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らくごカフェに火曜会交流会 11月29日 [落語]

らくごカフェに火曜会交流会 11月29日
於:らくごカフェ

入船亭扇橋『たらちめ』
三遊亭天どん『掛け取り』
三遊亭天どん『タラチネ』
入船亭扇橋『明烏』

何この大好物の組み合わせ。大好きなふたりだけれども、この組み合わせは考えたことなかったなあ。
芸風もなにもまったく違うこのふたり、混ぜたらどんなことになるんだろうと楽しみにしていた。

異色の組み合わせかとも思いきや、扇橋師が二ツ目に昇進して初めての二人会が天どん師とだったらしい。当時はまだ天どん師も二ツ目だったかな。
「あのアニさんはスゴイんですよ。特に真打になってからずっと寄席に出てて高座でスベってるのを見たことがない。……二ツ目の頃は前座さんの直後に新作やってお客さんの求めているものと違ったりして『どうした』ってこともありましたが! 今は常にウケてますから。それに寄席にいつも出てるってことはそれだけ求められているということですから。二ツ目のスタートと真打でのスタートでまた一緒にやるというのは縁を感じる」。
披露目も終わったが、特に何もなくてもなんとなく三人集で集まったりしてるそうで。『宿屋の仇討ち』の河岸の若い衆たちじゃないけど、ホント「始終三人」なんだな。市馬師には「お前らは前世でなにかあったんじゃないか!?」といわれたそうな。
そんな縁の話から夫婦の縁になり、出雲大社の縁結びの神様会議の定番マクラに。今日は「もうこのマクラじゃ全然笑わない」ようなすれっからしばかりが集まっているようだ。まあらくごカフェにいること自体がその証のようなものだけれども。
「しらげの在り処いずれなるや」というべきときに「白根草の在り処」とし、ネギの在り処? 新しいくすぐりの伏線か? と思いきや単に間違えたらしい。結構力業で元に戻すも、ここで間違えるというのも珍しい。「わかるでしょ、抜け殻なんスよ!」。

天どん師の一席め、「自分に合わないな、やることないだろうなと思っていた噺をやらなきゃならなくなりまして。なんでネタ出ししちゃったんだろうなあ。でもやるって言っちゃったんでやりますよ」と『掛け取り』に。
相手の趣味が狂歌や喧嘩までは普通の古典落語だが、その後に「刑事ドラマ」「プロレス」「歌舞伎とガンダム」などいろんなものが出てくる。
「えーと次は何をやるんだっけ」と手を見てる。さてはカンペしてんな。そういうところに圓丈イズムが生きているとは。
どうやら我々の反応を見ながら当日にやるものを決めているようで、「これはやらないな」「お客さん全然ついてこない」と天どん師自身も探り探りで、噺作りの工程を見ているようで楽しい。とはいえわからないネタも大量にあったけど。
芝居のネタなどでは自分で柝を打つ。「こんなこと扇橋くんに頼めない。というか説明できない」と正直に言ってしまうのも天どん師らしい。
どのネタが採用されるかは当日のお楽しみなんだろう。

二席め、「『タラチネ』を演りますよ」と宣言。本来は寄席で前の人と同じ噺を掛けるのはご法度だが、この噺の場合は前の人がやった古典が仕込みとなる。まあ仕込みがなくても成立するし、らくごカフェにいるような人たちには不要だろうけど。
一席めをたっぷりやって疲れたのか、飯を食う稽古のシーンなどは「ここは中略しまして」とかバッサリ。というかお嫁さんとのやり取りが面白い噺だから元々このシーンいらないのか。
なんかこの噺はラフにやったほうがよりバカバカしくて面白いのかも。

扇橋師の二席め、「天どんアニさんに演目を聞いても頑なに教えてくれなかった理由がようやくわかりました。先日雲助師匠のハメモノ入りの『掛け取り』を袖で聴いていて『一生できねえな』と思ったんですけど、なんかできるような気がしてきました」だそうで。難しいだろうなあとは素人でも感じる。
「ネタどうしようか決まらないんですよね……一蔵アニさんなんかまだネタ被りなし継続中じゃないですかね。アタシと小燕枝アニさんは浅草で諦めましたから……。えーじゃあ『不孝者』と『干物箱』、どっちがいいですか?」と天どん師みたいなことを言い出す。『干物箱』は披露目で聴いたけど、『不孝者』はどうだったっけ……先日聴いたのは兼好師だよなーと考え私は『不孝者』に。ふたりしかいなかった。とはいえ『干物箱』もさほど盛り上がらず。「どっちも聴きたくないってこと!? わかりました、決めました!」と『明烏』に。
今日の大旦那は札付きの源兵衛太助コンビを煙たがっている様子。それでも時次郎を吉原へ連れ出すとわかってからの手のひら返しが極端で楽しい。
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花の新真打五人衆 [落語]

花の新真打五人衆
於:王子 ほくとぴあ

柳家しろ八『道灌』
入船亭扇橋『初天神』
柳亭小燕枝『湯屋番』
春風亭柳雀『転宅』
春風亭昇也『塚原のす』
桂小すみ 音曲
春風亭一蔵『ふぐ鍋』

今年の落語協会と落語芸術協会両方の新真打を集めた会。ときん師が企画らしい。
小燕枝師と一蔵師は披露目以降は初。

小八師の一番弟子のしろ八さん、落ち着いた雰囲気で口跡も爽やか。それに何より声がいい。『道灌』なんて笑いどころの少ない噺でこれだけ笑いをとれるのもすごい。これは将来売れるんじゃないと思わせる。
貼り雑ぜの小屏風に「歴史画が貼ってあるんだ」というご隠居の説明に、「電車で轢かれた人が……」というちょっとブラックなネタが入るのも私好み。

