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入船亭扇橋独演会『噺す男』vol.2 [落語]

入船亭扇橋独演会『噺す男』vol.2
於:下北沢 「劇」小劇場

入船亭扇橋『一目上がり』
入船亭扇橋 ひとり芝居『楽屋の幽霊』
入船亭扇橋『心眼』

人形町から下北沢へ。
微妙に時間が空いたのでマックでコーヒーを飲みながらブログを書く。昼は軽く蕎麦でも手繰って、この時間にもうちょっと食べるとかにすりゃあよかったなあ。

娯楽百貨主催の『噺す男』は約半年振りの2回め。娯楽百貨の下北沢の会は毎回会場が異なるんだよな……。
相変わらずオサレなんだかよくわからない人たちの間を縫って会場まで辿り着く。
扇橋師も「古典落語をやっている存在自体をシモキタという街に拒否されてるような気になる」と感じたそうで。
娯楽百貨主催のこれまでの会の変遷を挙げ、「なんでかこの会は落語をやらせてくれないんですよね……」。たしかに落語は落語なんだけど、なにかしら加えようとしている。
「今回は打ち合わせからおかしかった。最初に打ち合わせしたときにはもうプロットができてる。で、次回の打ち合わせのときにはもう台本ができてるんですよ。次の打ち合わせでは『楽屋の幽霊』ってタイトルも決まっていて、もうやることが決まってた」だそうで。
「だから今日は私もどうなるかわかりません。お客さんも『何が始まるんだ』って感じでしょ? お互いどうしたらいいかわからない感じ」とのことだがまあ確かに。
芝居ファンは何か作品からメッセージを探ろうとするが、落語にはそんなものはないと話し、「私の師匠はすごく優しくて声を荒らげたりしないんですが、一度だけ怒られたことがあります。『俺のパン食いやがって』って。そんな人たちが話すことですから……」とよく聞く扇辰師エピソードだが、今日はその詳細まで話してくれた。これは初めて聞いた。特別なパンを食べちゃって怒られたのかと思っていたが、どうやら違ったようだ。ていうか確かにそら怒られるわ。おもしろー。
たっぷりとマクラを振って『一目上がり』に。
キッチリと端正に丁寧に、という印象。

サゲを言って頭を下げ、そのままひとり芝居へ入る。「一之輔・宮治・扇橋三人会」で一番手で上がって『一目上がり』を掛け、「ウケもせず、かといってケラレもせず」という具合だったというシチュエーションらしい。
さらに前座さんからも尊敬もされず……という腐りかけている状況の中、掛け持ちで新宿末廣亭へ行くと、下座のお師匠さんが『いっさいいっさいろん』ではなく先代扇橋師の出囃子である『俄獅子』が弾かれている。「おっしょさん、これじゃなくて『いっさいいっさいろん』です! おっしょさん! ……もうこれで出ます!」といったところで暗転。誰かに取り憑かれ、寄席の寝ている客やスマホをいじってる客を罵倒しだす。これが40年以上前に末廣亭の楽屋で亡くなった噺家が、30分だけ現役の噺家の身体を乗っ取って現世に戻ってきたというもの。噺家といっても酒でしくじって噺家をやめて木戸番をしていたという人物。
先代の扇橋師に憧れており、『俄獅子』が聞こえてきたから慌ててやってきたら当代の体を乗っ取ってしまった、ということのようだ。
元が昭和の噺家なのでコンプラも一切無視、現存するベテランの噺家にも「おじさん」とか「爺さん」とか言いたい放題。前座が隠していた酒を取り出してひとりで飲みだし、色々な思い出を語っていく。
新作落語としてもできそうな噺だが、高座や舞台をフルに使っているのはやはり芝居らしい。着物であぐらをかく扇橋師なんてのもなかなか見られないし。

仲入り後の落語の二席めは『楽屋の幽霊』の中でも話題としてのぼった『心眼』。
体を乗っ取った元噺家が過去の名人の出来の素晴らしさを語っており、その後に自分でも演じるのだからかなりのプレッシャーだったのではないだろうか。
前半部の差別に苦しむ重苦しさと、後半部の人の見た目にこだわる軽薄さの差が人間の業というものなのだろうか。その落差がなんかぞわぞわする。
ところで主人公の梅喜って途中から失明したのかな。じゃなきゃ見た目にこだわったりしないもんなあ。
タグ:入船亭扇橋
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馬石・兼好・文菊三人会 [落語]

