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第百十一回 一蔵ひとりの会 スペシャル [落語]

第百十一回 一蔵ひとりの会 スペシャル
於:池袋演芸場

三遊亭二之吉『転失気』
春風亭一蔵『鈴ヶ森』
春風亭一蔵『野晒し』
春風亭一蔵『佃祭』

夕方になったらいきなり涼しい、というか肌寒いくらいじゃね!? なにこの気温差。……あー夏が終わってしまうー。涼しいのは助かるけど秋の気配をにじみ出さないでくれー。ああタイ行きてーなー。

一席め、先代金馬の金翁師匠が亡くなって楽屋は大変な雰囲気だという。金翁師と先代柳朝師は繋がりが深く、毎年正月には一朝師の家に挨拶にきていたそうで、その時のエピソードを。また一蔵さんが前座時代に釈台を使い始めていたのだが、高座に上がる直前までなんとか正座ができないかトライしていたなど、いろいろ興味深い話をしていた。
なかでも面白かったのが、名人クラスだと高座に上がるときに得意演目を客が声掛けすることがあるそうで、夏の会で「芝浜!」と声が上がったそうだ。「おい夏だぞと。金翁師匠も『もうしばらくやっていませんなあ』なんていってたんですけど、『お前さん起きておくれよ』って始めたんですよ! それで完璧な一席! もう感動して生意気なんですけど『すごいですね、やっぱりいつでもできるんですね』っていったら、『先週(後輩の噺家に)稽古つけたばっかりだ』って……。やっぱりああいう方は持ってるんでしょうね」とのこと。
「本当はここで『孝行糖』とか掛ければいいんでしょうけど、持ってないんでね……」。あ、午前中に小辰さんが『孝行糖』掛けたのってそういう意味か。確かに金翁師に教わったって言ってたしな。
昨日は広島で仕事だったそうで、前乗りで新幹線で行っていたとか。「4時間ですからね。なのでいつも東京駅でハイボールの500ml缶と酎ハイ、それと焼酎の水割りを6本持っていくんです」。ええ……。「こういう話するとお客さんがすーっと引いていく」。そら飲み過ぎだって。「だいたいいつも品川に着く頃にはハイボールが空いてる」。10分足らずじゃなかったっけ。「新横浜までで酎ハイも空いてる」。品川から15分くらいだぞ……。ここから焼酎の水割りになるのだが、東京駅で購入したのでぬるくなっている。これに氷を入れる裏ワザを話すが、こりゃ一蔵さんにしかできんわ。面白かったから今後マクラで使われるんじゃないだろうか。ということで詳細は控えます。

一席めの『鈴ヶ森』はネタおろし。
追い剥ぎの口上「知って通ったんなら命はねえ、知らずに通ったなら命は助けてやる、その代わり」というところを子分に口移しで教えているときに「知って通ったんなら命は助けてやる」と言ってしまい、子分に「間違えましたよね?」と突っ込まれる。その後も何度か「知って」と「知らずに」が逆転してしまう。それがあったため、「知って通ったんならその代わり」「略すな!」という定番のくすぐりが別の意味を持つようでそれがおかしい。
「今朝覚えたんですよ。8回稽古したら入った」って誰に教わったのかわからないけど、上げの稽古とかは? 小辰さんとネタ交換でもしたのかな。

二席め、広島でのボートレースでの仕事でレースクイーンと絡んだ話など。また広島球場で一之輔師と野球観戦をしたそうで、そのときの一之輔師の恥ずかしいエピソードも。「あんな真っ赤になった一之輔アニさん初めてみた」っていうから相当だったんだろうなあ。趣味の話から『野晒し』に。なんか聴き覚えあるなーと思っていたら、前々回のひとりの会でやってんじゃん。さすがに近すぎでは……。通常回とスペシャルだからいいのかしら。
一蔵さんの緒方清十郎は浪人でありながらも結構伝法なところや見栄っ張りなところがあって人間臭くて面白い。これで自称聖人て。
一方の八五郎がまたかなりのチンピラぶり。これもらしいっちゃらしいが。
わーわーと大暴れしているところを周りのギャラリーが囃し立てて煽るのが新しい。鼻釣ったところでサゲ。

三席めの『佃祭』は4年振りくらいか。まあこの会にくるくらいだからだいたいの人はストーリーを知ってるんだろうけど、ちょっと不親切かなあと。噺を知っているからちょいちょい説明がなかったり場面が抜けても流れがわかるけど、これ初めて聴いた人がストーリーわかるかな? たとえば以前に吾妻橋で身投げをしようとしていた女中を助けたというエピソードが肝なのだが、なぜ身投げをしようとしていたのかの説明がないので「え、なんで急に五両の金を出して助けるの?」と思ってしまう。なんかそんな感じで説明不足というか端折りすぎというか。
とはいえ次郎兵衛さんのおかみさん相手に惚気話をする男や、与太郎の悔みが一番真心がこもってるとか面白い場面もたくさんあり、聴き応えもある。だからこそなんか惜しいなーという気にもなるのだが。
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実力派二ツ目独演会 らくご長屋 小辰独演会 [落語]

実力派二ツ目独演会 らくご長屋 小辰独演会
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭小辰『孝行糖』『松山鏡』『蒟蒻問答』

久しぶりの中野。まあ2日前にゴッド長渕剛のライブで中野サンプラザにはきているんだけど。
雨なので電車で。コンビニに寄りたいのでブロードウェイではなく、中野通りの方から回ったら、建て替えのためか入口が封鎖されてる! あれこれどうすりゃいいんだ? しばしウロウロして駐輪場の管理人に尋ねてようやく入る。