扇橋師、披露目の期間にお子さんが風船を父親代わりにしていたという話をマクラに『初天神』に。
飴玉を買ってもらうために金坊がペラペラと口数多くまくし立てる。買ってもらった後に今度は父親が飴玉を噛むな洟が垂れてる涎が出てるとものすごい勢いで小言をいう。なるほどこれは親子だ。
団子で蜜がいいと言い張る金坊に「あんこにしとけ、着物汚すだろ。おっかさんに怒られるの嫌だろ」「怒られてもいい」「おとっつぁんが怒られるんだ」「一緒に怒られよう、一緒に謝って。だから蜜がいい」というやり取りがなぜかやたらおかしい。

小燕枝師、披露目が終わって池袋演芸場に顔付されているそうで、しかも結構深い出番らしい。「前座の頃から池袋には通ってましたけど、真打になって戻るとどこに座っていいのかわからなくなる」そうで、立場が変わったことにまだ戸惑いはあるようだ。
若旦那がお湯屋へ奉公へ行こうとしているときにひとり語りとして「ブロッサムホールでの披露目の会で人気の師匠がたっぷりやって自分の持ち時間が13分しかなかった」とボヤくのがおかしい。
想像の中のお妾さんに石鹸を「これサービスです」「あらありがとうございます……古典落語で『サービス』なんて言ってよろしいんですの?」というのはどこまで計算なのか。
能天気な若旦那がワーワー明るく騒ぐこの噺は小燕枝師にすごく合っていると思う。

柳雀師、他の協会の披露目に遊びに行くことが普通になったのはここ数年だという。そこで落語協会と落語芸術協会の違いがあるといい、落協は「ちゃんとした師匠が出番のときにスッと来て高座をきっちりやってスッと帰る」だそうで、緊張感があるという。それに対して芸協は緊張感がないそうだ。
「今日も兼太郎さんと会ったときに『いやー落語協会の楽屋緊張しましたよ』と言ってたんで『芸協はどうだった?』と聞いたら『芸協は遊びに行きました』と言ってましたから。まあ芸協の楽屋は明るいんですよ、学級崩壊ですよ。高座がシーンとしているときに文治師匠の笑い声が響いてて、無線で『楽屋うるさい』って注意がきますから」。
噺にはいってお菊が泥棒だったといったときに「え、姐さんみたいな泥棒いたっけ!? 仲間なら知らねえはずないんだけど……。あ、そうか、協会が違うんだ。姐さん泥棒協会? 俺は泥棒芸術協会だから。泥棒協会はスッと盗んで帰るけど、芸術協会は奇抜な手を使ったりする」とマクラとつながるのが面白い。

この会のためのトートバッグやサイン色紙が売られており、これまで扇橋師や小燕枝師も高座でグッズ買ってくれといっていたが、仲入りにも客席に行商にやってくる。『初天神』の金坊のノリで「グッズ買ってくれー!」「色紙買ってくれー!」と回る。

昇也師、柏市の一日警察署長をやった話などを。
イオンモールで落語をやったそうだが、警備だかの警官がまったく笑わないのだとか
「もっと笑え! 署長だぞ!」というボヤきがおかしい。
話はあちこちと飛び、芸協の披露目興行の番頭連がいかにポンコツだったかなどたっぷりと。
「一応落語もやりますから」と始めたのは『馬のす』の改作。
「塚原」というのは実在の人物で、いわゆる「戸越銀座おじさん」。最初は宮治師に「よっ、戸越銀座!」と声を掛けていたのを、一蔵師や扇橋師などにも声を掛け始め、また声を掛けられた方もいじらざるを得ないのでいじっていたら喜んじゃってさらに暴走し、ここ最近ではいろんな若手に矢鱈目鱈声を掛けるという自己顕示欲の化け物のような人。いじられると「うひゃひゃ」と気持ち悪い声で笑う。最近は一蔵師も扇橋師も「はいはい」というような対応だったのだが、こういうことするからさらに調子に乗るぞー。

小すみさんは都々逸、長唄をマシンガントークを交えながら。
相変わらず超絶テクニックを魅せる。

一蔵師、「18時に楽屋入りして、今21時過ぎですよ。待ちくたびれた! でもおかげですべてのボートレースも終わったのでなんの気がかりもない。今日は……プラスでした」。おめでとうございます。
「寒いときに安くてうまいものといえば鍋でしょう」と大阪のふぐ屋の話題に。ふぐ刺しとふぐ鍋しかない店で、東京よりもだいぶ気楽に食べられるような店らしい。東京はふぐは気軽に食えるもんはないしなあ。
一蔵師の『ふぐ鍋』は約3年ぶり。というか『ふぐ鍋』自体あまり聴かない。
一八が幇間なのに頑なに旦那よりも先に食べようとしない往生際の悪さがおかしい。

終演後、最後に残っていたサイン色紙を購入。
そういやあ前座の頃から追っかけてるのに、一蔵師のサインて初めてかも。
扇橋師は小辰時代に謝楽祭でもらったことがあったはず。
まあ噺家にサインもらう機会といえばCDとか本買ってそこに入れてもらうくらいしかないかな。なので兼好師と天どん師、遊馬師のサインは大量に持ってます。

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おひつじ亭 入船亭扇橋独演会 [落語]

おひつじ亭 入船亭扇橋独演会
於:駒込 アーリーバード アクロス

入船亭扇橋『子ほめ』『夢の酒』『木乃伊取り』

扇橋襲名してから初の独演会だという。
というか同じ時間に一蔵ひとりの会もあるって。どっちか夜にしてよー。
向こうだって真打昇進後初のひとりの会で、絶対マクラが大暴走するよー。うわー行きてえー。
とはいえこっちを先に見つけて予約したからなあ。扇橋師と萬橘師はスケジュールをGoogleカレンダーで公開していて、自分のカレンダーに読み込んでいるので見落としがないので助かる。兼好師も知り合いの兼好ファンがまとめて公開してくれているのでだいたいカバーできている。これみんなやってくれると助かるんだけどなあ。まあそんなことしたらかわら版の役割がなくなってしまうのだけれど。

