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人形町噺し問屋 その110 [落語]

人形町噺し問屋 その110
於:人形町 日本橋社会教育会館

三遊亭兼好 ご挨拶
三遊亭けろよん『弥次郎』
三遊亭兼好『天災』
上條充 江戸糸あやつり人形
三遊亭兼好『佃祭』

この1〜2か月はさほど忙しくなかったのだが、そろそろまたぞろ忙しくなっていきそうな感じに。結局ぐずぐずしていて転職の準備とかしてないなあ。本当はバイクとか買ってる場合じゃなかったんだよな。

まずはご挨拶。
よく連休は忙しかったでしょうと言われるそうだが、それほどでもないのだとか。「こどもの日があるんで、どうしてもイベントは子どもに絡んだものになるんで、あまりイベントとして落語はない。でも最近だと自主公演とか仲間と一緒に会をやってみると結構お客がくるんです。やっぱり少子高齢化の影響なんですかねえ」だそうで。
「高齢化といえば孤独死が年間6万人以上いるんですって。……他人事じゃないでしょう。だから、この会にきているというのも何かの縁ですから互助会とかやればいいと思うんですよ。いるでしょ、毎回会う人。その人と連絡先を交換して、『私がこなくなったら連絡して』って言っておけばいい。……そうすればちょっとやそっとじゃ会にこなくなるということはなくなるんで私も助かるんですがね」。いつも満席じゃないですか。
「しかしそうなるとなくなる職業も出てくるんでしょうね。衣食住はなくならないとは思いますが、噺家とかスポーツ選手なんてなくなるんじゃないですか。子どもがいないんですから。相撲なんて成り手が集まらないでしょう。どうします力士10人しかいなくて5人休場とか」。まあモンゴルがいるから。
「噺家もねえ、職業として何人かは残るとは思うんですよ。でも一門がなくなるってのはありそうですよね。……うちの圓楽一門は危ないですよ。その中でもまあ好楽一門は若いのもいますけど。うちのげんきなんかまだ十代ですから。……でもうちの師匠より元気じゃないの。先に倒れたらどうしよう。まあでも三遊亭はこれだけいますから。柳家も生き残るでしょう。◯◯はなくなりそうじゃないですか? □□亭とかも。雲助一門は皆さん亭号が違うから危ないように思いますけど、あの一門は周りに気を遣わないからストレスがない。だから長生きすると思いますよ。龍玉アンちゃんなんか子どもが最前列に並んでいても人を殺す噺をしますから」といろいろと黒いことを楽しそうに話す。
「高齢化といえば空き家問題なんかもありますよね」とおかみさんとふたりで古い街並みを探しながら自転車で走っていると、おかみさんが大きな声で「ここ空き家ね!」と言い出したというエピソードを。相変わらず仲良いですね。

兼好師の一席め、「最近はコンプライアンスとかうるさいですけど、行政のトップの人の失言はなくならないですね。でも『俺がトップに立とう』なんて人は、他人を押し除けて上に行こうという人なんですから元からパワハラ体質なんですよ。で、『英雄色を好む』じゃないですけどセクハラ気質も持っているんでしょう。恫喝した長谷川議員なんて口では謝罪とかしてますけど、変わるわけないんですよ。何が悪いのかわかってないんですから。それだったら妻以外の女性と『寂しかったから』と同棲していた宮沢議員の方がよっぽどマシですよ。またモテなそうですもんね。いやあどうせ議員辞めるんですから楽屋にいてほしいなあ」。宮治議員はともかく、議員がパワハラ気質というのは納得。
「落語の登場人物もパワハラ気質セクハラ気質なんですが、なんか許せてしまうのはどこか愛嬌があるからでしょう」とパワハラモラハラ全開の『天災』に。
屋根から瓦が落ちたとしたときに、「その家が空き家だったらどうなさる」と聞かれて「そら『あうっ!』つって……空き家なんだろ、だから『やい!』って……」と啖呵を切りながら考え込んでいる様子がおかしい。

ゲストは江戸あやつり人形の上條さん。
江戸あやつり人形をちゃんと見たのは初めてかも。
『酔いどれ』と『獅子舞』の2曲。数え方が合ってるかは不明。
いやコレすげえな。
右手は人形のいちばん派手な動きを操りつつ、左手でそのほかの動きを制御しているようだ(合ってるかはわからないけど)。それで人体全体の動きを人形で表現している。
大体は腕とか脚を右手で操っていたようだが、その他の部位も細かく動いている。
特に獅子舞では獅子頭の口の動きの他に、前足の演者と後ろ足の演者も同時に操り、ふたりの演者の脚の動きをシンクロさせたりしている。
世の中にはいろんな芸があって、自分の知らないところで磨かれてるんだと思うと嘆息の思いがする。

