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マジメこみちとバカこみち7 [落語]

マジメこみちとバカこみち7 こみちのおっ母さんアラカルト〜落語の中のおっかさん大暴れ!?
於:高田馬場 ばばん場

柳亭こみち『目薬〜親娘編〜』『星野屋』『子別れ(下)』

こみち師がテーマを持ってバカバカしい噺とマジメな噺と三席やって2000円てなにそのお得な会。そら行かないと。
14時開演と思って13時40分頃に着くとちょうどこみち師が会場入りするところ。黒いワンピース? 私服そんなんだっけ。というか結構ギリギリの会場入りなんだなーと思っていたら、14時半開演だった。
少し高田馬場の街をバイクで流して時間通りに会場へ入る。ほぼ満席のようだ。

こみち師が高座に上がると「待ってました!」の声が掛かる。「今日は14時開演と間違えた方が結構いらしたそうで、早めに開場したそうですね。その方からしたら待ってたでしょうねえ」。あらじゃあ俺も早めに入ってりゃよかった。でもそらそうだよー14時半開演なんて半端な時間な会はあんまりないもの。
「午前中は小三治師匠の三回忌だったんで一門みんなで法事に参加しておりました」。あ、あれ喪服だったんだ。
「和尚さんがなに言ってるかさっぱりわからなくて。和尚さんが退席された後でみんなでモノマネしてました。ご家族の方も『お経の途中で"あいうえお"って言ってたよね?』『言ってた。次''かきくけこ"って言うと思った』っていう和やかな雰囲気で……」。そんな『蒟蒻問答』みたいな。
「お焼香もしたしたんですが、やはり噺家なんで香盤順というものがある。一門の末弟は小八アニさんのお弟子さんでしろ八さんなんですが、彼が三三アニさんより先にお焼香しようとしてみんなに羽交締めにされて止められるという……彼はこれで一生イジられるでしょうね」。直弟子よりもひ孫弟子がってそらイジられるわ。
「明日から鈴本で仲入りに顔付されてるんですが……。ヒザにぺぺ桜井先生が入られてるんですよ。以前ぺぺ先生から『こみちちゃん、一緒になんかやろうよ』っていっていただいて、私がトリのときや独演会で『ペペとこみち』というユニットでやらせていただいて……。3日と5日以外に来てください。なにかあると思います」。といいながらペペ先生との稽古の苦労話を面白おかしく話す。面白そうだなあと思うんだけど、10月上席は池袋で天どん師が、末廣亭で扇辰師がトリなんだよなあ……。たぶん池袋に行っちゃうな……。
今日は落語に登場する「おっかさん」がテーマ。
一席めは軽めに『目薬』。本来は夫婦での噺だが、母と娘に変えて演じている。
目を患った亭主が稼げないので芋ばかり食べている、という本来のストーリーだが、親戚から送ってもらった芋を食べているというものに。娘のほうが目がしょぼしょぼすると薬を買ってくる。「め」を「女」と読み違えるのは同じだが、両方とも女なのにどうするのかと思ったら、薬局名にキーがあった。やや強引かもとは思うが、こういうのが落語らしくて楽しい。

二席め、本来だとおっかさんは最後にちょこっとオチ要因として出てくるだけだが、最初からお花とおっかさんが「男は妾を囲ってから3ヶ月くらいが脅かそうとしてなにか仕掛けてくる」とかいろいろと対策を練っているのがおかしい。この親子は世にも珍しい世襲制の妾だという。
星野屋の旦那から別れ話を切り出され「旦那と別れるくらいなら死んだほうがマシなんですから」といったにも関わらず、心中を持ちかられたら「私と旦那が一緒に死ぬんですか? なんで?」と普通にキョトンとしているのがおかしい。
「心中のときに歌う唄」として「『平蔵とお花が~、吾妻橋~♪ パ、ピ、プ、ペ、ポーン』で飛ぶのよ」とおっかさんから伝授されるのがすごい。
女性側から描かれているからか、どうも星野屋の旦那の「試す」という行為が鼻についてあまり騙されたかわいそうさはない。

三席めはほぼ原型通りの『子別れ』。ただ、熊さんを呼び出すのが番頭さんではなく、大家さんのおかみさん。熊さんに建て増しを頼む仲介役として登場している。番頭さんが親子の再会を仕組んでいる型もあるが、こみち師の場合はまったくの偶然のようだ。
亀吉の喋り方がいかにも小学校低学年男子が考えながら話しているような感じでリアル。その亀吉と同年代の息子さんがいるからか、亀吉が「斉藤さんのおぼっちゃん」に独楽で殴られた場面ではどうしても本当に涙が出てしまうようだ。
母親に問い詰められる場面も実にリアルで、子どもの頃に母親に問い詰められたときの気持ちがぐっと蘇った。まあその時の俺はホントに小銭をくすねていたんだけれども。
その後も要所要所の場面で涙が出ているようで、「母親のリアルさ」としてはこれ以上ないんじゃなかろうか。
昔『美味しんぼ』で外国人落語家が「この噺のおかみさんの気持ちがわからない」という話があったけれども(そしてめちゃくちゃ強引に食い物でまとめられていたけれども)、その当時にこみち師がいればよかったのにね。
タグ:柳亭こみち
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しのばず寄席特別興行 第2回兼好・奈々福二人会 [落語]

しのばず寄席特別興行 第2回兼好・奈々福二人会
於:お江戸上野広小路亭

桂壱福『寿限無』
三遊亭兼好『蛇含草』
玉川奈々福『瞼の母』曲師 沢村まみ
玉川奈々福『狸と鵺と甚五郎』曲師 沢村まみ
三遊亭兼好『禁酒番屋』

今日は健康診断で有給。うちの会社は健康診断は有給取っていけという方針。別にいいんだけど、健康診断だって会社の義務なわけで、それで有給を消費させられるのもなあ。
で、実は本当はひと月ほど前に受診するはずだったのだが当日に熱が出てコロナ陽性になってしまっていた。尾籠な話だが検便とか検尿とか採取済みなわけで、「これどうすればいいんですか」と聞いたら「捨ててください」とのこと。そりゃそうなんだけど、普通に捨てていいもんなの? とか素人にはわからないじゃないですか。
幸い今日は熱を出すこともなく無事に受信終了。とはいえ朝8時10分開始のコマしかとれなかったため、10時過ぎにはすべて終了。……これ午前休だけで済んだなあ。昨日絶食していたこともあって空腹なんだけど、今回は経口で胃カメラもやっていて喉に麻酔がされているのでしばらくは食べられない。時間もあることだし山手線で3駅分ほど歩き、こし庵という海鮮丼が有名な店で海鮮丼とアジフライと瓶ビール。最高。そんで何をトチ狂ったか他の店に行って塩サバ定食とハイボール。絶食の反動かもしれないがかなり腹がパンパン。
一度家に帰り昼寝して腹を落ち着かせてから上野広小路亭へ。常磐線が10分ほど遅れたため、割とギリギリに到着。上野広小路の交差点にあるマツキヨでお茶を買っていた間にいきなり土砂降りの雨が降り出して結構濡れる。なんだよもー常磐線のせいだ。

