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第百十一回 一蔵ひとりの会 スペシャル [落語]

第百十一回 一蔵ひとりの会 スペシャル
於:池袋演芸場

三遊亭二之吉『転失気』
春風亭一蔵『鈴ヶ森』
春風亭一蔵『野晒し』
春風亭一蔵『佃祭』

夕方になったらいきなり涼しい、というか肌寒いくらいじゃね!? なにこの気温差。……あー夏が終わってしまうー。涼しいのは助かるけど秋の気配をにじみ出さないでくれー。ああタイ行きてーなー。

一席め、先代金馬の金翁師匠が亡くなって楽屋は大変な雰囲気だという。金翁師と先代柳朝師は繋がりが深く、毎年正月には一朝師の家に挨拶にきていたそうで、その時のエピソードを。また一蔵さんが前座時代に釈台を使い始めていたのだが、高座に上がる直前までなんとか正座ができないかトライしていたなど、いろいろ興味深い話をしていた。
なかでも面白かったのが、名人クラスだと高座に上がるときに得意演目を客が声掛けすることがあるそうで、夏の会で「芝浜!」と声が上がったそうだ。「おい夏だぞと。金翁師匠も『もうしばらくやっていませんなあ』なんていってたんですけど、『お前さん起きておくれよ』って始めたんですよ! それで完璧な一席! もう感動して生意気なんですけど『すごいですね、やっぱりいつでもできるんですね』っていったら、『先週(後輩の噺家に)稽古つけたばっかりだ』って……。やっぱりああいう方は持ってるんでしょうね」とのこと。
「本当はここで『孝行糖』とか掛ければいいんでしょうけど、持ってないんでね……」。あ、午前中に小辰さんが『孝行糖』掛けたのってそういう意味か。確かに金翁師に教わったって言ってたしな。
昨日は広島で仕事だったそうで、前乗りで新幹線で行っていたとか。「4時間ですからね。なのでいつも東京駅でハイボールの500ml缶と酎ハイ、それと焼酎の水割りを6本持っていくんです」。ええ……。「こういう話するとお客さんがすーっと引いていく」。そら飲み過ぎだって。「だいたいいつも品川に着く頃にはハイボールが空いてる」。10分足らずじゃなかったっけ。「新横浜までで酎ハイも空いてる」。品川から15分くらいだぞ……。ここから焼酎の水割りになるのだが、東京駅で購入したのでぬるくなっている。これに氷を入れる裏ワザを話すが、こりゃ一蔵さんにしかできんわ。面白かったから今後マクラで使われるんじゃないだろうか。ということで詳細は控えます。

一席めの『鈴ヶ森』はネタおろし。
追い剥ぎの口上「知って通ったんなら命はねえ、知らずに通ったなら命は助けてやる、その代わり」というところを子分に口移しで教えているときに「知って通ったんなら命は助けてやる」と言ってしまい、子分に「間違えましたよね?」と突っ込まれる。その後も何度か「知って」と「知らずに」が逆転してしまう。それがあったため、「知って通ったんならその代わり」「略すな!」という定番のくすぐりが別の意味を持つようでそれがおかしい。
「今朝覚えたんですよ。8回稽古したら入った」って誰に教わったのかわからないけど、上げの稽古とかは? 小辰さんとネタ交換でもしたのかな。

二席め、広島でのボートレースでの仕事でレースクイーンと絡んだ話など。また広島球場で一之輔師と野球観戦をしたそうで、そのときの一之輔師の恥ずかしいエピソードも。「あんな真っ赤になった一之輔アニさん初めてみた」っていうから相当だったんだろうなあ。趣味の話から『野晒し』に。なんか聴き覚えあるなーと思っていたら、前々回のひとりの会でやってんじゃん。さすがに近すぎでは……。通常回とスペシャルだからいいのかしら。
一蔵さんの緒方清十郎は浪人でありながらも結構伝法なところや見栄っ張りなところがあって人間臭くて面白い。これで自称聖人て。
一方の八五郎がまたかなりのチンピラぶり。これもらしいっちゃらしいが。
わーわーと大暴れしているところを周りのギャラリーが囃し立てて煽るのが新しい。鼻釣ったところでサゲ。

三席めの『佃祭』は4年振りくらいか。まあこの会にくるくらいだからだいたいの人はストーリーを知ってるんだろうけど、ちょっと不親切かなあと。噺を知っているからちょいちょい説明がなかったり場面が抜けても流れがわかるけど、これ初めて聴いた人がストーリーわかるかな? たとえば以前に吾妻橋で身投げをしようとしていた女中を助けたというエピソードが肝なのだが、なぜ身投げをしようとしていたのかの説明がないので「え、なんで急に五両の金を出して助けるの?」と思ってしまう。なんかそんな感じで説明不足というか端折りすぎというか。
とはいえ次郎兵衛さんのおかみさん相手に惚気話をする男や、与太郎の悔みが一番真心がこもってるとか面白い場面もたくさんあり、聴き応えもある。だからこそなんか惜しいなーという気にもなるのだが。
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実力派二ツ目独演会 らくご長屋 小辰独演会 [落語]

実力派二ツ目独演会 らくご長屋 小辰独演会
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭小辰『孝行糖』『松山鏡』『蒟蒻問答』

