名前にちなんだ犬も。……それさっきの桃太郎での犬と同じでは?

つる子さん、いやつる子師は女性目線の噺ではなくスタンダード風の『片棒』。
身代を一代で大きくするために夢中で子どもたちにかまけている暇がなかったというのは説得力がある。
時間的なのか最初からなのか銕三郎パートはなく銀次郎まで。

わん丈さん、ではなくわん丈師、高座に飾られていた圓丈師の形見の陣羽織に一礼してから高座に。犬がデザインされた陣羽織で、「わん丈」の名前の由来となったとか。
「鈴本は初高座を経験した寄席でもあるので思い入れがあります。前座として夜席に入ってたときに、ネタ帳に昼席の菊丸師匠のネタとして『河』と『豚』と『鍋』って書かれてたんですね。いや読めますよ!? 大学出てるんですから。でもそのときはなぜか『イルカ』か『カッパ』の二択だな、と思ってしまいまして。まさかの正解がない二択クイズ。で、そのときにスタッフのMさんから『昼席の菊丸師匠の噺なんだった? お客さんから問い合わせきてるんだけど』と内線電話がかかってきまして、『どっちだ!?』って考えた末に『カッパ鍋です』と答えてしまって……。でもそのときに一朝師匠や現国宝も居たんですよ。それで何にも言わないから合ってるんだと思ったんですよ。そしたらその後で楽屋にMさんが『さっき電話に出た前座誰だ!』って怒鳴り込んできて……。そしたら一朝師匠も雲助師匠も私をビッと指をさされて。怒られるのかと思ったんですけど、『お前、圓丈師匠のところの前座だな。二ツ目に昇進したら”河童鍋”って噺を作れよ』って。二ツ目に上がってホントに作って、当時あった早朝寄席で掛けようとしたんですよ。Mさんに『”河童鍋”やりますから』っていったら『出番何番め』って聞かれて『トリです』っていったら『ダメだ、その時間は社長が来る!』って……」と前座時代の鈴本の思い出を話す。
噺に入ると兄貴分が若い衆を長屋に呼び寄せる。え、披露目のトリネタに『寄合酒』? と思うもやはり普通に乾物屋からいろいろ盗んでくる。時間持つのかな? と思っていると、「おい与太郎なにを持ってきたんだ」「……河童」あたりから噺がおかしな方向へ進んでいく。
「河童ってどうやって食えばいいんだ?」「ご隠居を呼んでこよう」と長屋にご隠居を呼び寄せる。
「あのなあ、落語のルールは守れ。ご隠居になにか聞きたいなら訪ねてこい!」。
河童を食べるには頭の皿が重要で、河童を楽しませた度合いによって皿の大きさが変わる……とかだったかな、もうよくわからないけどとにかく大きな河童の皿を得るために歌を聞かせるというカオスな展開に。
「番頭さん、お願いします!」というとB’zの『ultra soul』のイントロがかかり、座布団の後ろからマイクを取り出して歌い出す。客席もある程度予想していたのか大盛り上がり。「そして輝くウルトラソウッ!」には客席からも「ハイ!」のレスポンスが。
ご隠居さんが「……お前これもう鈴本出禁だな、だから千穐楽に持ってきたんだな」と悪巧みの顔。
続いてUNICORNの『May be blue』を歌い出すと立ち上がり高座の上を歩きだしての熱唱。世代なのでUNICORNは嬉しい。寄席の客席からの声掛けで「フゥ~!」とか「フォー!」なんて初めて聴いた。
さらにご隠居さんも歌うというテイでMr.childrenの『innocent world』もフルコーラス。
すると袖の扉が開いてお手伝いの二ツ目さんたちとつる子師がなだれ込んできて全員で大合唱。何だこれ。しかもなぜかつる子師は号泣している。鈴本が無事千穐楽までたどりついて安心したのか。
歌が終わったところで「まだ落語の途中だよ! (引っ込んでる高座用の)マイク出して!」と後輩たちを追い出す。

サゲを言い終わって幕が下りた後に客席からアンコールの声が掛かり、なんと幕が開く。そして高座には二楽師や橘之助師匠、天どん師や三三師まで楽屋に残っていた師匠方も登場する。すげえ。
三三師から「つる子、お前は泣きすぎ。お客さんも甘やかしすぎです!」と怒られた。「あとね、さっきわん丈『マイク出せ!』って言ってたけど、マイク出したの鈴本の社長」と衝撃の事実を告げられてわん丈師が慄く。
さらに撮影のOKも出る。GR IIを持っていたのでそれでパシャリと。いやあお祭りって感じですなあ。

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RICOH GR II
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しのばず寄席 3月後半 昼の部 [落語]

しのばず寄席 3月後半 昼の部
於:お江戸上野広小路亭

三遊亭好二郎『代書屋』
立川志らべ『天災』
三笑亭可風『崇徳院』
キラーコンテンツ 漫才
立川談幸『鹿政談』
神田陽子『松山伊予守治助 無筆の出世』
昔昔亭桃太郎『ぜんざい公社』
江戸家まねき猫 動物ものまね
三遊亭兼好『壺算』

いきなりあったかいというか暑い。
なんかこの気温の乱高下に体がついていかないような。

好二郎さんがマクラの間に入場。
好二郎さん久しぶりだな……と思ったけど年末にも聴いてるんだっけ。
代書屋を訪れる男の本名が佐藤健司。師匠の本名ですな。
兼好師から教わったのかはわからないが、仕草とか言葉の端々に兼好みを感じる。

