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第九十七回 よこはま落語会〜未来の大看板を応援する会〜 柳家喬太郎・三遊亭兼好・桂宮治三人会 〜初幕〜 [落語]

第九十七回 よこはま落語会〜未来の大看板を応援する会〜 柳家喬太郎・三遊亭兼好・桂宮治三人会 〜初幕〜
於:桜木町 神奈川県立音楽堂

桂宮治『たらちね』
三遊亭兼好『磯のあわび』
柳家喬太郎『擬宝珠』
柳家喬太郎『諜報員メアリー』
桂宮治『ちりとてちん』
三遊亭兼好『陸奥間違い』

いつもの会場やにぎわい座ではなく、神奈川県立音楽堂。私は初めて行く。
音楽堂だからかクラシックとかの音響はいいのだろうが、話芸には向いてない。声が反響して聞き取りにくいのなんの。うーん。

宮治師、「まずは前座で」とマクラも振らず前座になりきって噺に入る。
んー噺の出来も前座風にしているのか、間も何もなくずらずらずらーっと並べ立てているような感じ。んー、どうした?
名前を言うあたりからは普通のペースに戻っていたようだったが。

兼好師の一席め、この会場は2回めだという。
昨年に学校公演できたことがあるらしく、その生徒が「もう見ただけでチャラいの。我々いつもいうんですが、笑いの量と偏差値は比例するんです。まー落語はみんなダメでしたね。そういう子たちは太神楽とか手品だと『スッゲー』って食いつくんですけど、その日はそれもウケない。私トリだったんですけど、そんな空気の中『死神』やってやりました。そしたらグッとこっちの話しているとさことを聴いてくるような雰囲気になった。……どうです」とドヤ顔で腕を叩き、客席は拍手が起きる。「……ま、客席からアニメ声で『死神に見えない』って言われてそれがその日最大の笑いになってましたが……」。学校寄席で兼好師が聴けるなんてすごくお得なのに。
若者が自分の趣味を見つけていくときに昔は吉原へ行くことを考えるヤツが出てくると『磯のあわび』に入る。
「吉原行こうと思うんだけどどう思う? 長屋のおかみさんたちは『与太さんは騙されるから行かない方がいいよ』っていうんだけど」と冒頭から飛ばす与太郎がたまらない。これが全編続くんだから消費カロリーが凄そう。

喬太郎師の一席め、先日もそうだったが、今日も見台を出して。今日はかなり下手側の席だったので横から丸見え。
主催者もそんな状況を見て「タクシーでもいいですよ」といってくれたらしい。「でもどこから? さすがに自宅のある池袋からじゃないだろうし、かといって最寄りの桜木町からはタクシーに乗るほどの距離じゃないし……。横浜からならとも思ったんですが、メールをよく読むと桜木町からととれる文章があったんで桜木町から乗って参りました」だそうで。
そのタクシーの中で運転手に「今日は何かあるんですか」と聞かれ、「落語があるみたいですよ」と「あくまで落語にはあまり興味がないんだけど知り合いからチケットを貰ったんで仕方なくきた風」を装って答えたそうな。運転手は出演者の誰も知らなかったそうで、「でも最近『笑点』に出だした人もいますよ」と言ってみたら、「あー、きゅうじさんでしたっけ。あの人は三遊亭だっけ?」いわれ「いやー……桂じゃなかったですかねー……」「あの人たちって食えてるんですかね?」「いやそこそこ食えてるみたいですよ……」と噛み合わない会話が続いたらしい。でもこれわかるなー整体とか行って「休みの日はなにしてるんですか」とか聞かれたから「落語聴きに行ってる」と答えたのに、向こうは落語の知識がまったくないのですっごい半端で間違ったことをいわれても訂正するのもめんどくさいし……。
ここらへんで「持ち時間の半分が過ぎました」といいながら「最近よく『シンウルトラマン』どうでした? って聞かれるんですけどね。これは私の意見なんで……」とあれあんまり起きに召さなかった? という雰囲気を出しておきながら「チョーーーーよかった!」とご満悦。「今度はシン仮面ライダーも作られるようですから楽しみですなあ」と趣味の話に移り『擬宝珠』に。高座で聴くのは2回め。
やっぱり若旦那の苦悩を聞かされて戸惑う熊さんのリアクションがおかしい。
大旦那とお内儀さんに報告して、同じ趣味だった両親が「駒形橋の擬宝珠は泥鰌味、三条大橋の擬宝珠は八ツ橋味」と聞かされたときの驚きも楽しい。