一席め、第一声に「披露目、終わりましたー! ……披露目終わったらどうなっちゃうんだろうって思っていましたけど、抜け殻です!」だそうだ。
「このご時世なんであんまり大きな声ではいえませんが、定席の40日間、毎日飲んでました。しかも1次会で帰ったことがない。毎日二次会三次会まで行ってましたね。あんまり言わないようにしてたんですけど、国立で市馬師匠に『コイツラは毎日よく飲んだ』とバラされちゃいました」。俺も終演後ちょっと経った後に居酒屋とか料理屋に入っていく噺家たちを何度か見かけたなあ。
今回の扇橋師の番頭さんはもちろん辰之助さん。「あのポンコツですから……。しかも自分をポンコツだと自覚していないのがまた腹が立つ。……でもね、今回は怒らないって決めたんです。番頭に指名したのは私ですから。でも1回だけ怒りました」。打ち上げでの会計が間違ってたという話なのだがだいぶ腹に据えかねたようで、「皆さん池袋の〇〇の『□□』って寿司屋には入らないほうがいいですよ。私、池袋の寄席にでたら毎日この話をマクラでしようと思っています」とのことなので、詳細は池袋で聞いてください。
「今日は披露目じゃあまりできなかった噺をやります」と初心に帰ってなのか前座噺の『子ほめ』から。さすがに披露目では新真打がやる噺ではないからなあ。
人を褒める言葉として「百歳から上の人がいたらあとはもう『すごい!』とでもいっとけ」という切り札を手に入れ、噺の構成にも影響をおよぼす。

そのまま二席め、扇橋師は寝ることが好きだそうで、「打ち上げで寝ちゃうくらいですから」。扇橋師が酒飲むとすぐ寝ちゃうのは一蔵師などによく言われてるからね。
前座時代にたまに扇辰師から「明日は家に来ないで直接寄席に行っていい」といわれると嬉しかったという。寄席をなんとかして休み、ビールをしこたま買い込んで酔って寝ていたこともあったとか。そんな楽しみの中、訪問者に起こされ……とマクラのサゲに。私も若い頃は14時間連続寝とかよくやってたが、年取ると長い時間寝られないってホントなのね。あと休みの日だろうが結局毎日同じ時間に猫に起こされるってのもあるけど。
「寝たいときに寝られるのは幸せ」と『夢の酒』に。この噺といえば入船亭というイメージ。そんな噺を二席めに持ってきたのもなにか意味がありそうな、そうでもないような。そこはご本人じゃなきゃわからないけれども。
嬉しそうに夢の話を語る若旦那と、それを聞くお花のテンションの違いがおかしい。お花が爆発するときの鳴き声が怪鳥のようでそれもまた笑いになる。

三席め、「十代目と言っていただけますけど、まだ慣れないですね。『扇橋師匠』といわれても自分だと気づかない。師匠はなにか思うところがあるのか、必ず『扇橋』といってくれて、絶対に間違えない。一度師匠に呼ばれたのに自分だと気づかずに、遊京に『おい呼んでるぞ』って言ってしまったことがある。『師匠』って呼ばれるのも慣れないですね……。でも『小辰さん』と呼ばれるのもイラッとする」そうで。めんどくさいな!
「十代目と言われると『僕のヒーローアカデミア』の……全然伝わらなそう……」。私も読んでないのでよくわからないのだが、つまりは代々受け継がれる技というか「個性」なるものがあるそうで、そうすると歴代の技などを使えるそうだ。「私にもそれが使えないかと……」というが……やっぱりよくわからん。
「我々の名前って明らかに『本名じゃないな』って思うじゃないですか。たまにお姉ちゃんのいるお店とかに行くとちょっと困る。『始』『辰之助』『朝之助』くらいまではなんとかいけるけど『市童』になるとなんだかわからない。以前一度『我々は大分の会社から研修に来たサラリーマンだ』って神楽坂のお店でやった。『学会があってね』なんて」。なんかよくわからない遊びを……。
女性のいるお店つながり(?)でこれも廓噺になるのか『木乃伊取り』に。「長いので寄席じゃやりにくい」とのこと。
若旦那を連れ戻すという使命に燃えた清蔵と、ミッションを果たして酒を飲んでうじゃじゃけた清蔵のテンションの違いがおかしい一席。
噺の冒頭に出てくる大工の頭の暴走ぶりも楽しい。
タグ:入船亭扇橋
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けんこう一番!第二十二回三遊亭兼好独演会 [落語]

けんこう一番!第二十二回三遊亭兼好独演会
於:国立演芸場

三遊亭兼好『初天神』
三遊亭けろよん『雑俳』
三遊亭兼好『鈴ヶ森』
桂小すみ 音曲
三遊亭兼好『宿屋の仇討ち』

平日だというのに今日も今日とて落語通い。誰か俺を止めてくれ。

兼好師の一席め、「もう今年もあとひと月ちょっと。早いですねえ。こないだ圓楽師匠が亡くなったと思ったらもうこないだ四十九日ですよ。……その間に大臣が3人辞めてんの」と黒い笑みをこぼす。
「紅白も発表になりましたが……年々わからない人が増えますね。というかもう読めない。私は最近の歌手ではあいみょんが好きなんですが……あの方は全部ひらがなだからいいのかもしれませんね」。わかりすぎてもう。
自分が歳を取ったという実感と、その分子どもたちとの壁を感じるというような話から『初天神』に。
りんご飴をねだられて「赤ぇのは毒だからダメ」と断ったものの、結局飴玉を買う段になって「赤ぇのでいいか? ……毒だから嫌だ?」と返されてしまうのがおかしい。
兼好師の親子の場合、父親が何だかんだと言いつつ結局は子どもをかわいがっているところが伝わってくるのがいい。出かける前にちゃんと着替えさせているし、ものをねだられてるとき以外は終始ニコニコで飴を与えるときも優しい顔をしている。
団子の蜜を舐めとった後でサゲになるが、そこでさらにひと捻り。これはさんざん金坊にいいようにやられてきた父親の逆襲なのか、それともこの父親にしてこの子ありなのか。