談幸師、トントンとテンポよく進んで小気味よい。

桃太郎師、『ぜんざい公社』の演じ手としてはよく聞くが高座で聴くのは初めて。もちろん裕次郎の歌付き。

まねき猫先生、結局雄鶏と雌鶏だけだったような。

兼好師、出囃子が遊馬師の『どうぞかなえて』。両師のファンである私はちょっと混乱というか。
和歌山のセクシーダンスのマクラだったので紀州吉宗の桜エピソードから『長屋の花見』かと期待したが、「新年度の新入社員、新入生を狙った詐欺があったが最近では若い人は引っかからない。むしろ闇バイトで加害者側になる。昔も今も騙す人というのはいるもので……」と『壺算』へ。
鉄板ネタではあるが、やっぱり何度聴いても面白いよなあ。
兄貴の「いいの買ったねっと!」も面白いんだが、もはやその前の瀬戸物屋の「どーも、ありがとうございました」からのセットでよりおかしくなる。
瀬戸物屋が算盤で何度やっても6円になってしまってどんどんパニックに陥っていく様子も気の毒ながらも笑ってしまう。

さて今日はここから鈴本にもハシゴです。
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人形町噺し問屋 その108 [落語]

人形町噺し問屋 その108
於:人形町 日本橋社会教育会館

三遊亭兼好 ご挨拶
三遊亭げんき『味噌豆』
三遊亭けろよん『浮世床(本)』
三遊亭兼好『芋俵』
林家喜之輔 紙切り プリン、大谷(通訳込み)、花見、登り龍
三遊亭兼好『花見の仇討』

歯が痛い。というか口の中というか歯茎というかアゴが痛い。なんだコレ。痛み止めを飲みながらなんとか過ごす。とはいえ少しずつ痛みは引いてる気はするのでなんとか治るのを祈るばかり。

ますはご挨拶。「年度末のお忙しいところありがとうございます」で笑いが起きるのはなぜだ。落語にくる客が忙しいわけねーだろ、という笑いなのか。
「新しい環境に変わる人もいるでしょう。そこでもうスタートダッシュを決めた人もいるんじゃないですか。相撲でいえば尊富士。すごいですねえ、記録ずくめですよ。彼のお母さんもテレビに出てたんですけど、ものすごく細くて『本当に親子?』って感じ。私が好きな貴景勝もお母さんがすごく小さくてキレイ。ああいう親子で違いすぎる人が出世するんですかねえ。だとすると私はムリ。母親そっくり。たまに地元に帰って仕事があると、先輩とかに紹介する前に『お母さんそっくりだね』っていわれるくらい。先日会津で文珍師匠の会があったらしくて、私は出てないのに母親が行ったらしいんですよ。『兼好の母です』って。後日文珍師匠から『お前のオカンお前よりオモロいな』って……」。
そのほか好楽師か台東区の「スターの手形」に選ばれた話も。「家元も選ばれてないんですよ。でもウチの師匠台東区長と飲み友達なんですよねえ」。
逆にスタートダッシュに失敗した人として大谷を挙げ、「彼も大変ですが、教科書の出版社も大変。英語の教科書に出てるんでしょ? 『大谷を支えた人たち』みたいな感じで。これ出版社も学校もどうするか頭を抱えてるそうですよ。でもいいんじゃないですか、英語が苦手な不良なんかは真面目なストーリーよりもこういう『大谷のこと支えられてねーじゃん』みたいなところがあった方がウケますよ」。
「それにしても通訳の人ってすごいですよね。先日仕事で初めて行く場所で、女房に所在地をメモしてもらったんです。私はスマホの地図を見ながら歩くということができないんで、駅前の地図を見て住所を頼りに探すんです。大体の見当はついたんですが、その場所に着いてもそれらしき建物が見つからない。あまりに私がウロウロしてるんで、その近くで電話をしていた女性が声を掛けてくれて」と電話の向こうの話し相手がその辺りの地理に詳しかったそうで、3人で目的地を探したとか。「電話をしてる彼女みたいなことですもんね、通訳って」。そうかなあ!?

今日は前座ふたり。時間の関係か、けろよんさんの『浮世床』は本の部分のみ。そこって話がまるで進まないので単体で聴かされるとちょいと飽きるなあ。

兼好師の一席め、「昔は新社会人とか新大学生を狙った詐欺やねずみ講などがあって被害者になるケースがありましたが、最近では闇バイトで加害者側に回ることも多いそうですね。闇バイトで捕まった人の8〜9割は『知らなかった』と無罪を主張するらしいですが、モノを運んで10万とか、そんなうまい話があるわけないんです。それを見抜けない時点でもう有罪ですよ」と手厳しい。でもそれは確かに。そんな楽な仕事が合法だったらみんなやってるわ。
「また相撲の話になるんですけど、角界にもいじめがあるそうで北青鵬がクビになりましたけど、ああいうのをクビにして野に放つってどうなんですかね。危ないでしょ。あんなの他に行くところがないんですから、ヤクザの用心棒とかになったらどうするんですか」と舌鋒鋭く非難する。確かに弱いものイジメをする巨体ってのは恐怖でしかない。「そういう問題を起こした力士は春日野部屋とか立浪部屋とかと同じように『仕置部屋』ってのに入れて、更生してからクビした方がいい」。ごもっとも。「噺家でもすぐ破門にする師匠がいますけど、こんなユルい世界で役に立たない人間が世に放たれてもなんの役にも立たないと思うんですけどねえ……」と冷たいんだかなんだか。
最近では刑務所でも「人権が大事」と受刑者も看守もさん付けにするというおかしな風潮を嗤いつつ、昔は犯罪者たちは捕まりたくなかったと泥棒の噺に。
兼好師の『芋俵』は初めて。ここにきて初めて聴く噺が連発するのは嬉しい。
『芋俵』自体そんなに頻繁に聴く噺ではないのだが、何か理由があるんだろうか。
寄席では必須の泥棒の噺だし、やや下ネタ気味ではあるけどそんなに下品なわけでもないし、やらない理由はないと思うんだけど。
芋俵を質屋に置いていくきっかけとして泥棒ふたりの口喧嘩があるのだが、この口喧嘩でアドリブで出た「この南京虫! 南京虫! 南京虫!」という罵倒の文句に本気で傷つく弟分がおかしい。
泣きながら「『馬鹿』とか『間抜け』は打ち合わせ済みだからいいけどぉ……。『南京虫』はねえんじゃねえかってぇ……思います……」と押し込み先の質屋に訴えるのがたまらない。

