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扇辰日和 vol.81 [落語]

扇辰日和 vol.81「扇辰、胸を貸す!」
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰ぢろ『子ほめ』
入船亭扇辰『夢の酒』
春風亭朝之助『明烏』
入船亭扇辰『二番煎じ』

四谷から中野まで移動。電車なら中央線で10分というところだがバイクだともう少しかかる。
しっかし今日は冷えるなあ。そろそろ完全防備にしないとバイクはキツい。

そういえば小辰さんが扇橋を襲名することが発表になりましたな。いやめでたい。なんちゅーか前座の頃から見てた人が大きな名前を継ぐのを目の当たりにするのは初めてなので、感慨深い。まあそれはいいけど祝儀が予定してた額で足りるかな……。心配になってきた。

さてこの会は本来ゲストを呼ぶのだが、コロナ禍で客を入れられず、ゲストにギャラを払えないので若手を呼ぶことにしたという。
まずはお弟子さんの小辰さん、辰乃助さん、一門の遊京さんとまで呼んで弾が尽きたと思ったが、前回は家が近所の小はださんを呼んだという。家が近所過ぎて飲み屋でちょくちょく会う(というか扇辰師が呑んでいるところに小はださんがさんがやってくるという。女連れで)らしく、さんざんごちそうしているので出てくれよ、となったとか。前回は行けなかったんだよな。
で、いよいよもういないかと思っていたら「思い出した。世話してるの」と出てきたのが今日のゲストの朝之助さんだという。「彼は國學院大學の落研の後輩でね。入門するときも師匠選びからなにからいろいろ相談に乗った。……なので今日の朝之助さんがあるのは私のおかげ……」だとか。
なお國學院大の落研には不文律がふたつあって、ひとつは「プロの噺家にはならない」、もうひとつは「部内恋愛禁止」なのだそうだ。
ひとつめの禁を破ったのは扇辰師が初めてだそうだが、朝之助さんは奥さんが落研の後輩だそうで、「アイツはふたつとも破ってんだ」とのこと。度胸ありますな。
さて扇辰師、現在鈴本の昼席でトリを務めているのだが、消毒などの都合で16時終演厳守なのだとか。
「今年最初で最後の鈴本のトリなのに、持ち時間30分しかないの。しかもヒザ前の文蔵さんが長引かすんだよ。だから正味25分くらいしかないの。今日は『徂徠豆腐』やって『鰍沢』『匙加減』も掛けましたなあ。……でもほぼあらすじ」と苦笑い。寄席でやらない噺を、と『夢の酒』に入る。
夢の話をするときの常にテンションMAXな若旦那と、冷ややかなお花のコントラストが鮮やかで笑いを誘う。
そのお花も話が進むに従ってどんどん感情が昂っていき、しまいには癇癪を爆発させるそのグラデーションがまたお見事。
大旦那に「若旦那の夢の女のところに行って小言をしてほしい」と訴えている場面では、ずっと大旦那の反応ばかりを描いているのだが、それなのにお花がまた徐々にヒステリーを爆発させていく様子が伝わってくる。さすがです。

朝之助さん、扇辰師の話は「ほぼ事実です」だそうで。
噺は源兵衛と太助が「こねえよ、もう行こうよ」と会話しているところから始まる。え、お父つぁんと時次郎の会話のくだり全部カット? と思いきや源兵衛太助の会話の後に入るという珍しい型。
扇辰師も聴いたことがなかったようで、「誰に教わったの?」と聞いたところ、「羨ましいねえ、喜多八師匠だって。俺なんか一席も教わったことないのに」だそうだ。
全体的にカラッと明るい感じ。
甘納豆も自分がいた部屋から見つけ出すってのも初めて聴いた。

扇辰師の二席め、「『明烏』、いいねえ。最近やってないからやろうかな。……明日は無理ですよ」。だそうだが、噺家って一度覚えた噺をさらってまたできるようになるまでどれくらいかかるんだろ。
今日はぐっと冷え込んだからか寒い日の噺で『二番煎じ』を。
月番が自分の気の合う人だけで一の組を作り、そのメンバーでワイワイとやっているところが微笑ましい。
いつもきている番頭さんが風邪のために急遽参加した伊勢屋は「ネギが」といいながら肉をバクバク食べる役回り。「こんな結構なことをやっているのなら、明日から番頭を寄越さないで毎日私がきます。今日はこういう事があるって知らないから手ぶらできちゃった。お詫びに明日は鯛を持ってきますよ」と豪勢なことを言い出す。さすが大店の旦那という感じ。「宗介さんは何を持ってきてくれる?」「私は箸を人数分……」「ズルいよそれは」と爺さんたちがキャッキャしてるのが、本当に楽しいんだろうと察せるのがまた楽しい。

帰りはホント冷えるねえー……。バイクだと顔と指先が冷たいのが辛い。
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紀尾井らくご 三遊亭兼好独演会 [落語]

