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日暮里だだらくご vol.39 [落語]

日暮里だだらくご vol.39
於:日暮里 日暮里サニーホール

入船亭扇橋『短命』
柳亭小燕枝『夢の酒』
柳亭小燕枝『鈴ヶ森』
入船亭扇橋『文違い』

門仲から日暮里へ。
1時間ちょっと間が空いたのでファミレスに入って「シェアする落語」の記事を書き上げる。ファミレスだとあの分量を1時間で書けるんだよなあ。なんで家では書けんのか。っていろいろ誘惑がありますからね。猫とか漫画とか酒とかテレビとか。

いつもは平日の会なのだが、今回は日曜なので開演が30分早く18時半から。ただし会場が使えるのは18時からで、開場まで15分しか時間がなく大急ぎで設営したそうだ。なのに扇橋師が会場入りしたのは18時15分だったそうで。

扇橋師の一席め、そんな状況を話して「設営をアニさんと主催の方だけでしていただいた。『アニさんすみません』と謝ったものの、その時の小燕枝アニさんの『……いいよ』というあの目が怖かった。久しぶりに前座の頃に戻った気がします」とあまり本気さを感じさせない反省の弁。
「……この会は市弥と……」と言いかけ、「……久しぶりに『市弥』って出てきた。まあ『市弥と小辰の会』だったんですけど……」と本当に気分が巻き戻ってしまったのだろうか。
電車で見かけたカップルの話から化粧の話題に移る。先日の舞台に出演した際に自分でメイクをしなければならなかったそうで、今までしたことがなかったからまるでわからなかったそうだ。まあ大概の男はそうでしょうなあ。
女性の美しさへの欲求を賛美しつつ「一方で『美人薄命』なんてこともいいまして……」と『短命』に。
先日聴いたときと内容自体はそんなに変わっていないんだけど、だいぶ一蔵色が薄れたような印象を受ける。なんでだろ。ご隠居が「……短命だろ」という直前に「ンフッ」と意味深に笑うところがやっぱりおかしい。
途中で「……今気づいたけど客席に子どもがいる!」となったがもう終盤に差し掛かろうかというところでさすがにどうにもならない。

小燕枝師の一席め、まずは開演ギリギリにきた扇橋師へのグチというか呪詛というか文句が止まらない。「椅子も全部私が並べて! そんでプログラムのチラシ挟み込みが間に合わない。で、この会のプログラムって真ん中から2つに折ると『仲入り』のところに折り目がくるようになってるんで、少しずらして折ってるんです。それをあの男は真ん中から折りやがって。そもそもこの会が始まってから10年経ちますけど、アイツが椅子を並べているところを見たことがない!」と激昂。このホールには舞台左上に窓があるのだが、そこが開いて扇橋師が「……悪かったよ」と謝罪。なんでそんな高いところから上から目線の謝罪が。絶対反省してないヤツだこれ。
謝罪が入って少し冷静になったのか、寄席の話に。
現在鈴本と浅草に師弟で掛け持ちをしているらしく、浅草では小燕枝師の後ろが市馬師だそうで。「持ち時間が短くなっても、『お前は縮めたりしないで思った通りにやれ。時間を縮めたりするのは俺たちジジイがやるんだ』って言ってくれる。カッコいいなあ! って思いますよね」と師匠愛に溢れる。
競馬に勝った小燕枝師のご尊父が浅草の楽屋に差し入れをし、その差し入れを馬風師におそるおそる持っていった話なども。
小燕枝師の『夢の酒』はとにかくお花がちょっとイカれていて、それがとても楽しい。大旦那に「倅は夢の話だと言っているが」と問われ、目が泳ぐところなどはたまらない。倅の夢に行くのは淡島様に頼るのではなく「気合で」というのも無茶苦茶で好き。

小燕枝師の二席め、羽織も着ずに高座に上がる。「さっき楽屋に戻ったら『来年の目標は”遅刻をしない”』って……。当たり前だろ! こっちはそれが普通なんだ!」と再燃した模様。
「縁起を担いで泥棒の噺を」と定番の導入から『鈴ヶ森』へ。内容は扇橋師のものと似ているようだ。
親分さえ「ここを知って通ったか知らずに通ったか。知って通ったんなら命はねえ。知らずに通ったんなら命は助けてやる。そのかわり」という口上が言えずにあわあわとなり、途中で「あー、15分前に戻りたい!」と思わずこぼす。そんなハプニング(?)も楽しい。

扇橋師の二席め、『文違い』は初めてか。
「客席にお子様がいるときはネタ選びもそれなりに気を使うのです。それが今日はみんなふさわしくないようなネタばかり。……なので今日はもう振り切ろうかと」と開き直りのようなことをいって噺に入っていく。
なんかあんまり初めてという気がしない。そもそも『文違い』自体そんなに何度も聴いた噺ではないのだが、なんだろ落ち着きっぷりとか、おすぎの悪女っぷりとかが既視感を生むのかもしれない。

昨日は生ぬるい感じだったのに、日が暮れると季節通り寒くなる。いよいよバイクに厳しい季節がやってまいりましたなあ。
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シェアする落語 第34回 三遊亭わん丈 [落語]