小辰さんも「今日ちゃんと入れました? 私はいつも中野通りの方から来るんですが、今日は雨だったんでブロードウェイの方からきたんで助かった」と戸惑った様子。
「10時からの会で起きたのが8時半という……。昨日は市弥アニさんと昼の会があって、で、夜も地域寄席で一緒だったんですよ。市弥アニさんという人はギャンブルもやらない、女の人も特に、三道楽で酒だけが大好きって人で(「一蔵アニさんは全部大好き、私は全部うっすら好き」だそうな)、昼の会が終わってからずっと『呑みてーなー』っていってるんですよ。夜の会が終わって『焼肉行こうぜ』ってなって。一蔵アニさんがいれば多少歯止めが利くんですけど、私は下なんで。『行こうぜ』って言われれば『ハイ』っていうしかないんですよ。で、2軒めから覚えてない。途中一回アニさんが寝てるのを見て『寝てるな』って思ったのは覚えてます。でも家には帰れたんですね。それで家のちゃぶ台に赤のマジックで書いたんです。倅にも読めるようにひらがなで『とうちゃんは8じはんにでる』って。朝、倅が降ってきました。カミさんが投げたんだと思いますけど……。『父ちゃん8時半だよ』って。出る時間に起こすな! 慌てて支度して。いつもなら多少事前に演目を考えてるんだけど何の準備もしてないから電車の中で何を演るか小辰会議が始まるんです。じゃあ今日はあのネタとこのネタと、あとは流れでもう一席で、ヨシ! と考えがまとまった。ギリギリで楽屋に着いてネタ帳を見て愕然としました。決めた二席を前回やってるの。『尼狐』と『百川』。前回だけなぜか自分でメモしてなくて……。真打昇進前、一番困ってます。だからね、先に言っときます。今日はヒドいよ!」。
「さらに慌ててたもんだから足袋を忘れてきて……。私はいつも足早に高座に上がるんだけど今日は特に。お気づきになりました?」。言われなきゃ気づかなかったのに。「今日は靴下が白黒のストライプなんで、裏返したら白になるかなと思ったら裏も白黒だった。そしたら(オフィス10の)お嬢がやってきて『あらいいですね、上が縞で下がストライプ』だって」。
本日の苦境をつらつらと述べたところで「さ、なにをやりましょうか」と唐突に噺の方へ。
昔はいろいろなものを売り歩いていた、と売り声の話に。鰯売りと金魚売り、さつまいも売りとお決まりのマクラの後で「えーとこの後のマクラなんだっけ」と苦戦してる様子。ホント用意できてなかったんだな。
小辰さんの『孝行糖』は初。「璃寛糖に芝翫糖」の売り口上にもやや危なっかしいところはあったものの、勢いで突破した感がなきにしもあらず。ただその勢いで押す感じも悪くない。「やぶれかぶれになれば何でもできる」というのは二席めのマクラにて。
この噺は昨日亡くなった金翁師に教わったそうで、売り声のテープを聞かせてもらったそうだ。
「飴屋もどんな格好してたんですかね」と聞いたところ、「なんだしょうがねえな」とイラストを描いてくれたそうで。「ただなぜか顔がやたら大きくて。二頭身なんですよ。『ホラわかるだろ!?』って言われて、『あ、ええ』としかいえなかった……」とのこと。

親孝行つながりか二席めは『松山鏡』に。
小辰さんでは3年ぶりくらいか。いつも思うが、「そんなわけねえよなあ」と思うストーリー。まあ落語はそんな噺ばかりだけれども。そこをさらっと違和感なく聴かせるのが噺家の腕の見せどころなのかもしれない。

三席め、「袖にお嬢がいたんで、『今日で(小辰名義では)最終回だからハグでもするか』って言ったんですよ。そしたらこれまでにないくらい冷たい目で見られました。信用っていうのは築くのは大変だけど、崩れるのは一瞬」だそうで。
「大師匠はよく女性のお客さんとハグしてたんですよ。で、師匠も一時期真似してよくハグしてましたね。お客さんを含めた打ち上げの3次会なんかだと……。でも師匠の場合、お客さんの方の目付きが変わるんですよ。もちろん師匠は冗談なんですよ。でもお客さんの方が本気になっちゃう。前座ながら『なんだこれ』と思ってましたね」。10年以上前なら扇辰師ももっと若いし色気もあるだろうしなあ。
「『東京かわら版』でインタビューを受けて『披露目が終わったら何がしたいですか』と聞かれたんですけど……。お寺にこもりたいですね。お寺って時間が止まってそうじゃないですか。『ドラゴンボール』の精神と時の部屋みたいな……。……誰からも賛同を得られていませんが」とお寺の話から先日も聴いた『蒟蒻問答』。
寺男の権助がいいキャラしており、裏からニセ和尚の八五郎を操ってる感が楽しい。

今日は電車なので終演後に昼食がてら一杯。こういうのはやっぱり楽しい。
タグ:入船亭小辰
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某二ツ目勉強会 [落語]

某二ツ目勉強会
於:都内某所

某二ツ目さんのシークレット勉強会。その人のブログとか見れば情報は出てるけど、かわら版などには掲載させてない。SNSなどにもポスト禁止ということなので、とりあえず年末の集計するときの行ったという記録として。まあ私が行く二ツ目でこういうことをしそうな人ってのもすぐわかりそうだけれども。
「ネタおろしをしたりしなかったり、蔵出しをしたりしなかったり、虫干しをしたりしなかったり、落語をしたりしなかったり、愚痴を言ったり言ったり」の会。
「今日はマクラで話すこともない」とTシャツの畳み方の話とか奥さんの愚痴とか。今は大変な時期だから仕方ないんだろうけれど。
いろんな裏話なども聞けるのが楽しい。
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黒門亭 第一部 3595回 [落語]