貴之輔さん、「大谷」というお題に「打つ方ですか、投げる方ですか」と尋ねると、「通訳込みでお願いします」とリクエストされる。
「大谷は3日出番があればそのうち2日はお題として出るのでヤマが張りやすい。打つ方が投げる方かと聞くと、打つ方が6割、投げる方が3割。あと1割は『二刀流』ってめんどくさいお題なんですけど、今日はそれを超えてきた」とボヤく。とはいえ大谷が打席で打っているところにベンチでスマホをいじる一平氏を切り、感嘆の声が漏れる。

兼好師の二席め、「二階さんが引退するようで。噺家としてはああいう(舌禍キャラの)人がいなくなるのは惜しいんですがね。二階さんは和歌山が地元ですが、和歌山の自民党青年支部がセクシーダンサーを呼んで問題になってますね。不適切だ、ということで怒られてますけどいいじゃないですかそれくらい。プロのセクシーダンサーを呼んでセクシーなダンスを踊ったんですよね? そりゃ議員たちが脱いで踊ってたら何やってるんだってなりますけど。だって和歌山ですよ? なーんにもないんですよ人は減る、増えるのはパンダくらい。東京はいろいろと楽しいところがあって毎日楽しく過ごせますけど、和歌山はホント何もない。年に何度かパーティがあって、それくらいしか彼らには楽しみがないんです。残りの360日はマジメに頑張ってるんです。だから東京の価値観で裁くというのは間違いじゃないかと思うんです」と一見彼らを擁護しているようで、実質すごいバカにしてません?
「昔はさらに娯楽が少なくて、花見は一大イベントだったんでしょう。江戸に桜を植えたのは吉宗公。この人も紀州で和歌山になにもないことを知ってますから」とここにも和歌山イジリが炸裂する。
「幕府も町民に気を遣わせないよう、花見の期間は武士にあまり外出しないようにとお達しをしていたくらいだそうで」。へえ。
先日の『花見酒』に続いて花見の噺。あとは『長屋の花見』が聴けたら今年は花見の噺をコンプリートかな。今週末に広小路亭のしのばず寄席でトリを取るのでそこに期待。
巡礼兄弟役のふたりが侍にぶつかったときにも上役が「近藤、花見の時期に町民に絡むな」のようにマクラで話したこともちゃんと織り込まれている。
3人でチャンバラをしているときに、助太刀に来た侍を見た巡礼役のふたりの驚きと絶望が混じった表情が最高。こういう情けない顔をするときの破壊力がすごい。
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三遊亭遊雀独演会 [落語]

三遊亭遊雀『寿限無』『宿屋の仇討』『淀五郎』
於:高円寺 koenji HACO

昨日は兼好師の会の後に高校時代の友人との飲み。女3人に男は俺ひとり……とはいえ別に嬉しくはない。だって同い年ですから。ていうかまあ6時間飲みっぱなしでよく話題が尽きないな……年末にも飲んでんのに。
だいぶ飲んだはずなんだけど特に二日酔いもせず。ずっと焼酎、それも乙類の芋焼酎ばかりを飲んでいたからか。
とはいえさすがに昼まで寝る。
高円寺のいつものタイ料理屋でタイカレーを食べてから会場に。うう歯が痛え。

