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上野鈴本演芸場 令和五年四月下席 夜の部 4月30日 [落語]

上野鈴本演芸場 令和五年四月下席 夜の部 4月30日
於:鈴本演芸場

柳家小じか『金明竹』
入舟辰乃助『シュウヘイ』
ダーク広和 奇術
林家しん平 漫談
入船亭扇里『紋三郎稲荷』
ニックス 漫才
桃月庵白酒『親子酒』
入船亭扇橋『高砂や』
のだゆき 音楽
柳家さん喬『そば清』
林家楽一 土俵入り スーパーマリオブラザーズ ピーターラビット
入船亭扇辰『江戸の夢』

今日も天気がイマイチ。昼までウダウダ。昨日の落語のブログを書くが、あんな内容程度のものを書くのに数時間もかかってしまう。なんか疲れてると記憶が途切れ途切れになるので書く段になったときになんにも思い出せないということがよくあるのです。だったら落語行かなかったりブログ書かなきゃいいのに、とは自分でも思うのだけれど。

昼飯を食いはぐれたので早めに家を出て鈴本の近くでなんか食ってくか、と思ったものの、アメ横などの上野の雑踏を歩く気にもならず結局御徒町駅近くの日高屋に。普段あまりラーメンを食べないのでいつもなら年に1~2回というところなのだが、餃子とつまみもう一品とビールで千円くらいという手軽さもあって最近よく行くようになっている。……混み様のわりに店員が少ないのか全然こない。ようやくきた辛味噌ラーメンを慌ててすすり、ビールとレモンサワーを流し込んで鈴本に。小じかさんはすでに言い立ての3回めに入っていた。

ダーク広和先生、いつものロープマジックではなく、カードというかパネルを使ったマジックを。これは初めて見た。マジックに使う道具を手作りしているらしく、今日のネタを作るのに3年かかったとか。

しん平師、「死ぬ前に何が食いたい? って話をよくするけどさ、あれってどういう状況で食うんだろうね。何月何日に死ぬってわかってれば準備もできるけど、いきなり死んだら食えないよねえ。世の中には3日寝かしたほうが美味い、なんてものもあるんだし」などといいつつ客席に「何食いたい?」と尋ね、「ラーメン」とか「オムライス」とか「寿司」とか応えられるとちゃんとそれに合わせた話をポンポンと返せるのがすごい。

扇里師、二ツ目の最後の方から知ってるけど、見た目が全然変わっていないような気がする。

白酒師、酒をねだるときに「婆さん、きれいだよ」とか「婆さん、愛してる」とかおべんちゃらを使うが、それにいちいち「本当でしょうね!?」と確認してくる婆さんがめんどくさくて可愛い。
酔っ払っている姿がまた実に見事で、途中から口調がぐずぐずになって何言ってるかさっぱりわからなくなっていくところなぞは実にリアルでおかしい。この酔っぱらいのシーンでここまで客席を沸かしているのは初めて見たかもしれない。

扇橋師、扇辰師と並んでお目当てのひとりなのは間違いないのだが、あー、うん、まあもうこれほど聴いちゃうとね、もう書くことがないです。

のだゆきさん、Wリコーダーのときに「ゴフッ」とむせ、ギャグかと思ったらマジのやつだったらしい。
「もー今日はおしまいでーす」と下がる。まあもうほとんど終わりだったけど、珍しいものを見た。

さん喬師、うわばみの舐める草の仕組みについて「清さんはとんでもない間違いをしています。この草は、食べたものを全部溶かすというものではない。……昔弁当箱は金属製で、梅干しが当たっていたところはちょっと溶けた。つまり梅干しの酸は金属を溶かす。だけどおまんまを溶かすことはない。それと同じです」と全部は明かさないスタイル。
こういう軽い噺をささっとやっていくところはいかにも寄席っぽい。

楽一さん、映画が公開間近だからかお題は「スーパーマリオブラザーズ」。映画面白そうなんだよな。観に行っちゃおうかな。世代である『SLAM DUNK』もまだ見ていないけれど。下座のお師匠さんも四苦八苦しながらスーパーマリオのテーマを弾いていた。最初は音が外れまくりだったけど、2周め3周めになるとちゃんと弾きこなしていた。すげえ。太鼓のほうが苦労していたようで、楽一さんも「太鼓はやけくそになってますね」と戸惑い気味。
ふたりめのお題は「ピーターラビット」で今日はファンタジックで困っていたようだ。

扇辰師、「明日から5月だって。……嘘だよ二月くらい前に正月だったでしょう? ……なーんにもしてねえ。皆さんなにかやりました?」仕事しかしてないです。
「しかし5月はいいですな。俳句の季語集なんか見ていても爽やかないい言葉がたくさん出ている。『薄暑(はくしょ)』なんていい言葉ですな。ちょっと暑い、なんて意味で……。『はくしゅ』じゃねえですよ!? あれは暑苦しい。中には『聖五月』なんてのもあって、カトリックでマリア様だかの誕生日があるそうでそれが季語になってるんですなあ。『聖五月 大統領と ハグをする』……という句をオバマ大統領が被爆者の方と抱き合ったときにそんな句を詠んだりしました」と俳句の話から冒頭で俳句を読むシーンがある『江戸の夢』に入る。
『江戸の夢』は10年近く前に一度他の師匠から聴いただけで、完全にストーリーなどを忘れていた。というか『江戸の夢』という噺自体覚えていなかった。その10年前の自分の書いたブログ読んでも全然思い出せないし。
噺の中で無言で煎茶を淹れるシーンがあるのだが、そこをたっぷりと時間をとって丁寧にきっちりきっちりと端正な所作で行い、会場がシーンと張り詰めた空気に。今考えてみれば、その間に茶を淹れる人物の葛藤や想いなどを表していたのかとも思う。結構シリアスというか重い話がその後に出てくるし。
やっぱり扇辰師はこういう噺をぴしっと端正に聴かせてくれる高座が好きだな。いいものを聴かせてもらいました。
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三人集寄席 夜席 [落語]