兼好師の二席め、「(獅子舞の)祭囃子はいいもんですね。私は以前築地で働いていたんですが、佃祭の時期は周りがソワソワしてましたね。魚河岸で働いている人の中には全身にモンモンを入れている人もいて、普段は優しいんですけど、その時期は私が『スイマセーン』なんて言ってウロウロしてると『殺◯ぞ!』なんて言われたり」。怖っ。
そこまで固有名詞が出てきたらそらあ『佃祭』でしょうな。
佃島の若夫婦が次郎兵衛さんに会いたいといろんな神様に願掛けをして、鴨居にぐるっと神様が祀られているというのがいじらしさもありつつほんわかとしたおかしみを感じる。その中でも本来のサゲである戸隠様が含まれているのが芸が細かい。
兼好師の『佃祭』で最大の聴きどころ(と私が思っているの)はお悔やみにきた長屋の鉄ちゃんが、亭主を亡くしたと思っているお内儀さんに対して「次郎兵衛さんに世話してもらった」カミさんとの惚気を滔々と述べているところ。最初は泣きながらだったのが、いつの間にか満面の笑みで「女房がどれだけいい女か」ということを臆面もなく語り続ける場違いさがたまらない。今日もたっぷり5分以上は語っていたのではないだろうか。まあさすがおかみさんと仲良しの兼好師というべきか。
サゲもリニューアルし、よりわかりやすいものに。
それにしてもなんとなく全体が明るいものになってるんだけど、本来なら終い船がひっくり返って全員助からないっていう大惨事のさなかなんだよな……。落語の呑気さが際立つ噺だなあと今更ながらに思う。
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扇辰日和 vol.88 [落語]

扇辰日和 vol.88
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰ぢろ『蝦蟇の油』
入船亭扇辰『麻のれん』
春風亭朝枝『締め込み』
入船亭扇辰『竹の水仙』

今日は125ccのPCXで。
なかの芸能小劇場に行くには小さい方が具合がいいのです。
いつものように高円寺のタイ料理屋で昼メシを食ってから会場へ向かう。久しぶりにパッタイを食った。というかタイへ行けば食べるが、日本ではわざわざ食べたことないかも。

辰ぢろさん、扇辰師も初めて聴いたと言っていたからネタおろしかそれに近い状態か。ちょっとあやしいところもありつつ。頑張れ。

扇辰師の一席め、「昨日とは打って変わって、なにこの天気。ジメッとして。やる気出ないよ。……先日もね、どこだっけ都内じゃなかったと思うんだけどそこでも『やる気が出ないからしょうがなくなんかやります』っていったら客席から『しょうがなくやるんですか』って……。噺家のシャレを復誦しないでもらいたい」。先週のシブラクですな。
今日のゲストの朝枝さんを紹介し、「最近は二ツ目のコンクールが増えてるけど、そこでいくつも大賞を獲ってる。……その大賞を獲ったネタね、アタシが教えたんだよ」とドヤ顔。さがみはらは『紫檀楼古木』だったっけか。あとはなんだろ。
「他にもいろいろあるんだけど、この会場で他の会で50分くらいマクラ話しちゃってさ。じゃあお古いところでお付き合いくださいな」と『麻のれん』に。
昨日の兼好師の『馬のす』に続いて枝豆をひたすら食べ続ける噺。他に枝豆が出る噺ってなんかあるかな? 思い出せないけど落語では枝豆があると食い尽くさないといられないのだろうか。
正直笑いどころがそんなにあるわけでもないし、枝豆が大半だし、なにが面白いんだっていう感じなんだけど、なんかそういうのもいいというか。夏が近づいてきたんだなあと季節感を味わう噺なのかもしれない。

朝枝さん、さすがに大先輩の前ではクドさは控えめか。
やっぱり上手いと思う。亭主が女房にベタ惚れなのはみんな一緒なんだな。

扇辰師の二席め、「アタシは毎日はばかりで新聞を読んでるんですが……まあ場所はどうでもいいんですけど、最近は旅行の広告も戻ってきましたね。でも円安だからなのか、以前のように『え、この値段で行けるの!?』ってのは減りましたね。物価高だからなのか……。そういえばこの物価高の中で値上げしてないのは寄席だけですよ。アタシの友人の銀行員も『もっと値上げすればいいのに』って。100円でもいいから上げてもらえたらやる気も出るんですけどね……」。鈴本とかコロナ前に比べたら値上げしてなかったっけ?
昔の旅の噺ということで『竹の水仙』に。この噺、兼好師では小田原だが、扇辰師では愛知の鳴海の宿。人によっては藤沢のこともあるんだとか。なんでそんなにバリエーションができたんだろ。
客が一文なしだとわかった瞬間からいろいろと失礼な言動を繰り返すのがあからさますぎておかしい。それにしてもよく出てくる「細かいのがないのに大きいものがあるか」という理屈だが、みんなそれで納得してるけどそれ理屈合ってるかなあ!?
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桃月庵白酒 三遊亭兼好 二人会 夜の部 [落語]