会場はぎっしりで満席。まあ遊雀師なら当然か。狭い……。

開演時間になったときに一番太鼓が。長い一番太鼓が終わると出囃子に『花』が流れ、「あっ、間違えた」と店長の声がする。
苦笑いの遊雀師、「ゆるいねえ、ここは。しかも間違えてるのひとつじゃないからね。開演のときは二番太鼓を鳴らすんだよ。なんで一番太鼓なんだよ。突っ込もうかと思ったたよ」。やっぱりそうですよねえ。
「高座の横をカーテンで区切ったところが楽屋なんだけど、寒いんだよ。そりゃエアコンの空気をカーテンで区切ってるんだからそうだよね。高座に出てようやくあったかくなったよ。ちょっと体が暖まるまで世間話でも」と東西線で起きたエピソードを。スマホを見ながら号泣していた女性がいたらしく、その女性に声をかけたイケオジの話。「ほんとに言ってたんだから」とは言っていたものの、どこまでが本当なのやら……。それにしても「実家の船橋に戻ることになって毎日東西線で寄席に通っている」とのこと。え、遊雀師のおかみさんのインスタのアカウントをフォローしているが、そんなことはなにも書いてないんだけど。赤羽の自宅と2拠点生活なのか。
「東西線は学生の頃に乗ってましたけど、噺家になってからはほとんど乗ってなかった。30年ぶりくらいに乗ってますけど、変わらないね。下品で。これまで東武東上線が最下位だと思ってたけど、下があったね」だそうで。
「でもね、途中の西葛西がアツいのよ。葛西や西葛西はインドの人が多いんでインド人街みたいになってる。聞いてみたら、葛西の荒川の河川敷がガンジス川みたいで落ち着くんだって。で、カレーは有名なんだけど、実はせんべろの街。気に入ってる立ち飲み屋があるんだけど、チューハイが200円だよ。でチューハイの大盛りが300円。これを飲んだら一杯でぐったりしちゃう」。楽しそうだなあ。でも東西線て東京の東側の地域と電車の接続がよくないんだよなあ。
温まってきたところで「近頃はアタイもいい歳になってきて、前座噺をやってみようかなあと思ってね。若手の頃は、寄席のトリで『道灌』で降りたらかっこいいなあなんて思ってたけど、そういうのじゃなくて。学校寄席とかでやることはあるけど、こうやってお客さんの前でやることはめったにないからね。『こんちわ、ご隠居さんいますか』『誰かと思ったら八っつぁんかい、まあまあお上がり』……たまんないね。ここから星の数ほど変化するからね」と『寿限無』に入る。
遊雀師のは「五劫の擦り切れ」が「五劫の擦り切れず」になっている形。『たらちね』でもそうなんだけど、一門とか人によって微妙に違うのが興味深い。
最後、金坊がいいつけにくる場面ではおかみさん、八っつぁんに加えて婆さんまで出てくる。この婆さんが全然名前を覚えられていないのがおかしい。

一席終わった後に「久しぶりにやってけどできるもんだね。そういえば遊かりに最初に稽古つけたのもこの噺でした。覚えましたっていうからやらせてみたらなんか全体的に暗いの。おめえ役者やってたんならもうちょっと明るくできるだろって言ったら『私はこれまで悲劇しかやってなかった』って。じゃあいいよ、そのままやんなって言った。もしかしたら暗い『寿限無』も面白いかと思ってさ。遊かりといえばアイツ変なんだよ。普通なにかお願いごとがあればその人の正面に回ってお願いするでしょ。アイツは後ろから耳元で『師匠お願いがあるんですが』って言ってくる。ここは北千住のスナックじゃねえんだって」。北千住のスナックはそんな感じ!? 行ったことないけど。
「『笑点』見ると美魔女キャラって……気持ちわりいよ。こういうこというと昨今は怒られるけど、いいんだ俺は身内なんだから」。まあ確かにキツいのはキツい……。
「二席めもしばらくやってなかった噺を……。ちょっと長いけど」と『宿屋の仇討』に。
芸者のリクエストが「うんと年寄り。お姐さんというよりおっかさん、ていうくらいのがいい」というのがおかしい。それに応えて「三味線を杖代わりにやってきやがった」という強烈な芸者がくるのもいい。
「色ごとの話をしようか」と持ちかけたときに「お前はそういうことできる顔じゃない」といわれ、「そういうのは時代が許さない」というのも面白いが、落語の中では今後もそういう不適切な表現が見逃されることを願うばかり。まあコンプライアンスを気にしていたらできる落語はかなり少なくなりそうだけど。

三席めはマクラもなくスッと噺に入る。
ちょっとナヨッとした淀五郎と厳しい團蔵とのコントラストがハラハラさせられる。
しかし中村仲蔵のアドバイスを受け、一晩で判官が出来上がったときに團蔵が手放しで大喜びしている描写があり救われる。
そんな背景があってからのサゲの「……待ちかねた」はいかにも大団円という感じでホッとする。

歯が……痛い……。こうなるとものを食うのも億劫になる。まあちょうど体重を落とそうと思っていたところなのでちょうどいいのかもしれないが。
タグ:三遊亭遊雀
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三遊亭兼好 独演会 桜満開笑いの宴 その弐 [落語]

三遊亭兼好 独演会 桜満開笑いの宴 その弐
於:青砥 かつしかシンフォニーヒルズ アイリスホール

三遊亭兼好『看板のピン』
三遊亭げんき『手紙無筆』
三遊亭兼好『花見酒』
三遊亭兼好『不動坊』

歯が痛い。
右上奥歯の歯の詰め物が取れてしまったので歯医者を予約したのはいいのだが、なぜか右下奥歯が急に痛み始めた。
さらに左下の奥歯に一本だけ乳歯が残っているのだが、それもグラついてきた。ということで今は左右の奥歯が使えない。
で、今日歯医者に行ったところ、詰め物をした歯は土台となっている歯が割れてしまっているらしく抜くしかないという。うえーマジかー。
そんでもって右下の歯は虫歯もあるが虫歯じゃないところが痛んでいるので知覚過敏ではないかとのこと。何も食べてなくても痛いんですけど、といってもそういうこともあるとか。早速シュミテクトを買う。