三人集寄席 夜席
於:人形町 日本橋社会教育会館

オープニングトーク
春風亭貫いち『やかん泥』
入舟辰乃助『手水廻し』
金原亭馬久『おすわどん』
入船亭遊京『粗忽の使者』
古今亭始『浮世床(夢)』
柳亭小燕枝『かぼちゃ屋』
春風亭朝之助『ぐつぐつ』
入船亭扇橋『茄子娘』
江戸家猫八 ものまね
春風亭一蔵『青菜』

うううー仕事が終わらない。
平日の落語会はここんところ全滅。二月連続で兼好師の人形町噺し問屋も行けてないし、某真打のシークレット勉強会も行けなかった。
今年はGWも出社せざるを得ないし……。

というわけでこの会は昼夜あるのだが、さすがにどちらにも行くという体力がない。去年なら絶対に昼夜行ってたはずなんだけどなあ。昼には久しぶりにタイ料理を食し、古着屋で服を買い、昼寝して体力回復に務める。
会場につくと昼夜通しでいる人も結構いるようだ。
舞台袖に楽屋があるのだが、そこから盛大な爆笑が聞こえてくる。

まずはオープニングトーク。
一蔵師と小燕枝師のふたりが出てきて漫才を始める。
「俺警官やるからお前通りかかる人やって」「え、はい」「ちょっとちょっと、君怪しいな。職業は?」「怪しくないですよ」「カバン開けて。……ほら着物が入ってるじゃないか」「……これ俺のマクラでしょ!」「やっぱりロケット団先生はうめえな」「当たり前でしょ」どうやら昼席ゲストのロケット団に影響されたようだ。
「扇橋さんが亡くなって……」「死んでません!」「まあ鈴本の出番があるんで……今この時間、おもいっきりスベってると思います!」とここにいない扇橋師をイジる。
その後、本日の出演者がぞろぞろと私服姿で登壇。「あー……『抜かされ連』ね」と一蔵師。「ちょっと! ようやく最近心の整理がついてきたんですから!」。やっぱり気にするんだろうなあ。「でも俺の周りでもみんないってるよ、『抜かされる人たちはみんな実力者なのにね』って。俺が幹部だったら君たち全員抜擢だよ!」「……アニさん塩塗ってる!」とワイワイ。

辰之助さん、長頭を回すはしゃぎぶりが楽しい。

馬久さん、声がいいし落ち着いた感じで聴きやすい。
やっぱし声がいいっていうのは大きな武器だよなあ。

遊京さん、え、この場所でそんな大ネタを!? と思ったが枝葉末節をばさばさと切ってコンパクトにまとめる。

始さん、朝之助さんのポンコツぶりをいじる。それも出演者たちの仲がいいからのようで、楽屋のワイワイぶりから『浮世床』に。きっちりきっちりの古典で、実力の高さを感じさせる。

小燕枝師、ぼんやりとした、それでもアクティブなタイプの与太郎が小燕枝師のキャラにとてもよく似合っている。人によってはイラッとさせてしまうようなこういう底抜けに明るいバカを楽しく見背られるのはやはり天分なのだと思う。

朝之助さん、「……ポンコツです」。
……この暖かくなったこの時期にまさかの『ぐつぐつ』。冬真っ盛りの噺じゃないですか。でもその季節感のズレもなんだかおかしい。

鈴本の出番が終わった扇橋師、「昼席で一席やって、寄席に行って一席、夜にここに戻ってきてまた一席……。売れっ子の師匠になったような気分です」で拍手。「いやいやいや……。私が終わったら皆さんお待ちかねの猫八先生。あとはおまけです。……いやおまけが一番いいんですよ。皆さんグリコ買ったらおまけのほうがメインでしょ?」。
初夏にぴったりの『茄子娘』。茄子の精との一夜にテンションを上げるが、「こんなやる必要はないんですけどね」と我に返るのがおかしい。

猫八先生、襲名披露真っ最中、しかも寄席4軒大千穐楽前日に出てくれるってすげえな。
お疲れなはずだがそれを感じさせないような鳴きっぷり。さすがです。

一蔵師、今度は真夏の噺。今日は季節感めちゃくちゃだな。普段の寄席ならあり得ない並びの噺が楽しい。
今までに何度も聴いた噺ではあるが、真打になってからはもちろん初。細かいところがちょいちょい変わっていて工夫のあとが見える。
お屋敷の旦那とのやりとりを長めにとり、ふたりがお互い敬意を持っているところを描く。後半のおかみさんとのなかよしの描写もいい。

二ツ目昇進直後から続いていた新版三人集だが、8月にて解散だという。お盆には3日連続で解散公演があるとのことで最終日のチケットを購入する。
……とはいえ「三人集」という看板が外れるだけでこの3人での会は今後もありそうだけどなあ……。
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第二十一回 上原落語会 三遊亭萬橘萬丸親子会 [落語]

