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けんこう一番!第二十二回三遊亭兼好独演会 [落語]

けんこう一番!第二十二回三遊亭兼好独演会
於:国立演芸場

三遊亭兼好『初天神』
三遊亭けろよん『雑俳』
三遊亭兼好『鈴ヶ森』
桂小すみ 音曲
三遊亭兼好『宿屋の仇討ち』

平日だというのに今日も今日とて落語通い。誰か俺を止めてくれ。

兼好師の一席め、「もう今年もあとひと月ちょっと。早いですねえ。こないだ圓楽師匠が亡くなったと思ったらもうこないだ四十九日ですよ。……その間に大臣が3人辞めてんの」と黒い笑みをこぼす。
「紅白も発表になりましたが……年々わからない人が増えますね。というかもう読めない。私は最近の歌手ではあいみょんが好きなんですが……あの方は全部ひらがなだからいいのかもしれませんね」。わかりすぎてもう。
自分が歳を取ったという実感と、その分子どもたちとの壁を感じるというような話から『初天神』に。
りんご飴をねだられて「赤ぇのは毒だからダメ」と断ったものの、結局飴玉を買う段になって「赤ぇのでいいか? ……毒だから嫌だ?」と返されてしまうのがおかしい。
兼好師の親子の場合、父親が何だかんだと言いつつ結局は子どもをかわいがっているところが伝わってくるのがいい。出かける前にちゃんと着替えさせているし、ものをねだられてるとき以外は終始ニコニコで飴を与えるときも優しい顔をしている。
団子の蜜を舐めとった後でサゲになるが、そこでさらにひと捻り。これはさんざん金坊にいいようにやられてきた父親の逆襲なのか、それともこの父親にしてこの子ありなのか。

二席め、「旅行しながら旅先で泥棒を働く旅行泥というものがいるんだそうで。ギャンブル場があるような場所に行ってギャンブルをしながら泥棒をする。談春師匠や一蔵くんなんかもボートレース場があるところに積極的に仕事に行くんだから似たようなものですが」。酷いことを言われているが、兼好師の口から自分のお勧めの若手が語られるとなんか嬉しい。
泥棒の話から『鈴ヶ森』に。
追い剥ぎの口上を口写しで教えてやるといって子分が勘違いしたときに「考えてください。口移しして覚えられるんですか? 覚えるんだったらやります」という悲壮な親分の覚悟がおかしい。
茂みに腰を下ろしたときに刺さったのは今日は大根。「誰かが抜いて逆さにした大根がお尻に……さすがに大根は無理があった……」というひとり反省会も笑える。

小すみさん、相変わらずすごい腕前。
なのに経絡の話とかを超ハイテンションで話してて弾くようでなかなか弾かない。
さらに自作のインドヴェールのようなものをつけて『カレーを作ろう』というオリジナルソングを。これ一度寄席で聴いたことがあるが、今日はBGMを流してそれに合わせて演奏しているので重厚。しかも照明もそれっぽい虹色の妖しい光が舞っているし。
やっぱり音大出だからか、すっごいキッチリしているという感じ。橘之助師とかは結構音を明らかに外してたりもするんだけど、それはそれで演芸という遊びを感じたりもする。

兼好師の三席め、最近寝る前にドラえもんを少しずつ読んでいるのだとか。そういえばちょっと前のインスタに全巻揃えたという投稿があった気がする。「いやバカにしますけどね、ドラえもんってよくできてるんですよ。落語みたいになってるんです。のび太は与太郎ですわね。でドラえもんがご隠居。ジャイアンが熊さんや侍で、スネ夫が若旦那。しずかちゃんが花魁」。まあお色気担当ですから……。とはいえ藤子・F・不二雄先生が落語好きなのは確か。『壺算』のトリックをジャイアンがそのまま使ってのび太を騙したりするし。
「最近旅の仕事が増えて泊まりもあるんですが、そのときはドラえもんは持っていけない。嫌でしょ師匠のカバンからドラえもんが出てきたら尊敬できないでしょ。だから我慢してるんですが、どうも眠りが浅いような気がして……。旅先で寝られないのは辛い」と『宿屋の仇討ち』に。そうつながりますか。
相変わらず河岸の若い衆たちの軽薄なやりとりが心地良い。芸者を呼ぶときに「猫呼んでこい」「ミケ?」「本物の猫呼んでどうすんだよ、刺身食われっちゃうだろうよ。三味線だ、芸者!」とトントンと歯切れよく注文が繰り出される。
「若すぎねえで、おペンペンが良くて声がいい、酒を飲みたがらねえ、ものを食いたがらねえ、インドの唄を歌わねえようなそんな芸者を呼んでこい!」と残念ながら小すみさんはダメだったようだ。
この噺でも本来のオチである「そうでもしないと落ち着いて眠れん」という種明かしを早々にしてしまい、サゲにもう一段追加している。こういう常になにかしら新しい要素が入ってくるから兼好師はやめられない。
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