桃月庵白酒 三遊亭兼好 二人会 夜の部
於:三鷹市芸術文化センター 星のホール

桃月庵ぼんぼり『手紙無筆』
桃月庵白酒『真田小僧』
三遊亭兼好『たがや』
三遊亭兼好『馬のす』
桃月庵白酒『百川』

そら昼の部も行ったら夜の部も行きますよ。
昼の部が終わった後にファミレスに行って昼の部のブログを急いで書き上げて会場に戻る。
昼の部はチケットがラス1で端っこしか空いてなかったのだが、夜の部もほぼ同じような状況。昼の部と同じ列で少しだけ中央の方に移動しただけ。

白酒師の一席め、「最近はルッキズムなんていって見た目のことをいうのはよくないという風潮になってますけど……。私、昔から嫌いだったのはみすぼらしい坊さんが実は空海だったってやつ。そんなの泊めてくれっていわれても『出てけ!』っていうでしょ。みなさんだってそうでしょ!?」。まあそうですね。
「私は子どもの頃おかっぱでかわいかった。お姉さんとかに『かわいい~!』なんていわれてて。そうすると3年生の頃にはもうわかってますから、『お姉さーん!』なんていいながら抱きついてた。『子どもが純真』なんて嘘ですよ。あいつらわかってやってますからね」。まあ……。俺はそんな人がいなかったからやってないけど。
「学校寄席にも行くんですけど、最近は与太郎ものとかできない。差別につながるからなんですって。だから今ではさん喬師匠とか、扇遊師匠のような『ここまではやっていい、ここからはやっちゃダメ』という基準がわかってる人ばかり呼ばれる。今でも覚えてるのは、校長が落語好きで、志ん馬師匠と圓彌師匠という方と前座の私の3人で行った。普通なら廓噺とか子どもたちの前じゃやらないですよ。でも圓彌師匠は『紙入れ』をやった。中学校で間男の噺ですよ? さらに志ん馬師匠は『強飯の女郎買い』をやった。中学生ともなれば、女子のほうがこういうのは早いですから、『この噺の内容をわかってる私』を周りに悟られちゃいけないってこらえてたりして。校長はバカだから大喜び。終わった後に生徒会長が『今日聞いた噺を今後の参考にして……』なんてあらかじめ書いてあった挨拶を読んでる。そんなもん参考にすんな! って」と子どもが艶笑噺をする『真田小僧』に。
自分のいない間に男を連れ込まれたと聞かされた亭主がショックのあまり涙を流し、それでもカネを払いながら続きを聞きたがるのがなんともリアルというか。
薩摩に落ちたまでのフルバージョン。

兼好師の一席め、「毎年この会は昼夜2公演なんですが、昼席と夜席でこんなに客席の雰囲気が変わるのも珍しい。……ま、昼席は昼食を摂ったあとなんで、半分うとうとしてる。もう半分は熟睡という……」。
出てくるときに声掛けがあったところから、噺家への声掛けは町名、というお定まりのマクラから「町家こんがり」などを経て『たがや』に。
最近の花火では花火を褒めるのも難しく、田舎の花火ならまだ大丈夫だが、と「田舎の親戚の集まりで花火を見ている」というようなシチュエーションでのやり取りを即興で再現しているのがいつもながら面白い。こういう小ネタというか小芝居というかすぐに演じられるのがすごい。
「鍵屋を贔屓にする旦那」のシチュエーションコント(?)も芸者とイチャつきながらというものにアップデートされていた。
「昔のこれくらいの打ち上げペースなら声掛けもできますけど、最近だと2時間で何万発、とかはじゃないですか。そうすると褒めるにも『たまたまたまたまたまたまたま』とかになって大変ですよ」。