第二十一回 上原落語会 三遊亭萬橘萬丸親子会
於:代々木上原 ムジカーザ

三遊亭愛次郎『浮世床(本)』
桂南海『子ほめ』
三遊亭萬橘『権助魚』
三遊亭萬丸『位牌屋』
三遊亭萬丸『千早振る』
三遊亭萬橘『子別れ(下)』

この週末はとにかく寝て疲労回復に努める。
それでも疲れが抜けない。歳とったんだな……。
今日も家の掃除をざっとして新しく届いたキャットタワーを組み立てるだけでほぼ1日が終わった。
……キャットタワー同じものを買ったと思ったが、なんかショボくなってんな……。

さて久しぶりの上原落語会。
会場がなかなか急な坂道の途中にあり、バイクを停めようにもズルズルと滑り落ちていってしまう。

下座さんのいる袖の部分が丸見えで、二番太鼓を叩いているところや、出囃子を弾いているところをまじまじと見ることができたのは初めてかも。へえーああいう感じで叩いてるんだーと新鮮で楽しい。

愛次郎さん、前に聴いたときよりは慣れた感じか。床屋であるとかの説明もなく、ホントに本を朗読するところのみ。

南海さん、これで「ナンシー」と読むのだとか。
洋風の名前ではあるが、スッキリとした感じのキレイな顔立ちの女性。噺は、まあ、その、頑張ってんなあという。

萬橘師の一席め、今日は福井からの帰りだという。福井での会はコロナ禍の中でも続いていた会なのだそうで、「毎年ワクワクしていくんです。……というのもこの会の世話人の方がいろいろやらかしてくれるんで、今年は何をやるんだろうという……」なのだとか。
「もっと他の会場でやったら?」と言われ、萬橘師が横にいるにも関わらず「客席を埋める自信がない」と言ってしまったりとか、手に車の鍵を持ちながら鍵を探しているとか、その方のやらかしエピソードをたっぷりマクラで振って『権助魚』に。
萬橘師の権助は愛嬌が少なめでぶっきらぼうなので旦那からも嫌がられているというキャラ。けれどそれが萬橘師のキャラとフィットしている。
嘘がつけないので、お内儀さんに対しても「〜と言ってくれと頼まれました」とか「証拠にこの魚買って参りました」とかポロポロと漏らしてしまうのがおかしい。

萬丸さん、黒縁丸眼鏡と坊ちゃん刈りでリアルのび太。約1年ぶりだけどこんなだったっけ。
「一応言っておきますと、この番組は私の意思ではありませんので……『師匠の後に出るなんて』とお思いかもしれませんが……」と気にしている様子だったが、兼好一門で慣れてるんで。
『位牌屋』は現好二郎さんが二ツ目昇進間近のときに掛けてたのを聴いたことがあるくらい。
「ケチの噺」といいながらやってることはカスハラに窃盗だからなあ。
サゲも本来の形だと結構シャレにならないブラックさだし。さすがにそこは変えていたが。

二席め、「一応楽屋には進行表というものがあるのですが、師匠の二席めの上がり時間が19時35分なんですが、すでに19時45分……。まあひとり増えたんで。これはお客様から延長料金を頂かないと……冗談ですよー」。今日はいつもの客層と違って若い人も多かったから、真に受けそうな雰囲気があったのだろうか。
ご隠居は単なる知ったかぶりではなく、業平の句をすらすらとそらんじるなどちゃんとそれなりに知識人だし「愚者」とバカにすることもない。
竜田川の立志伝でも「実家から出て相撲取りになった」と伏線を入れたり、「酒と女を絶った」と断ち物を増やしたりとちょいちょい肉付けがされていてその分リアルさが増えている。

萬橘師の二席め、お嬢さんがポケモンの実際にはない進化後の姿を描くというYouTubeにハマっているらしく(よくわからん)、「じゃあ実際にはいないポケモンを描いてるんだな?」といったところ……というマクラから子どもの噺に入っていく。
落語の中でも結構ウェットな部類の噺だと思うが、萬橘師のはできるだけそのような部分を排除して暗くならないようにしているように思う。親子の再会については番頭さんが仕組んでいる様子はなく、父親が昔よくやっていたという顔のパーツを手でぐっと中央に寄せた「尻の穴の顔」をすると「あ、お父つぁんか!?」と認識するような有様。亀吉が金持ちの息子からいじめられるという描写もないし、この噺の最大の山場である母親が亀吉を疑う場面もごくあっさりで玄能を持ち出すことさえない。
萬橘師はこういうジメジメしたのは苦手なのかもしれない。私もそういうのはあまり好まず、「落語はとにかく面白いものが好き」派なのでこういう型は大歓迎。個人的には人情噺は20席に一席くらいの割合でいいです。まあ兼好師メインだからほとんど当たらないけど。泣かせる描写がなくたって充分に面白いし、夫婦や親子の絆だって描ける。

バイクで帰る道中すっげえ寒い。昼が暖かかっただけに完全に油断した。
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初代国立演芸場さよなら公演 4月中席 4月16日 [落語]

初代国立演芸場さよなら公演 4月中席 4月16日
於:国立演芸場

神田紅希『巴御前』
三遊亭美よし『熊の皮』
三遊亭遊馬『転失気』
小泉ポロン 奇術
桂米助『猫と金魚』
桂右團治『金明竹』
神田紫『お歌合わせ』
コントD51 コント
三遊亭小遊三『粗忽の釘』