兼好師の一席め、「この会場は何度かきているんですが、すごくキレイでいいですね。こういう会場の場合はお客様もホールに合わせて少し着飾ったりするんですが、ここはそういうことがないのがいいですね。葛飾が勝つって感じで」といつものようにローカルジャブ。
「この年度末のお忙しいときに来ていただいてありがとうございます。いろいろ環境が変わるという方も多いんじゃないでしょうか。学校が変わる、仕事が変わる、通訳が変わる、とか」と相変わらず時事ネタの挟み方が上手い。
「大谷さんは完璧すぎる。投げて打って、それで奥さんもキレイ。あの大谷さんの隣に立って『お似合いですね』っていえる女性がどれだけいますか。ちょっと小柄な方だったら、並んで立ったら大谷くんが持ってる千歳飴ですよ」。たとえが秀逸すぎて。
「日本ではあまりにも完璧過ぎるとそこに魔が刺すという考えがあって、日光東照宮にもわざと一本だけ柱を反対にしているところがある。大谷さんは本人も奥さんも完璧過ぎた。だからああいう魔が刺したのかもしれませんね。……でも6億円がなくなっても気づかないってすごいですねえ。え、皆さん6千円減ってても気づいて騒ぐでしょ!? それに気づいた後で普通に野球やってるのもすごいですよね。私だったら弟子がサイフから6千円抜いてるの気づいた後で落語なんてできませんよ」。ごもっとも。
ギャンブルの怖さについても触れて『看板のピン』に。
親分が伏せた壺皿を見た若い衆の表情の動きが素晴らしい。これだけでひと笑いふた笑いあるんだからすごいことです。

二席め、「株価がバブル期を上回ったようで。……ここはそれを感じさせないのがいいですね。でもGDPが4位に落ちたと騒いでる。いいんじゃないですか、4位に落ちたところで。日本がいくら貧しくなったといったところで、もうこれ以上なにかいります? 日本ならいくら貧しくても、最悪万引でもすればなんとか生きていける。本当に貧しい国なら万引しようにもできないですから。私は川べりに住んでるんですが、夜に外に出ると河川敷のホームレスがスマホで調べ物してますからね。それに1位はアメリカ、2位は中国。……あんな国になりたいですか?」まあたしかにそうなんだけど。
「お金というのは人間だけの発明で、『品物やサービスと、この紙を等しいということにしようよ』という共通認識なわけです。だから、認識さえ揃っていれば通貨は必要ないんです。たとえば前座さんになにか働いてもらったらお小遣いをあげるのですが、最近では『あ、持ち合わせないや……PayPayでいい?』『あっはい』PayPay♪ なんて聞こえてくるんですよ。これをもっとつきつめると、PayPayだっていらないんです。例えば私が弟子に小遣いを『兼好PayPayで』といって握手するだけでいい。その弟子はまた弟弟子に……と順番に回っていき、どこかで誰かのお弟子さんが『兼好師匠、稽古をお願いします。兼好PayPayで』となればどうですか。なにもないのに経済が回るんです」とまさに落語のような理屈。というか『花見酒』の理屈と似通っているので、この噺のためのマクラなのだろう。
兼好師の『花見酒』は登場人物がとにかく楽しそうで、聴いているこちらもそれに乗せられてどんどん楽しくなっているのが素晴らしい。「酒一杯10銭か、ちょっと高えな。まあいいかいっぺえくれ。10銭……(たもとから取り出して高く掲げて)あるんだよー!」と毎回お互いにやり合うのがホント楽しい。繰り返しのいわゆる天丼の笑いなのだが、飽きるどころか繰り返されるたびに噺の中のふたりが酔っ払っていってどんどん面白くなっていく。

三席め、「嫉妬というものは男にもあって、『あいつの方が売れてる、あいつは笑点に出てる』なんて……。でも笑点に出て『落語がヘタ』なんていわれるよりはいい」と笑わせる。正直兼好師がこれ以上売れてしまうとチケット取れなくなるので困るんだよなあ……。
大家に呼び出された吉公が「誰か心に決めた人でもいるのかい」と訊かれると遠い目をするのがまずおかしい。多分おたきさんのことを考えるんだろうなーと伝わってくる。
兼好師の『不動坊』は後半の長屋の屋根の上でのやりとりもさることながら、前半の吉公の風呂屋での妄想爆発がたまらなく面白い。
たまたま湯船に居合わせた生薬屋の若旦那の手を取り、おたきさんとの会話のシミュレーションにムリヤリ付き合わせる。この若旦那のオロオロぶりが気の毒ながらも笑ってしまう。
「成仏するためならなんでもしてやる」と言われた幽霊役の前座が「あっ、じゃあ火鉢をこっちに……あー、生き返るー……」とうっとりする表情がまた。

うー歯が痛えー……。
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五代目圓楽一門会 若手落語会@ひらい圓蔵亭 [落語]

五代目圓楽一門会 若手落語会@ひらい圓蔵亭
於:平井 ひらい圓蔵亭

三遊亭兼矢『つる』
三遊亭栄豊満『写真の仇討』
三遊亭萬丸『小言念仏』
三遊亭楽八『浜野矩随』

朝は晴れていたのに家を出る頃にはあやしい雲行き。うーん。とはいえバイクで行けば20分くらいなのに電車で行くと乗り換えもあったりして倍近くかかるんだよなあ。ということで勝負をかけてバイクで。会場に着く頃には本降り。チキショウ。

ひらい圓蔵亭は初めて行く。
橘家圓蔵師の晩年の自宅を公開しているそうで、記念館のようになっているので開演前に見て回る。
私の圓蔵師のイメージといえば子どもの頃にCMでみていた「メガネすっかり曇りなし、料理すっかり食うものなし」とエバラ焼肉のタレかなあ。

