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なかの演芸長屋 席亭和希十を偲ぶ追悼寄席 2部 [落語]

なかの演芸長屋 席亭和希十を偲ぶ追悼寄席 2部
於:中野 なかの芸能小劇場

ご挨拶
春風亭だいえい『たがや』
玉川太福『男はつらいよ 第20作寅次郎頑張れ』 曲師 玉川みね子
入船亭扇辰『藁人形』
入船亭扇橋『不孝者』
柳亭こみち『徳ちゃん』
柳家さん喬『船徳』

引き続き第2部。
1部と2部の間が30分しかない。隣の松のやで慌ただしく昼メシをかっ込み会場に戻る。
2部もまずはご挨拶から。何度か入退院をしていたそうだが、最初に倒れたときの顛末などを。

当然ながら皆また先代との思い出話をマクラにネタに入る。

だいえいさん、噺家の褒め方で地名を出すという定番の入り方から『たがや』に。季節の噺ですな。
玉やは庶民が贔屓で鍵やは武士や上流階級が贔屓で武士の褒めようを実演する。
たがやの啖呵は啖呵というよりしっかりと言い聞かせるという感じ。ペラペラっとまくしたてるより爽快感は低いが伝わる感じはする。

太福師、先代との思い出として「電話に着信があったけど留守電も入ってないので折り返さなかったら『何で折り返さないんだ!』と烈火の如く怒られた。普段そんな感じじゃないんですけど……。40過ぎてそんな他人に怒られることなんてない。私を最後に怒ったのは和希さんじゃないですかね。……でも正直に言えばそんなにいうならひとことくらい留守電入れてくれれば……」。
1部の和泉師もそうだけど、やっぱり元ネタを知らないことにはね……。俺寅さんひとつも見たことないからまるっきりわからない。しかも登場人物が多く、誰が誰やら……。後の扇辰師やこみち師には「モノマネ芸」とからかわれていた。

扇辰師も「アタシはあまりちゃんと話したことがない」としながら、「楽屋ではみんないってます。十って書いてあれで『とおる』って読むんだー……って。みんな初めて知った」。確かに読めないよなあ。
扇辰師の『藁人形』は5年ぶり。そんなに聴いてなかったっけ?
おくまの冷たいあしらい方や甥の甚吉の鯔背ぶりが扇辰師の端正さによく合っている。やっぱり扇辰師はこういう抑えた感じが好きだなあ。

扇橋師も二ツ目時代にお世話になったことや、最初に倒れた直後に当時の小辰さんの会があったことなど。そういやそんなこともありましたね。
親の仕事を引き継ぐという二代目を親孝行だといい、「落語に出てくる二代目、いわゆる若旦那は親不孝者が多い」と『不孝者』に。
扇橋師もまた端正に。
旦那との誤解が解けた欣弥が旦那の膝に手を置いてつねるときの色っぽさがたまらない。そしてそれにニヤける旦那のだらしなさが楽しい。

こみち師、「なんですかね、扇辰師匠と扇橋さん、師弟で辛気臭い……」と容赦がない。
先代席亭には「『こみちのすべて』という会をやらせていただいて。これ落語二席と踊りと唄があるんですよ。……まあ『やれ』っていわれたんで……。で、マイクなんかのセッティングとか大変なんですが、それを席亭がやっていて……。『ネタ早く決めてください、準備が大変なんですよ』みたいなことを言われたことがあるんですけど、……いやアンタがやれっていったんですからね!」といろいろ大変だったようだ。
「寄席にはいろんなところがあるんですけど、ムニャムニャ演芸ホールってところなんて『よっ、ババア!』なんて声掛けがウケるんですから。寄席にコンプラなし!」と開き直った感じ。
『徳ちゃん』なんてコンプラあったら絶対にできない噺だよなあ。寄席にコンプラの風が入ってこないことを望む。「オラとチッスすべ、チッス」と迫るのが面白いが、でもやっぱりこの噺はムサい男の噺家がやった方がリアルで面白いのかも。