こないだの披露興行を別にすれば、国立演芸場の定席って初めてきた。
昨日は大雨で今日も大気は不安定だというが、晴れ間も広がってるから大丈夫だろうとバイクで(フラグ)。

早めに着いたつもりだが、そうだ国立演芸場は前座は開演前に上がるんだった。

美よしさん、ニコッと笑ったときの表情が愛嬌があってかわいらしい。今はこういうこと書くのもアウトなんかな。

遊馬師、なんとまあこれが今年初。
もう! 土日に会やってよー。それか平日ならもっと遅い時間とか。いつも18時開演とかなんだもん行けないよ。それとか打ち上げ込みで5000円の会とか。俺打ち上げいらないんですけど……。困る。
そんなわけで土日に遊馬師を聴きたいなら寄席に行くしかない。
遊馬師の『転失気』は久しぶり。7年半ぶりくらい。
医者の先生から「転失気とは屁だ」と教えられても珍念はしばらく信じない。一応和尚の方を信じてる感じ。
「和尚に嘘を教えてやろう」とシミュレーションするときに出される和尚と珍念の声色のコントラストが楽しい。やっぱり遊馬師はいい声してるなあ。

ポロン先生、ちょっと芸風変えたのかな。
とはいえいつものようにチャイナリングや積みマジ……と思っていたら最後にイリュージョンもあってびっくりした。

米助師、高座で聴くのは初めて。
旦那と番頭のやり取りだけで、寅さんの出番がないパターンというのは初めて聴いた。

小遊三師も久しぶりだなあ。4年ぶりくらい。
小遊三師は寄席ではまったく笑点のことに触れないのがいいですね。
入れごとも少なく、スタンダードな型でキッチリと面白い。

終演後、スマホを見てみると留守電が。
? と思って聞いてみると、以前予約した会の主催者から「今日の15時からの会を予約されてるんですが……」とのメッセージが。ええ? と思って確認してみると確かに予約していた。
! あー、いつもは予約メールをしたときにGoogleのカレンダーに記入するのだが、席数が少なくてすぐ埋まるので予約できるかわからなかったから入れてなかったんだ……。
さらにその師匠はGoogleカレンダーに予定をアップしていて、私のカレンダーと同期していたので油断していた。どうやら今日の回は常連だけのシークレットの会だったようで、かわら版にも載っていなかった。うわー。
そんな己の不注意をあざ笑うかのように帰宅途中にゲリラ豪雨のような雷雨(フラグ回収)。
帰宅後にドタキャンしてしまった会の主催者に平謝りの電話を入れる。今後の会も行きたいし。ああ不覚。
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渋谷らくご 軽快にして重厚 兼好落語が楽しめる! [落語]

渋谷らくご 軽快にして重厚 兼好落語が楽しめる!
於:渋谷 ユーロライブ

春風亭朝枝『提灯屋』
橘家文蔵『笠碁』
こばやしけん太 音まね
三遊亭兼好『不孝者』

渋谷に移動。
雨の渋谷はとにかく歩きづらい。

朝枝さん、『提灯屋』は久しぶりに聴いた。
面白い噺だとは思うのだが、あまり聴かないのは提灯に入る紋のことを聴いている人の方もわからないからなのかな。
「俺んトコの紋は〇〇を✕✕してるってヤツだ!」といわれて提灯屋の主人と一緒に「?」となり、それが何の紋かと明かされて「ああそうか!」となる一種のアハ体験が面白いのでは。今は家紋のことは自分ち以外全然わからないんじゃないだろうか。昔は一般常識だったんだろうなあ。落語ってこういう昔の人の素養の高さを見せつけてくるときがありますな。

文蔵師、「こんな足元の悪いなかありがとうございます。私も趣味といえば散歩くらいしかないんで、雨の日はできないんですよ。池袋近辺に住んでるんでいつもあの辺りを歩いてるんですけどね、まあ声を掛けられますね。ひどい時は日に三度ってことも。1回めと3回めに声掛けてきたのが同じヤツだったりしてね。どうしてもアタシを連行したかったんでしょうなあ」。
趣味の話から碁将棋の話に移り『笠碁』に。
お爺さんふたりの意地の張り合いがどこかカラッとしている。待ったをかける旦那の方が明らかに立場が上のようにやる人が多いが、文蔵師の場合はほぼ対等な感じがする。なのであまり力に任せて待ったを呑ませようとする感じがあまりないのがいい。

兼好師、「文蔵師匠が怖いのは見れば分かりますけど……朝枝さんも結構怖いですよね? なんかこう……笑顔でプスっといきそうな殺気があるというか……」。なんかわかるような。
サブタイトルについている「軽快にして重厚」という表現にふさわしい一席。
『不孝者』は何度か聴いているが、聴くたびに深みが増している印象がある。
大旦那が決して順風満帆ではなく、紆余曲折を経て欣弥とヨリを戻そうか……というその瞬間に「お供さーん!」と声を掛けられて見上げる表情が素晴らしい。

家に戻って猫のお世話をしているとキャットタワーの柱が折れかかっているのを発見。爪を研ぎすぎて周りに巻きつけてある縄が剥がれ、中の柱で研いでいたらしい。重心的に折れたら結構ヤバそうな位置の柱なので疲れた体にムチ打って猫に邪魔されながらキャットタワーをバラす。
天井まで届くタイプのだから大変なのですよキミたち。
新しく買ったのが届いたら今度はまた組み立てなければ……。
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陽春四景 第一部 プレ公演 新版三人集 [落語]

