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和室カフェ 其の三十 [落語]

和室カフェ 其の三十
於:神保町 らくごカフェ

トーク
入船亭扇橋『一目上がり』
立川笑二『すきなひと』
立川笑二『帰り道』
入船亭扇橋『井戸の茶碗』

まずはオープニングトーク。
この会の最大の特徴である「行ってみようやってみよう」が再開され、今回は「リアル脱出ゲーム」。
扇橋師曰く「これまでの中でベスト3に入るくらい楽しかった」そうな。
歌舞伎町に脱出ゲーム専用のビルがあるそうで、ホラー映画をテーマにした脱出ゲームに挑戦したとか。参加者は2〜4人で、参加人数が増えてもそれほど料金に影響ないということで扇橋師がこういうゲームに詳しい緑太さんを、笑二さんは女性枠としてだん子さんを連れてきたという。「初めて会うから、いきなり挨拶されて最初誰だかわからなかった。笑二さんが親戚のオバチャンを連れてきたのかと思った」。
「ホラー仕立てなんでお化け屋敷も合わせたような作りになってるんだけど、私(扇橋師)は怖がりなんでいちいちビックリして『うわぁっ』って声を出しちゃう。だん子さんが一番冷静だった。『あ、ここに数字でてますよ』って」「ほら年齢を重ねると動じなくなるんですよ」などと失礼なこともチラホラ。
結局は最後の引っ掛けにまんまと掛かり、脱出自体は失敗だったそうだ。
朝イチで行って正味1時間くらいだったので、そのまま新宿のボードゲーム専門店へ行き、殺人事件をテーマにした『マーダーミステリー』というゲームも行ってきたという。
「いやー楽しかったなあ」「アニさんずっといってましたね」というくらい楽しかったらしく、お題を出した私(もうお一方いたそうだが)からしたら嬉しい限り。

扇橋師の一席めの『一目上がり』は真打昇進後は初かな。八五郎のキャラがどこまでも軽薄なのがいい。

笑二さんの一席め、友人宅に招いてもらったものの、そこは友人かストーキングしている女性の家で……という開始3分で不穏な空気になる笑二ワールド全開の噺。
これ以上はネタバレになってしまうのでここでは書けないけど、どんどん怖くなっていく。阿刀田高とか道尾秀介のような、日常のはずがいつの間にかおかしな空間にいるようなそんな怖さのある噺。

仲入り後に再びトークコーナーがあり、次回行くところを決める。
開口一番扇橋師が「怖えよ! なんであんな噺を作れるの!?」「いやー、どうしてもラブストーリーになっちゃうんですよねえ……」「ラブストーリーじゃねえよ!」と我々の代弁をしてくれる。
お客から事前に集めて挙がった案をふたりで検討していく。
「今回初めて案の中に『屋形船』がなかったですね」「そもそも噺家は仕事で乗りますからね。しかもろくな思い出がないのですぐ却下される」。
「人間ドックね……アニさん協会で受けさせてくれるんですか?」「そんなことするわけない。会社じゃないんだから」「最大派閥なのに……」「そもそも芸人がそんなもの受けるはずがない。それに嫌でしょ、もしなんか見つかって『ガンでした』とかだったら」。
中には「BASEジャンプ」なんて案も。これTBSの『クレイジージャーニー』で取り上げられてたやつでは? 「なんですか、これ?」とふたりに聞かれ、案を出した人がビルの上からパラシュートをつけて飛び降りるスポーツだと説明する。「そんなのどこでやるんですか?」「日本じゃできない。ドバイとか……」「落語会の企画で行くわけないでしょ!? (発案者)さんがお金全額出してくれるんですか?」「いいよ」「……やめよう『いい』っていわれたら行かなきゃならなくなる」。つーか普通に死人が出るスポーツだから体験でできるはずもなく。
私の出した案は「一蔵師を講師に迎えて競艇体験」。笑二さんはまあまあ興味を示してくれたものの、扇橋師は「俺は連れてかれたことあるもの。もうさ、目ぇバッキバキで怖いんだよ。噺家の目じゃない。今はボートが仕事になっているからいいんだけど。俺あのアニさんに歯向かったことないけど、『噺家としてやっているときはその目はやめなさい』って言ったことがある」そうで。「それに講師に迎えたらこの会に一蔵アニさん呼ばなきゃならないじゃない。そしたらもうあのアニさんの会だよ」と2次審査までも届かず。
結局は市原ぞうの国へ行って象に乗ってくるという案に決まった。これ結構遠いんじゃなかったっけ? でもまあ象にはタイで何度か乗ったことがあるけど、楽しいですよ。象カワイイし。……それ以上になんかあるかなあ!? 多分餌やりとかふれあいとかあるけど、オジサンふたりで行ったら目立ちそうだなあ……。

笑二さんの二席め、「ナンパじゃない」といいつつ、女性に声を掛け続ける男の独り言を延々と。最初はナンパを無視されてるだけかと思ったが、段々と状況がおかしくな方向に。
これ以上はネタバレになってしまうのでここでは書けないけど、どんどん怖くなっていく。阿刀田高とか道尾秀介のような、日常のはずがいつの間にかおかしな空間にいるようなそんな怖さのある噺(2回め)。