兼好師と奈々福先生の二人会なんてとてもいいじゃないですか。まあこの会があったんで半休じゃなくて全休取ったんですけどね。

前座の壱福さん、明日から二ツ目に昇進なんだそうだ。おめでとうございます。
……はいいんだけど、『寿限無』が怪しい二ツ目って大丈夫か……? 彼は今年に二度ほど聴いたことがあるが、入門したてなんだろうなーくらいに思っていたんだけど……。

なので早速兼好師の毒舌の餌食となる。「いいですね、『明日から二ツ目になって大丈夫か』という高座で、最後の方は寿限無がちゃんと言えてなかった。お客さんの力で前座に戻すことも可能かと思いますが……、でも、ああいうのが前座にいるのはもったいないですよ。自由にさせると案外伸びる……ことなく辞めていきそう」と黒い笑み。文字にするとすごくキツそうに見えるが、兼好師を知る人ならわかるだろうけど実際には和やかな感じ。
「ここでの奈々福姉さんとの二人会は2回めで、前回は私がトリを取らせてもらったんで、今回は姉さんどうぞ、って言ったんですけど、キッと睨まれて『何言ってるの! チラシにそう書いてあるんだからその通りやりなさい!』ってすごい怒られた」。まあ台のセッティングとかそこらへんの都合なのかもしれないが。
「奈々福姉さんは変わらないですねえ。相変わらずお若いしお美しい。喬太郎師匠と仲がいいんですよね。喬太郎師匠は日大なので、そのルートで薬を貰ってるんでしょうね」と軽いジャブ。
「姉さんのホームグラウンドの木馬亭で今日学校寄席をやってきたんですけど、あそこはクーラーが効かないんです。しかも大正時代から使われてると言われている照明がすごく熱い。なので会場全体がものすごく暑い。そんなところで1時間ビッチリやって。私の前に太神楽が1時間やってますから、学生は2時間そんな熱い中に閉じ込められて大変。でも昔はクーラーもなかったですから、暑さを楽しむ工夫をしながらしのいでいたんでしょう」とおかしな甚兵衛をきた男が登場する『蛇含草』を。
「隠居のところはいいですよねぇ、風がこう通るでしょう」と顔の動きだけで風の流れを表す。「何度かやればお客さんも風が見えてくる」というが、1回めからちゃんと見える。
ヒビの入った風鈴が「コツコッツンコッツンコッツン」と鳴る、というところでその音に合わせて首を細かく動かす仕草も面白い。

奈々福先生の一席め、と書いたはいいけど、浪曲の数え方って「一席二席」なんだろうか。公益社団法人浪曲親友協会のページには「一題は30分くらい」と書かれたりしてるんだけど、「一題二題」と数えるのかわからない。まあ一般社団法人日本浪曲協会のX(Twitter)では「浪曲たっぷり二席に加え、」と書かれてるから「一席二席」でいいんだろう。今後記載に迷うかもしれない自分のためのメモ。
閑話休題。奈々福先生、「私あんな強い言い方してませんからね」と兼好師からの風評被害を訂正する。
「兼好師症の地元の会津若松はプライベートでも行くんです。あそこはそばが美味しくてお酒も美味しい。蕎麦処酒処なんですよ」。最近そば打ちの会には落語しか参加していないが、確かに蕎麦が美味いんだよなあ。
「それに会津藩の気質もいいじゃないですか。……それでああいうのができるって……」と扇子で袖を指す。
「浪曲は最近では落語に寄って笑えるものもありますが、本来は涙の演芸。今日はその本来の涙の演目を聴いていただきます」と『瞼の母』に。
私は浪曲の良さを表現するための言葉を持っていないので毎回毎回バカみたいな感想しか書けないのが悔しいが、とにかくいいのです。唸る部分を「節」、落語のように語る部分を「啖呵」というそうだが、節はもとより啖呵の部分のメリハリが際立っている。

仲入りを挟んで二席め、一席めは高座に見台を置いただけだったが、ちゃんと高めの台とそこにかかるいわゆる「テーブル掛け」もセッティングされており、立って語るスタイルに。
「前が涙ものだったので、今度は楽しいものを」と昔ばなしと甚五郎噺が融合したような演目を。
甚五郎に弟子入り志願の留五郎が狸を助けて恩返しをします、というところは『狸札』っぽい。
立っているからか、一席めよりもさらに声が張って厚みがあり、唸りもビンビンに感じる。これを浴びるのは本当に気持ちがいい。明るい平和な話で楽しいが、狸の変身ポーズが仮面ライダーなのは世代か。
奈々福先生を聴くたびに毎回思うのが「木馬亭に行かなきゃなあ」と。今日もしっかり思いました。

兼好師の二席め、「菜々福姉さんが会津若松に行ったってことなんですが、会津の人たちはコミュニケーションが取れない。方言がもにゃもにゃしている上に、表情を出さないから他の地方の人からすると全然何を言ってるかわからない。ところが、酒が入ると『こんなに変わるのか』というほどよく喋るし明るくなる」。それは昨日の噺し問屋でも似たようなことを言ってたなあ。「そんなところで『もう帰って』と言われたんだからすごい姉さんで」とまた怒られそうなことを……。
打ち上げなどで酒に詳しい人と一緒にいると、うんちくを聞かされながらいろいろ飲まされるということを実演付きで話し、「……こういうのホント迷惑」とぶった斬る。
「酒の癖で酒乱というのがありますが、肘が乳首より上にくる人は酒乱なんだそうです。こうやって肘を椅子の背もたれのところに置いて話す人や、人を呼ぶときにバンザイのように手を上げるような人は危ない。まれに『うちの上司は手を上げてなくても酒乱だ』という人がいますが、そういう人は乳首が下がっているのです」。
酒乱の話から『禁酒番屋』に。
禁酒のお触れを出すに当たって、斬り合いをして死人が出たというのではなく、「そういうことにつながるといけない」と未然に人死を防ぐためというのが兼好師らしい。
「徳利を隠すからバレるのであって、徳利をそのまま持っていけば逆に怪しまれない」と油屋に化けていき、うまくいったかに見せかけて「油屋、今年の出来はどうだ」「ええ、喉越しスッキリ」「待てぇいっ!」と引っ掛けられるのがおかしい。「徳利をそのまま持っていけば逆に怪しまれないなどと思いおって」と酔っ払っているくせに完全に読んでいるのがたまらない。こういう小ネタで隅々まで楽しいのが兼好落語だなーと再認識する。