仲入りを挟んで再び喬太郎師。見台をかたすのが面倒なのかとも思ったが、この後に寄席2件掛け持ちがあるそうで。
公式プロフィールには横浜出身としている喬太郎師だが、生まれは東京で、小学3年くらいまでは東京にいたそうなのであまり地元という感じでもないそうだ。昔の市長が「江戸っ子は三代続かないとなれないが浜っ子は三日でなれる」といったそうで、その軽薄さがらしくていいという。
今はそれほどでもないが、昔は黄金町は怖かったそうで、映画館に行くときには脇目もふらずに通ったとか。とはいえ今住んでいる池袋も以前は似たようなもので、街のそこここにいわゆる「立ちんぼ」と呼ばれる女性がいたという。「それにもルールがあってね。この通りにはコロンビア、この通りは中国、この通りは韓国……と国によって分かれてた。……というのをタクシーの運転手に教わりました。……私は私はタクシーの運転手にいろいろ教わってる」。あー、でも私も20~25年前に池袋北口にある会社に勤めていたのだが、会社の周囲がそういう人たちが立ってるエリアだったので残業して会社の外に出るとよく声を掛けられてたなあ。最初の頃はドギマギしていたものだが。「今じゃ全然いなくなりましたがね」と喬太郎師もいう通り、たまに池袋演芸場がハネた後に当時の会社の周辺にもいってみるのだが、そういう人がぜんぜんいない。なんか池袋の猥雑さが薄まってるようでそれもそれでちょっと寂しい気もするが。
二席めはちょっと短めの『諜報員メアリー』。演目だけは見たことがあるが、実際に聴くのは初めて。……いやー、金魚売りのようにエビ売りがおり、それが日本転覆を謀っているというとんでもないストーリー。そんでもってオチが超くだらない。そもそもそのオチをいうだけのためにストーリーが作られたそうだが、そのくだらなさが最高に面白い。あのスピード感は素晴らしい。

宮治師の二席め、「どうも、三遊亭きゅうじです」としっかり喬太郎師の振りを拾う。
「さっき兼好師匠も話してましたけど、偏差値と笑いの量って正比例するんです。でも笑いって数値化するのは難しい。会場や地域の文化、出演者などもある。でもこの間、5日間同じ場所を貸し切って、同じ出演者で10校の生徒を呼ぶっていう仕事があったんです。こんな貴重なサンプルが採取できることないでしょ!? で前座さんに楽屋にその学校の一覧を貼り出してもらって、偏差値も書いてもらった。初日の学校の偏差値を見たら、一緒に行った色物の先生が『平熱じゃん』って言ったんですよ……あ、通じた! 今笑った人はセンスがある。こういうのがホントに通じないんですよ」。でもたしかに一瞬考える間が必要ですね。
宮治師の『ちりとてちん』は2回め。なにげにこないだ聴いたのが初めてだったのか。やっぱりこの噺はわざとらしくこってりやる方が面白い。宮治師に合っている噺だと思う。

兼好師の二席め、「今や落語会の重鎮があんな(『諜報員メアリー』のサゲ)をやるなんてねえ。……いろいろ飽きたんでしょうね」と黒い笑みを見せる。
これは完全に私個人のあるあるなのだが、「車で兼好師の音源を聴くと近いうちにそのネタが掛かる」。このネタも先日車で聴いたばかり。まあ「最近この噺聴いてないな」と思って選んでるから巡り合う確率が高くなるのかもしれないが。
権助に振り回される穴山小左衛門の狼狽ぶりがおかしい。松平陸奥守からのお土産の重箱を見て「ヒェェェェ」と息を呑むところや「松平伊豆守さまが言うには、」「待てええええぇぇぇい!」とツッコミを入れるところは特に。

きっちり3時間、濃密な会でした。
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