兼好師の二席め、「皆さんいろいろ落語以外にも趣味があると思います。白酒アニさんなんかも洋楽に詳しいとかがある。そこへ行くと私は特に趣味がなくて……。一時期リコーダー奏者の方からアルトリコーダーをお借りしていたので練習していたんですが、同じマンションの方に『どこの子かしらねえ、お宅もうるさいでしょ』といわれてそれからやめました」だそうで。
そこから釣りを趣味にしている男の噺に。
まあこの噺も内容という内容はほとんどなく、大半が酒を飲んで枝豆を食って舌鼓をぺっちゃぺっちゃしているという、まあ落語らしいといえばこれほど落語らしい噺もないのかもしれない。
一刻も早く「馬の尻尾を抜いたらどうなるか」を聞きたいのに、関係ないエピソードトークをされて焦る男の焦燥感が気の毒ながらもおかしい。

白酒師の二席め、「今日は三社祭。私は人混みが苦手なので御輿を担いだりとかはしませんが、不思議なのは銭湯や温泉は入れ墨がダメなのに、お祭りのときだけは大っぴらに見せてもOKという風潮は何なんですかね」ともっともな疑問を呈する。「小里ん師匠も『祭りの間は殴り合いをしても捕まらない』といってましたけど、なんか違うような気がするんですがねえ」。
「最近では祭りの屋台でもテキ屋を排除していることも多いそうですが、昔は免許もないだろうオヤジが作った焼きそばなんかを5、600円出して買っていた。身体に悪そうな着色料を使ったりんご飴とか。あとはくじ引きなんかも仕掛けがしてある。優しそうなおっちゃんでも、屋台の後ろに回って見ようとすると『見るんじゃねえ!』と怒られましたねえ」と祭の思い出話から『百川』に。
百兵衛さんの訛りが激しく、ほぼ言ってることがわからない状態。百兵衛さんに応対する兄貴分のほかに、兄貴分のいうことを無条件で追従する源ちゃんの重厚さがまたおかしい。
「これはあんでがすか?」「……アンデス山脈?」というのも昼席に続いてまた不意打ちを食らう。上手いなあ。
サゲもちょっと変えられていたが、「たった一字だ」よりもわかりやすいと思う。

昼は暑かったウィンドブレーカーだが、夜にはちょうどいい。夏用の上着とかグローブ買わなきゃな。
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桃月庵白酒 三遊亭兼好 二人会 昼の部 [落語]

桃月庵白酒 三遊亭兼好 二人会 昼の部
於:三鷹市芸術文化センター 星のホール

三遊亭げんき『孝行糖』
三遊亭兼好『日和違い』
桃月庵白酒『松曳き』
桃月庵白酒『壺算』
三遊亭兼好『崇徳院』

ツーリングがてらレブル250で三鷹まで。最近車にも全然乗ってないからバッテリーあがっちゃうかもなあ。
一応バイクに乗るときはウィンドブレーカーを羽織るようにしているが、信号待ちの間なんかは暑い……。

兼好師の一席め、「外は暑くなってきましたから、屋内で落語を聴いて笑う方が体にいい。そんなことをよく言いますが、お医者さんに言わせれば我々の方がよっぽど健康にいいんですって。まあ確かに自分の話したいことを話したいだけ話しているわけですから。途中誰にも止められない。お客様の中で2分以上自分だけが話すってありますか? ないでしょ。責任もなく、間違ってたっていい。それに誰かから聞いたことを話すときだって、話を面白くするためだったら嘘をつくことさえもためらわない。噺家が間に入ってるときは必ずどんどん話が大きくなっていきますから」だそうで。ストレスが少ないことが健康の秘訣ということか。
「我々の業界はコンプライアンスもないですから。最近は世間では厳しくなっていて、天気予報なんてのも当たらないとクレームがくる。少し前までは天気予報なんて当たらないのが当たり前だった。大阪のフグ屋なんて看板に気象庁のマークをつけて『うちは当たりません』って言ってた。気象庁の運動会が雨で中止になった、なんて話もあるくらいで」と天気の噺の『日和違い』に入っていく。
なんといってもテンポがよく、噺がポンポン進んでいくのが心地いい。
特に噺の後半、いろんな職業の人に今日の天気を聞いていくときの畳み掛けるようなやりとりが楽しい。

白酒師の一席め、「兼好さんも言ってましたけど、落語ってのはボーっと聞いていてもいいんです。意味のない噺も多いんですが、その中でも『日和違い』くらい意味のない噺も珍しい。噺家はみんな大好きでみんなやりたがるんですけど、お客さんから受け入れられないことが多い。私も一度やったことがあるんですけど、アンケートで『この噺をやらなきゃダメなんですか』って書かれた。まあ確かにそうなんですけど。笑いどころは『今日は雨が降る。天気じゃない』てところくらい。ここを外すともうダメ。ここに向けて『くるぞくるぞ』と思いながらやって、『うわあこなかったー』なんて……たまんないですね。噺家にはMが多いんですかね」。
そのほかにも寄席とホール落語の違いなども話しつつこれもまた内容があるようなないような噺の『松曳き』に。
ストーリーが重要ではないぶん、とにかく笑いの手数が多い多い。
殿と三太夫の会話がループすることも多く、これがもうホントにバカバカしいんだけどそれがもう腹を抱えるほど笑える。
植木屋が「ざっくばらんに話させてもらいますと」「バックギャモンとな」というのは不意打ちでやられた。