黒門亭 第二一部 3595回
於:落語協会2F

入船亭辰ぢろ『子ほめ』
林家けい木『壺算』
入船亭扇辰『一眼国』
おしどり 夫婦漫才
入船亭扇好『へっつい幽霊』

映画『トップガン マーヴェリック』がすごいらしい。ひとりで複数回観る人も珍しくないらしく、中には80回以上観た人もいるんだとか。複数回観ることを「追いトップガン」というんだとネットニュースで見た。ホントかよ。
まあとはいえそんなに話題になってるなら観てみっか、どうせなら4DXがいいよなーと思ってみたら全部満席。発売時間にアクセスしたら買えんのか? と思ってトライするも、朝8時の回すら回線混み合って瞬殺。一回繋がりかかるも席を選んでいるうちに他の誰かに買われたらしく、あっという間に埋まってしまった。
まーじゃあしょうがねっかーとせめてIMAXの席を今日の夕方の回で予約する。
恥ずかしながら昔の『トップガン』も見たことがないので昨日アマプラで視聴して予習。なるほど話自体は割とシンプルで「いかにもハリウッドです!」って感じなのね。これがどう展開するのだろう。

とその前に落語も聴かねば。
先日に続いて黒門亭。お目当ては扇辰師。

辰ぢろさん、ご隠居から「相手がいくつでも若く言うのが奥の手だ」といわれて納得している。そうするとサゲの子どもの歳を聞くという話の流れには不自然さがなくなるが、逆に番頭さんに40と言われた時のとっさの行動に不自然さが出てしまうような。まあこの噺は不自然さのオンパレードだから今さらかもしれないが。

けい木さん、最近引っ越しをしたそうで、引越し祝いの席で始さんがコックリさんを始めたそうだ。趣味コックリさんて。コックリさんという単語も久しぶりに聞いた。周りは慣れた様子で「またか」という感じで最初だけ付き合っていたそうだが、最後は皆抜けてしまったらしい。そんな中ひとりで始さんは続けていたそうで、そのうち霊に怒られたのか「志ん輔師匠に謝るのと同じテンションで謝ってた」そうで。そのうち「すみませんコックリさん、けい木の方に行ってください」といわれると……という結構ガチ寄りのホラーに。しかしオカルトは俺も好きだけど、コックリさんはなー。
たっぷりとマクラを話して唐突に噺に入る。
瀬戸物屋の番頭はだいぶ物腰が柔らかい。強引な値引き交渉に困惑する感じがなんか馬石師っぽい。あのどことなくへにょっとした感じ。メリハリが効いて面白い。

扇辰師、謝楽祭の実行委員があるので協会の2階はよくくるが、黒門亭は久しぶりだという。
昨年は黒門亭自体がなかったので約2年ぶりだとか。2年前は客が限定10人でしかも当日キャンセルが出て8人しか客がいなかったという。「生々しい話ですけどね、その日のギャラ、千円。まあそれは仕方ありませんな、だって木戸戦千円でしょ? 売上が8千円で前座とお囃子さんは固定額ですから。で、そこから余った額をみんなで分けるんです。……前座より少ないんだよ。もっと生々しい話をすると、私は家からここまでくるのに往復716円かかる。そうなると儲けが……。そんなわけでね、今日は気合い入ってますよ。15〜16人くらいいますから」。ワリって大変なんだなあ。
両国の見世物小屋風景から始まるが、特に「べな」を広める江戸っ子たちの軽薄な様が楽しい。

おしどり、黒門亭で見ると近い近い。大音量で結構な迫力。
得意のハリガネも客が少ないとリクエストも出にくい。久しぶりにテルミンの実演を見た。

扇好師を聴くのは初めて。
けい木さんも言っていたが、扇橋一門会のような様相に。
やはり扇橋一門、シュッとして実に端正な高座。
無駄がなく淡々としていながらも、サクッとした口跡で聴いていて心地いい。特に江戸っ子の熊さんの気風の良さによく合っている。

さてそんじゃトップガン観てきます。
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人形町噺し問屋 その94 [落語]