さん喬師、知っていてわざとなのか先代について「じゅうさん」と話す。
実家は本所ということで、先日も浅草に行ったとか。7月10日に行ったようで、四万六千日様とほおずき市のことを話して『船徳』に。
船宿の親爺と船頭になりたいと交渉するところからフル版でたっぷりと。
……6時間落語聴きっぱなしで、寄席のように色物もないのでさすがに疲れてしまった。小刻みにスイっと意識が飛ぶ。もったいないなあ。

帰宅途中、環七が微妙に混んでいる。うーん、ちょっと行儀悪いけど、すり抜けさせてもらうかとひょいっと車線の真ん中に出たところで後ろから白バイにサイレンを鳴らされる。ええっ、すり抜けでキップ切られんの!? 別にここ車線変更禁止のオレンジラインでもないのに!? とマジかよーこのままなら次の更新でゴールドに戻れるはずだったのにとガックリしながら止められる。すると「〇〇橋から右折しました?」と聞かれ、それは本当に私ではないので「違います」というと「じゃあごめんなさい、私の勘違いです」とあっさり引き下がられる。なんだよ~~~~。「でもすり抜けは危ないから気をつけてくださいね」と釘を刺される。でもまあいい、ホッとしたので許す。白バイには何度かビビらされたが、キップを切られなかったらそれですべてを許せるのは不思議だ。
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なかの演芸長屋 席亭和希十を偲ぶ追悼寄席 1部 [落語]

なかの演芸長屋 席亭和希十を偲ぶ追悼寄席 1部
於:中野 なかの芸能小劇場

ご挨拶
鈴々舎美馬『美馬と閻魔』
古今亭文菊『浮世床(夢)』
三遊亭兼好『青菜』
隅田川馬石『臆病源兵衛』
弁財亭和泉『嵐の初天神 落語の仮面 第二話』

落語の企画会社オフィス10の先代社長が昨年亡くなり、その追善興行。先週と今週の二日間、それぞれ午前と午後の二公演ずつ行われる。
今日は私も午前と午後どちらも参加する。

まずは席亭他界以前にもいろんな噺家から「お嬢」と呼ばれ、たびたび開演前の影ナレをいじられていた二代目席亭である娘さんのご挨拶。初日では「湿った空気にしたくない」とやらなかったそうだが、今日は挨拶をしたほうがいいと思い直したそうな。本日の噺家さんたちと先代とのやり取りや、亡くなられた直後に公表するかを相談した話など。直後に文菊師、馬石師の会があり、また美馬さんの勉強会が始まったのだという。その後に兼好師の会もあり、兼好師に相談したところ、「美馬さんの勉強会が始まるというのはおめでたいことなのだから、それまでは公表しないでおきなさい。それで私の会のときに発表すればいい。そうしなさい、ね!」と教師に諭されるように諭されたという。さすが兼好師ですなあ。

なので、今日のマクラは各々先代との思い出をメインに。
聞いていて思ったのは、若手ほど先代に恩というか思い入れを持っていて、上に行くに従って淡白というか「それほど話したことがない」という感じになっていくこと。まあそりゃあ若手からすれば「自分の会を開いてくれるイベンター」というのは若手からすれば数少ない恩人だろうし、売れている師匠方からすればたくさんいる中のひとりという感じなのかもしれない。
また、若手にはいろいろと気にかけていたようで、コロナ禍で会がなくなっていた頃には二ツ目以降にコロナ禍ボーナスを配っていたという。それは皆「あれは本当にありがたかった」と口を揃えていた。
客席を半分にして再開した後も、真打にもそれまでと同額のギャラを支払っていたという。やはり他ではギャラが下がることも珍しくなかったようだ。
噺家ファーストだったんだね。