紀尾井らくご 三遊亭兼好独演会
於:四ツ谷 紀尾井ホール

三遊亭兼好『宗論』
三遊亭しゅりけん『浮世根問』
三遊亭兼好『紋三郎稲荷』
三遊亭兼好『寝床』

昨日は久しぶりに会社の後輩と飲みに行く。
金曜の夜はどこもいっぱいになっており、活気が戻ってきていることを実感する。
落語会も市松模様の会場が徐々に少なくなってきており、今日もギッシリ。

幕が開くとメクリに「仲入り」の文字が。
客席がざわめく中、しゅりけんさんが涼しい顔でやってくる。そのままメクリをめくってしゅりけんさんの開口一番かと思ったら、兼好師のメクリを出して袖に引っ込む。
出てきた兼好師、「皆さんも驚かれたかと思いますが、私も『えっ、もう仲入り!?』と驚きました。しゅりけんの罠が至るところに……」と笑わせる。
「今年もいろいろありましたが……皆さんお忘れかと思いますが、オリンピックあったんですよ。バッハさんとか政治家は『成功だった』といってますが、どうですか。アレは失敗でしょう。もちろん競技的には成功したものもあるでしょうが、祭りというものはみんなが一斉に盛り上がってこそ成功というのであって、無観客の時点で失敗なんじゃないですか。アレが失敗じゃなかったら失敗なんてなくなる」。確かに。
「あとこれも皆さんお忘れでしょうが、あの時の首相が菅さんだった。あの方はお祭りには向きませんね」。これもまた確かに。
このまま珍しく結構政治ネタを続け、アベノマスクが9億もかかっていることにも言及する。「官僚や国家公務員はあのマスクをつければいいんじゃないですか。電車とかで見かけたら指を指して笑うけど、みんな目礼くらいするでしょ」とナイスなアイデアが出る。
北京オリンピックの外交ボイコットに触れ、「こうやってアメリカに『お前はどうするんだ』と迫られるの嫌ですねえ」と対立に巻き込まれるのは日本は苦手だとして親子の対立の噺に。
兼好師の『宗論』は約4年ぶり。
「我々の信じるところの主、イ……エースは……」とたっぷり溜めまくるところがおかしい。しかも溜める時間や溜めている間の仕草が毎回異なるのが芸が細かい。
「お父様、讃美歌を歌いましょう」と言いながら口三味線の前奏がやたら長く、しまいには大旦那が「早く歌え、待ってんだこっちは!」と律儀に待っているのもたまらない。

しゅりけんさん、メクリをめくろうとするが……いや、兼好師のメクリの下には「開口一番」はないと思うよ。
「皆様の『コレいらないんじゃねえか』という思いがマスク越しにも伝わってきます」。これも修業でしょうねえ。
「今日はちょっとマクラを振ってみようと」とアホロートルの話題を振るも、びっくりするぐらいスベる。「……あー、んー……」みたいな感じでもう少し引っ張ろうとしようと舞台袖から兼好師から声が掛かる。何を言われたのかは聞こえなかったのだが、おそらく「早く噺に入れ」みたいなことを言われたのだろう、「お小言をいただいたので落語に入ります」。兼好師が乱入というか弟子とはいえ人の高座に踏み込むのは珍しい。

兼好師の二席め、動物が好きなので、動物園のサポーターとして登録して寄付などをしているという。人気の動物は皆が寄付しているだろうから、あまり人気がなさそうな蛇などを選んで行っているという。
「パンダはかわいいですね。双子パンダもそろそろ一般公開ですか。でも少し残念なのがもうあの子たちは笹かじっちゃってるんですよねえ。笹をかじる前は顔が丸くってホントかわいいんです。かじりだすとアゴがしっかりしちゃってね」だそうだ。
動物のマクラから狐の話にに移り、『紋三郎稲荷』に。
お調子者の山崎平馬が調子に乗っていろいろといたずらを仕掛けるのも面白いが、それにいちいち反応する駕籠屋のパニックぶりがおかしい。
さんざんやりたい放題やったあとに「やりすぎたかなあ……」と素に戻るのも楽しい。

三席め、最近の研究で「第三の痛み」というものがあることがわかったというのが興味深いという。肉体的な痛みや神経的な痛みの他に、心理的な痛みもあるのだそうで。「これすごくわかるんですよ、考えに考えて放った渾身のギャグを噛んだりすると『痛い!』ってなるんです」だとか。
噺に入り、旦那が重蔵に「〇〇のところには行ったのか?」「はい行ってまいりました」「どうだった?」というやり取りのあとに「……ええ、」と一瞬間があくのがおかしい。この間がまったくもって絶妙。「岩田のご隠居は」「提灯屋は」「金物屋は」といろいろ聞くけれども毎回逡巡が入るそのタイミングがたまらなくおかしい。この一瞬の間で笑えるってのがすごい。
さらに町内の人々に断られるシーンを重蔵がいちいち再現するのもおかしい。兼好師はこのパターンを多用するが、それがいちいち面白いからやめられない。
「以前糊屋の婆さんが耳が遠いから一番前に出しといたんだ。そしたら旦那の義太夫が始まったら『痛い!』って言ったんだ」とマクラを回収するのもお見事。

今日もみっちりと堪能させていただきました。
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