……なんか胃カメラ飲んだからか、喉が痛い。風邪とかで炎症起こして痛いんじゃなくて内出血しているような感じの痛み。もうしばらく胃カメラはやらない。
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人形町噺し問屋 その105 [落語]

人形町噺し問屋 その105
於:人形町 日本橋社会教育会館

三遊亭兼好 ご挨拶
三遊亭げんき『無筆の小咄』
三遊亭けろよん『真田小僧』
三遊亭兼好『錦の袈裟』
山本光洋 パントマイム
三遊亭兼好『鰻の幇間』

いったいいつまで暑いのか。暑いのは好きだけど、さすがにこれだけ続くとなあ。まあ暑さ寒さも彼岸まで、だから来週くらいまでは仕方ないのか。

兼好師のご挨拶も暑さの話題から。もうここ最近は導入がこれで固定されてる感じ。
「今年は日本全国いろいろ周りましたけど、もうどこも暑いの。北陸や東北でさえ暑い。こないだは佐久平という新幹線なら軽井沢の隣の街へ扇遊師匠と白酒アニさんとらっ好くんの4人で行ったんです。軽井沢っていったら避暑地じゃないですか。でも暑いんです。白酒アニさんて黒いところがないパンダみたいじゃないですか。だからもうすっごく暑いの。ずっと『避暑地のくせに暑いのかよ』って文句言ってるんですよ。お昼に『峠の釜めし』を出されてもそれを食べながらずっと『避暑地のくせに。釜飯なんかで騙されない』って」。それは暑苦しそう……。「それに比べて扇遊師匠は大人ですねえ、文句も言わず新幹線を降りた途端に『帰ろう』って……」。
「あのー、コロナ禍中はどこいってもモニターに顔が表示されて検温する装置があったじゃないですか。今あの映像って裏で売買されてるんですってね」。ええっ、と会場に悲鳴が上がる。「この時間のこの場所にどういう年齢層の男女がきているのかっていうのがすぐわかる。何なら体温もわかる」。いわれてみればもっともだけど……。「でも皆さんは『なんだか気持ち悪い』くらいじゃないですか。私はさらに恥ずかしいんです。ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、私は写真を撮られたりするときに必ずこうするんです」、と顔の前でダブルピース。もうよく存じております。「検温のときもほとんどこうやってた。で、さらに周りに人がいないときにはカメラに向かって話しかけてた。『ほーらやっぱり熱ないだろ』とか……。だから買い取った業者が映像を見たら『またこの着物のおじさんがなんか言ってる』って思われる」。まあそれはなかなかの奇行かと……。
「今年は『落語教育委員会』で東北ツアーをやりました」ということで、会津若松では毎回冒頭にやる『携帯の電源を切れ』コントを始めたらポカンとされた話や山形から秋田へ行くのは鈍行しかなくて横向きシートの列車で4時間かかった話、仙台で溜まった洗濯物を洗おうとしたらホテルに泊まっていた女子高生の集団にランドリーコーナーを占領されていた話など。着物の帯なども洗濯しようとしていたため、そのときは電気ポットのコードを帯代わりにしていたそうで、それを女子高生に目撃されてしまったそうな。「ようやくいなくなったと思って洗濯機を開けたら、洗濯物がまだ入ってるんです。女子高生の洗濯物だとはわかっているので、勝手に出すわけにも行かない。どうしようかと思って考えていたら、女子高生たちが戻ってきた。そういうときって女の子って『キャー』とか『やだー』とかいわないんですね。喉の奥から『お゛お゛う゛っ』って……。私がランドリーコーナーから出ていくと、後ろから聞こえてくるんです。『やだーもう一回洗わなきゃ』……。おじさんに洗濯物を見られたらもう一回洗わなきゃいけないんですか!?」。理不尽。

げんきさん、毎回聴くたびに徐々に噺家っぽい話し方になっているような。

けろよんさんの『真田小僧』は初めて。前座らしくほぼ兼好師のまま。兼好師で聞いたとこのないくすぐりもあったんだけど、なんだっけ……。「10円ここまでーーーー!」にはまだ多少テレが見える。
一時期うんざりするほど聴いた『真田小僧』だが、なんと去年の真打披露興行で聴いて以来約1年ぶり。やっぱり前座の間でもネタの流行り廃りがあるのだろうか。

兼好師の一席め、「内閣が多少変わりましたけど、写真なんか見ててもなんだか重みが足りないような気がしますね。でも最近はみんなキレイになった。男性化粧品の売上がコロナ前から13倍になってるんですって。確かに渋谷なんか行くと若者はすごくキレイなんです。『きたなくたっていいじゃないかおじさんだもの』ってのは私の世代くらいまでで終わりじゃないですかねえ。これまでは電車の中で若い子に『汚いおじさん』という目で見られても、周りを見回せば必ず同志がいた。でもこれからは若い子からだけでなく、同世代のオジサンからも『怠りましたね』と冷たい目で見られるのかもしれません」。やだなあ俺完全に冷たい目で見られる側じゃん。
「昔はもっと社会全体が若かったので、『隠居』といっても30代40代の人もいた。『若い衆』なんていったら今でいう高校生くらいで、女の子にモテたいなんて考えながら毎日が楽しいんでしょう」と『錦の袈裟』に。
与太郎のおかみさんが若い衆から「ツノの生えた一休さん」と恐れられているのがたまらない。錦のふんどしを散弾するときも「ポクポク」と一休さんのあのポーズをするのもおかしい。錦のふんどしを締めた与太郎を見て「お前さんとも長いこと一緒にいるけど、股ぐらを尊敬したのは初めて」というひとこともすごい。
夜が明けて振られた男たちが与太郎を迎えにいったときに次の間の棚を漁り、「何が出てきた?」「羊羹」「甘納豆じゃねえのか」といいながらなぜか羊羹を頬張るのも楽しい。