扇橋師の二席め、「だから怖えって! さっきの噺は『帰り道』というらしくて、一席めの噺の前日譚というか、世界が繋がってるんですってよ」と情報を提供してくれる。
「私の方はお古いところでお付き合いを願っておきますが」と「麻布の茗荷谷に屑屋でもって……」と『井戸茶』の定番導入に入るとなぜか客席から笑いが起きる。なんでかはわからない。もしかしたら「無事にいつもの落語の世界に帰ってこれた」という安堵の笑いだったのかもしれない。
おそらく扇辰師仕込みのピシッとした端正な世界に戻される。井戸の茶碗を細川のお殿様が三百両で買い取られたあとに「前例にならってお前が百両、わしが百両、千代田氏が百両」と三等分しようとするのは扇橋師でしか聴いたことがない。まあ清兵衛さんは受け取るはずがないんだけど、ちゃんと頭数に入っているのが偉い。
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鳴り物入りの会 雲助・一朝・兼好三人会 [落語]

鳴り物入りの会 雲助・一朝・兼好三人会
於:人形町 日本橋社会教育会館

オープニングトーク
三遊亭たたみ『洒落番頭』
五街道雲助『替り目』
三遊亭兼好『風の神送り』
春風亭一朝『もう半分』

昨日は寄席の後にひとり焼肉。
ふた月に1回くらい「自分お疲れ」てことで自分にご褒美的な。
ひとりで大いに呑んで食っていると、斜め前の席にかなりの巨漢の二人組が。見たところ私と同じくらいの歳周りの上司と若い部下、みたいな感じ。最初のうちは和気藹々と食べていたのだが、途中からなにやら説教タイムのような感じに。注文用のタブレットを手元に置きつつじっと説教を聞く若手。「なんか言えよ」と言われて出てきた言葉が「ライス中で」。
その前まで「焼肉にはライス大盛りでしょ」みたいなことを言っていたので、多分彼なりの遠慮というか反省だったのだろう。

その後にブログを書きつつ録画していたラグビーを見たのでかなり寝るのが遅くなってしまった。
朝猫にご飯をあげて二度寝していたら出かける時間に。

最近のオフィス10の会はトーク必須なのだろうか?
兼好師はともかく、雲助師と一朝師にトークするというイメージがないのだが。
登場してきたお三方、真ん中の椅子を勧める一朝師を固辞して上手側に雲助師が座る。というかひとりだけスリッパだったから目立つのが嫌だったんじゃないかと邪推する。
香盤的に兼好師が司会進行役に。「よりによってトークの嫌いな3人が集まりました」。やっぱりそんな感じですよねえ。
「もはや必要ないでしょうが名前の紹介を……」と雲助師から話すが、オフィス10の会を体調不良で延期したらしく、そのお詫びから。一朝師は「私からは特に連絡事項はございません」とにべもない。
「というわけで今日のトークは沈黙が多くなると思います。それを防ぐためにお客さんから質問を受け付けてまして……」と兼好師が箱をゴソゴソ。「あの、この間を繋いでいただいてもいいんですけど……」とお二方に振るもそっぽを向く重鎮たち。「うん、繋ぐつもりはない、と」とすっかり諦めモードに。
「えー、最初は……コレなにも書いてないですね。次は……コレも質問はなくて演目のリクエストしか書いてないですね。出演者も出演者なら客も客ですよ。無口なお客さんが集まってるようで……」と困惑気味。
ようやく出てきた質問は各師に向けて「継ぎたい名跡は」。……えー、兼好師はともかく、雲助師や一朝師はここまで名前が大きくなって今さらある? 雲助師は「披露目とかしなくていいなら今月は圓生、来月は志ん生みたいに継ぐけどねえ」「月番みたいですね(兼好師)」。一朝師は「ない」「柳朝はもう継いでる人がいますからね。小朝とかどうですか(兼好師)」「いらないよ!」と苦笑い。兼好師は「ウチは圓生と圓楽があるんですが、圓楽がゴタゴタしている。ウチの師匠が勝手なことをマスコミにいってますけど、根拠はないですからね」と釘を刺す。
次は「昨日亡くなった志ん橋師匠との思い出」を雲助師と一朝師に。宙に目線を泳がせつつ雲助師は「うーん。仲は悪くなかったけど改めて思い出といわれるとなあ」。一朝師も「年は向こうが上なんだけど、入門は4年くらい遅かったんだよね」。「小里んちゃんと仲が良かったんだよね。『御神酒徳利』って呼ばれていつも一緒にいた」「頑固でね、悪意固地だった。一度口にしたら絶対に曲げない。小里んちゃんも同じでね。昔、みんなで飲んでたらさん遊師匠、当時の小燕枝師匠が『おい勘弁しろよ』っていってきて。『どうしたんですか』って聞いたら『アイツら"フグが高いか安いか"で喧嘩してるんだよ。食ったこともねえくせに』って」。いいなあ、昭和の噺家だなあ。
最後に「モーニングルーティンはありますか」。雲助師がまた「ない」で済まそうとするところを兼好師が「何かないんですか、必ずコーヒーを飲むとか」「コーヒーきれえだよ」と新しい雲助師情報が入る。ようやく「起きたら目薬をさして腰にバンテリンを塗る。もうジジイだよ」と引き出し、雲助師と一朝師がキャッキャとはしゃぐ。一朝師は「仏壇にお燈明をあげます。ウチは神棚じゃなくて仏教なんだ」だそうで。「それで『いい噺家になれますように』って拝むんだよ」。え、これ以上に!? さすがに兼好師も驚いた様子。「ホントですか!?」「ホントだよ、あとは『兼好のバカが治りますように』とかな」「ああ……ありがとうございます?」。
出番前に袖でなにかやるルーティンはあります? という兼好師の追加の質問に、一朝師は「人」を3回書いて飲むのを今でもやっているのだとか。意外。「一度それを忘れて真ん中くらいまで出て行ったのを引き返したことがある」とか。雲助師は「袖で『イヤだなあ』っていいながらあくびをする。それを一回お客に見られた」そうだ。人間国宝でも出番前はイヤなんだ……。こっちも意外。

