SSブログ

第二十八回 東海道神奈川宿寄席 [落語]

第二十八回 東海道神奈川宿寄席
於:桜木町 横浜にぎわい座芸能ホール

三遊亭げんき『牛褒め』
三遊亭兼好『強情灸』
橘家文吾『夢金』
橘家文吾『五目講釈』
三遊亭兼好『富久』

昨日はこみち師の会など行きたい会がいくつかあったのだが、掃除や体力回復の方を優先する。その後高校時代の友人と北千住で飲み。来週も地元で会って呑むんだけどね。
でもって案の定二日酔い。ただ焼酎オンリーだったからか普段よりは全然楽だがやたら眠い。ていうか体力回復できてねえなコレ。

開演前に主催者の挨拶。
ダジャレをふんだんに盛り込み、盛大に滑りまくる。「今日のゲストは文吾さん。ぶんごうといえば夏目漱石、漱石の代表作の『ぼっちゃん』のようにネタを川に投げ込んでオチまで流れ込む……」みたいな感じ。

案の定兼好師の餌食となる。「この会は主催の挨拶も名物で。いいですね、やっちゃいけないことをすべてやってる。もう弟子が高座に出るより緊張する。『引っ込めー!』とかもいえないし……」。こうやってフォローするのも兼好師の優しさで、ある意味主催者はおいしい。
「今日はクリスマスイブなのにこうしてたくさんお集まりいただくのはありがたい。なんですか周りはクリスマスだからってカップルがどこか行こうっていうんでしょ。ほんとイライラしますよね。もしくは全財産を有馬記念に突っ込んでなんとか年を越したいっておじさんたち。だから文化的な人はここにしかいない」。
「愚痴になりますけど、クリスマスというイベントが入ってくるのはまあいいんです。でもクリスマスプレゼントっていう文化はいらなかったんじゃないですか。あれはもともと貧しい子どもたちのためになんとかしようというもので、それも毎年は貰えないんです。『なんでサンタさん来なかったんだろう』『ちゃんとお祈りしてなかったからじゃないか』……みたいなことでキリスト教の教えとか、日々の行いを正すとかのものだったのです。それがどうですか。今は毎年必ず貰えて、しかも子どもはズル賢いですから『今ウチはこれくらいのものなら買ってもらえるな』というギリギリを狙ってくるんです。そうするとせっかく貰っても『色が違う……パパ、これ取り替えてもらってきて』なんてことを言い出すんです!」とご立腹。「すみませんウチの愚痴です」だそうで。ていうかクリスマスプレゼントの本来の意味ってホントなんですか。聞いたことないけど。
「そもそも貰えなくても我慢するというのが日本人の美徳じゃないですか」と『強情灸』に。
会場が横浜だからか、「横浜の方にできたろ、峰の灸てのが」という説明はなく「峰の灸行ってきた」と近所のような扱い。
相変わらずなぜか首を左右に振りながら喋る峰の灸の術師の動きがおかしい。
灸に火が回って「ふぐっ!」となった後に「あにょね、八百屋お七……」と喋る声がすべてひっくり返ってるのもとにかく笑える。

文吾さんの一席め、文吾さんも開演前の挨拶に苦笑い。「こうやって主催者から紹介されることもたまにある。こないだは広島の高校に師匠と一緒に呼んでもらったとき、師匠は珍しく『芝浜』をやると張り切っていたんですが、先生が落語好きだったのかストーリーからオチまで全部生徒に説明してしまった。『それではどうぞ』と言われて『できるか! アイツに全部やらせろ』って怒ってました」。
ケチと欲張りの違いの話から『夢金』に。
ガッチリと骨太な感じでしっかりと聴かせる。「欲の熊蔵」の船上のボヤキに強欲さが滲み出ている。

文吾さんの二席め、こちらもガッチリきっちりとした噺をしっかりと聴かせる。
講談部分ももちろんなのだが、居候先でのおかみさんとのバチバチのやりとりも楽しい。

兼好師の二席め、「金は天下の回りもの、といいますけど回ってこないですねえ。……ま、裏金では回ってるんでしょうけどね。そもそも選挙ポスターとかに『美しい日本』とか『日本を豊かに』とかいってるから腹が立つんですよ。『キックバック!』とか書いてあれば許せるんですけどね」といって大爆笑。いや許さないしそもそも投票しないですけどね。
年末らしいお金にまつわる噺で『富久』に。
兼好師の久蔵は芝の旦那の出入り止めに困っていながらもどこか飄々としていて悲壮感を出していない。
家の大神宮様に願をかけ、お下がりのお神酒を飲んでいるときも「アタシは千両当たったら……」とその使い道を滔々と語る。「たばこやのみいちゃん、あの子を女房にします」と夫婦喧嘩やいちゃいちゃしているところを延々と話して「……ていう暮らしがしたい」という妄想がやたらおかしい。まあ宝くじ買ったら一度はそういうことを考えますわね。徐々に呂律が回らなくなっていくその様子がホント上手い。
芝の旦那の家に火事見舞いに行くことを近所の棟梁に勧められ、出入り止めが許されたときに「ありがとうございます! 棟梁!」と棟梁への感謝を口にし、「計略通り」などと言わないのが兼好師らしい。
火事見舞いの応対をしているときに直接のセリフとしては出てこないが、みんなが久蔵の出入り止めについて触れているのが久蔵の応対でわかるのがおかしい。中には「ああ若旦那、前に言っていた碁番の上で踊る片足かっぽれを今度お教えします……講釈の方がいい!?」などと文吾さんのネタを拾うのもさすが。
本家から届いたおでんを串から食べる仕草も見事で、練り物やこんにゃくの弾力が見えるよう。
富くじが当たるまでにも見どころが多すぎて、兼好師の芸達者ぶりを再確認できた一席。『富久』ってそんなに好きな噺じゃないんだけど、こんなに面白いんだと思いました。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:芸能