二席め、「最近はどの業界でも人手不足と聞きますが、落語界はそんなこともなく……。お客不足の方が深刻ですね。人手不足でなくなる仕事というのも増えて、お座敷芸ではない幇間、いわゆるたいこもちなんてのも絶滅したんでしょう」と『鰻の幇間』に。兼好師では6年ぶり。
細かい繰り返しが多いこの噺だが、それをさらりとあっさりめにしているのでテンポよく噺が進む。
旦那の前で酒やお新香、鰻を飲み食いするときに、口に入れてから一瞬の間があき、それが一八の戸惑いが詰められている。
旦那が帰ったとわかった後で、まずい鰻と思いながらも「帰ったんなら旦那の分も食べちゃおう」と自分のお重に移し、お茶をかけてウナ茶でかっこむのが一八のセコさというか図々しさが出ている。それを食べているときに勘定書きを見せられてむせるのがいかにも兼好師らしい芸の細かさ。
騙されたと悟った後で女中に小言をいうシーンではさすが兼好師、酒も徳利もお猪口もお新香も鰻もすべて文句をつける内容がオリジナルの内容になっていた。
特に鰻に対して「これ鰻か? こんなに骨ばかりで……。これタチウオかなんかを蒲焼にしたんじゃないの? ……なんだ(人差し指を口の前に立てて)『シー』って!」というのがおかしい。この後に「お供の方が『本物の』鰻を5人前お持ちになりました」というセリフがあり、「実はこの店は鰻だけはまともなんじゃないか、男はそれを知ってて一八を連れてきてタカったんじゃないか」などといろいろな想像が膨らんで楽しい。

明日は健康診断のため絶食禁酒。飲み食いできる時間は開演時間中に過ぎてしまったので明日まで何も食えない。まあ不味そうな食い物の噺で助かった。
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三遊亭兼好独演会 [落語]

三遊亭兼好独演会
於:桜木町 横浜にぎわい座芸能ホール

三遊亭兼好『磯のあわび』
三遊亭けろよん『狸札』
三遊亭兼好『あくび指南』
三遊亭兼好『ねずみ』

近所の定食屋で1時間飲み放題1000円というのをやっており、昨日の夕食として唐揚げ定食をつまみに意地汚くビール3杯とサワー2杯を飲み、やや酒が残り気味。
その定食屋はできてから数回しか行ったことがないのだが、何を頼んでも値段の割にショボい上にしょっぱくってハッキリ言ってマズい。場所もあまり良くないのになんでこれで潰れないのか不思議だ。
飲んどいてアレだけど、ビールもサーバーを掃除してないのかなんかマズいし。飲み放題としても微妙だったな……。ということでもう二度と行かないだろうなあ。

この会はゲストなしで兼好師が三席やってくれるのでありがたい。

一席め、普段なら9月も半ばなら涼しくなってくるものだが、今年はまだ暑いという話題から。「今年はどこへ行っても暑い。熊本とか鹿児島とかならまだ納得できるんですが、新潟とか金沢、福井なんかへ行っても暑い。39℃とかある。『お前ら雪国の誇りはないのか!』とイライラします。青森とか東北でも暑いんです。『寒いのだけが取り柄のくせに!』って思う」となかなかの暴論をかます。
「8月下旬に新宿の寄席に出させてもらったんですが、その日は前座さんが滑った。その次も私も仲入りもトリの師匠に至るまで全員シーンと……。あの日東京で一番サムかったのは末廣亭だったでしょうね」。
「最近の話題としては……なんか話題にしにくいんですよねえ……。ジャニーズの話題とか笑いにしにくいでしょ。いいんですよ、私が再発防止策とかを語ったっていいんですけど、……落語にくるような人はジャニーズに興味ないでしょ」。はい。「あんなに歌って踊って、キラキラ汗かいて……。そりゃキュンとしますよ。その後に寄席は……行かないでしょう。出てる人の半分以上顔も洗わないようなのばっかりですよ。頼みの落語もちゃんとできてるかといったらカミカミだったり……」と容赦がない。
「我々が入門した頃は廓を実際に知らない人ばかりになるからやりにくくなるといわれてたんです。まさかモラル面でできなくなるとは……。最近はなんでもハラスメントが厳しくなって、会社の女の子に『髪切った?』だけでセクハラになる。でも女の子から『部長たまハゲた?』は大丈夫なのです。この分だとあと20年もしたら廓噺なんて今の半分くらいしか残らないんじゃないですか」と怖いことをいいながら廓噺へ。
「女郎っ買いの師匠!」と押しかけられ呆然とする隣町のご隠居が気の毒。「……違うよ婆さん。そんな怖い顔しないで……」と戸惑うのがおかしい。

二席め、最近の子は複数の習い事をしてることが多いそうだが、子どもにやらせるのは水泳がいいのだとか。水に入るというのは命の危険があるので、脳は危険を避けようとフル回転して発達するのだとか。「確かに私の周りで水泳をやっていた人というのは賢そうな人が多い。噺家にはいない」。……俺も小2から小6までスイミング行ってたんだけどなあ……。
兼好師が能を習ってるのはファンの間では有名だと思うが、「人前で話す仕事だから慣れてるでしょ、と言われるんですけど、おさらい会とかでは……」と実演。「座ってるとできるんですけどねえ……」とおさらい会での失敗談から『あくび指南』に入る。
あくびを習いに行こうとする男が兄貴分からお前の唄は酷かったといわれ、「でも俺に家まで歌いにきてくれって人がいたんだよ。それで庭に向かって歌えって。その人は歌を聞かないからどうしてですかって聞いたら『お前が歌うとなぜか夜に蚊が入ってこない』って……」などなど、過去の稽古事の失敗談がいちいち楽しい。
あくびを習う動機も「きっと女の師匠が耳元で『はぁあ』ってあくびしてくれるんだよ。そのうち『あくびしてたら眠くなっちまった。寝ましょうか』ってなるんじゃないかと思って」とスケベ根性丸出しなのがおかしい。
実際には指南処にはおじさんの師匠しかおらず、「看板」扱いされるお内儀すらいないというのは珍しいような。
師匠が実演する際にいちいち演目を堅苦しくいうのだが、その後は風呂であくび混じりに都々逸を唸ったり舟で揺られたりする仕草をするという落差も楽しい。