二席め、「旅行しながら旅先で泥棒を働く旅行泥というものがいるんだそうで。ギャンブル場があるような場所に行ってギャンブルをしながら泥棒をする。談春師匠や一蔵くんなんかもボートレース場があるところに積極的に仕事に行くんだから似たようなものですが」。酷いことを言われているが、兼好師の口から自分のお勧めの若手が語られるとなんか嬉しい。
泥棒の話から『鈴ヶ森』に。
追い剥ぎの口上を口写しで教えてやるといって子分が勘違いしたときに「考えてください。口移しして覚えられるんですか? 覚えるんだったらやります」という悲壮な親分の覚悟がおかしい。
茂みに腰を下ろしたときに刺さったのは今日は大根。「誰かが抜いて逆さにした大根がお尻に……さすがに大根は無理があった……」というひとり反省会も笑える。

小すみさん、相変わらずすごい腕前。
なのに経絡の話とかを超ハイテンションで話してて弾くようでなかなか弾かない。
さらに自作のインドヴェールのようなものをつけて『カレーを作ろう』というオリジナルソングを。これ一度寄席で聴いたことがあるが、今日はBGMを流してそれに合わせて演奏しているので重厚。しかも照明もそれっぽい虹色の妖しい光が舞っているし。
やっぱり音大出だからか、すっごいキッチリしているという感じ。橘之助師とかは結構音を明らかに外してたりもするんだけど、それはそれで演芸という遊びを感じたりもする。

兼好師の三席め、最近寝る前にドラえもんを少しずつ読んでいるのだとか。そういえばちょっと前のインスタに全巻揃えたという投稿があった気がする。「いやバカにしますけどね、ドラえもんってよくできてるんですよ。落語みたいになってるんです。のび太は与太郎ですわね。でドラえもんがご隠居。ジャイアンが熊さんや侍で、スネ夫が若旦那。しずかちゃんが花魁」。まあお色気担当ですから……。とはいえ藤子・F・不二雄先生が落語好きなのは確か。『壺算』のトリックをジャイアンがそのまま使ってのび太を騙したりするし。
「最近旅の仕事が増えて泊まりもあるんですが、そのときはドラえもんは持っていけない。嫌でしょ師匠のカバンからドラえもんが出てきたら尊敬できないでしょ。だから我慢してるんですが、どうも眠りが浅いような気がして……。旅先で寝られないのは辛い」と『宿屋の仇討ち』に。そうつながりますか。
相変わらず河岸の若い衆たちの軽薄なやりとりが心地良い。芸者を呼ぶときに「猫呼んでこい」「ミケ?」「本物の猫呼んでどうすんだよ、刺身食われっちゃうだろうよ。三味線だ、芸者!」とトントンと歯切れよく注文が繰り出される。
「若すぎねえで、おペンペンが良くて声がいい、酒を飲みたがらねえ、ものを食いたがらねえ、インドの唄を歌わねえようなそんな芸者を呼んでこい!」と残念ながら小すみさんはダメだったようだ。
この噺でも本来のオチである「そうでもしないと落ち着いて眠れん」という種明かしを早々にしてしまい、サゲにもう一段追加している。こういう常になにかしら新しい要素が入ってくるから兼好師はやめられない。
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扇辰日和 vol.84 [落語]

扇辰日和 vol.84「入船亭小辰改メ十代目入船亭扇橋真打昇進襲名披露」
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰ぢろ『悋気の独楽』
入船亭扇辰『蕎麦の隠居』
入船亭扇辰『紫檀楼古木』
口上
入船亭小辰 改メ 入船亭扇橋『替り目』

昨日は浅草の後に高校の友だちと飲み。
あまり調子が良くないのか、あまり飲めず。
酒量もそう多くなく、水も大量に飲んでいたので普段よりは全然マシだけどやっぱり二日酔い。なんか最近弱くなってるような気がする。
午前中に猫の病院行きたかったのだがおとなしく寝る。

さすがに今日は満席。若い人たちも多い。というかなぜかこの会は若いお客が多いんだよな。

辰ぢろさん、満員の客席に怯んだか、最初の挨拶から盛大に噛む。「……噛みましたね。深呼吸をして……」と気を入れ直すが全編噛みまくっていた。まだ覚えたての噺なのかも。

扇辰師の一席め、「最近この会のお客さんは目減りしてたんですが、今日はさすがに満員。……扇橋、ありがとう。今日は皆さん扇橋のお客さんなんでしょ!?」。まあそうでもあるけど扇辰師匠の客でもありますよ。
「でもね、先ほど熊本からいらっしゃった方がいましてね。それから広島、長野、新潟からもきてくれた。それからなんとドイツからという方もいらっしゃいました。その方たちは私のお客」と弟子と張り合う師匠。
「ここまで聞いて『扇辰、なんか元気がねえな』とお気づきの方もいらっしゃるでしょうが……はい、その通りです。体調不良です。……二日酔いです」。師匠もですか。
昨日は黒門亭のあとに高崎まで友人のお見舞いに行き、一緒に行った同窓生たちに一杯だけ付き合うつもりだったという。結局周りにつられて飲んでしまい、帰りの新幹線でも飲み、「最寄り駅から家に帰るまでに3軒くらい居酒屋があって、『あれ師匠飲まないの』なんていわれると『よし飲むか!』ってなっちゃう。で、二日酔いですよ。でもね、二日酔いでこれだけの芸を見せられるのは……」と腕を叩く。
噺は昨日と同じく『蕎麦の隠居』。どうやら他の会でリクエストでもされているのかネタ出しをしたのか事情があるらしい。この噺は先代の扇橋師しかやっていないそうで。扇橋師に向けた当て書きだったんだろうか。
「先代のトボけた味わいはなかなか出せませんなあ……」とのことで、確かに端正さはあるがトボけた感じではないかな。ただ蕎麦をたぐる仕草自体はあまりないのに、猛烈に蕎麦が食いたくなる。今日は昼食がもたれているような腹具合なのに、それでも帰りに一枚くらいたぐってくかと思わせる。
「本人にはまだ言っていませんが、この噺は扇橋にも稽古をつけます」といっていたので、当代扇橋師でも聴けるのを楽しみにしていよう。