人形町噺し問屋 その94
於:人形町 日本橋社会教育会館

三遊亭兼好 ご挨拶
三遊亭けろよん『転失気』
三遊亭兼好『青菜』
坂田美子 琵琶
三遊亭兼好『生きている小平次』

仕事が暇なようでいろいろ余裕がないというなんかヤな状態。なんとなく抜けにくい感じではあるがぬるりと抜け出し人形町に。

まずはご挨拶。
この猛暑の中、ついにここまで自宅でクーラーを使わずにきたという。えええ。「でもね、やっぱり暑さと戦ってるんでしょうね、すごく体が疲れてるんです。なのでこういう冷房が効いているところにくるとフッと眠くなる。それがちょうど会場に入って高座に上がるくらいの時間。だから最近は半分寝ながら落語やってる。……そうすると落語間違えないの。気を張って頑張るから間違える」だそうで。
「えーと一応聞いておきますけど今日は統一教会の方いらっしゃいますか」ってもしいたらどうすんだろ。
「しかしあれだけ関わってる人がいて、誰も辞めませんね。ひとりくらいいてもよさそうなもんですが。でもね、最近楽屋でも話すんですが『民主主義はダメだ』という話になってるんです。というのも、人の大部分はバカなんです。そうでしょ!? クラスでもそうだったでしょ。100人いたら頭がいいのは10人。良くも悪くもないのが50人。バカが40人くらいじゃないですか。そうすると頭がいい人よりバカの方が人数で勝つんですよ。だから民主主義というのはバカの代表が選ばれる可能性があるんです」。……ああー確かに。会場からも納得の声が上がるが、その声を上げている顔はさぞかしバカ面だっただろうもちろん俺も含めて。「選挙なんかでは一番票を集めた人と最下位の人を切って、真ん中の人を選んだ方がいいんですってね」。確かスキージャンプの芸術点なんかもそういう採点じゃなかったっけ。
「それに比べて落語界はトップがしっかりしてるからいいですね」と市馬師の話に。「特になにをするってわけじゃないのは岸田さんと一緒なんですが、人間が大きいからいるだけでいい。自然と周りに人が集まってワイワイやってる。それに相槌を打ってるくらいなんですが、たまに『しっかりやれよ』なんて言われる。そうすると我々は『ハイ!』なんて返事して。こういうのがいいんですよねえ」とずっと市馬師を賞賛し続ける。兼好師のことだから最後に黒いことを言ってオチにするのかと思ったがそんなこともなく。他団体のトップとはいえ手放しで褒め続けるというのも珍しい。「また人間が大きいんで、大きい舞台が似合う」と先日行われた国立劇場での高座にも触れる。なお兼好師は大きな舞台に馴染めず、『壺算』をやったのだが持ち時間あと3分というところでまだふたつめの瓶を買ってなかったという。珍しく。
市馬師が若いことから、「ある程度歳をとったら、多少若い人に迷惑をかけながらも自由に生きた方がいい」と自身の母親の話に。
兼好師の母上は能の先生らしく、先日上京してきた日に兼好師の能の発表会があったそうでそこで失敗をして落ち込んだという。それを見ていた母上に、優しくフォローされるか逆に厳しく指導されるのかーーと思っていたら指をさされて笑われたそうだ。ひどい。その他にもしのぶ亭にいってピンポンダッシュをした話や王楽師に暴言を吐いた話など自由すぎるエピソードを。

けろよんさん、今日は転失気を借りて歩く場面をカットして珍念が和尚に報告するだけという短縮版。そろそろ『雑俳』『転失気』以外の噺も聴きたいところ。

兼好師の一席め、浦安の夢の国でパレードが中止になる理由として、雨や強風のほか、暑すぎてもダメなんだという。「雨で『雨キャン』、風で『風キャン』というそうなので、暑さは『暑キャン』というのかと思ったら『熱(ねつ)キャン』ていうんですって。あそこは夢の国ですから、もしミ○キーが暑さで倒れてもその場で顔をとったりしない。グ○フィーの肩を借りて表面上はにこやかに裏へ連れて行かれるんだそうです。昔は街に来たヒーローショーでは、裏を覗いたらマスクを取ってタバコ吸ってたりしてたんですがね。暑いときはサボればいいんですよ」と「夏の名残に」と『青菜』へ。そろそろシーズンも終わりかな。
相変わらず裸に浴衣がけで暑がり、近所の子どもから「相撲のおばちゃん」と呼ばれる植木屋のかみさんがいい味を出している。

ゲストは琵琶奏者で兼好追っかけ仲間でもある坂田さん。「私はいつもはそちら側にいるのですが、『どうせくるんなら出てよ』と師匠に言われたので……」と3回めの出演。岡大介さんと並んで最多のようだ。
今日は弾き語りよりも琵琶の仕組みなどの解説多め。普段あまり馴染みのある楽器でもないので興味深い。体験ワークショップを月イチでやっていて、一回行ってみたいとは思っているのだが。

兼好師の二席め、坂田さんの『平家物語』の雰囲気を残したまま、客席や高座の照明を落とし、怪談噺の『生きている小平次』に。恥ずかしながらこれは演目もストーリーもまったく知らなかった。講談では掛かることもあるようだが、落語では調べてみても彦六の正蔵師くらいしか出てこない。これは久しぶりにネタおろし?
奥州の沼で船釣りをしている場面から始まるのだが、いつもとは違うゆっくりとした語り口で、モノトーンの情景が浮かんでくる。
沼という舞台もあってか、陰鬱な雰囲気が漂い空気が重苦しい。
最後は主人公の太九郎と女房のおちかが、殺した小平次の亡霊から逃げるシーンなのだが、そのふたりを追いかける人物がいる、という描写で終わる。それは小平次なのだろうが、そうとは明言せず淡々と描写するだけで、それがかえってぞわっとする。
いやーこれはちょっと激レア回じゃない!? 噺も珍しけりゃ兼好師がこういう噺を掛けるというのも珍しい(『藁人形』とかもあるけど)。そして季節の噺でもあるし、これ次回聴けるのは数年後とかになるような気がするなー。
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第九十七回 よこはま落語会〜未来の大看板を応援する会〜 柳家喬太郎・三遊亭兼好・桂宮治三人会 〜初幕〜 [落語]

第九十七回 よこはま落語会〜未来の大看板を応援する会〜 柳家喬太郎・三遊亭兼好・桂宮治三人会 〜初幕〜
於:桜木町 神奈川県立音楽堂

桂宮治『たらちね』
三遊亭兼好『磯のあわび』
柳家喬太郎『擬宝珠』
柳家喬太郎『諜報員メアリー』
桂宮治『ちりとてちん』
三遊亭兼好『陸奥間違い』

いつもの会場やにぎわい座ではなく、神奈川県立音楽堂。私は初めて行く。
音楽堂だからかクラシックとかの音響はいいのだろうが、話芸には向いてない。声が反響して聞き取りにくいのなんの。うーん。

宮治師、「まずは前座で」とマクラも振らず前座になりきって噺に入る。
んー噺の出来も前座風にしているのか、間も何もなくずらずらずらーっと並べ立てているような感じ。んー、どうした?
名前を言うあたりからは普通のペースに戻っていたようだったが。