久しぶりの中野。まあ2日前にゴッド長渕剛のライブで中野サンプラザにはきているんだけど。
雨なので電車で。コンビニに寄りたいのでブロードウェイではなく、中野通りの方から回ったら、建て替えのためか入口が封鎖されてる! あれこれどうすりゃいいんだ? しばしウロウロして駐輪場の管理人に尋ねてようやく入る。

小辰さんも「今日ちゃんと入れました? 私はいつも中野通りの方から来るんですが、今日は雨だったんでブロードウェイの方からきたんで助かった」と戸惑った様子。
「10時からの会で起きたのが8時半という……。昨日は市弥アニさんと昼の会があって、で、夜も地域寄席で一緒だったんですよ。市弥アニさんという人はギャンブルもやらない、女の人も特に、三道楽で酒だけが大好きって人で(「一蔵アニさんは全部大好き、私は全部うっすら好き」だそうな)、昼の会が終わってからずっと『呑みてーなー』っていってるんですよ。夜の会が終わって『焼肉行こうぜ』ってなって。一蔵アニさんがいれば多少歯止めが利くんですけど、私は下なんで。『行こうぜ』って言われれば『ハイ』っていうしかないんですよ。で、2軒めから覚えてない。途中一回アニさんが寝てるのを見て『寝てるな』って思ったのは覚えてます。でも家には帰れたんですね。それで家のちゃぶ台に赤のマジックで書いたんです。倅にも読めるようにひらがなで『とうちゃんは8じはんにでる』って。朝、倅が降ってきました。カミさんが投げたんだと思いますけど……。『父ちゃん8時半だよ』って。出る時間に起こすな! 慌てて支度して。いつもなら多少事前に演目を考えてるんだけど何の準備もしてないから電車の中で何を演るか小辰会議が始まるんです。じゃあ今日はあのネタとこのネタと、あとは流れでもう一席で、ヨシ! と考えがまとまった。ギリギリで楽屋に着いてネタ帳を見て愕然としました。決めた二席を前回やってるの。『尼狐』と『百川』。前回だけなぜか自分でメモしてなくて……。真打昇進前、一番困ってます。だからね、先に言っときます。今日はヒドいよ!」。
「さらに慌ててたもんだから足袋を忘れてきて……。私はいつも足早に高座に上がるんだけど今日は特に。お気づきになりました?」。言われなきゃ気づかなかったのに。「今日は靴下が白黒のストライプなんで、裏返したら白になるかなと思ったら裏も白黒だった。そしたら(オフィス10の)お嬢がやってきて『あらいいですね、上が縞で下がストライプ』だって」。
本日の苦境をつらつらと述べたところで「さ、なにをやりましょうか」と唐突に噺の方へ。
昔はいろいろなものを売り歩いていた、と売り声の話に。鰯売りと金魚売り、さつまいも売りとお決まりのマクラの後で「えーとこの後のマクラなんだっけ」と苦戦してる様子。ホント用意できてなかったんだな。
小辰さんの『孝行糖』は初。「璃寛糖に芝翫糖」の売り口上にもやや危なっかしいところはあったものの、勢いで突破した感がなきにしもあらず。ただその勢いで押す感じも悪くない。「やぶれかぶれになれば何でもできる」というのは二席めのマクラにて。
この噺は昨日亡くなった金翁師に教わったそうで、売り声のテープを聞かせてもらったそうだ。
「飴屋もどんな格好してたんですかね」と聞いたところ、「なんだしょうがねえな」とイラストを描いてくれたそうで。「ただなぜか顔がやたら大きくて。二頭身なんですよ。『ホラわかるだろ!?』って言われて、『あ、ええ』としかいえなかった……」とのこと。

親孝行つながりか二席めは『松山鏡』に。
小辰さんでは3年ぶりくらいか。いつも思うが、「そんなわけねえよなあ」と思うストーリー。まあ落語はそんな噺ばかりだけれども。そこをさらっと違和感なく聴かせるのが噺家の腕の見せどころなのかもしれない。

三席め、「袖にお嬢がいたんで、『今日で(小辰名義では)最終回だからハグでもするか』って言ったんですよ。そしたらこれまでにないくらい冷たい目で見られました。信用っていうのは築くのは大変だけど、崩れるのは一瞬」だそうで。
「大師匠はよく女性のお客さんとハグしてたんですよ。で、師匠も一時期真似してよくハグしてましたね。お客さんを含めた打ち上げの3次会なんかだと……。でも師匠の場合、お客さんの方の目付きが変わるんですよ。もちろん師匠は冗談なんですよ。でもお客さんの方が本気になっちゃう。前座ながら『なんだこれ』と思ってましたね」。10年以上前なら扇辰師ももっと若いし色気もあるだろうしなあ。
「『東京かわら版』でインタビューを受けて『披露目が終わったら何がしたいですか』と聞かれたんですけど……。お寺にこもりたいですね。お寺って時間が止まってそうじゃないですか。『ドラゴンボール』の精神と時の部屋みたいな……。……誰からも賛同を得られていませんが」とお寺の話から先日も聴いた『蒟蒻問答』。
寺男の権助がいいキャラしており、裏からニセ和尚の八五郎を操ってる感が楽しい。

今日は電車なので終演後に昼食がてら一杯。こういうのはやっぱり楽しい。
タグ:入船亭小辰
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