そのまま扇辰師の二席めに。
昔は電話を表す仕草で手ぬぐいを細く折って表現したり、または手ぬぐいを使わずに親指と小指を立てた拳で表現していたが、最近の前座は手ぬぐいを折らずに懐から出したままの大きさで耳に当てるという。確かにスマホだとそのくらいのサイズのものもあるしなあ。「電話の仕草も時代によって変わる。次は折れるスマホとか出てくるんじゃないの? ……もうあるの? (客席がうなずき)え、あるの!?」と驚いた様子。前々からあったけど最近またCMとかやってますな。
今昔で変わったつながりで昔あって今はなくなった職業として羅宇屋を挙げて『紫檀楼古木』に。
今まで聴いていたときは、女中のお清が図々しくて気遣いができないような嫌な女に思えていたが、これは実は10代前半の女の子なのかもしれないなーと思った。それくらいの年代の子なら、見た目が汚い爺さんに対して当たりが強くなったり、自分の欲望に正直だったり、ご新造に叱られて不貞腐れるのもよくわかる。ちょっと自分の意識が変わるだけで見えてくる景色が異なってくるのも落語の面白いところだと思う。

口上は扇辰師と扇橋師のふたり並んで。
司会も扇辰師。寄席での口上よりも入門の経緯などを詳しくたっぷりと話してくれた。
二ツ目に昇進した時の名前「小辰」は実は扇辰師はイヤだったそうで。「私は本名が辰朗で、子どもの頃から身体が小さかったんですよ。だからよく言われてね、イヤだったんだよ。でもどうしてもこの名前がいいっていうもんだから。弟子が考えた名前を許すなんて器が大きいでしょ!? それに小三治師匠のところで辞めちゃったけど『こたつ』って人がいたからさ。一応筋を通すために挨拶に行ったら『いいところに引き取ってもらったな』と言ってもらえた」と感慨深そう。
「今日は特別に」と扇橋師からも挨拶。
「体調不良です。……二日酔いです」「お前もか!」。
「ありがたいことに雲助師匠の芝居に出させてもらってるんですが、雲助師匠は打ち上げをやらないんですよ。そうすると、ハネたあとで二ツ目の馬久さんとか馬太郎さんとかが捨てられた子犬のような目でこっちを見てくるんですよ。帰ろうとすると『ええー、アニさん帰っちゃうんですかー』って……。そう言われると『じゃあいいよ、行くよ!』ってなるじゃないですか」「……口上の挨拶じゃねえな」。
「でもこんな二日酔いでもここまでの芸を聞かせるのは……」とどこまでも扇辰トリビュート。

扇橋師、「口上で大ノセ(大食い)の話と市馬師匠に『扇辰さんのとこの小辰、いいね』と言っていただけた話が出ましたが、私は大食いで市馬師匠にハマった。市馬師匠にご飯に連れて行っていただいた時にラーメンとチャーハンを食べて、一緒に行ったアニさんが定食を食べ終わっていなかったので餃子とライスも食べた。それでも食べ終わっていなかったアニさんの残りも食べて、市馬師匠のチャーシュー麺のチャーシューも食べて……。その後で『1時間だけな』とカラオケに連れてってもらって『上を向いて歩こう』を歌ったら名前を覚えてもらった。それまでは『扇辰の弟子』だけですから。……でもそれ以上はハマらなかったみたいです。まあ小燕枝アニさんが溺愛されてますから……」。まあそれはお互い様では。
国立演芸場での3日めに扇辰師から言葉を詰まらせながら「自慢の弟子」と言ってもらえたことを「今でも思い出すと泣きそう」と言いながら嬉しそうに話すとか、どんだけ師匠のこと好きなんだって話ですよ。「そのとき袖でなぜか小燕枝アニさんが泣いてた」そうだけど。ああいい関係性ですねえ。
ネタは最後まで決まらなかった様子だが、得意ネタの『替り目』に。
俥屋とのくだりは省き、夫婦の会話を中心にうどん屋のサゲのセリフまで。
うどん屋の後に新内流しがくるというのもあまり聴かないが、それが新内ではなく流しの義太夫というのも珍しい。
なんだかんだといい関係性のふたりと自身を重ね合わせたのかなと思ったり思わなかったり。
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浅草演芸ホール 十一月中席後半 昼席 [落語]

浅草演芸ホール 十一月中席後半
於:浅草演芸ホール

古今亭寿輔『老人天国』
柳亭小痴楽『松山鏡』
コント青年団 コント
三遊亭遊馬『道具屋』
三遊亭笑遊『魚根問』
ボンボンブラザーズ 曲芸
三遊亭遊雀『初天神』

扇辰師の噺を聴いて蕎麦が食べたくなったので黒門亭近くの小諸そばに入る。腹減ってたんでついカレー丼セットで温かい蕎麦を頼んだが、二枚盛りとかにすればよかったと食べながら気づく。

遊雀師の芝居に遊馬師も出てチラシ割で2500円。
寄席通いが止められない。

小痴楽師、なんというかどことなく退廃的な雰囲気を纏う師が真面目人間を演じると、もちろん真面目なんだけどなんかどこか単なる真面目じゃなくなる気がする。
おそらく誰にも通じないだろうし、それをうまく表現できないのがもどかしい。

コント青年団、そんなに頻繁に聴いてるわけじゃないけど、作り込まれたネタでいつ見ても面白い。今日は医者と葬儀屋のネタ。

遊馬師、久しぶりに軽めの噺を聴く。与太郎ものも久しぶりだなあ。遊馬師の与太郎は底抜けに楽しそうなのがいい。

笑遊師、飄々としたキャラでマクラからギャグを畳み掛けて会場を沸かす。なのに今これを書いてるときは何を話していたのかさっぱり思い出せないのが悔しい。

遊雀師、『初天神』がトリネタになるんだ……! 一之輔師は『団子屋政談』で掛けそうだけど。最近はやらないんだっけ。
いつもながらリアルなぐずりっぷりで場内はずっと笑いっぱなし。
噺の冒頭でおかみさんの「お前さん連れてってやんなよ」のドスの利きっぷりが楽しい。
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黒門亭 第一部 3641回 [落語]