兼好師の一席め、この会場は2回めだという。
昨年に学校公演できたことがあるらしく、その生徒が「もう見ただけでチャラいの。我々いつもいうんですが、笑いの量と偏差値は比例するんです。まー落語はみんなダメでしたね。そういう子たちは太神楽とか手品だと『スッゲー』って食いつくんですけど、その日はそれもウケない。私トリだったんですけど、そんな空気の中『死神』やってやりました。そしたらグッとこっちの話しているとさことを聴いてくるような雰囲気になった。……どうです」とドヤ顔で腕を叩き、客席は拍手が起きる。「……ま、客席からアニメ声で『死神に見えない』って言われてそれがその日最大の笑いになってましたが……」。学校寄席で兼好師が聴けるなんてすごくお得なのに。
若者が自分の趣味を見つけていくときに昔は吉原へ行くことを考えるヤツが出てくると『磯のあわび』に入る。
「吉原行こうと思うんだけどどう思う? 長屋のおかみさんたちは『与太さんは騙されるから行かない方がいいよ』っていうんだけど」と冒頭から飛ばす与太郎がたまらない。これが全編続くんだから消費カロリーが凄そう。

喬太郎師の一席め、先日もそうだったが、今日も見台を出して。今日はかなり下手側の席だったので横から丸見え。
主催者もそんな状況を見て「タクシーでもいいですよ」といってくれたらしい。「でもどこから? さすがに自宅のある池袋からじゃないだろうし、かといって最寄りの桜木町からはタクシーに乗るほどの距離じゃないし……。横浜からならとも思ったんですが、メールをよく読むと桜木町からととれる文章があったんで桜木町から乗って参りました」だそうで。
そのタクシーの中で運転手に「今日は何かあるんですか」と聞かれ、「落語があるみたいですよ」と「あくまで落語にはあまり興味がないんだけど知り合いからチケットを貰ったんで仕方なくきた風」を装って答えたそうな。運転手は出演者の誰も知らなかったそうで、「でも最近『笑点』に出だした人もいますよ」と言ってみたら、「あー、きゅうじさんでしたっけ。あの人は三遊亭だっけ?」いわれ「いやー……桂じゃなかったですかねー……」「あの人たちって食えてるんですかね?」「いやそこそこ食えてるみたいですよ……」と噛み合わない会話が続いたらしい。でもこれわかるなー整体とか行って「休みの日はなにしてるんですか」とか聞かれたから「落語聴きに行ってる」と答えたのに、向こうは落語の知識がまったくないのですっごい半端で間違ったことをいわれても訂正するのもめんどくさいし……。
ここらへんで「持ち時間の半分が過ぎました」といいながら「最近よく『シンウルトラマン』どうでした? って聞かれるんですけどね。これは私の意見なんで……」とあれあんまり起きに召さなかった? という雰囲気を出しておきながら「チョーーーーよかった!」とご満悦。「今度はシン仮面ライダーも作られるようですから楽しみですなあ」と趣味の話に移り『擬宝珠』に。高座で聴くのは2回め。
やっぱり若旦那の苦悩を聞かされて戸惑う熊さんのリアクションがおかしい。
大旦那とお内儀さんに報告して、同じ趣味だった両親が「駒形橋の擬宝珠は泥鰌味、三条大橋の擬宝珠は八ツ橋味」と聞かされたときの驚きも楽しい。

仲入りを挟んで再び喬太郎師。見台をかたすのが面倒なのかとも思ったが、この後に寄席2件掛け持ちがあるそうで。
公式プロフィールには横浜出身としている喬太郎師だが、生まれは東京で、小学3年くらいまでは東京にいたそうなのであまり地元という感じでもないそうだ。昔の市長が「江戸っ子は三代続かないとなれないが浜っ子は三日でなれる」といったそうで、その軽薄さがらしくていいという。
今はそれほどでもないが、昔は黄金町は怖かったそうで、映画館に行くときには脇目もふらずに通ったとか。とはいえ今住んでいる池袋も以前は似たようなもので、街のそこここにいわゆる「立ちんぼ」と呼ばれる女性がいたという。「それにもルールがあってね。この通りにはコロンビア、この通りは中国、この通りは韓国……と国によって分かれてた。……というのをタクシーの運転手に教わりました。……私は私はタクシーの運転手にいろいろ教わってる」。あー、でも私も20~25年前に池袋北口にある会社に勤めていたのだが、会社の周囲がそういう人たちが立ってるエリアだったので残業して会社の外に出るとよく声を掛けられてたなあ。最初の頃はドギマギしていたものだが。「今じゃ全然いなくなりましたがね」と喬太郎師もいう通り、たまに池袋演芸場がハネた後に当時の会社の周辺にもいってみるのだが、そういう人がぜんぜんいない。なんか池袋の猥雑さが薄まってるようでそれもそれでちょっと寂しい気もするが。
二席めはちょっと短めの『諜報員メアリー』。演目だけは見たことがあるが、実際に聴くのは初めて。……いやー、金魚売りのようにエビ売りがおり、それが日本転覆を謀っているというとんでもないストーリー。そんでもってオチが超くだらない。そもそもそのオチをいうだけのためにストーリーが作られたそうだが、そのくだらなさが最高に面白い。あのスピード感は素晴らしい。

宮治師の二席め、「どうも、三遊亭きゅうじです」としっかり喬太郎師の振りを拾う。
「さっき兼好師匠も話してましたけど、偏差値と笑いの量って正比例するんです。でも笑いって数値化するのは難しい。会場や地域の文化、出演者などもある。でもこの間、5日間同じ場所を貸し切って、同じ出演者で10校の生徒を呼ぶっていう仕事があったんです。こんな貴重なサンプルが採取できることないでしょ!? で前座さんに楽屋にその学校の一覧を貼り出してもらって、偏差値も書いてもらった。初日の学校の偏差値を見たら、一緒に行った色物の先生が『平熱じゃん』って言ったんですよ……あ、通じた! 今笑った人はセンスがある。こういうのがホントに通じないんですよ」。でもたしかに一瞬考える間が必要ですね。
宮治師の『ちりとてちん』は2回め。なにげにこないだ聴いたのが初めてだったのか。やっぱりこの噺はわざとらしくこってりやる方が面白い。宮治師に合っている噺だと思う。

