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扇辰日和 vol.84 [落語]

扇辰日和 vol.84「入船亭小辰改メ十代目入船亭扇橋真打昇進襲名披露」
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰ぢろ『悋気の独楽』
入船亭扇辰『蕎麦の隠居』
入船亭扇辰『紫檀楼古木』
口上
入船亭小辰 改メ 入船亭扇橋『替り目』

昨日は浅草の後に高校の友だちと飲み。
あまり調子が良くないのか、あまり飲めず。
酒量もそう多くなく、水も大量に飲んでいたので普段よりは全然マシだけどやっぱり二日酔い。なんか最近弱くなってるような気がする。
午前中に猫の病院行きたかったのだがおとなしく寝る。

さすがに今日は満席。若い人たちも多い。というかなぜかこの会は若いお客が多いんだよな。

辰ぢろさん、満員の客席に怯んだか、最初の挨拶から盛大に噛む。「……噛みましたね。深呼吸をして……」と気を入れ直すが全編噛みまくっていた。まだ覚えたての噺なのかも。

扇辰師の一席め、「最近この会のお客さんは目減りしてたんですが、今日はさすがに満員。……扇橋、ありがとう。今日は皆さん扇橋のお客さんなんでしょ!?」。まあそうでもあるけど扇辰師匠の客でもありますよ。
「でもね、先ほど熊本からいらっしゃった方がいましてね。それから広島、長野、新潟からもきてくれた。それからなんとドイツからという方もいらっしゃいました。その方たちは私のお客」と弟子と張り合う師匠。
「ここまで聞いて『扇辰、なんか元気がねえな』とお気づきの方もいらっしゃるでしょうが……はい、その通りです。体調不良です。……二日酔いです」。師匠もですか。
昨日は黒門亭のあとに高崎まで友人のお見舞いに行き、一緒に行った同窓生たちに一杯だけ付き合うつもりだったという。結局周りにつられて飲んでしまい、帰りの新幹線でも飲み、「最寄り駅から家に帰るまでに3軒くらい居酒屋があって、『あれ師匠飲まないの』なんていわれると『よし飲むか!』ってなっちゃう。で、二日酔いですよ。でもね、二日酔いでこれだけの芸を見せられるのは……」と腕を叩く。
噺は昨日と同じく『蕎麦の隠居』。どうやら他の会でリクエストでもされているのかネタ出しをしたのか事情があるらしい。この噺は先代の扇橋師しかやっていないそうで。扇橋師に向けた当て書きだったんだろうか。
「先代のトボけた味わいはなかなか出せませんなあ……」とのことで、確かに端正さはあるがトボけた感じではないかな。ただ蕎麦をたぐる仕草自体はあまりないのに、猛烈に蕎麦が食いたくなる。今日は昼食がもたれているような腹具合なのに、それでも帰りに一枚くらいたぐってくかと思わせる。
「本人にはまだ言っていませんが、この噺は扇橋にも稽古をつけます」といっていたので、当代扇橋師でも聴けるのを楽しみにしていよう。

そのまま扇辰師の二席めに。
昔は電話を表す仕草で手ぬぐいを細く折って表現したり、または手ぬぐいを使わずに親指と小指を立てた拳で表現していたが、最近の前座は手ぬぐいを折らずに懐から出したままの大きさで耳に当てるという。確かにスマホだとそのくらいのサイズのものもあるしなあ。「電話の仕草も時代によって変わる。次は折れるスマホとか出てくるんじゃないの? ……もうあるの? (客席がうなずき)え、あるの!?」と驚いた様子。前々からあったけど最近またCMとかやってますな。
今昔で変わったつながりで昔あって今はなくなった職業として羅宇屋を挙げて『紫檀楼古木』に。
今まで聴いていたときは、女中のお清が図々しくて気遣いができないような嫌な女に思えていたが、これは実は10代前半の女の子なのかもしれないなーと思った。それくらいの年代の子なら、見た目が汚い爺さんに対して当たりが強くなったり、自分の欲望に正直だったり、ご新造に叱られて不貞腐れるのもよくわかる。ちょっと自分の意識が変わるだけで見えてくる景色が異なってくるのも落語の面白いところだと思う。

口上は扇辰師と扇橋師のふたり並んで。
司会も扇辰師。寄席での口上よりも入門の経緯などを詳しくたっぷりと話してくれた。
二ツ目に昇進した時の名前「小辰」は実は扇辰師はイヤだったそうで。「私は本名が辰朗で、子どもの頃から身体が小さかったんですよ。だからよく言われてね、イヤだったんだよ。でもどうしてもこの名前がいいっていうもんだから。弟子が考えた名前を許すなんて器が大きいでしょ!? それに小三治師匠のところで辞めちゃったけど『こたつ』って人がいたからさ。一応筋を通すために挨拶に行ったら『いいところに引き取ってもらったな』と言ってもらえた」と感慨深そう。
「今日は特別に」と扇橋師からも挨拶。
「体調不良です。……二日酔いです」「お前もか!」。
「ありがたいことに雲助師匠の芝居に出させてもらってるんですが、雲助師匠は打ち上げをやらないんですよ。そうすると、ハネたあとで二ツ目の馬久さんとか馬太郎さんとかが捨てられた子犬のような目でこっちを見てくるんですよ。帰ろうとすると『ええー、アニさん帰っちゃうんですかー』って……。そう言われると『じゃあいいよ、行くよ!』ってなるじゃないですか」「……口上の挨拶じゃねえな」。
「でもこんな二日酔いでもここまでの芸を聞かせるのは……」とどこまでも扇辰トリビュート。

扇橋師、「口上で大ノセ(大食い)の話と市馬師匠に『扇辰さんのとこの小辰、いいね』と言っていただけた話が出ましたが、私は大食いで市馬師匠にハマった。市馬師匠にご飯に連れて行っていただいた時にラーメンとチャーハンを食べて、一緒に行ったアニさんが定食を食べ終わっていなかったので餃子とライスも食べた。それでも食べ終わっていなかったアニさんの残りも食べて、市馬師匠のチャーシュー麺のチャーシューも食べて……。その後で『1時間だけな』とカラオケに連れてってもらって『上を向いて歩こう』を歌ったら名前を覚えてもらった。それまでは『扇辰の弟子』だけですから。……でもそれ以上はハマらなかったみたいです。まあ小燕枝アニさんが溺愛されてますから……」。まあそれはお互い様では。
国立演芸場での3日めに扇辰師から言葉を詰まらせながら「自慢の弟子」と言ってもらえたことを「今でも思い出すと泣きそう」と言いながら嬉しそうに話すとか、どんだけ師匠のこと好きなんだって話ですよ。「そのとき袖でなぜか小燕枝アニさんが泣いてた」そうだけど。ああいい関係性ですねえ。
ネタは最後まで決まらなかった様子だが、得意ネタの『替り目』に。
俥屋とのくだりは省き、夫婦の会話を中心にうどん屋のサゲのセリフまで。
うどん屋の後に新内流しがくるというのもあまり聴かないが、それが新内ではなく流しの義太夫というのも珍しい。
なんだかんだといい関係性のふたりと自身を重ね合わせたのかなと思ったり思わなかったり。
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