ということでマクラも若手ほど長くなる。
一席めの美馬さんは15分ほど感謝とこれからの意気込みなどを時折り涙声になりながら述べていた。
さてすっかり重苦しくなってしまったこの空気をどうすんのかなーと思ったら、美馬さんがある師匠から壁ドンされたのだが、それが失敗して顔に頭突きを食らわされたのがもとで閻魔のもとにやってきたという噺に。「私死にました? ……あーやっぱりなー、さっきそこで知り合いに会ったんですよねー」と先代席亭と会ったという小ネタを挟む。
さすがに端々から湧き出るネタや言葉が若々しい。

文菊師もマクラ長め。
先代よりも娘さんの方が長かったが。
高座の直前に「愛ってなんだと思います?」と問われ、「なんで今そんなこと聞くの!?」と思いながら必死に答えたということを15分ばかり。
でもいつものナルシストマクラよりも全然いい。とはいえなんとなく空気が重い感じに。

兼好師はやはりというか、さすがというか、重苦しい感じなどは一切感じさせず、カラッと大爆笑に持っていく。
「裏の楽屋では和泉さんが美馬さんのことを『顔小さいわねぇー。ゲンコツぐらいしかない』と絡んでイジメてた」などとさんざんいじって笑って笑って空気を一変させる。さすがですね。
兼好師はオフィス10が発足した2016年当初からずっと朝10時からの会をやっており、私も欠かさず通っていた。私は午前中に中野で落語あるときは高円寺まで行ってタイ料理ランチを食べて帰るというルーティンだったのだが、最近はなくなっちゃったなあ。
兼好師の『青菜』は一年ぶり。やはり植木屋の女房の存在感がものすごく、「お前……それ裸に浴衣だろ? そんでそれ俺のフンドシじゃねえか。腰巻きくれえつけろよ。だから近所の子どもたちから『相撲のオバちゃん』ていわれるんだよ」という植木屋の嘆きがおかしい。「お前お屋敷の奥様みたいに三つ指つけるか? ……お前のは仕切りっていうんだよ、怖いよ」と続けるのが最高。

馬石師、オフィス10での会の思い出を。ネタリクエストの会があり、そこで『臆病源兵衛』が選ばれたそうだが、その直前に雲助師の会があり、そこで『臆病源兵衛』を掛けていたのだとか。師弟の会が続くので両方とも聴くお客も結構いたそうで、「師匠の後に同じ噺をするって……。師匠に言っておけばよかったかなあ」とボヤくも、その時の噺を。
『臆病源兵衛』を高座で聴くのは初めて。
死んだ人間を「棺桶に詰めて寺の前に置いておきゃあ誰かが供養してくれるだろう」というのはすごい。
そんなバカな、というストーリーだが、馬石師のあのほわんとした語り口で話されるとなんとなく納得してしまう。

和泉師、「なんですか、あの兼好師匠は。確かに美馬ちゃんは顔がゲンコツくらいしかありませんよ。さらに二ツ目昇進の準備が忙しくて頬がちょっとこけてきていたから『大丈夫?』って聞いていたんですよ。それがああいう風に『イジメてた』って……。ああYahooニュースってこうやって作られるんだなって……」。Yahooニュースだからってフェイクニュースばかりとは限らないけどね。「しかも高座から降りてくるときに『上がるときに美馬ちゃん蹴りながら行け』とかいうんですよ。できるわけないでしょ」。やってたら面白いのに。
「文菊アニさんとか兼好師匠は次の仕事があるんで仕方ない。でも馬石師匠は次ないんですよ。ただ早く帰りたいだけなんですよ。それでトリを取れって……」と暴露される。
出囃子が『白鳥の湖』だったのでそうかなーと思っていたが、先代席亭のときに1周演り、2周めの第一話を始めたところだったそうで、続きを二代目からリクエストされたとのことで『落語の仮面』。
やっぱりこういうパロディものは元ネタ知らないと全然わからんね。元ネタとの比較で「コレをこう変えてきたかぁ〜」てのが醍醐味だと思うけど、比較ができないしなあ。
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