シェアする落語 第34回 三遊亭わん丈
於:門前仲町 深川東京モダン館

三遊亭わん丈『来場御礼』『魚の狂句』『芝浜』

いよいよクソ後輩が会社を去り、俺の負担が倍増する。
さらにその上に仕事が入るとか、みんなで俺を殺そうとしてるのか。
さらにクライアントのクソ担当のカスハラがひどく、上司や社長を巻き込む事態に。クソ担当は仕事できない上に責任感もなく、コイツのせいでクソ後輩が飛んだと思われる。まあクソ後輩が置き土産にクソ担当の悪行一覧を残してクライアントの上司に送られることになったから、さっさと配置換えになっちまえ。
でもって昨日も休出。あまり頭を使わない画像加工が主な作業だったので喜多八師の落語を聴きながら。私は集中力があまり長く続かないのだが、落語を聴きながらだと作業に飽きても「ちょっとネットでも見るか」とかにならないので結果的にずっと作業を続けられる。そしてアマプラが三田落語会を配信してるのでいろいろ聴けるのがありがたい。

さて久しぶりの「シェアする落語」。噺家さんを撮影できる時間をとり、その写真をネットなどにシェアするという試みを行なっている。前回もわん丈さんの会だった。
わん丈さんは昨年も出演され、「真打昇進前にもう一回出たい」と言っており、「じゃああと2~3年後に」と言っていたら急遽今日しかなくなってしまったそうだ。抜擢されたからね。

一席め、『翔んで埼玉』の話から地元滋賀の話に。「埼玉の人はイジられることに耐性があるから笑って許すけど、滋賀はそうではない」と滋賀の荒れ具合を滔々と語る。曰く警官がストーカー的な行為をするため「犯人」と呼ばれているとか、アンケートに「滋賀を舐めるな」と書かれ、次の年にそのことを同じ会場で言ったら「だから舐めるないうとるやろ」と書かれ、「まさかリピーターになっていただけていたとは」など。
落語会の会場にずっと携帯を鳴らしているオバサンがいて、よく見たら自分の母親だったというところから母親とわん丈さんの会話となり、どうやらマクラではなくそれが噺の本編だったようだ。
いかにも関西のオバチャンらしいけたたましくベタな会話が続き、さながらひとり漫才。さすが関西人というか笑いの手数が多く、ずっと飽きさせない。

一席が終わってシェアタイム。主催の四家氏との対談で、この間は撮影可能なのでバシャバシャ撮る。いつもならば二席終わった後でなのだが、今日は変則らしい。

抜擢真打という端から見れば華々しい栄誉なことのように見えるが、実際には大変なことばかりらしい。仲の良かった二ツ目の兄弟子とも溝ができたり、挨拶回りで上の師匠をしくじったりとかもすでにしているそうだ。
天どん師は「俺が出て謝ったほうがいいときは言って」と言ってくれて実際に一緒に謝ってくれるそうだが、「だから天どん師匠に迷惑をかけたくないんですよ。でも協会は段取りとか何も教えてくれない」とグチが止まらない。「天どん師匠はおそらく歴史上一番速く口上に上がるんですよ。普通弟子の真打昇進は15年くらいかかるから、自分が昇進して20年くらい経って師匠側として上がるのに、天どん師匠は10年くらい。それにキャラ的に自分より天どん師匠の方がイジりやすいから、上の師匠は絶対口上で師匠をイジるのがわかるんですよ」。その予想もどうなのと思うが、私と同じく天どん師の口上を楽しみにしている人が多いんだそうだ。
扇子も竹が取れなくて全然作れずに大変だとか、ぶっちゃけお金のこともあるから一度は断ろうと思っていたとか、裏話的なことがどんどん出てきて止まらない。
真打昇進後のビジョンなども。今は年間1500席やっているそうだが、もっと自分のやりたい仕事を選んでいくそうだ。1500席ってすげえな。
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Nikon Df

少し間をとって二席め、「他にやろうと思っていた噺があったんですけど、三席めに『芝浜』やりたいんですよ。で、私この後鈴本の出番が5時にあるんで、4時11分の電車に乗らなきゃ間に合わない。なので5分でできる噺を」と『魚(うお)の狂歌』を。もともと上方の噺で春蝶師から習ったそう。女房にわからないように、色街の名前を魚の名前を盛り込んだ川柳で表そうというもの。吉原新宿池袋渋谷と、どこにも上方の名残が見られないけど……。

三席めは予告通り『芝浜』。
先日一蔵師でも聴いたのだが、わん丈さんも財布を拾うところを描かない古今亭の型。一時期は誰を聴いても三木助型だったのだが、流行りが変わったのだろうか。
そして軽い。魚熊は割合あっさりと夢であることを受け入れるし、お得意先もクドクドと説教などはしない。
革の財布を出されても、「あれは夢だったんだ」と逆に受け入れないというのは初めて聞いた。そんなだから女房の告白を聞いても怒りもしないし、あっけらかんとしている。重苦しい場面がなく、人情噺というカテゴリではない感じ。
これはこれでわん丈さんのスタイルに合わせた『芝浜』なんだろう。

終わったのは4時11分。……電車の発車時間ですなあ。
終演後に駐輪場で身支度をしていると着物のままのわん丈さんが飛び出していくのが見えた。
まあタクシーなら30分くらいで着くんじゃないかなあ。
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