兼好師の二席め、「今や落語会の重鎮があんな(『諜報員メアリー』のサゲ)をやるなんてねえ。……いろいろ飽きたんでしょうね」と黒い笑みを見せる。
これは完全に私個人のあるあるなのだが、「車で兼好師の音源を聴くと近いうちにそのネタが掛かる」。このネタも先日車で聴いたばかり。まあ「最近この噺聴いてないな」と思って選んでるから巡り合う確率が高くなるのかもしれないが。
権助に振り回される穴山小左衛門の狼狽ぶりがおかしい。松平陸奥守からのお土産の重箱を見て「ヒェェェェ」と息を呑むところや「松平伊豆守さまが言うには、」「待てええええぇぇぇい!」とツッコミを入れるところは特に。

きっちり3時間、濃密な会でした。
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特撰落語会 三遊亭兼好 独演会 [落語]

特撰落語会 三遊亭兼好 独演会
於:王子 北とぴあつつじホール

三遊亭けろよん『転失気』
三遊亭兼太郎『佐野山』
三遊亭兼好『大山詣り』
三遊亭兼好『応挙の幽霊』

朝、先日も行ったパンビュッフェに再び行ってみる。今日は祝日だから混んでるかと思ったら普通にパンを買う人で並んでいた。やっぱ人気なんだな。いろいろなパンが小分けに切られているのでたくさんの種類が食べられるのが嬉しい。で調子に乗って食っていたらやっぱパンてあまり消化が良くないのか、夕方現在になっても全然ハラが減らない。コスパが良いといえばいいのだが。

けろよんさん、コロナから無事復帰したようで。

兼太郎さん、「そうそう簡単には師匠は出てきませんよ」とニヤリ。たいていこういう会のときは師匠前座師匠師匠という構成が多いのでお弟子さんがふたり出てくるというのは久しぶりな気がする。
『佐野山』はほぼ遊馬師か一蔵さんばかりで、他の人のをあまり聴いたことがない。兼太郎さんのは「佐野山が谷風が浮気をしているすきにおかみさんを寝取った」ということで佐野山との取り組みが組まれたのでは、という噂が流れる。もちろん「じゃねえかなと思って」という根も葉もない与太話なのだが、その際に右手の小指でおかみさん、左手の親指で佐野山がいちゃつくのがおかしい。

兼好師の一席め、「これだけ暑いと涼しいところで水ようかんを食べながら炎天下で球児たちが苦しんでいるところを見るのが最近の楽しみ」と悪いことをいう。そういうこというから萬橘師に「性格が曲がってる」とかいわれちゃうのでは。「しかしこれだけ暑いんだからなにも今やらなくてもいいんじゃないですかねえ」というのは同意だけど。まあ一部の強豪校を除けば生徒たちの受験やら夏休みやらで他の日程では難しいんだろうけど。元球児でもない私がいうのもアレだけど、甲子園である必要あるのかねえ。とはいえ、東京ドームとか京セラドームで、というのもなんかイメージわかないけど。
「我々噺家はあまり曜日やら祝日やらの意識がないので、今日が世間ではお休みだっていうのを知らなかった。なので、『今日は平日の昼間の王子だからお年寄りばかりだろうな』と思っていたんです。そしたら弟子たちがやっているのをモニターで見ていたら『あれ、思ったより客席が若い!?』と思ってそれで今日が祝日だと気づいた。……でも高座出てみたらそれほどでもないの。モニターってすごいね」。
今日は山の日ということで山つながりで『大山参り』。「大山は噺家にはいいんですよ。実際に登ってみて『大山詣り』の感じをつかんだり、あそこは猪鍋が出てきますから『二番煎じ』にもなるし、かわらけ投げがあるので『愛宕山』にもなる」。学生時代大山の麓に住んでたけどなにひとつやってないんだよなあ。
坊主にされた熊を発見した若い女中が「きゃあっ」と悲鳴を上げ、それを聞きとがめた女将が「まったくなにを騒いでるんだい」といいながら「ゔおぉっ」と野太い声で驚くのも毎回笑える。

二席めも夏らしく幽霊の噺を。円山応挙は自分が見たものしか描けない画家で、幽霊画を描くときに病床にあったおかみさんが「それなら私が死んだら幽霊になって出てきます」といって実際に出てきたというエピソードを話し、応挙がこれだけ有名なのに真筆といわれるものが少ないのは描かれた幽霊が掛け軸から出ていってしまうからだと仕込みを入れる。
道具屋がいい商いがあったと仕事を切り上げてひとりで酒を呑むシーンはいつも酒が美味そうに見える。
呑みながら「自分にかみさんがいたら」と妄想を繰り広げ、ふと「うわあすっごい寂しい」と我に返るのがおかしい。
掛け軸から抜け出た幽霊が、「こないだお岩さんとお菊さんと女子会をしてきた。お岩さんは恨み言ばかりをいう酒で、お菊さんは陽気な酒だけど酔って皿を割る酒乱」という小ネタもクスッとなる。
とはいえこの噺の眼目はやっぱり都々逸。たっぷりと唄っていい喉を聴かせてくれる。噺家で唄が上手いというのはマストではないけれどやっぱり大きな武器だよなあ。市馬師のようにそれを売りにしているわけではないけれど、いずれ兼好師の喉が聴きたいと名物のようになっていくかもしれない。
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SKIPシティ落語会&ウィークエンドシアター 柳家喬太郎 『浜の朝日の嘘つきどもと』 [落語]