三席め、新幹線の車内販売がなくなるのを惜しむ。「あの売り子の技術はすごい。ベテランになると何を買うのか見ただけでわかるんですって。それにあの売り声。『コーヒーはいかがですか、お弁当はいかがですか』って車内中全員に聞こえる通る声で言う。でも寝てる人は起こさない。……見習いたいですねえ」とニヤリ。
「今年は東北ツアーというものを行いまして、ぐるっと回ってきた。東北は夏が短いのでその間に祭を盛大に行う。竿灯、ねぶた、七夕……」と仙台に場面を繋げる。
やはり兼好師のこの噺の最大の特徴は、生駒屋の存在だろう。元とらやの主人がどうしてねずみやにまで落ちぶれたのかを自分の口から語るというのは、どうしても自己憐憫感があってどうも鼻につくというかあざといというか。それを言い渋っている主人を押しのけて、お節介な生駒屋が語るという構図がいい。これこそが日本人のメンタリティでしょ。
それに全体的に辛気臭くなりがちなこの噺をカラッと明るくしてくれるという点で、なにものにも代え難いキャラになっている。今後この型がスタンダードになっていってほしいくらい。
木彫りのねずみを見てねずみやに泊まる第一号が生駒屋で、そこから旅籠仲間へ広がり、さらに全国へ噂が広がるというのも説得力がある。
ということで若手噺家は『ねずみ』は兼好師に習いに行けばいいと思います。
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三遊亭天どん・三遊亭兼好 二人会 「しびれるふたり」 [落語]

三遊亭天どん・三遊亭兼好 二人会 「しびれるふたり」
於:月島 月島社会教育会館ホール

三遊亭天どん 三遊亭兼好 オープニングトーク
三遊亭けろよん『孝行糖』
三遊亭天どん『見てません』
三遊亭兼好『大山詣り』
三遊亭兼好『一眼国』
三遊亭天どん『五人廻し』

前々から行きたいなーでも平日だしなーしかも月島って微妙に会社からも遠いんだよなーと迷っていたのだが、どうやら定時に上がれそうだったので直前にWebから予約を入れて会場へ。ちゃんと予約されて前売料金で入れた。ネット社会万歳。

まずはオープニングトーク。このふたりが絡んでるのは珍しい。両師のファンである自分は嬉しい。
Tシャツ姿の天どん師、「今日も満席ですね」と空席が目立つ会場で自虐から。とはいえ兼好師も「この会場で誰とやっても独演会やっても満席になったことがない」らしい。ていうかまあ特にこの会は主催がね。この席亭の会は行かないって人も結構いるみたいだし。
「我々は打ち解けてないから」と開始早々に天どん師がこぼし、「どうだった、この夏」となんともふわっとした答えづらい問いを投げかける。
「どうだったってなんですか」と兼好師も戸惑いつつ「私のお客さんは知ってると思うんですけど、クーラーを使わずに過ごしました」「え、家族も?」といまや鉄板ネタ。天どん師が「あーでも俺も寝るときにはクーラー使わなかったよ。喉やられるし、ダルいじゃん。お客さんはどうですか。……なに『自分は関係ない』みたいな顔してるんですか。もっと積極的にこないと。はい、寝るときにクーラー使わない人ー」とアンケートをとると結構な人数が手を挙げた。「あれ、結構いますね。私エラソーに言っちゃったけど、もしかして普通だったんですかね?」。いや昼も使わないのはさすがに。
天どん師は「夏はイベントだろ!」ということでドームでやってたスケスケ展なるものに行ってきたそうでTシャツもそのイベントのものだそうだ。「ひとりで行ったんだけど、周りは子ども連ればっかりで一歩入って絶望した。骨が透けて見えるっていう装置があって子どもは大はしゃぎなんだけど、50過ぎたおじさんは『おー』くらいの反応しかしないのよ。『何だこのおじさん、早く代わってくれないかな』みたいな視線を子どもから浴びてきた」そうで。
「最近こういう会だとトークやってくれって多くない?」と天どん師。「ああそうですね、よく言われます」「そういうとき何話すの? どうせ『いつ圓生を継ぐんですか』とかばっかりだろ?」「あー、まあまあまあ」「俺なんか全然言われたことないぞ」「そりゃまあ、ねえ」「おい! 俺は直系だぞ。孫弟子なんだから。お前のほうが遠いだろ!」と圓生問題に。まあ直弟子がみんないなくなって、なんとなく外堀を埋めていくような感じになるんだろうけれども。
「普段誰とトークするの?」「白鳥師匠とか……。でもあの人の場合、トークにならない。自分の言いたいことだけ言って、『面白かっただろ、じゃっ!』って終わっちゃう。あと白酒師匠ですかね。あの人も人のワルグチをわーっと言って終わります」「じゃあ今日は人のワルグチを言わないようにしよう」とふたりともそんなことできるんだろうか?
そのほかふたりの健康診断の話などをしつつ、なんとなく噛み合わないままトーク終了。

けろよんさん、与太郎の孝行糖の口上はかなり平坦でゆっくりめ。ちょっと足りない人が頑張ってやっている、という感じは出るのだが、その分テンポは重くなりがち。とはいえ前座でここまで噺をコントロールしているというのはすごい。

天どん師の一席め、「兼好さんのお弟子さんで客席が落ち着きましたね。ちゃんとして安心感がある。僕の弟子は開口一番でとんでもないことをしたりしますからね。焼け野原かな? って思うところを後始末しなきゃいけなかったりしますよ」ってごはんつぶさん?
「それにしてもオープニングトークしているのに番組について何も言わない、というね。まあ今僕がここに出てるということは、トリの可能性があるということですよ。『なんで兼好さんがトリじゃないの!?』という方はですね、受付にいる人に言ってください。8人くらいそういう人がいたら代わりますよ」と自虐だかなんだか。
「最近の話題で言うと内閣改造ですか。あの小渕さんすごいですよね。ドリルですよ。証拠の品をドリルで壊すような人ですよ。そんなのゲッターロボでしか見たことないですよ……世代的に大丈夫かと思ったら全然反応ないですね」。ごめんわからん。「さっき『ワルグチを言わない』って言ってましたけど、あの人、口が歪んでますよね。嘘を言い続けてるからああなるんじゃないですかね。そのうち麻生さんみたいになるんじゃないですかね……小渕さんを好きな人がいたらごめんなさいね。でも僕なんか顔が歪まないように毎日顔のマッサージしてるんですよ、『よし、これで今日もワルグチ言って大丈夫だ』って」。どういう努力?
「まあ証拠をドリルで壊すような人ですがら、自分の非を認めない。こういう人いますよね」と開封済みのアダルトDVDを「見ていないから」と言い張って返品しようとするヤベえおじさんの噺に。
いくら店員が断っても「だって見てないんですよ、レシート(3年前の)だってあるのに」と言い張って全然話が進まないという噺。
話の通じない人とそれにうんざりしながらも丁寧にツッコミを入れる人と、それをかき回す第三者と、というなんというか天どん節全開の一席になっている。
面白いんだかなんだかよくわからないっちゃわからないんだけど、それもらしいというか。

