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けんこう一番!第二十七回三遊亭兼好独演会 [落語]

けんこう一番!第二十七回三遊亭兼好独演会
於:春日 文京シビックホール

三遊亭兼好『時そば』
三遊亭けろよん『元犬』
三遊亭兼好『粗忽の使者』
矢島絵里子 中村大史 アイリッシュフルート、ギター
三遊亭兼好『木乃伊取り』

正楽師匠、1回くらいリクエスト出せばよかったなあ……。つくづく後悔するも遅すぎた。寄席だと真ん中の席に座ることが多いから、どうしてもためらってしまう。あの名人芸がもう見られないのかあ……。喜多八師以来のショックかも。遅くなりましたがご冥福をお祈りいたします。

さて今月初めて1日の労働時間が10時間を切ったんじゃなかろうか。今年入ってから毎日午前様だからなあ。

兼好師の一席め、「今年初めての『けんこう一番!』、今年もよろしくお願いします。しかしもうほぼひと月が経とうとしている。早いですね。しかしこの『時が経つのが早い』というのは危険なんだそうですよ。人間というのは細胞が死んで新しく生まれて、ということを繰り返している。3か月もすればまったくの別人なんです。……話は逸れますけど、上司とか奥さんとか旦那さんとか、『あの人はこないだ言ってたことと全然違う!』というのはしょうがないのです。まったくの別人なんですから。そう思わないと。だから、『こないだの兼好は面白かったのに今日は面白くないなあ』というのは仕方ないのです! むしろ毎回面白い方が奇跡なのです!」じゃあだいぶ奇跡が続いていますなあ。
細胞の再生速度と体内時計のズレが体感時間の速さだというところから時間の話に。
「昔の時の測り方だと0時が九つ。これは中国からきてるそうですね。一番高貴な数だそうで。で、八つ、七つ、六つと減っていく。これなんで減っていくんだと思いません? これね、減ってないんですって。九つが二つで十八、三つで二十七のひと桁だけが残ってるんですって」。へえー! それは初めて知った。会場も感嘆の声が溢れる。
昔の時の数え方から『時そば』に。
おや今年初の兼好師で聴いた噺だ。てことはひと月あいてないってことで、非常に珍しい。まあほぼあいてるけど。
それにしてもふたりめの男の(うどんより太い)そばをたぐる時の「どぼぼぼぼぼ」という音の秀逸なこと。いかにもべっちゃべちゃでねちょねちょしてそうで絶対にマズいと伝わってくる。
「ツユの辛口甘口ってのはあるけど苦口って……。ダシなにで取ってんの? ……ニガウリ!?」というトンデモメニューがおかしい。

二席め、「爆弾犯の桐島という人が名乗って亡くなりましたけど……。しかし50年ですか、彼は自分を忘れて別人に成りすましていたんでしょう。落語の方にはそんなことをしなくても自分を忘れてしまうという人物が出てくるのがいいところで」と『粗忽の使者』へ入る。
相変わらずお屋敷での別当との漫才のような掛け合いが楽しい。最初犬に乗り、馬に反対向きに乗り、再び犬に乗るとかくだらないけどそれがゲラゲラ笑える。
それにしてもいつもながら場面転換の巧みさに舌を巻く。
たとえば留っこが再現していたはずの治部田治部右衛門と田中三太夫との会話が、いつの間にか本人たちの語り口調となるが、それがまた留っこと仲間の会話へとなっていく。この移り変わり具合がホントに絶妙。マンガ的というかアニメ的というか、でもやっぱり落語だからこその表現なのだろう。

ゲストのおふたり、アイリッシュフルート/フルートとギターのデュオ。
アイルランドの民謡『ダニー・ボーイ』も演奏したが、メインはオリジナル曲。
アイリッシュフルートの低くて濃密な音が美しい。
私はアイルランドのバンドThe Corresのファンで、彼らもアイリッシュフルートを使っているのでとても心地よい。

兼好師の三席め、お金の使い方の価値観が合わないとして政治家の話に。「それにしても都合が悪くなると秘書に責任を押し付けて……。でもよくわからないのは、それで罪をかぶって刑務所に行く人たち。ヤクザだと親分のかわりに服役したら出所後に出世するとかあるんでしょうけど、政治家ではそんなのないでしょ? 出所したら官房長官になれるんならいいですけど、そんなことないですもんね。というか普通に前科つくんでしょ? そしたら秘書を辞めて普通に暮らしていけばいいじゃないですか。私、師匠好楽のことを尊敬してますけど、……なんで笑うんですか。少なくとも政治家の秘書が政治家を尊敬するよりも尊敬してますよ。でも師匠が『身代わりになってくれ』といってきても……ならないなあ。『刑務所のほうが稽古に集中できますよ』とか『寂しいなら弟子もつけますよ』とかいうかもしれませんけど」。とても真っ当だと思います。まあ好楽師が犯罪するとは思えないけど。
「相撲で総理大臣杯ってありますけど、人気のある総理は授賞式に出る。小泉さんとか。……岸田さんは絶対出ないですもんね。力士からも『アイツからもらったってなあ』っていう空気がある。代理の人もすぐ帰っちゃいますもんね。とりあえず安倍派の5人に土俵に上がってもらって、照ノ富士にビンタしてもらえばよかったのに」。それはいいなあ。
「でも彼らも初当選した頃は悪いことをしようとは思ってなかったんでしょうね。もしかしたら『俺だけはやらない』とか『俺がそういう習慣をやめさせる』とか思っていたのかもしれない。それが長く続けるうちに染まっていったというか、木乃伊取りが木乃伊になるというか……」と『木乃伊取り』に。相変わらず流れるようなマクラですな。
これもまた先ほどと同様に、語り手がいつの間にが変わっていく。お調子者の大工の頭が「若旦那を連れて帰ってきます。任しておくんなさい!」と言った形のまま「……といったきり帰ってこない」と大旦那にシフトする。『粗忽の使者』のときは平行だったが、こちらは入れ子構造のようになっていて、同じような手法なんだけどちょっと違う。その違いが楽しい、というかホント芸達者だなあと思う。
吉原に乗り込んだ清三が、若旦那説得後に酒を飲み始めたところからあっという間にうじゃじゃけていく様子が楽しい。真面目で一本気だからこそ花魁かしくの手練手管に簡単に堕ちていくんだろうなあと思わせる説得力がある。

さて明日っからまた午前様ですかねえ。
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