兼矢さん、先日の二ツ目まつりの様子をマクラに。落語だけでなく、個人の出店のブースも出ていたそうで、そこで起こっていたポンコツエピソードをたっぷりと。たとえば兼太郎さんのブースでは似顔絵とミット打ちをやっていたそうで。新ニッポンの話芸ポッドキャストで誰かも言っていたが、兼太郎さんは今ミット打ちで受ける方にハマっているそうで、お客さんにミット打ちをやってもらったそう。で、女性のお客さんのミット打ちを受けたらその女性がムエタイ経験者だったらしく、そのハイキックを受けて兼太郎さんが右手をグネってしまってその後は似顔絵が描けなくなったのだとか。落語っぽいなあ。
さて噺に入ると八五郎とご隠居の会話が長く続く。首長鳥がつるになる理由は通常ならばご隠居の茶目っ気なのだが、今日の兼矢さんのだと会話の流れからご隠居が知ったかぶりをせざるを得ない状況に。
しかも「説はふたつある」と白髪の老人以外の新しい説を持ち出してくる。八五郎が桶屋の半公に披露するときはそのふたつが混ざり合い、よりカオスな状況になっていく。
そのカオスぶりが面白いのだが、新しく追加した説がいまいちピンとこないというか、ちゃんと理解できないというか、話の流れが強引というか。もっとシンプルな方がわかりやすいと思うんだけど。
終演後にお見送りに出ていた兼矢さんに聞いたらオリジナルらしい。「噺を魔改造しちゃいました」とのこと。

栄豊満さんは初めて聴く噺。芸協の若手がよく掛けるそうだが、そもそも芸協の芝居はほとんど行かないしなあ。
なんというかちょいグロというかあんまり掛からないのもむべなるかな、という感じ。

萬丸さん、師匠と同様にマクラの間はメガネをかけたままで、噺に入ると外す。……完全に見た目の印象なんだけど、掛けているメガネがまん丸メガネなので、漫画に出てくるようなつるの部分がヒモになってるメガネが似合いそう。
そんなメガネで『小言念仏』やってたら面白そうだなーなんて思いながら聴いていた。

楽八さん、割と好きなんだけど高座を聴くのは久しぶり。
『浜野矩随』は圓楽一門では特別な噺っぽい。特に入れごとやアレンジを加えたりせず、オリジナルに忠実にやっている印象。ちょっと硬いかなという風にも思ったが、慣れていけばもっとよくなるんだろうなーとも。

終演後に外に出るときれいに晴れている。おっ、やったラッキー帰りにスーパー寄って酒でも買って帰るかーなんて呑気にバイクで走っていたらみるみるうちに暗雲が立ち込めて強風が吹く。バイクが風に煽られて横に流されてなんの。安全運転を心がけていたらまたもや雨。今日は全国的に天気が不安定だったようで。
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某真打勉強会 [落語]

某真打勉強会
於:都内某所

某真打のシークレット勉強会。SNSなどにもポスト禁止ということなので、とりあえず年末の集計するときの行ったという記録として。
「ネタおろしをしたりしなかったり、蔵出しをしたりしなかったり、虫干しをしたりしなかったり、落語をしたりしなかったり、愚痴を言ったり言ったり」の会。
1時間ほどマクラ?を話すがもうホントに取り留めがないというかあっちに行ったりこっちに行ったり。「これまとめる気ありませんからね」とまあ自由に。今回もグチ多め、裏話的なことも盛り沢山。
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かめあり亭 第74弾! ピーチスワン 春はあけぼの! [落語]

かめあり亭 第74弾! ピーチスワン 春はあけぼの!
於:亀有 かめありリリオホール

三遊亭白鳥 桃月庵白酒 オープニングトーク
桃月庵白酒『桃太郎』
三遊亭白鳥『ラーメン千本桜』
桃月庵白酒『寝床』

とあるルートから格安でチケットが手に入る。ありがたや。
まずはオープニングトーク。
ネットニュースで笑点メンバー候補として白酒師の名前が上がったらしく、「決まったの?」と白鳥師。「決まってたってここでいうわけないでしょ。お客さんに話したってアニさんには絶対教えない」とにべもない。
「それにしても宮治もなあ……笑点メンバーになっていつも『疲れた』って言ってて同じネタばかり……」と気遣われる(?)。
「候補として名前が出ても、『知名度はないが寄席では人気者』とかいう枕詞が付くんですよ。これ失礼じゃない?」とか「木久扇師匠の後釜は木久蔵だったりして。三平は子どもが小さいから『子どもがいじめられる』って理由もあったみたいだけど、木久蔵のところは子どもももう大きいから大丈夫」「そういや孫も高座上がってるらしいじゃないですか」「もしかしたら後継は孫ってのもあるかも。木久扇師匠が後ろについていて……」とかいろいろと好き勝手なことを楽しそうに喋る。これで白酒師だったら面白いけど。
「いたたまれない話していい?」と唐突に白鳥師が話題を変え、寄席の終わりにラーメン屋に行った話を始める。「思ったよりここでウケたから寄席のマクラで使おう」とのことなので詳細は書かないが、ラーメンが気管に入ってむせたという話。
「今日は『ラーメン千本桜』をネタ出ししてるからそんな話したんですか?」「いや全然そんなつもりはなくて。途中で気づいたけど」「なんで正直に言っちゃうの。そういうことにしとけばいいのに」と両師の性格の違いもよく分かる。