雲助師、この三連休で師匠を含めて雲助一門コンプリートだなあ。私的には珍しい。
いきなり寒くなって酒が恋しくなると酒の小咄から『替り目』に。
俥屋に車を勧められるところからおかみさんにコッソリ感謝を伝える場面、うどん屋、新内流しまでフルに。
扇橋師がよく後半までやるが、後半部は結構あっさりめだし、前半部もカットされていることも多いので、最初から最後までフルバージョンで聴いたのは初めてかも。
鳴り物はもちろん新内流しの場面で入る。都々逸や小咄混じりの新内、「景気良くかっぽれをやっつくれぃ!」と座布団の上で上半身だけでかっぽれを踊る。これがまたピシッとしていてカッコいいんだ。いやあいいもんを見た。
それに新内をタップリとやることによってサゲの「あそこはいけません、ちょうど銚子(調子)の替り目です」という言葉にダブルミーニングがあるとわかる。

兼好師、「トークが嫌いなはずなのになんで引き受けたのかと思ったら、雲助師匠が会を延期したから席亭に頭が上がらないだけだった。まあ理由がわかってよかった」。
「この会は『鳴り物入りの会』ということで、私あまり持ってないんで『七段目』にしようと思ってたんです。そしたら『それは午前の会で馬石師匠がやられるので』と断られた。さてどうしようかと考えて、そういえばウチの師匠がたまにやってる『風の神送り』って噺に鳴り物があるなと。最近では演る人が少ないんですが、稽古してて思ったんですけど、演る人が少ないってのは理由があるんです。面白い噺ならみんなやるんです」。兼好師だから大丈夫。
「さっきのモーニングルーティンの話じゃないですけど、私は朝がダメなんです。鼻シュッシュしたり目薬したりといろんなことしなくちゃいけない。なんでしょうかね、病気というのは『病気をするから気が塞ぐ』のか、『気が塞ぐから病気になる』のかわからないですね。例えば昨日のラグビーもずっとテレビで集中して見てて、あ、だから昨日全然稽古してないの、アルゼンチンにされたトライはすごくもったいないんですよ。逆に日本のトライは非常に美しい。それで大差になれば途中で諦めて稽古もするんですけど、最後まで『もしかしたら』と思わせてそれで負けてしまった。すごく悔しくてガッカリする。こういうときに病気になるんです」。なんか途中でしれっと言い訳しなかった?
『風の神送り』は6年以上前に確かに好楽師で聴いていたようだがまったく記憶にない。その時の感想も「面白くないわけじゃないけど面白くもない」みたいなことを書いていた。
先日読んだ小説にたまたま『風の神送り』をモチーフにした話があったのでサゲの意味を理解できてよかった。
風邪が流行っているので人形に風の神を乗り移させてそれを川に流してしまおうという噺で、町内の若い衆が鳴り物に伴って囃し立てると人形がだんだんと動き出すのだが、その動きがさすが。『片棒』のからくり人形ほどの派手さはないが、徐々に動きが大きくなっていくさまなどは見ていて楽しい。

一朝師、「急に寒くなって今さら怪談噺でもねぇだろうって思いますがね。でもこの噺は本来は冬の噺なんですよ。雪が降ってますからね」とのことだがそうだったんだ。これまで酒屋の亭主が追いかけていくシーンは雨の場面だとばかり思っていたのだが、季節に合わせて雨に変えていたのだろうか。
それにしても一朝師にあまり怪談噺のイメージがないので『もう半分』は新鮮。噺のテイストもあるからなのか、それともオープニングトークがあったからなのかは分からないが、今日は「イッチョウケンメイ」は封印し、最初から重々しく。
こういうピカレスク譚はそれこそ雲助師の得意分野かと思ったが、一朝師もさすがのひとこと。あの小さい体でも迫力あるもんなあ。
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