兼好師の一席め、「天どんアニさんの噺を聴いててもう……『店員はレシート奪って破って捨てろ!』って思いますよね」とニヤニヤしながら身もフタもない感想。確かにそうだ。
「観光が復活したのはいいんですが、富士山がえらいことになっているそうですね。みんなして登るからすごく混んでる。しかも登ったらすぐに下山するわけじゃないですから、山頂部分は満員電車並みの混雑なんですって。……つり革とかつければいいんじゃないですかね。それで『次はー品川ー』とかアナウンスすれば降りるんじゃないですか」とまたテキトーなことを……。
「昔は登山は半分信心だった」と『大山詣り』に。だいたいひと夏に2回当たるペース。
風呂場での熊の鼻歌「はアんあァああ~♪ お湯ゥにぃ~ 入ィるぅぅぅとおぉォ~ 身体ぁああァンがああああ あったまるね」というのがくだらないのに上手いのがいつもおかしい。

二席め、地元の会津若松に帰ったときに祭りをやっていたそうで、「懐かしいなと思いましたが、なんかちょっと違うんですよね。なにかと思ったら、最近は屋台やなんかでテキ屋を使わないそうで。PTAの人とかがやったりしてるそうですね。んー、どうなんでしょう。ああいうのって、ちょっといかがわしいのがいいんじゃないですか。それが子どもが大人の世界を覗いているような感じで。私が子どもの頃は、指のないちょっと怖そうなオジサンがたこ焼きとか焼いてましたけどね。子どもながらに怪しいなとか、これ食べたら身体に悪そうだなとか思っていましたけど」と『一眼国』に。
六十六部から話を聞き出そうとする香具師は、六十六部が留守の間に父親の面倒を見ていたという設定。その香具師から「恩知らず」と罵られ、仕方なく一ツ目の話をするという形。食事で釣ろうとしているのではないのは珍しい。
「一ツ目? ……二ツ目になれなかった人ではなく?」「誰も前座の話などいたしません」という小ネタでクスリとさせる。

天どん師の二席め、「僕が入門した頃は、まだ吉原を経験した師匠がいてあれこれ教えてくれた」そうで。
「今はそういうところがなくなっちゃって。だからトー横キッズとかああいうところに集まる。……急に僕は社会を語ってますよ。彼らのような人や、さっきの噺の見世物小屋にいるような人たちの受け皿として廓は必要なのです」とやや強引に廓噺に持っていく。昔はそうだったかもしれないけど、今はなあ。まあマクラを本気にする人もいないだろうけど。
「江戸ってところは男が多いから廻しをとっていた。それに地方からの人の集まりなので、野暮を嫌った。その中でも『甚助』と言われるのが一番イヤだったそうですね。甚助ってのはスケベな上に嫉妬深い、『自分だけモテたい』という男で……」と甚助が揃いも揃った『五人廻し』に。
ひとりめの男の嘆き節がいつもの天どん師のボヤキのようでそれが楽しい。
ふたりめが若旦那風、3人めが役人風、4人めが田舎者で5人めが関取という並び。
役人風の男がケンケンがなるところもまたよし。
途中喜助が「それはアレで……」といったところ、「アレってなんだ。優勝か。今頃優勝してるわ!」とセ・リーグファンにしかわからない悪態をつく。今年はお互いペナントレースがつまらない年でしたなあ。やっぱ指揮官の力って大きいね。あ、いやヤクルトは監督変わってないのか……。
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新宿文化センター落語会 萬橘と竹千代と信楽 [落語]

新宿文化センター落語会 萬橘と竹千代と信楽
於:東新宿 新宿文化センター小ホール

三遊亭萬橘 桂竹千代 柳亭信楽 オープニングトーク
三遊亭ば馬『から抜け』
桂竹千代『鮑のし』
柳亭信楽『出生の秘密』
三遊亭萬橘『甲府い』

先日入った居酒屋の突き出しがぐい呑みサイズの器に入ったあら煮でそれがとても美味しかった。これ単品で注文できますか? と聞いたらもう終わっちゃったとのこと。それ以来あら煮をたっぷり食べたくて仕方なかったので近所でランチにあら煮を出す店を探す。北千住は魚市場があるんで魚料理が美味い店が結構多い。4種類の魚のあら煮を名物として出す店で鉢皿にたっぷりと盛られたあら煮をいただく。うん、そうそう! これこれ! 美味い! ウマい! ……ウマいね……。いやこれだけ多いと魚の骨と20分以上格闘してもまだ食べ切れない。そんでまたコッテリと甘辛で煮込まれたコラーゲンたっぷりのあらは……飽きるね……。
日本人として魚をきれいに食べることを誇りにしておりますけれども、最後の方はちょっと適当になったかな。というのも食うのに時間かかりすぎて、この会に間に合わなくなるかもと焦りが出た。もっと時間に余裕のあるときに酒をちびちび飲みながら食べたほうがいいかもね。ということで開演時間10分前に会場に到着。

まずはオープニングトーク。
ふだんあまり絡んだことがないという三人だが、萬橘師が後輩ふたりを「ふたりともいい大学出てるんだよ。竹千代さんは明治の大学院、信楽さんは慶應」と紹介する。「萬橘師匠は?」と聞かれ、「あ?」と威嚇。「法政大学ですよね? 出たんですか?」「大学からは『出てもいいよ』とは言われなかったけどね」「……じゃあ法政の恥を晒してるわけですね」「おぉいっ!」とだいぶ下の後輩たちからいじられる。
萬橘師は芸歴20周年らしく、昨日の落語会では20周年Tシャツを作って祝ってもらったらしい。信楽さんは10年めでいろいろと聞きたいことがあるっぽいのだが、なんだかあまり噛み合わないままトーク終了。

ば馬さんは前座になって5か月めらしい。うん、まあそんな感じ。

高座返しをして竹千代さんが袖から出てきたところでば馬さんがダッシュで飛び出してめくりをめくって戻っていく。竹千代さんもポカンとした顔。
大家が町内きってのアワビ好きで、熨斗の根本を教えるカシラもアワビ好き仲間らしい。……そんなにアワビ好きなら四の五の言わずに受け取りゃいいのに……。熨斗の問答が「アワビ問題」とクイズ形式になっているのが面白い。

信楽さんは初めて。
広瀬和生氏がポッドキャストで大プッシュをしているのを聞いてちょっと聴いてみたかったんだよなあ。
小痴楽師と初めて話したときに「大学出てんの? どこ?」と聞かれ、「『学歴なんが関係ねえんだ』といわれるのかな、と思いながら『慶應です』と答えたら『どこだそれ』っていわれた。学歴って関係ないんだなって……」。
今わの際という父が主人公の出生の秘密を語るのだが、主人公としては金庫の暗証番号を教えてもらうほうが重要、という新作。なんども臨終と蘇生を繰り返しながら暗証番号を聞き出そうとするも、なかなかうまくいかないのがおかしい。