黒門亭 第一部 3641回
於:落語協会2F

林家ぽん平『味噌豆』
三遊亭わん丈『双蝶々 定吉殺し』
柳家我太楼『幇間腹』
桂文雀『七五三』
入船亭扇辰『蕎麦の隠居』

午前中は病院行ったり整体行ったり。
なんだかんだでまたギリギリになってしまう。最近多いなあ。

ぽん平さん、なるほど正蔵師に似ている。こぶ平をもうちょっと濃くしてイマドキっぽい髪型にした感じ。
『九日十日』と『味噌豆』を続けて。

わん丈さん、客席に子どもがいることを見て多少迷うような素振りも見せたが、「黒門亭て変わったネタが多いんですよ。なんでお子さんが楽しめるのはさっきので終わりかもしれないですね」と結局は『双蝶々』に入る。
どうやら今日この後に別の会が入っており、龍玉師とリレーでやるんだそうだ。へえ。
となると……わん丈さんも上手いと思うが、龍玉師のあの墨のようなノワール感と並べるとまだ明るさが抑えきれてない感じがするので、ちょっと塗りムラぽくなるかもしれない。まあ大きなお世話ですが。キャラもあるからなあ。

我太楼師、座敷に呼ばれた一八が、襖を開けるまでは「今日は若旦那にガツンといってやるんだ」と鼻息荒く決意するも、襖を開けた途端に豹変するのはわかっていてもおかしい。

文雀師、今年亡くなった金翁師から教わった噺で、しかも時期が限られているという珍品を。
七五三のお宮参りで坊主の袈裟と衣と数珠を拾ってしまい、縁起が悪いと不機嫌になった旦那に「今朝(袈裟)拾た 頃も(衣)十一月十五日 お嬢の寿命も数珠の数(法華経なので108珠)まで」という狂歌で縁起直しをするというもの。
扇辰師ですら「初めて聴いた。金翁師匠のネタ帳に書いてあるのを見たことが……あったかなあ」というレベルらしい。
もちろん私も初めて。坊主の風呂敷包みを拾うという特殊なことが二度三度続くのが落語らしくて楽しい。

扇辰師は演芸評論家矢野誠一氏作の噺を掛ける。
蕎麦屋にきたご隠居が、食後に店主を呼び細かいことで小言をいうが、次の日にもきて前の日の倍の量の蕎麦を食べ、また小言をいう……と繰り返す噺。
小言は至極もっともな内容だし、怒鳴ったり怒ったりというわけでもなく淡々と詰めてくるし、勘定もキッチリ払う。
このままでは明日は蕎麦を128枚食べる計算になり……というところでサゲ。
うーん……? もちろん扇辰師の端正な佇まいもあり、ご隠居は悪い人ではないというのは伝わるが、何がしたいんだろう……。不条理系の噺?
演る人によっては噺の内容的にご隠居がイヤミっぽくなり空気が悪くなりそうだが、そこをさらりと爽やかに聴かせるのはさすが。
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遊雀・遊かり親子会21 [落語]

遊雀・遊かり親子会21
於:高田馬場 ばばん場

三遊亭遊雀 漫談
三遊亭遊かり『文違い』
三遊亭遊かり『女たちの「のめる」』
三遊亭遊雀『大工調べ』

二日連続のばばん場。
3列目以降しか開いてなかったら、最後列に座った方が一段高い椅子なのでいいということがわかった。あと座高高め人としては後ろを気にしなくていいというのもいいし。こういうフラットな会場だと気になってつい背中丸めて猫背になるので、終わるころには体バキバキということもよくある。

遊雀師、「こないだ寄席で新宿と池袋を掛け持ちしたんだけど、池袋についてもまだ余裕があった。ロビーに座ってモニターで高座見てたらとろとろーっとしちゃってね、ハッと気づいたらまだその人がやってたんでまあ5分か10分てとこだろうけど、いやあ落語聞きながら寝るって気持ちいいね。我々は寄席で寝ている人を目の敵にしているわけだけど、そうじゃないね。しかも前座さんがなんか掛けてくれてんの。……もうこの会とかさ、飲みながらとか見られたりした方がいいよね。今日は日曜日の昼だから皆さん昼食摂って人によっては一杯召し上がってきてるでしょ。普段の平日の会だと、まあだいたい19時開演ですわね。そこにきてくださるってことは18時くらいには仕事をやっつけてきてくれるわけでしょ? それから2時間も酒飲めないんだよ!? 俺だったら暴れるよ?」。まあねえ。らくごカフェの夜の回だとビール飲めたりするけどね。
現在遊雀師は三菱重工のCMで犬のアテレコをしているそうで、そのアフレコの裏話などを。一昨日から放送されているらしく、「どんなんかなー」と思っていたら今これを書いているときにちょうど流れてきた。びっくり。
20分ほど話したところで「じゃあアレがみっちり演るっていってるんでこの辺で」。会場も「ええっ」とザワつくが本当に下りてしまった。「いいのかな」といっていたが、……いやあ……ダメでしょ……。んー、なんかこの会は遊かりさんに花を持たせるためなのかどうか、あんまり遊雀師が本気を出してないような……。

遊かりさんの一席め、以前ネタ出しの会でこれを掛けたのだが、目の前に7歳くらいの女児がいて遠慮しながらの出来になってしまったので……と『文違い』に。なおその会の終演後にその女児と話してみたら落語が好きだったらしく、一番好きなネタは『お見立て』だったとか。「先に言ってよー!」。
なんかこういう女性のねちっこい部分が出る噺は遊かりさんには合っているように思う。