SKIPシティ落語会&ウィークエンドシアター 柳家喬太郎 『浜の朝日の嘘つきどもと』
於:川口 SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ

柳家やなぎ『お菊の皿』
柳家喬太郎『野晒し』

喬太郎師が出演した映画『浜の朝日の嘘つきどもと』とセットの落語会。コロナが流行ってから初めて大きなスクリーンで映画見るかも。
主演の高畑充希は美人だし大久保佳代子はキャラ通りなのにすごくいい演技してるしもちろん我らがキョンキョンもさすが。
……けど流石にちょっとご都合主義が過ぎませんかね……。まあ実在の映画館をモデルにしたストーリーだからってのもあるし、南相馬の支援も兼ねているのかもしれないがそれにしたって。
閉館を決めた映画館朝日座支配人の喬太郎師のところに高畑充希が乗り込んでくるというオープニングなのだが、そもそも誰かもわからないような人がいきなり乗り込んで、周りの人の困惑もお構いなしに勝手に引っ掻き回して決まっている話をひっくり返そうとする。……ラノベとか厨二くさい漫画によくあるパターンを臆面もなく映画でやりますかね……。しかもなんで周りもそれに従ってんの?
そんでストーリーが進んでなぜ主人公が朝日座にきたのかがわかっても、全然「なるほどー!」とはならない。動機うっすいなあ……。いや、別に面白くないわけじゃないんだよ? 2時間近く飽きさせずに楽しませてもらいました。けどなんちゅうか、日常の延長線を描いているような映画で、「いやそうはならんだろ」という違和感があちこちに散見されてなんかそれが引っかかった。

映画が終わり15分程の休憩のあとにやなぎさんが登場。
「映画を見て、その後に映画に出ていた師匠が落語をやる、となると『あれこの人も映画に出てたのかな』と思われるかもしれませんが出てません」。
途中までは普通の『お菊の皿』だったが、途中から地下アイドルのような感じになったうえ、調子を崩して皿が数えられなくなったのだが、なぜか客と一緒に皿の枚数を数えるというものに。最近ちょっと聴き飽きていたから新鮮だった。

喬太郎師、最近膝を悪くしたそうで今日は釈台を前に。「決して笑点の視界を狙ってるわけじゃございません」。
マクラはもちろん映画の撮影秘話などを。
「この映画のなにが贅沢かって大和田伸也さんと六平直政さんですよ。商店街の会長や店主役でちょこっとしか出てこないの。最終シーンを撮ってるときに『こんな少しなの久しぶりだよなあ』なんて話していて、こちらは恐縮しきりですよ」。
「あの映画にね、同期の扇辰さんと後輩の左龍さんも出てるんですよ」。ええっ!? 扇辰師が出てたら気づくと思うんだけど。「私の祖父さんが映画館を建てたっていう設定なんですが、その映画館のロビーに祖父さんと親父の写真が飾ってある。その祖父さんが扇辰さんで、親父が左龍さんなの。遺影。で、公開後によーーーーーく探してみたんですが、その遺影が映ってるところ一個もないの」。じゃあ気づけるはずもない。「でも慣れない撮影中に、写真でも仲間がいるっていうのは心強かったですよ」だそうで。
映画の中で次回上映作品の紹介チラシがちらっと映るシーンがあったのだが、そのチラシのイラストを喬太郎師が描いたんだそうで。「監督が描いてみてっていうからいいっすよってさらさらっと描いたら『あらいいじゃない、これ使おう』って持ってっちゃった。それは下書きなのに! いかに金をかけないで作った映画かと……」。あ、やっぱり? それっぽいなと思ったんだ。
「本来落語は前の人がやったのと似たような噺は『つく』といってやらないというのが不文律なんですが。今日はその珍しいものをお見せします」といいながら幽霊ネタの『野晒し』に。なんでついてる『野晒し』を演るのかという事情も言っていたのだが、なんだったっけかなあ。
昔は今の田原町のあたりを新町といい、馬の革で太鼓を作っていたと丁寧に仕込みを入れてから噺に入る。
逃げた周りの釣り人からせしめた焼き豆腐と油揚げの弁当を食べているシーンでは丁寧につゆを舐めあげ、「こういうところはやっぱり俺も柳家だな」とポツリ。
改変などもまるでなく、最初から最後までびしっとした正統派の古典。聴き応えのある一席。
……ではあるんだけど、一席かあ……。映画に落語ついて、落語は一時間あるから前座含めても二席かな、そりゃお得だわーと思って行ったんだけど、一席かあ……。そっかあー……。いや、まあ、ねえ。そりゃ俺が勝手に思ってただけだけどさ。やっぱさすがにこの値段じゃキョンキョンは二席はないかあ。
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新宿文化センター落語会 一蔵と市弥と小辰 [落語]

新宿文化センター落語会 一蔵と市弥と小辰
於:東新宿 新宿文化センター小ホール

春風亭一蔵 柳亭市弥 入船亭小辰 オープニングトーク
柳亭市弥『甲府い』
入船亭小辰『あくび指南』
春風亭一蔵『らくだ』

開演前に携帯の電源についてなどのいつもの影アナが入る。……ん、これ一蔵さんの声だな、と気づいたら噛むわ吹くわとボロボロに。その後もマスク着用の徹底に続いて「つまらなくても笑うということの徹底をお願いします」とやりたい放題。
小辰さん、市弥さんに続き、一蔵さんにもようやく後援会ができたようでチラシが入っていた。