陽春四景 第一部 プレ公演 新版三人集
於:国立劇場 小劇場

入船亭扇橋『鋳掛や』
柳亭小燕枝『夢の酒』
春風亭一蔵『妾馬』

隣の国立演芸場にはアホほど通っているが、国立劇場に入るのは初めて。
今日は大劇場で踊りの会があるらしいが、傘を入れるビニール袋を取りにそちらの方を向いたら係員に「落語のお客様はこちらでーす」と誘導される。のヤロウ格好で判断してやがるな。まあ当たりなんだけど。どう見ても踊りを鑑賞するような佇まいはしてませんな。

今日はM'sで「陽春四景」という会を昼夜で上、下と分けて行い、その会の前に開かれる会なので「プレ公演」のようだ。……てか「一部」って銘打ってるのに「プレ」って。わかりづらいよー。

前座もなく一番手は扇橋師。
真打昇進を機に伸ばし始めた髪もだいふ育っている様子。これまでずっと坊主に近い髪型しか見てなかったから新鮮。
新版三人集で行った九州巡業の話をマクラに。
「この三人ですからね。打ち上げが終わらないんですよ。普段なら3次会が終わったあたりで皆帰るんですけど、旅の仕事の場合は帰るところが一緒ですから。じゃあ部屋で飲むか、ってなるんですよ。私は弱いんですぐに寝ちゃうんですけと、小燕枝アニさんはあまり酒の癖がよくない。まあ人に迷惑をかけることは……」とここで遠い目をして「あまり、ないんですが……」とタメる。だいぶ被害を受けている様子。
「最近のホテルって鍵がカードキーじゃないですか。それをあのアニさんはなくすんですよ。1泊で3枚なくした。で次の日に移動して別のホテルに行ったら『あっ、スマホケースにもう1枚あった』って……。全部で4枚ですよ。さらに次の日、チェックアウトしようとしたら『お客様、当ホテルは○○ホテルではございません』って前のホテルのカードキーでチェックアウトしようとした」そうで。
「そんな子どもの頃に会っていたら絶対に交わらなかった3人ですが」と長屋の子どもたちの話に移って『鋳掛や』に。
相変わらず鰻屋のノンストップの小言が楽しい。

小燕枝師、「カードキー4枚はさすがに嘘です。本当は全部で3枚です!」変わんねえっつーの。
やはり九州巡業の話に。「皆さん我々のことを仲がいいと思われてるでしょうが……異常です。扇橋さんも言ってましたが打ち上げが終わらない。私、お酒飲むと胃がバカになるみたいで……。店が変わるたびにお腹がすくんです。店ごとにたくさん食べて、博多ラーメンは替え玉が100円でできるので3杯食べた。ホテルに帰って部屋飲みして、それでつまみがなくなるとコンビニに買いに行くんです。そうすると地方のコンビニではその地域限定のカップ麺とかカップ焼きそばとかたくさんあるんですよ。それを買い込んでホテルでカップ麺2個食べて、カップ焼きそばはみんなで分けたらしいんですが……。覚えてないんですよねえ……」。それだけ食べて太らないのは羨ましい。
「酒を飲んで寝て起きると、どうしてそんなことをしたのかわからない」といいつつ眠ることは重要と『夢の酒』に。
小燕枝師のお花はかなりヒステリックかつエキセントリック。淡島様のおまじないもなく、「倅の見た夢の中にどうやって行けるというんだ」と至極真っ当な大旦那に「気合い」と言いきるのがおかしい。

トリは一蔵師。
「今日は11時半から13時までの会。でも扇橋さんも小燕枝さんも興が乗ると伸びがちになるんですよ。しかも今日はこのあとも会があるから絶対に13時までに終わらなきゃならない。だからまあマクラを長めに振って短めの噺で時間合わせればいいかと思ってたんですけど、M'sの加藤さんから『プレ公演とはいいながら、3000円の木戸銭をいただいています。必ずトリネタでお願いします』とプレッシャーを掛けられています。なのでマクラはあまり話せないんですがひとつだけ。扇橋さんも小燕枝さんも九州巡業を『3泊4日』と言ってましたけど、私のブログを読んでる人ならわかると思いますけど2泊3日です! どこで1泊増えたんだ!」だそう。
宣言通りマクラもなく噺本編に入っていく。
一蔵師の八五郎は侍をまったく恐れず江戸っ子を貫いていく。
反対に三太夫さんはどこまでもお硬く、八五郎から何度も「何言ってるかわかんねえから普通に話してくれよ!」といわれても頑なに口調を改めない。けど八五郎が「殿様ぁ。俺ぁもう金いらねぇです。だからお願いだから一度でいいからお袋に赤ん坊を見せてやってください。俺はおつるの兄貴として恥ずかしくないようにちゃんと働きます!」といい話の方向に行くと涙するといういいキャラ。

結局終演は13時10分くらい。オーバーしちゃってる。終演後の影ナレでも「できるだけ早めに退場してください」みたいなことを言われる。そんなのも珍しい。
次の会には兼好萬橘が出るのだがさらにさん権もという超豪華メンバー……けど木戸銭もすごい。さすがにパス。兼好師は今日はシブラクにも出演するのでそっちに行きます。
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三遊亭兼好独演会けんこう一番!春スペシャル [落語]