馬石・兼好・文菊三人会
於:日本橋社会教育会館ホール

オープニングトーク
隅田川わたし『垂乳根』
三遊亭兼好『淀五郎』
隅田川馬石『千両みかん』
古今亭文菊『木乃伊取り』

今日は午前中が空いているのでバイクに乗って隣の草加まで行ってスーパー銭湯で朝風呂。
開演の30分前に天やに入ってビールと天丼。……時間がかからないだろうと思って入ったのだが、全然出てこない。結局出てきたのは開演7分前。3分でビールで天丼を流し込んで出る。あーもったいな。そういうときに限ってレジでテイクアウトの注文で「キスとかぼちゃを追加で……あ、やっぱりキスだけで」とかやってる。ああもう。
ホント幕が開く直前に滑り込む。うわあ満席。

まずはオープニングトーク。
文菊師はこないだインフルエンザに罹ったそうで、馬石師が寄席の代演に上がったり、兼好師との二人会が独演会になったりと影響があったようだ。そのお礼からトークがスタートする。
恒例の客からのアンケートに回答していく形式で、文菊師がアンケート回収箱を持って司会の形になっている。
「小中学生の頃に好きだったアイドル」とか「お互いどんな休日を過ごしていて欲しいか」とか。兼好師は三原じゅん子で馬石師は中山美穂だったとか。文菊師は「アタシは女に興味なかったから」だそうで。基本的に文菊師は回答せずどんどんお題を変えていく。
最後に「注目の二ツ目」というお題では兼好師は「えー? 最近絡まないからなあ……というか最近は『すごいバカ』とか『すごくヘタ』っていう人がいない。みんなそこそこできる」とのこと。馬石師が青森さんを挙げ、兼好師と文菊師も納得の様子。「これからこの会は青森さんを推していきます」だそうです。

一番手は兼好師。この会は「普段あまりやらない噺」をリクエストされていたそうで、私も兼好師の『淀五郎』は一度しか聴いたことがない。
「芝居はチケットはそこそこしますけど、あんまり『損をした』と思うことは少ないですね。舞台の大道具だとか衣装だとか化粧だとか、いろいろ掛かっているのが目に見える。そこへいくと落語はチケット自体はそんなに高くないですけど、舞台は今日のように屏風が出ているだけで頑張っている方、衣装はほぼ自前で六割ポリエステル、素顔のおじさんがしゃべってるだけですから……」と自虐めいたマクラから噺に入る。
オープニングトークで「なんで『淀五郎』なのにトリじゃないの?」と馬石文菊両師からツッコまれつつ「軽い『淀五郎』だから」といなしていたが、確かに細かい部分を省いてサラリとした軽い感じに聴こえた。

今日の回は主催のオフィス10の8周年記念の会で、8年前の4月29日になかの芸能小劇場でやった馬石師の会が初だったそう。その時は『花見の仇討ち』だったそうで、今日は『千両みかん』。「時季の噺をやらない」とオープニングトークで兼好師に指摘を受けていた。
「アニさん『千両みかん』をしょっちゅうやってるように思うんだけど。さっきお弟子さんに聞いたら『のべつやってます』っていってたよ」と暴露される。雲助一門では『千両みかん』は取り合いなんだそうで、「師匠が一門会で『今日オレ“千両みかん”やりたいんだけど』っていうから『こないだ龍玉がやってましたよ』っていったら『(やってたって)いいよ』って。夏はやる機会がない」そうで。
磔の恐怖を抱えながら夏のみかんを探し回っている番頭さんの気の弱そうな姿が馬石師のキャラと合っていて、気の毒なんだけどその姿が楽しい。

文菊師、大旦那が若旦那のを勘当すると騒いでるときにお内儀さんが「お隣の若旦那なんて真夏にみかんが食べていっていって千両も使った」とか、番頭もミイラ取りになったときに「お隣の番頭さんは行方知れずになったんですよ」と『千両みかん』を拾うのがおかしい。そういやどっちも若旦那噺で完全にツいてるような……。
上手いからこそなんだろうけど、若旦那のキャラがなんか嫌。なんか可愛げがないというか。
あとインフルからの復活をアピールするためか若旦那も清蔵もやたらデカい声で叫ぶ。ちょっとうるさくて食傷気味かな……。
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