萬橘師、いつものように家族の愚痴などをマクラに。
……なんか今日は何を話したか全然覚えてないな……。でも面白かったのは間違いない。
豆腐屋の金公が善公よりも年下で、小僧からようやく上がったという感じ。最初ばかりでなく最後の方にもちょこっと出てきてガヤを入れるのが楽しい。
長屋の亭主の「魚屋死んだ?」というシンプルながら絶望的なつぶやきがおかしい。

この会場も建て直しをするらしい。てか今年来年建て替え多すぎじゃない? まあみんな高度成長期の同じような時期にポコポコ建てられたんだろうけど。
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扇辰日和 vol.86 [落語]

扇辰日和 vol.86
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰むめ『狸札』
入船亭扇辰『天災』
三遊亭青森『もう半分』
入船亭扇辰『雪とん』

昨日は神・長渕剛の武道館ライブ。18時半開演なので早上がりでも間に合うのだが、万全を期して有給を取る。さらにライブに向けでスタミナをつけないとな! 昼に近所の食べ放題の焼肉屋へ行くも、なんか最初のカルビだけで腹一杯になってしまう。というか肉のほとんどが脂なんだもんよ。肉を網に乗せるとゴオウッと炎が上がるという炎上焼肉。肉の質もよくない上、一皿の量がやたら多い。前に行ったときはもうちょっとよかった気がするんだがなあ。結局最初にババッと頼んだ分をあ食べるだけで精一杯。「残したら追加料金」とくどいほど書かれているので無理をせず。もうこの店で食べ放題は頼まないほうがいいな。

ところでこの店に貼られてたカード。
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言いたいことは何となく分かるけど、これだと食い残しを推奨してることにならんか? 言うなら「フードロス削減にご協力ください」とかじゃねーの?
神のライブは最高でした。遠慮せずに大きな声で歌えることの嬉しさといったら。おかげで今日は声が出ません。あと拳の突き上げ過ぎで右肩が痛い。

さて前座は存在は知っていたが高座は初めての辰むめさん。文字で書くと「辰むめ」だが発音は「辰ンめ」。歴代の扇辰門下のお弟子さんはこの会で初高座を踏んでいるそうだが、辰むめさんはすでに初高座済みのようだ。『寿限無』かと思ったら『狸札』。
狸に「どうやって入ったんだ」と2回尋ねてしまったり、狸が恩返しにきた晩に札に化けられると明かしたりなど、おそらくミスだろうと思われることがあったがそつなくリカバーしていた。

扇辰師の一席め、「今日はそれほど暑くはないんですがなあ……。やる気が出ねェのよ。皆さんはご案内でしょうが先週謝楽祭っていうのがありましてね。もう疲れちゃって。開場は10時ですけど、8時に朝礼がある。だから6時起きだよ。まあアタシは落語会の担当だったからそんなに大変じゃなかったんですよ、みんなプロなんだからまかしときゃいい。けど三K辰文舎でライブやってくれっていわれてさ。これが暑ィの。直射日光でさァ。やってるうちにギターが熱くなって壊れたらどうしようって……。それにその後に鈴本の出番もあって。ホントは休みたかったんだよ。でも湯島と鈴本なんてすぐそこだから、休むわけにはいかなくてね。でもまぁ落語ファンはみんな湯島天神にいるんでしょ、ガラガラでしょ、と思ってたらギッシリ。みんな暑いところ行きたくねェんだね」。謝楽祭お疲れ様でした。
「その疲れが2~3日抜けなくて。で、一昨日ある方のライブに行ったんだよ。NHKホール。定員3600人がいっぱいなの。……なんですか今日のこの人数は!」。確かに今日は空いてたなあ。「でさあ、これが長ェの。3時間だよ? さすがに最初からワァって総立ちになるような感じではないんだけど、やっぱり最後の30分くらいはみんな立っててさ、見えねえからしょうがなく私も立ちましたがね、それでもう疲れちゃって」。そんなこといったら長渕ライブなんて2時間以上ずっと総立ちで拳突き上げなんですが。
「今日のお客さんは運がいい。ゲストは青森さん。扇辰青森なんて組み合わせはそうありませんよ。だってあの白鳥さんのお弟子さんだよ?」。確かに扇辰師と白鳥師では芸風がぜんぜん違うしなあ。
「でもアタシは青森さんのこと買ってるんだ。なんといっても彼は上下が切れる。白鳥さんの弟子なのにだよ? 白鳥さんの上下なんてグチャグチャなんだから」。ひどい言われよう。
「でもこないだクラシックと落語のコンクールがあって、アタシが審査員のひとりだったんだけど、その会はクラシックも落語も同じ人が審査するの。だからアタシがクラシックの審査もするし、クラシックの先生が落語の審査をする。そこでダントツで青森さんが落語の賞を獲った。クラシックの先生も大絶賛でしたなあ。彼には仲入り前に時間を気にせずたっぷりやってもらいますんで」と袖を見ながら「……単にプレッシャーをかけてるんだよ」と青森さんにニヤリ。「アタシは短いところで」と『天災』に入る。
「江戸っ子の噂を申し上げます……そういえば白鳥さんの弟子、青森に続いてぐんまだってさ。白鳥さんも二ツ目時代はにいがただったし……江戸っ子はいねェのか」ご自身だって新潟でしょうに。
べらんめえ口調も鮮やか、というか強調しすぎがおかしい。「離縁状」が「れれれぇぇぇぇぇんじょう」になったり。

青森さん、「扇辰師匠が『江戸っ子はいねェのか』とおっしゃってましたけど、バカにしちゃいけない、三番弟子に『東村山』がいますから。……東村山が江戸かどうかは皆さまにおまかせしますが……」。それはちょっと無理が。
訥々とボソボソと話すスタイル。誰かと似ているような気がするけどそれが誰か思い出せない。
「私の爆笑新作でドカンと笑わせようと思ったんですけど、今日のプログラムを見たら『古典芸能研究会』って書いてあって……。なのでさっき思い出した古典をやります」と『もう半分』に。
押し殺すような話し方が、雨が降って蒸し暑い夏の夜を容易に思い起こさせる。老爺殺しの場面ではかなりの芝居仕立て。「国宝直伝です」。ええすげえ。じゃあ龍玉師と同じソースなんだ。
扇辰師もいっていたが、白鳥師の一門とは思えない重厚な一席。