三遊亭兼好独演会けんこう一番!春スペシャル
於:大手町 よみうり大手町ホール

三遊亭兼好『宮戸川』
三遊亭けろよん『狸札』
三遊亭兼好『片棒』
田ノ岡三郎 & Reina Kitada ヴァイオリンと歌
三遊亭兼好『文違い』

毎年恒例のよみうりホール。相変わらずこのホールとはあまり相性がよくない気がする。定期があるからと東京駅から歩いてみたものの、階段を上がったり下がったり15分くらいかかる。電車も遠回りだし、ケチらずに普通に地下鉄でくればドアツードアで30分ちょいでこれたんだなあ。というか雨がちょぼちょぼ降るのがムカつく。降るならもっとちゃんと降れ。そうすりゃバイクをキッパリ諦められるのに。

兼好師の一席め、「街には明らかに新社会人とわかる人が溢れてますね。……これから地獄を見るんだと思うと気の毒ですがね」黒い黒い。
「初々しいですね。初々しいといえば将棋の藤井くん。まだ弱冠二十歳ですよ。見た目はあんな頼りなさそうなのに強いですねえ。しかもあの世界は厳しいというか、先輩に花を持たせたりしない。こないだも羽生さんとタイトル戦があって、羽生さんはタイトル100期がかかってた。藤井さんはこれからいくらでもとれるんだから、勝たせてやりゃいいじゃないですか。でもそういうことはしない。その厳しさがいいのかもしれませんね。噺家のように後ろの先輩にヨイショするためにわざと間違えたりしない」そんなことしてるんですか。
「名人戦もまず一勝して、これでもし名人になれば二十歳で七冠でしょう? ……モテるでしょうね。実際女性ファンが集まるんですけど、ジャニーズの追っかけのように騒いだりしない。彼は恋愛とか結婚とか興味ないんですかね。この先結婚するなら奥さんはファンの中から選ぶんですかね。それとも羽生さんみたいに芸能人とか……。すごくキレイな人がふたりいて、『どうしよう、ふたりの間に桂馬張りたい』とかいうんですかね」といらん心配も。
初々しいふたり、ということか『宮戸川』に。
お花が「締め出し食べちゃった」というのは小笠原流らしい。
久太叔父さんが家の前にいるお花に気づいたときのニヤーーーっとするときの表情がたまらない。
お花半七の若いふたりよりも叔父さん夫婦が昔を懐かしんで「昔はこれでも今小町と呼ばれたいい女だったんだがなあ」とか「おさらいの会で『できましたご両人、ご夫婦!』なんて言われて嬉しくて、今だから言うけどあのときちょっと漏らした」と仲睦まじい様子がしみじみと楽しい。

けろよんさん、無駄の少ない『狸札』。
サゲは誰の型なんだろう。けろよんさんでしか聴いたことがないので兼好師なんだろうか。

兼好師の二席め、人が亡くなっても相続する人がいないと国に取られるという。「イヤでしょ、これまでもさんざん国に取られてきたのに最後まで取られるって。皆さんも死ぬまでは落語に通って落語界にお金を落としていただいて、で亡くなってらどこかの協会に寄付していただく、というのが一番いい。あ、でも『恵まれない噺家に』ていうのはダメですよ。『恵まれないって基準はどこだ』ってなりますから。三Pアニさんとか、あんなにお金があるのに噺家としては恵まれていない……」とサラリと毒を吐く。
「とはいえいつ死ぬかわからないから、どれだけ残しておけばいいのかわからないというのはありますね」と『片棒』に。
金太郎の葬儀プランに「最後に抽選会で三P独演会が……」「いらん!」と盛り込まれるのが楽しい。
銀次郎のからくり人形は見るたびにどんどん精巧になっていく。今日はそろばんを弾いたり御破算にする動きが加わっていてとても楽しい。

田ノ岡三郎さんは兼好師の会ではお馴染みのアコーディオ二スト。ヴァイオリニストのReina Kitadaさんとデュオというか、なんとかオーケストラという構成なんだそうな。
『薔薇の日々』やオリジナル曲、『プカプカ』などを。あと一曲なんだったっけな……。
『プカプカ』って大槻ケンヂのカバーでしか聴いたことがなかった、というかカバーって知らなかった。

兼好師の三席め、「メールに『おじさん構文』というものがあるそうで。長文であること、句読点を使う、『〜だネ』『オハヨー』とかカタカナを使う、顔文字を多用する、というのがそうなんだそうです。で、私自分のメールみたら見事に全部当てはまってる」そうで。
「でも私にいわせたらなんで若者はあんな細切れで送ってくるんだと思いますよ。それとこの世界はまだお礼の手紙を手書きで書くという文化が残ってるんですが、先輩に『これを参考にするといいよ』っていわれたんでしょうね、例文そのままに秋の季節の挨拶とかで手紙がくる。それも同じ文面で複数の人からきたりする」。さすがに盛ってるだろうが、ありそうだとも思う。
「手紙をさらさらと筆で書くということには憧れますね」と手紙が重要なアイテムとなる『文違い』に。
いろんな人が「自分だけは騙されていない、アイツは騙されて可哀想にプププ」という状態になっているこの噺、ここでは描かれていないが、おすぎを騙した芳次郎、その芳次郎を騙した小筆も誰かに騙されているのかも……と考えると、やっぱり古典落語ってよくできてるなあと思う。
そんな風に思えるのも兼好師の語り口が軽妙で、聴いてその情景を頭の中に描きつつも他のことまで考えられる余裕まで残しているからである、と断じるのは贔屓の引き倒しか。
まあいいよ、とにかく兼好師はすごいんだよ! という小学生並みの感想で締めくくる。