二席め、「好きなんだけど自分には向いてない噺というものがありまして、男の人がたくさん出てきてワイワイやってる噺というのはあまり理解できない。なので『宿屋の仇討ち』なんかもあの男たちの関係性とかよくわからないんですよ。で、『のめる』という噺もあのふたりの関係がよくわからなくて……」ということで女性に置き換えた改作。
エリカ様らしき女性の「別に」、田中みな実らしき女性の「ちょうだい」を言わせ合うというもの。……これは逆に男の私にはよくわからないが、女性の醜い争いの裏側を見たような感じでこれはこれで面白い。

トリの遊雀師、キッチリとした話の運びながらどことなくふんわりと軽い感じ。棟梁と大家の会話も最初は軽い感じだったのが、だんだん大家がヒートアップしていくグラデーションが見事。啖呵を切る直前の棟梁のキッとした表情もかっこいい。
最後のお白洲の場面までフルに。
一度勝利を確信した大家が「アタシは朝に神棚に『商売繁盛』じゃなくて『騒動繁盛』とお願いしてるんだ」というひとことは流派によって違うのだろうか。その調子こいたひとことがあると余計に逆転劇っぽくなるのだが、あまり言う人は多くないような気がする。扇橋師は言ってたから、柳家なのかなあ、しらんけど。
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三遊亭萬橘 ばばん場独演会④まんきつの森へ [落語]

三遊亭萬橘 ばばん場独演会④まんきつの森へ
於:高田馬場 ばばん場

三遊亭まんと『つる』
三遊亭萬橘『手水廻し』
三遊亭萬橘『らくだ』

披露目も終わって一段落。……なのにまたすぐ落語に通いつめるってちょっとヤバいなあ。
ちょっと来年は抑えようかな……。

さてまんとさん。以前にも一度聴いたことがある前座さんだが、んん? なんかいいぞ。話し方もしっかりしていて聞きやすいし、なんだかなんとも言えない明るい雰囲気も持っている。見た目もなんというかこうちょっとふっくらしていて愛嬌があるというか。
教わった通りなのかはわからないが、よく聴く『つる』とはちょいちょい違っている。つるの語源を聞かれたご隠居は「昔の本に出ていた」と教える形で、知ったかぶりや冗談で急ごしらえしたのではない。なので「よそでやっちゃいけない」というのはナシ。
で、辰っちゃんのところへ行き、つれなく「仕事が忙しいんだ」といわれてもおかまいなし。無視された辰っちゃんが毎回律儀に「仕事が忙しいって言ってるんだがよ」と付き合うのがおかしい。
一蔵師、扇橋師のふたりが真打昇進したことで私が追っかけてた人が全員真打になり、二ツ目がいなくなってしまった。そろそろ他の若手も探さなければ……と思いつつももうこれ以上追っかける人も増やせないしなあ……。

萬橘師の一席め、「真打の噺家で『萬』とつくのはふたりしかいない。まんとさんは私の弟子のような名前ですねえ。……彼が高座から下りてきたときに、太鼓は私が叩いてたんですよ。人がいないからね、早く変わらなくちゃと焦ったんでしょうね、袖で『つる』っと滑って転んだ。本当のオチは高座じゃなかった」。
「最近ねー、なんかテンションが上がらないんですよ。そういうのはどういうときかっていうと、ウケないとき。最近ウケてないんだ」。そんなことあんの?
博多天神落語祭りに出てきたといい、「企画者の圓楽師匠が亡くなって、圓楽師匠も来られなかった。……いや来たら怖いよ! で、三三アニさんたちとの会で、前座さんもいなくて俺が一番最初だったの。そしたらちょうど今くらいの時間ですよ、ひとりスッと立って出てったんだよ! ……またかよ! 私のことを何度も聞いてくれている人はご存知かもしれませんが、なんでか知らないけど俺が話し出すと客が出ていくんだよ! だってチケット6千円くらいするんですよ!? で開始数分で出ていくってどういうことですか!? 出ていくときに扉の前でこんなこと(手を合わせる仕草)をしてましたけど、ウルセー! って感じですよ。 思わずスタッフに甘えちゃって、『すみません、ひとり出ていっちゃいました』っていったら向こうも気を使ったんでしょうね、『大丈夫です、三三師匠で7人入りましたから』って……。フォローになってない」。しかしまあ萬橘師で出ていくってのはセンスなさすぎだから、そんな人は聴かなくていいんじゃない。
またちょうど福岡場所と日程が近いこともあって飛行機では相撲取りと一緒だったそうで、隣が力士だったとか。
旅の話から旅籠の噺に。
手水が伝わらないことに腹を立てた大阪の客が「手水を廻さないと朝飯も食わない」と言い張り、「旦那さまどうしましょう、このままではガリガリに干からびちゃいますよ。こうなったら大阪まで調べに行くしかありませんな」といって10日かけて大阪まで行ってしまう呑気さが楽しい。

二席め、萬橘師の『らくだ』は初めてか? そんな気はしないんだけど。
前日らくだに品物を押し付けられ、その金でらくだが河豚を買って食ったという流れ。兄貴分の丁の目の半次が屑屋に「じゃあお前が半分殺したようなもんだろう!」と詰められるのがおかしい。
屑屋がその兄貴分のことを他人に話すときに「なんかおっかない兄貴分てのが来てるんですよ、なんか『チョウザメのパンジー』とか……」という間違え方が萬橘師らしい。
大家について「あいつヤなやつなんですよ。しみったれでホント嫌な人なんです。あの人この界隈でいちばん悪いヤツだったんですよ、らくださんが越してきて二番になったんだから」というのも楽しい。この人はホントいろんなところに楽しい小ネタ挟んでくるから油断できない。
繰り返すけどこれを聴かずに出ていくってホント損してるわー。もう落語聴かないほうがいいんじゃない。
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真打昇進襲名披露興行 令和四年十一月十日 [落語]

真打昇進襲名披露興行 令和四年十一月十日
於:国立演芸場

入船亭辰ぢろ『寿限無』
三遊亭伊織『芋俵』
入船亭扇蔵『親子酒』
ロケット団 漫才
入船亭扇好『のっぺらぼう』
鈴々舎馬風『楽屋外伝』
真打昇進襲名披露口上
入船亭扇辰『権兵衛狸』
鏡味仙志郎・仙成 太神楽
入船亭小辰 改メ 入船亭扇橋『富久』

