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なかの演芸長屋 席亭和希十を偲ぶ追悼寄席 1部 [落語]

なかの演芸長屋 席亭和希十を偲ぶ追悼寄席 1部
於:中野 なかの芸能小劇場

ご挨拶
鈴々舎美馬『美馬と閻魔』
古今亭文菊『浮世床(夢)』
三遊亭兼好『青菜』
隅田川馬石『臆病源兵衛』
弁財亭和泉『嵐の初天神 落語の仮面 第二話』

落語の企画会社オフィス10の先代社長が昨年亡くなり、その追善興行。先週と今週の二日間、それぞれ午前と午後の二公演ずつ行われる。
今日は私も午前と午後どちらも参加する。

まずは席亭他界以前にもいろんな噺家から「お嬢」と呼ばれ、たびたび開演前の影ナレをいじられていた二代目席亭である娘さんのご挨拶。初日では「湿った空気にしたくない」とやらなかったそうだが、今日は挨拶をしたほうがいいと思い直したそうな。本日の噺家さんたちと先代とのやり取りや、亡くなられた直後に公表するかを相談した話など。直後に文菊師、馬石師の会があり、また美馬さんの勉強会が始まったのだという。その後に兼好師の会もあり、兼好師に相談したところ、「美馬さんの勉強会が始まるというのはおめでたいことなのだから、それまでは公表しないでおきなさい。それで私の会のときに発表すればいい。そうしなさい、ね!」と教師に諭されるように諭されたという。さすが兼好師ですなあ。

なので、今日のマクラは各々先代との思い出をメインに。
聞いていて思ったのは、若手ほど先代に恩というか思い入れを持っていて、上に行くに従って淡白というか「それほど話したことがない」という感じになっていくこと。まあそりゃあ若手からすれば「自分の会を開いてくれるイベンター」というのは若手からすれば数少ない恩人だろうし、売れている師匠方からすればたくさんいる中のひとりという感じなのかもしれない。
また、若手にはいろいろと気にかけていたようで、コロナ禍で会がなくなっていた頃には二ツ目以降にコロナ禍ボーナスを配っていたという。それは皆「あれは本当にありがたかった」と口を揃えていた。
客席を半分にして再開した後も、真打にもそれまでと同額のギャラを支払っていたという。やはり他ではギャラが下がることも珍しくなかったようだ。
噺家ファーストだったんだね。

ということでマクラも若手ほど長くなる。
一席めの美馬さんは15分ほど感謝とこれからの意気込みなどを時折り涙声になりながら述べていた。
さてすっかり重苦しくなってしまったこの空気をどうすんのかなーと思ったら、美馬さんがある師匠から壁ドンされたのだが、それが失敗して顔に頭突きを食らわされたのがもとで閻魔のもとにやってきたという噺に。「私死にました? ……あーやっぱりなー、さっきそこで知り合いに会ったんですよねー」と先代席亭と会ったという小ネタを挟む。
さすがに端々から湧き出るネタや言葉が若々しい。

文菊師もマクラ長め。
先代よりも娘さんの方が長かったが。
高座の直前に「愛ってなんだと思います?」と問われ、「なんで今そんなこと聞くの!?」と思いながら必死に答えたということを15分ばかり。
でもいつものナルシストマクラよりも全然いい。とはいえなんとなく空気が重い感じに。

兼好師はやはりというか、さすがというか、重苦しい感じなどは一切感じさせず、カラッと大爆笑に持っていく。
「裏の楽屋では和泉さんが美馬さんのことを『顔小さいわねぇー。ゲンコツぐらいしかない』と絡んでイジメてた」などとさんざんいじって笑って笑って空気を一変させる。さすがですね。
兼好師はオフィス10が発足した2016年当初からずっと朝10時からの会をやっており、私も欠かさず通っていた。私は午前中に中野で落語あるときは高円寺まで行ってタイ料理ランチを食べて帰るというルーティンだったのだが、最近はなくなっちゃったなあ。
兼好師の『青菜』は一年ぶり。やはり植木屋の女房の存在感がものすごく、「お前……それ裸に浴衣だろ? そんでそれ俺のフンドシじゃねえか。腰巻きくれえつけろよ。だから近所の子どもたちから『相撲のオバちゃん』ていわれるんだよ」という植木屋の嘆きがおかしい。「お前お屋敷の奥様みたいに三つ指つけるか? ……お前のは仕切りっていうんだよ、怖いよ」と続けるのが最高。

馬石師、オフィス10での会の思い出を。ネタリクエストの会があり、そこで『臆病源兵衛』が選ばれたそうだが、その直前に雲助師の会があり、そこで『臆病源兵衛』を掛けていたのだとか。師弟の会が続くので両方とも聴くお客も結構いたそうで、「師匠の後に同じ噺をするって……。師匠に言っておけばよかったかなあ」とボヤくも、その時の噺を。
『臆病源兵衛』を高座で聴くのは初めて。
死んだ人間を「棺桶に詰めて寺の前に置いておきゃあ誰かが供養してくれるだろう」というのはすごい。
そんなバカな、というストーリーだが、馬石師のあのほわんとした語り口で話されるとなんとなく納得してしまう。

和泉師、「なんですか、あの兼好師匠は。確かに美馬ちゃんは顔がゲンコツくらいしかありませんよ。さらに二ツ目昇進の準備が忙しくて頬がちょっとこけてきていたから『大丈夫?』って聞いていたんですよ。それがああいう風に『イジメてた』って……。ああYahooニュースってこうやって作られるんだなって……」。Yahooニュースだからってフェイクニュースばかりとは限らないけどね。「しかも高座から降りてくるときに『上がるときに美馬ちゃん蹴りながら行け』とかいうんですよ。できるわけないでしょ」。やってたら面白いのに。
「文菊アニさんとか兼好師匠は次の仕事があるんで仕方ない。でも馬石師匠は次ないんですよ。ただ早く帰りたいだけなんですよ。それでトリを取れって……」と暴露される。
出囃子が『白鳥の湖』だったのでそうかなーと思っていたが、先代席亭のときに1周演り、2周めの第一話を始めたところだったそうで、続きを二代目からリクエストされたとのことで『落語の仮面』。
やっぱりこういうパロディものは元ネタ知らないと全然わからんね。元ネタとの比較で「コレをこう変えてきたかぁ〜」てのが醍醐味だと思うけど、比較ができないしなあ。
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