まあこのブログ自体いろいろ知ったかぶってあーだこーだ言ったりしてるけど、結局のところは「兼好師は面白いなー」で七割方省略できるからね。
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第33回 代官山落語夜咄 三遊亭兼好『ちきり伊勢屋』 [落語]

第33回 代官山落語夜咄 三遊亭兼好『ちきり伊勢屋』
於:代官山 晴れたら空に豆まいて

三遊亭兼好広瀬和生 オープニングトーク
三遊亭兼好『ちきり伊勢屋』
三遊亭兼好広瀬和生 アフタートーク

広瀬和生氏が以前にもここで同じ催しを行い、その後何度も自画自賛していた会。それを再演するという。演劇ではあることだろうが、落語としては珍しい。
前回は行けなかったので、それほどいうのであれば行ってみようと代官山まで。バイクは停める場所がないと聞いたので電車で。今日は肌寒いのでちょうどよかったかも。
今日はライブ配信もあるとのことで、広瀬氏の挨拶があり、そこでも前回がいかに素晴らしかったかということを語る。
オープニングトークでは兼好師が「覚えてないんですよねえ……。さっきようやく⅔くらいまで思い出しました。そこまで思い出したらなんとかいけるでしょう」「あとはアドリブで?」「アドリブっていってもなんか大体いつも同じようなことを言ってるんですよ、やっぱり咄嗟に出る言葉ってそんなに変わんないですよ」「わかる。僕も文章書いてて『なんかこの文章見たことあるな』と思うと自分の過去の原稿だったりする」「やっぱり気が合うんでしょうね、自分だから」「気が合いますね、自分とは」とふたりして何言ってるんだという会話を繰り広げる。

改めてひとりで高座に上がり、マクラもほとんど振らずに噺に入っていく。
兼好師の『ちきり伊勢屋』は人形町でネタおろしのを聴いたことがあるが、それ以来。トークでも言っていたが、長いので演る機会がないのだとか。10年近く間が空いている。
傳次郎の素直で若々しいキャラは好感が持てる。だがやはりこの噺のキモはそんな傳次郎にピッタリと寄り添う番頭の佐兵衛だろう。

そこらへんの「なぜ兼好師のこの噺は素晴らしいのか」はアフタートークで広瀬和生氏がたっぷりとインタビューで解き明かしており、そのアーカイブも配信されるということなので、詳しくはそちらで。
ただアフタートークですごく印象的だったのが、「兼好師の噺を他の人がやるとすぐにわかる」という話の流れで「私としては教わったとおりにやってるつもりなんですけどねえ……。『壺算』でも『いいの買ったねっと! いいの買ったねっと!』というのもそのまんま教わったんですよ。私の書き起こしたノートにも書いてある。でも『そんなことない、誰からも聴いたことない』って言われて。それで当時のテープ聴いてみたら『いいの買ったな』『おういいの買ったな』くらいなんですよ。私、勝手に変えてたんですよねえ……」というもの。
そういうことが若いうちから無意識でできてたってことはやっぱり天才なんじゃ……!?
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扇橋・朝枝のガリ勉2 [落語]

扇橋・朝枝のガリ勉2
於:高田馬場 ばばん場

オープニングトーク
春風亭朝枝『親子酒』
入船亭扇橋『転失気』
入船亭扇橋『野晒し』
春風亭朝枝『火焔太鼓』

昨日松屋でプーパッポンカリーを発見。プーパッポンカリーというのはタイ料理で、カニ(プー)のカレー粉(ポンカリー)炒め(パッ)。「辛いものもパクチーもダメなんすよお」とかいうタイ料理食いに適さないヤカラをタイ料理屋に連れて行ったときにこれとチャーハンを食わせとけば「タイ料理って美味いっすね!」と言わせられるハズレなしの鉄板料理なのだが……。
だいたいのものは美味しくいただけるバカ舌の私ではあるが、これはダメだよ。本来ワタリガニを使うのをカニ缶っぽいのは仕方ないにしても、カニは生臭いわ、ココナツミルクの風味は薄いわ卵は固まってるわ……。特に卵は作り方が下手だったのか、白身が固まっていた。もっとふわふわじゃなきゃダメなんだよ! もー! あと味噌汁つけるな! 福神漬もいらん! そもそもカレーに味噌汁は絶対に合わない! 俺がバイトしてた頃(もう30年前かよ……)はカレーに味噌汁ついてなかったんだけどなあ。
ともかくすべてが中途半端! 塩味も強いし! まずい! 不味い! マズい! MA☆ZU☆I! とまあいろんな表記で不味さを表現してみました。これを「プーパッポンカリー」といわれたら困るんよ。「タイカレーってこんなもんなんだあ」なんて思われたらどーすんだ。