代休取れたー。
昨日国立演芸場のチケットセンターを見ると、ど真ん中の席が空いていた。なんでよ。まあありがたいけど。
洗濯してたらまたギリギリになってしまい、すでに前座が上がってた。ウチの洗濯機はちょと開演に間に合わない時間に洗濯を終わらせる機能でもついてんのか。まあもっと早く回せってだけだが。

伊織さん、この披露目ではこれまで毎回『花色木綿』に当っていたのでまさかすべてそれで乗り切るつもりかと思ったが、もちろんそんなことはなかった。失礼しました。

ロケット団、池袋でもそうだったが、三浦さんが三人集Tシャツを着て三人集グッズの紹介を。各寄席ごとにTシャツを作っており(デザインはほぼ同じで色が違う)、国立の分は昨日売り切れたそうだ。国立の5日目からは鈴本、末廣、浅草で売れ残ったものも「特別に」売っており、残りあと6枚だそうだ。おーだいぶ捌けたなあ。一花さんや始さんがだいぶ頑張って売ってたからな……。
ただアクスタは大量に残っているそうだ。「どこに付けていくんだ! ってね!」「やめなさい!」。……まあねえ。「もしかしたら将来プレミアがつくかもしれない」といっていたが、確かにそれはあるかも。

扇好師、「怪談噺というのは実は夏よりも秋の方がいいそうで、その中でもいちばんいい日がある。それが11月10日で……」と超強引な理屈で噺に入る。これも「化ける」つながりなのか。

口上は扇蔵師が司会で上手から馬風師、扇辰師、扇橋師、扇好師。
大千穐楽で池袋のようなサプライズがあるかとちょっと期待したが、さすがに国立では無理だったか。
席がほぼ扇橋師の真正面なので、正面を見ている扇橋師と目が合う(ような気がする。まあ近眼なので扇橋師は何も見えていないだろうが)。
扇蔵師は扇橋師と二ツ目時代が重なっており、打ち上げの席ではよく扇橋師は寝ていたと話す。「彼は寝る間を惜しんで稽古に励み、先輩がくだらない話をしているときに睡眠を取っておりました」。
扇好師は「他の一門は師匠の名前を継ぐというときに『俺が』『いや俺が』となるんですが、ウチの一門は誰も継ぎたがらないという師匠不孝ばかりで……。そんなときに小辰が真打昇進をすることになり、ちょうどいいじゃないかと満場一致で決まりました。タイミングのいい男でございます」。直弟子は「扇橋」という名前に愛着がありすぎて、という感じも受ける。
馬風師、「今日は千穐楽ということで新真打たちから豪華な弁当が家族の分まで用意されていました。こういう気遣いはこれからもやっていくように」。最後の馬風ドミノも派手に決まる。
扇辰師、「心配したコロナの影響もなく50日やってこれた。運のいい男でございます。反対にかわいそうなのは團十郎。……まあ向こうはこちらのことを何も知らないでしょうが」。「噺によってはアタシよりいいんじゃ……」というくだりで馬風師がウンウンとうなずかれ、「扇橋、馬風師匠の弁当を下げてこい」。先日は言おうかどうか迷いながらという感じだったが、今日は「口幅ったいようですが、私どもの自慢の弟子でございます」と胸を張ってキッパリと。ああもう胸熱ですよ。
万感の思いで最後の三本締めを。……まああと半年はまた機会は何度もあるだろうけどね。

扇辰師、『権兵衛狸』は先代扇橋師から教わった+「化ける」ということでこの披露目ではよく掛かっていた。
実は毎回気になっていたのだが、狸が戸を叩いて権兵衛さんを呼ぶときに、一度めは「(ドンドン)(1拍)ごーんべ」なのだが、続いては「(ドンドン)(半拍)ごーんべ」とちょっと早い。でもってお仕置きをされた後は一度めも二度めも「(ドンドン)(1拍)ごーんべさん」なのだ。このテンポになにか意味があるのだろうか……。

扇橋師、「先ほどの口上でタイミングがいい、運がいいとありましたが、『人間万事塞翁が馬』といっていい後は悪い、悪い後はいいんだそうです」と『富久』に。
え、最後の最後に火事の噺!? とも思ったが、確かに最後はハッピーエンドなのだから千穐楽にはふさわしいのかもしれない。
扇橋師の場合は本家からの火事見舞いの酒をちゃんと3杯でやめ、酔って寝てしまうという型なので安心する。だらしなく飲み続け、鳶の頭にキツく叱られる型もあるが、どうもあれはなんだかイヤ。意地汚く酒を欲しがるのも嫌だし、叱られて逆ギレするのも性根が腐ってて嫌だ。そういう人が救われるというのはね……。酒にはだらしないが根はいい人、の方が最後の「よかったねえ」感は強い。
それと富の売り主になんとか金をもらえないかと粘るシーンでは、必死さはあるが悲痛さはさほど感じさせなくてこれもいい。悲痛さを前面に出しすぎるとサゲはわかっていながらも暗い気持ちになってしまう。そういった湿っぽさを感じさせないのは助かる。
頭の家に置いてあった大神宮様の戸を開ける前の必死の形相が解けていくときの変わりぶりもお見事。

終演後、未来にプレミアが付くことを期待して各個人のアクスタも購入する。……何だ結局アクスタ全種とチケットホルダー、池袋ではTシャツも買って、結構グッズ買ったなあ。
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とりあえず私にとっても怒涛の50日間が終了。まだしばらくは真打昇進関連の会があるだろうからそちらにも行きつつ、今後はこれまで通り兼好ファーストに戻して行くと思う。
……というか正直もう小遣いが……。祝儀やらチケット代やら結構ぶっこみ、タイ旅行積立金に手をつけて1~2週間のタイ旅行1回分くらいつぎ込みました、はい。まーほら今タイに行けるような状況じゃないんで。
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