白酒師の一席め、「白鳥アニさんは変わったお人で。地元にも行ったことあるんですよ。でも実家には行ったことがない。『ウチは両親も死んじゃってるから』って。地元の友だちに『嘘だよ生きてるよ』ってバラされたりして。で、会ってみたんですけどやっぱりなんていうか……変わってるというか……いやそんなこといっちゃいけないんですけど。ちょっと失礼な感じとか似てるんですよね」と白鳥親子についても。
親子の話から「最近の子は情報が入りすぎている」と『桃太郎』に。
昔の子どもも桃太郎を聴いただけでは眠らず、むしろ興奮して「もっと他の話もして!」とせがむというのは初めて聴いた。
最近の子どもはなんというか冷めていて、「あっ、はい、どうも」みたいな感じで落ち着いているのがなんかおかしい。

白鳥師、屋台のラーメン屋の親父が、折り合いの悪い実家の兄のラーメンコンテストを手伝う噺。
正直私にはピンとこなかったかな……。どうも人情噺っぽい新作には私は惹かれないようだ。爆笑ものとか不条理ものとかは好きなんだけど。

白酒師の二席め、「白鳥師匠の噺、すごくいい話なんですけど途中で変なギャグを入れるのがね……。弁財亭和泉さんが『白鳥師匠の噺はギャグさえなければすごくいい話なんですよ』といってたんですけどよくわかります。あとウチの師匠も白鳥アニさんの噺をやることになって。音源を見て『そのままやらなくていいんだろ?』と余計なギャグを抜いて整理したらすごくいい噺になってたんですよ。それを袖で聞いてたアニさんが『あれってそんないい噺だったんだ!』って言ってました」だそうで。
もうすぐ行われるわん丈さんつる子さんの披露興行に触れ、「抜擢されたからすごく芸がいいのかといったらそれほどでもない。抜擢って結構タイミングなんですよ。例えば過去に『この人を抜擢したらどうか』って席亭から提案があって、協会としてはじゃあそうしましょうかとなったんですが、その人の師匠がスケジュール上どうしても披露興行に出られないということがわかった。そしたら『じゃあいいや』って抜擢が流れたり、そういうことがよくあるんですよ」とかいろいろと裏話的なことを。はあああいろいろあるんですなあ。
「披露目の口上にもいろいろありまして、褒めるのは難しい。昔は文楽師匠は有望な若手には『彼はまだまだ未熟で』と突き放した。芸に難があっても人間的にいい人には『彼は親孝行で』と褒める。で、これが一番パターンとして多いんですが芸もまずくて人となりも悪い人の場合は『彼にはキラリと光るものがある』と。なにが光ってるのかは言わない」。へえ。
昔の習い事でお師匠さんが褒めるのに困った旦那がいたと『寝床』に入る。
旦那が声の調子を見るために唸っている最初の場面で「何だこの金盥は。いらないよ下げなさい」というセリフが何度も繰り返されるのがおかしい。
使いから戻って来た繁蔵が「提灯屋さんは注文が入ったそうで、くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」:」と後半いきなり何を言っているかわからなくなるというのも面白い。それも毎回なのでわかっていても笑ってしまう。
機嫌を直しかけた旦那が「さすがに店立てというのは大人気なかった。でももう義太夫を語る気分ではないので、店立てはなしで会もなし」といいながらも繁蔵に「そこをなんとか」といわせたい、というめんどくさい感じがまたたまらない。最後には「もう! 繁蔵! 語るよバカ!」とはっちゃけてしまうのがかわいい。
店子たちが料理を食べているシーンでラーメンを食べてむせる場面を入れているのがさすが。アドリブの能力高いなあ。
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両国寄席令和6年3月14日 [落語]

両国寄席令和6年3月14日
於:お江戸両国亭

三遊亭楽生『一目上がり』
ステファニー 奇術
三遊亭兼好『愛宕山』

平日に2日連続で兼好師。
とりあえず仕事は平穏になってきた。ホントならこの隙に転職活動とか始めればいいんだけど、一息ついてしまうと何か行動を起こすのが億劫になってしまう。いかんなあ。

楽生師、なにか新しいことを始めたいと東京マラソンを走ったのだとか。
『黄金餅』のように走るルートを並び立てる。
走っている途中のエピソードをいろいろと。走っているルート上では「残り◯Km」のような減っていく形ではなく、現在の走ってきた距離が示されていたそうで、「我々のような縁起商売では減っていくカウントダウンではなく、値が増えていく形式がありがたい」と『一目上がり』に。
明るく勢いがある。

ステファニーはポロン先生。
いつものように積みマジをいくつか。初めて見るものも。
相変わらずテンションがつかみにくいというか……。

兼好師、「春になるとああいう人が……」といって笑わせる。
「昔の江戸であまりなかった遊びというのは山遊びだそうですね。なんといっても関東平野が広いので、山へ行くこと自体が大変だったようで。私も山は好きで、ちゃんとした山ではなくてちょっと小高くなってるところとか、仕事で訪れた土地でそういうところがあると登ったりします」と岐阜城がある山を着物で登ったときの苦労話をマクラに。
兼好師の『愛宕山』は2年半ぶりくらい。
一八は旦那からあれだけ念を押されながらもハナっから山に登るつもりがないという幇間らしからぬやる気のなさ。
繁蔵に煽られてようやく登り始めるも、「こんなものは鼻唄を歌いながら登れる」といいつつすぐにへばっていく様子がおかしい。このグラデーションの加減が本当に上手いと思う。
ようやく旦那に追いつき、かわらけ投げの説明をされても「あんな小さな輪に!? いやあアナタはできない!」と断言し、「お前幇間だろ!?」と旦那に呆れられるのも楽しい。
そんな「歌も歌えない、踊りもダメ、ヨイショもできない」と評された一八だが、旦那から贔屓にされているのは「谷底に落とされても死なない」とか「谷底に落ちてもなんとか這い上がろうと工夫する姿勢」というのだから旦那もなかなかエグい性格をしている。
谷底に落ちた後に、傘から手を離そうとしているのに手は傘を握りしめたまま指が開かないというのがなんともリアル。こういう妙なリアルさと、唐傘一本で空を飛ぶ荒唐無稽さが混在しているのも落語の面白さだなあと思う。
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なかの演芸長屋 兼好平日昼の独演会 [落語]