オープニングトークでもその件について触れる。「私、定型文が読めないんですよ。本当は小辰さんの美声でやろうって言ってたんですけど。着替えるのが遅いんで仕方なく私が……」「アニさん『俺にやらせて』っていってたじゃん」とわちゃわちゃ絡む。
「今日はね、トーク長いです。というのもホントは辰ぢろさんに前座頼んでたんですけど、流行病ということでね……」。最近感染してももうそんなに話題にすらならないもんなあ。
「その分噺を長く演るっていう考えはないんですか!?」という小辰さんの言に大きな拍手が起きる。そらそうだ。なんなら誰かが二席やっても……。
トークの話題はやはり披露目準備が大変だということ。
三人集としての御礼状などの宛名書きをいつも小辰さんと市弥さんで書いているらしいのだが、市弥さんが「もうボールペンでいいっすか」といい出したらしく。「お前噺家なのにボールペンはないだろう」とたしなめたそうだが、「アニさんは全然書かないじゃないですか!」と反撃を食らう。小辰さんが「今日なんかアニさんの個人名で出さなきゃならない御礼状の宛名書きを頼まれてさすがにそれは怒った。『いい加減にしなさい』って」。一蔵さんは「いや俺は筆に難があるというか……」といいながらも「俺の字は一部の人には『たまらない』といわせる字ですから」という。市弥さんと小辰さんは「えー……」と納得の行かない様子。「じゃあ今日の演目張り出しをそれぞれで書こう。それでお客さんに投票してもらおう」と急遽イベントが盛り上がる。「あっ、でもお前難しい字の噺を演るなよ。『藁人形』とか書けないからな」「『紫檀楼古木』とか」「なんだそれ噺自体知らねえ」などキャッキャキャッキャと盛り上がる。というかやっぱり小辰さん師匠のこと好きすぎじゃない?
「まあえーとかつらみやおさむさん、でしたっけ? よく知らないんですけど。あとパクザンでしたっけ? 最近は押されっぱなしですから我々の真打昇進から『打倒成金』で盛り上げていきたいと思います!」と決意表明。
幟や後幕もできてきたそうだが、小辰さんがまだできていないそうで。後幕の染め方にも注意が必要だそうで、「仕上がるまで気ぃ抜いちゃダメ……なんで俺一足先に昇進してるような言い草になってんだろ」と一蔵さん。
「それにしても我々は本当に仲がいい。これまでさんざん真打昇進の準備で上の人たちがつかみ合いの喧嘩にまで発展しているのを目の当たりにしてきましたが、我々はノー喧嘩ですから」だそうだ。ただ一蔵さんによれば「この三人の中で俺が一番上ってのがポイント。それで何をやっても許される。で、小辰が一番下ってのも外せない。この順番だからいい。だって小辰お前が一番上だったら俺のこと受け入れてないだろ!?」「そんなことないですよ。……でも『お前筆で字が書けるようになれよ』とは言うでしょうね」とやっぱり宛名書きに対する鬱憤は相当溜まっているようだ。

一番手は市弥さん。市馬師から着物をもらったそうで、しかも仕立て直しをしてくれた状態だったらしい。さすが市馬師優しい。着てみたところサイズもぴったりだったそうで、早速次の日にお礼の電話をしたそうだ。そこで「サイズピッタリ」といったところ市馬師に「お前噺家なら『サイズ』とか言うな」とかなり怒られたそうだ。ただその後にオチがあって……とここでは書かないけれども。
なんか最近『甲府い』をやたら聴いているような気がする。仲入りのときに後ろのオジさんも「最近よく聴くんだよなあ」といっていたので流行りがあるのかもしれない。
親方の江戸っ子っぷりが強めで市弥さんの口跡と合っているように思う。……けどちょっとやりすぎというかあざとさもちょこっと感じるかな。
善公に意向を聞くときに、おかみさんが口籠もる逡巡がリアル。

小辰さん、最近聞き間違えなどが多いというような話題から、うどんを出す居酒屋で飲んでいたときに、隣のチャラい集団が4人全員カシスウーロンを頼んだという。受けたのはバイト初めてという感じの外国人女性だったのだが、しばらくすると素うどんが4つ運ばれてきたという。なるほどありえない話じゃない。面白いなと思って小辰さんもカシスウーロンを頼んだところ……という話をマクラに。
女の師匠を思っていたのに出てきた師匠が男でキョトンとしているその佇まいがおかしい。
それで「看板かよ……」と嘆き、適当にあしらっていたのが一度実演を見た後の手のひら返しがまた面白い。心を入れ替えて稽古に励もうとするが、「すみませんさっきはまるで聞いてなかったもんで」と何も覚えていないのがまたおかしい。

一蔵さん、「さっき小辰さんが『一蔵アニさんが”甲府”ってどうやって書くんだっけっていってた』といってましたけど、そんなわけない。私元トラックドライバーですよ。中央道で『甲府』って3つ出口があるんだからどれだけ見てると思ってんだ。……でも『欠伸』はちょっと自信がない」。
小三治師の芝居の池袋演芸場で弟子入り志願をした話をマクラにひらがなの演目『らくだ』に入る。漢字で書けば「駱駝」だけど、さすがに漢字表記は見たことないなあ。
最近はいろいろな演目を抑えめに演じているように感じていたが、久しぶりにフルパワーの姿を見たような気がする。兄貴分の恫喝もそうだが、屑屋が酔っ払ってからの酒乱ぶりがものすごい。最近抑えめにしている反動か、ちょっとやりすぎなような気も……。初めて聴く人とか引いちゃうんじゃなかろうか。

終演後、演目が3枚貼り出されていた。
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②が一番上手いと思って投票したところ、市弥さんだったようだ。字上手いね。①と③もどっちも見覚えがあるのだが、どっちが一蔵さんか見分けがつかない。
一蔵さんのTwitterによれば①が一蔵さんで③が小辰さんらしい。あー。今思えば「小辰」の字はよく見ますわ。
メールを見たらもう後援会に振り込んだお礼が来ていた。時間的に市弥さんの高座のときじゃん。早っ。
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