仲入り明けの前にリンゴーンとチャイムが鳴る。扇辰師、「まあいいんですけどね。ベルとチャイムを間違えるバカがどこにいるんだ」と苦笑い。というかそんなスイッチあるんだ。
「実は白鳥さんのお弟子さんは私のところに結構お稽古にきてる。五本の指に入るんじゃないかな。白鳥さんのお弟子さんてね、真面目なんだよ。アゲの稽古にもちゃんとくるしね。ぞろっぺえだとこないんだよ。うちの弟子なんかぜんぜんこない」。え、アゲの稽古しないと高座に掛けられないんだと思ってた。
「青森っていったって広いからね、出身どこ? って聞いたら陸奥だって。陸奥って下北半島の端の方ですよ。前に仕事で行ったことがあるけど、なんにもないの。もう少し南に行くと恐山。だからあんなに乗り移ったような噺が上手いんだよ」と褒めてるのかけなしてるのか。
「青森さんが夏の噺をやったんで、アタシは夏に絶対やらない噺をしましょうか」と『雪とん』に。
病は四百四病で恋の病はその他、というところから『幾世餅』『紺屋高尾』『崇徳院』? 季節に関係あったっけ? と思っていたら、なるほど。扇辰師で聴くのは4年近く振り。
この蒸し暑いさなかに大雪の日の寒さを思い起こさせるのはさすがのひとこと。佐七のいなせっぷりと糸屋のお嬢さんの儚さと強かさぶりもお見事。

謝落祭の三K辰文舎の様子でも。
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Nikon Df
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ひの亭七生寄席 三遊亭兼好・蝶花楼桃花二人会 [落語]

ひの亭七生寄席 三遊亭兼好・蝶花楼桃花二人会
於:高幡不動 七生公会堂ホール

三遊亭けろよん『つる』
蝶花楼桃花『徂徠豆腐』
三遊亭兼好 蝶花楼桃花 トーク
三遊亭兼好『壺算』

久しぶりに遠出。しかし二人会で2千円というのは安い。交通費払ったってまだお釣りがくる……と思ったらトークありと雖も一席ずつかあ……世知辛ぇなァ……なんか前にも似たようなこといった覚えがあるが。
バイクや車だと2時間くらいかかる場所で、さすがにこの暑さの中をバイクってのはなあ。なので電車で。京王線久しぶりに乗った。

さほど広いホールではないが、チケット完売の満員御礼だそうだ。

けろよんさんは八王子出身で、高校も会場がある日野市の学校だったそうで、会場がホームの如く湧く。地元の人ばかりでこんな埋まってんのか。
地元効果か、『つる』も感度よくかなりウケている。

桃花師、「兼好師匠は私が入門したときは二ツ目で、そのすぐ後に真打に昇進した大先輩。入門して1年くらい経った頃に『ぽっぽちゃん、噺家らしい目になってきたね』って話しかけてくれたんです。すごく嬉しくて『ホントですか?』って聞いたら『うん、死んだ魚のような目』って……」。言いそう。
「落語は小咄を繋げて長い噺になっていくもの」として『九日十日』を掛けたら大ウケ。この噺でこんなウケてるの初めて見た。「わー嬉しい、じゃあもうちょっとやっていいですか」と『味噌豆』も。もともとこのふたつはセットだったみたいね。
「日野市市制60周年の記念の会ということでおめでたい出世の噺を」と『徂徠豆腐』に。
冬の噺のイメージでこの時期に聴くのは初めてかも。さすがに寒さの描写はなかった。
マクラで時間を使いすぎてちょっと急ぎ気味だったのか、微妙に説明がちょっと足らないんじゃないかなーと思うところもチラホラ。私はこの噺知ってるから補間できるけど、初めて聴いた人にはなんでこうなるのかわかりにくいんじゃないかとも思ったり。

仲入り後にトークコーナー。二人会は初めてということで、確かにこのふたりが並んで立ってるのは初めて見る。
お互い日野市とのつながりを挙げていくが、ほぼ出ず。桃花師のご母堂があきる野市出身というところで少し反応があったが、「あんな田舎と一緒にするなって反応ですかね……」。兼好師は前座の頃に高幡不動尊でやっていた落語会に出ていたくらいだという。「高幡不動尊の前に高幡不動産ってのがあるんですよね。ふざけてるなーっていつも思ってた」そうで。
お互いの師匠が仲がいいこともあって、なぜ入門したのかなどの話に。「小朝一門はいっぱい入っていっぱい辞めてるよね。一番早かったのが、朝地方へ行く特急列車でたまた会ったときに『好楽アニさん、これ昨日入ったアボカドっていう見習い』と紹介されて、夜帰りの電車で『アニさん、さっきのアボカド辞めちゃった』って……」「あー、アボカドっていう人がいたってことだけは知ってます」など。
「次の市制70周年の会に呼んでもらえるように頑張りましょう」という心にもない(?)結論で締める。

兼好師、最近お気に入りの慶應高校のマクラを。
その後に「最近の技術で慣れないこと」に話題が移る。スマホに電話がかかってきたときに、今の機種は横にスワイプして出るのだが、前の機種は縦にスワイプしていたのだという。「いまだに電話かかってきたときにどうすればいいのか迷っちゃって、私はキリスト教徒でもないのに毎回こうやって十字を切ってるんですよ」。Androidはね……。とはいえ私はiPhoneだけど、電話に出るアイコンが一瞬どっちかわからなくなる。
「それと最近で馴染めないのはセルフレジ。こないだも買い物をしたら、レジの前にオバサンがいるんですよ。商品を出しても何もしてくれない。『ご自身でお願いします』なんて。どうやってやるのか分からなかったから戸惑っていたらやり方教えてくれて。……だったらやってくれればいいのに。そんで最後にお金払おうとしたら『現金は使えません』って……なんだよ! 昔はこんなことはなかった。対面でのやり取りが普通で、そこで『まけろ、まけない』みたいなことがあったんでしょう」と『壺算』に。
これがもう爆発的にウケる。まあそりゃそうでしょう。ウケのいい客に鉄板ネタをかますんですから。第一部ともいえる番頭との丁々発止も楽しいが、第二部の詐欺まがいの口八丁が素晴らしい。あのテンポで畳み込まれると正常な判断がつかなくなりそう。

終演後、せっかくなので高幡不動にお参りに行ってみる。さて戻るかと駅へ向かうと、あれ見覚えのある和服姿の後ろ姿が。どうやら兼好師もお参りに行ったようだ。まあ私は自重できるファンなので、話しかけるのはやめておく。高幡不動からだと結構な時間一緒になるので、あまり邪魔するのもなあと。……が、駅のホームでばったりと出会う。そしたらもうご一緒するしかないですよねえ。高幡不動のご利益がもう出たのかな。
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