なかの演芸長屋 兼好平日昼の独演会
於:中野 なかの芸能小劇場

三遊亭けろよん『浮世床(将棋・夢)』
三遊亭兼好『権助魚』
三遊亭兼好『付き馬』

代休。
代休を取るときはせっかくなので兼好師の普段行けていない会があるときを狙っている。
朝、猫にご飯をあげたら二度寝を決め込む。するとご飯を食べ終えた猫たちもベッドの中へ潜り込んでくる。猫にもポジションが決まっているようで、いつも足の間にシュガー、左脇にミルク、右脇にはココア。猫たちのゴロゴロ音に囲まれて朝寝をかます。これをパラダイスといわずして何がパラダイスというのか。まあ寝返りは一切打てないけれど。
せっかくの平日休みなのだから普段行かない店とか平日しかランチやってない店とかに行こうかとも思ったのだが、バイクなのでビールも飲めないし結局いつもの高円寺のタイ料理屋でタイカレー。

けろよんさん、師匠とはだいぶ違う『浮世床』。もちろん話の筋は同じなのだが、将棋を指すシーンで対局の様子を長いこと演じていたり、半公の艶っぽい話を聞いて鼻血を出すヤツがいたり。

兼好師の一席め、昨日は大分で仕事だったそうで、その帰りで直接会場に来たという。「大分って市馬会長や文治師匠、歌奴アニさんとかたくさん噺家がいるんですよ。そのなかのひとりで三朝くんていうのがいて、彼の出身の豊後大野ってところで会をやるのでゲストに来てくださいと言われたんで行ってきたんですけど、会場が空港からタクシーで1時間40分くらいかかる。ホテルに着いたら普通のビジネスホテルで……。大分って香川の『うどん県』に対抗して『温泉県』てやってるんですよ。なのにビジネスホテルかと思ったら、豊後大野って温泉出ないの!」。
「三朝くんてすごいおしゃべりなんですよ。楽屋でもずーっと喋ってる。で、豊後大野ってすごい田舎なんですよ。私も会津若松で田舎出身なんですけど、田舎って人がいないから話す機会もなくて無口になる。こんな田舎なのにどうしてあんなおしゃべりになるのかと思って。本人は『えー俺おしゃべりですか?』なんて気づいてない。で、打ち上げで地元の人たちと呑んだら、三朝くんが全然おしゃべりじゃなかった。周りはもっと喋る。私に質問してるのに自分で答えたり。噺家の私が話す隙がなくて会話に入れないんですから……」。あーたまにいますねそういう自己完結しちゃう人。
「昔は田舎から出るには歩くしかなかった。だから山の人は海を知らず、海の人は山を知らないで一生を終えたなんて人も多かったんでしょう。江戸時代は江戸に田舎の次男三男たちが大勢やってきましたから、いろんなことが起こったんでしょう」と田舎者の権助が活躍する『権助魚』に。
一時期よく聴いていたが、兼好師では二年以上空いていた。そんなに久しぶりだっけ?
「妾がいるのは仕方がない」と言いながらも、旦那が出かけようとすると「どちらへ!?」と目を見開いて圧をかけるおかみさんの表情の動きが絶品。
表情でいうと魚屋でかまぼこを見つけたときの権助の驚きの顔もまたたまらない。

二席め、「今は年度末。春から新しい生活になるという人もいるでしょう。昔は新社会人とか新入生を狙ったサギがよくあったんですが今はどうなんですかね。『結構です』なんていうと勝手に商品が送られてくるなんてことがよくありましたが……」と「騙す」噺の『付き馬』に。
ついこないだ「兼好師の噺はネタおろし以外ほとんど聴いた」みたいなことを得意げに書いたけど、まだ初見の噺ありました。うーわ恥っずかし。そもそも兼好師は平日にやる噺と土日にやる噺を分けていて、土日は落語初心者もいることが多いのでわかりやすい噺が多いという。だから土日メインの私が聴いてない噺はまだたくさんあるかもしれない。できるだけ平日の会も行きたいところだが、昼と夜とでもまた違うのかなあ。
兼好師の騙す男はとにかく明るく軽薄。流れるようにまくし立て、若い衆をあっさりと手玉に取るところは嫌味がなくてただひたすらに面白い。
早桶屋のおじさんも男に「あの男は兄が亡くなったんで動転しておかしなことを口走るかもしれないが適当に話を合わせてくれ」と騙される。早桶を作っている間に若い衆と世間話をするのだが、それが噛み合っているような噛み合っていないようなお互い頭の上に「?」が出ているのが見えるような会話がなんともおかしい。
終盤サゲ近くで結構大きめのミスというか言い間違いも。これも珍しい。
やっぱり珍しい噺を聞くためには平日の独演会を狙わないとダメかな。
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