さてばばん場。扇橋師と朝枝さんの二人会。前回の1回めは特に理由はなかったんだけどこなかったんだよな。

まずはオープニングトーク。
前回は昼間だったので朝枝さんは間違えて昼に着いてしまったらしい。3時間ほど空いていたので高田馬場を散歩したりしたそうだが、「でも俺が楽屋に入ったときに体育座りで本を眺めてたよね!?」と扇橋師。「あれが一番時間が早く進むんですよ」と朝枝さん。
「そういえばさがみはらおめでとう」「アニさんも花形演芸大賞金賞おめでとうございます」とお互いを称え合う。「……けど今日の抜擢のニュースで全部吹き飛んじゃったけどな!」。つる子さんとわん丈さんの抜擢はちょっと驚いた。わん丈さんはともかく、つる子さんは最近聴いてないのでなんともいえないんだけど、抜擢かあ。まあ人気はあるんだろうが。それにしても天どん師、預かり弟子ではあるけど自身が昇進して11年で師匠として口上に並ぶって最短なんじゃ!? 口上で何いうのかなあ(多分というか絶対に圓丈師のワルグチだろうけど)。それを楽しみに披露目に行こうかな。
「抜擢の情報とかさあ、我々にも秘密にしておいて欲しいよね。実は俺、結構前に知ってたんだよね。たまたま寄席の楽屋にいたらつる子が他の師匠に挨拶に来ていて。軽く『なに、抜擢?』って聞いたら『ええ、まあ……』みたいな感じで。で俺が知ってるくらいなんだからみんな知ってるんだろと思って呑んでるときに『抜擢みたいだね』っていったら『えっ……』って(抜かされる人たち)がめっちゃショック受けてた。『あ、ゴメン……』ってその後めちゃくちゃ暗くなった」そうで。
さがみはらの予選の話になり、「他に誰が出てたんだっけ?」「ふう丈アニさんと……」「あー! 今デリケートだから!」「馬久アニさんと……」「一花はどう思ってるんだろうなあ。自分のダンナが獲れず、でも弟弟子が取ったのは嬉しいだろうし……」「さん光アニさんと……」「(秋真打だから)もう今年で最後じゃん! 手加減してやれよ!」「寸志アニさん」「もっとオジサンじゃん!」「なんでそんなことばかりいうんですか!」と和やか(?)な雰囲気。
その他にも一朝師が元気なうちに真打に昇進しなければ、と朝枝さんが抜擢されるための方法などを語り合う。
そんなこんなで35分も話していた。

朝枝さんの一席め、出囃子が鳴ってもなかなか出てこない。「早く出ろ! (国宝)かお前は!」と扇橋師の声。
「35分も話していて足が痺れて……」らしい。
「今日は小辰アニさんと久しぶりの二人会で……あっ」「小辰じゃねえよ! 地味に傷つくんだよ!」と袖からツッコミが。
オープニングトークの流れか「おめでたい席にはお酒がつきもの」と『親子酒』に。
おかみさんが大旦那のことを「おじいさん」ではなく「お父さん」と呼ぶのが新鮮。というか若旦那に女房子どもがいるわけでもなし、おじいさんおばあさん呼びのほうが不自然だとは思っていたが。
湯呑ではなくお猪口で呑んでいるのも珍しい。
しかし……上手いとは思うが……これはコッテリくどすぎでは……。二ツ目3年めでこれはちょっとモタれるなあ……。

扇橋師の一席め、出囃子が鳴ってすぐに登場。「これくらいで出るんだよ」。
「小辰です。久しぶりに言ったなあ。オープニングで35分、朝枝さんの一席めも35分。私が本来仲入りでやろうとしていた噺をクイツキでやることにして、クイツキでやろうとしてた噺をやります」。
「WBC盛り上がってましたね。でも私野球に全然興味なくて。小燕枝アニさんは野球好きだから『頑張ってましたね、大谷亮平』っていったら『翔平、な。亮平だと俳優だから』ていわれたくらい。知ったかぶりするとろくなことがない」と『転失気』に。
「学校寄席仕様」と自身でもいっていたようになかなか聴く機会は少ない。珍念の素直な悪意が楽しい。

二席め、学校寄席が戻ってきたそうで。「この間長野に行ったら先生が『寄席囃子にリクエストあるか生徒に聞いてください』といわれて。『絶対出ないですよ』といったんですがどうしてもということで聞いてみたんですよ。案の定誰からもなにもなくて。で私が困ってることをわかったんでしょうね、最前列に座っていたギャル男みたいな子がぼそりと『……小三治』って。皆さん、長野のギャル男は小三治を知ってます」。
寄席囃子の太鼓で馬の皮を使っているというマクラでそうかな? と思ったらやはり『野晒し』。仕込み方が自然で上手い。
幇間の新朝のテンションの高さがヤバい。

朝枝さんの二席め、ずっとさがみはらで大賞を獲った『普段の袴』を扇橋師にこすられていたので「鈴本演芸場の前の通りを昔は御成街道といってまして……」と『普段の袴』に入っていったのだが、「御成街道にあった道具屋は書画骨董、刀剣などを扱ってまして、そこに入っていけば『普段の袴』なのですが、これから話す噺はそんな道具屋ではなく……」と『火焔太鼓』に。
一朝師は志ん朝師直伝で「覚えるのはいいけどやるなよ」と釘を刺されていたというのは有名な話だが、その一朝師から教わったものなのか。気のせいか志ん朝師のものに似ているような……。「馬鹿な男と女の利口が突っ交うってのはこういうことなんだ」というセリフが好きなのだが、最近のジェンダーフリーな風潮では言いづらいだろうなあ。それが入っていたのが嬉しい。
……けどやっぱりクドいよー!
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