二席めの出囃子は唄入り。「師匠の出囃子の唄入りだったんですが、唄ありと唄なしでは気分が違いますね。なんだかちゃんとやろうっていう気になる。唄なしの場合は適当でいいか、と……」。
白酒師の『壺算』は兼好師のに慣れている耳にはあっさりめ。でもこれが多分スタンダードなんだろうな。
番頭がぼんやりしている店を狙って入るのだが、兄貴分の「おめえと同類を探すんだ」という一言がおかしい。

兼好師の二席め、「そういや今年はオリンピックなんですってね。あまり興味はないんですが、男子ハンドボールが32年ぶりだかで出場するとか。それで宿舎に女性を呼んだりして問題になったりしたそうですけど、それくらいいいじゃないですかねえ。いや税金を使ってるんだからちゃんとしろってのもわかるんですが、結果さえ出せればいいじゃないですか。日本人は結果より経過を大事にしますよね。でも結果ですよ。イヤでしょ楽屋ではすごくちゃんとしているのに高座では面白くない白酒アニさん」。確かに。
そんな色っぽいことは若い頃にしかできないんだから、と若者の色恋の噺へと入っていく。
相変わらず熊さんの感情の振れ幅がいろいろと極端で楽しい。泣いたり笑ったり困ったりとそのひとつひとつがくるくる変わっていくのはお見事。
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渋谷らくご なにがでるかな落語会 [落語]

渋谷らくご なにがでるかな落語会
於:渋谷 ユーロライブ

春風亭昇々『ザ・卓球』
柳家わさび『ヤンママ』
三遊亭遊雀『十徳』
入船亭扇辰『藁人形』

昨日は久しぶりに入った新人の非公式ながらの歓迎会。
若干胃がムカつくような感じを残しつつ朝バイクでちょっと遠くのパン屋まで。イートインは入れなかったので近くの公園でパンを食べる。もう初夏の日差し。一年で一番いい季節だなあ。途中の道でくっきりと富士山も見え、なんだか得した気分になる。
一度家に戻って整体と歯医者。抗生物質を飲んでる間は腫れも引いたが、切れたらまた痛み出した。と伝えたら消毒されて薬を処方されただけでおしまい。会計含め10分で終わった。え?

電車に乗って代々木公園へ。
久しぶりにタイフェスへ行ったがまあすごい人人人。
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Nikon Df

チャトゥチャックのウィークエンドマーケットとでも思って楽しむ。暑いのもタイだと思い込め。チャーンビールの生とカオマンガイ。ちょっと足りないのでグリーンカレーとガパオガイのあいがけも食べる。
チャーンビールのエスプレッソというものがタイフェス限定で売っていたので買ってみる。350mlかと思ったら490mlだった。でビールのエスプレッソってなんだ? と思ったらビールにコーヒーが入っていた。……なるほど。まあ不味くはないけど2杯めとしてはちと多かった。
DSC_9733.jpg
Nikon Df

もうちょっとタイフェスにもいたかったが、代々木公園から歩いてユーロライブに。

昇々師、「いやあ……多いですねえインバウンドが。もし神龍がいたら『インバウンドがそれぞれの国に戻りますように』って頼みますよ。……インバウンドは落語こないんですよ」とこぼす。
噺は卓球部ダブルスの先輩後輩コンビが全国大会の日を1日間違えて棄権扱いになってしまい、そのやりきれないモヤモヤをぶつけ合うというもの。先輩が青春を犠牲にして卓球に打ち込んでいたのに対し、後輩は結構なリア充でそれに対して理不尽にキレる先輩のツッコミがおかしい。

わさび師のあたりでビール2杯の影響が。昭和のレディースがバイクに乗ってこの時代にタイムスリップしてくるという噺。意識が時々途切れていたが、面白かった……と思う。

遊雀師、「前のふたり、これからそれぞれの協会を背負って立ってもらわなきゃならない存在ですよ。それがふたり揃ってナヨナヨした噺をやりやがって……。まあここからはアタシとトリは辰っつぁんですから。特に辰っつぁんはもうビシッと決めますから」とハードルを上げる。
「しかしねえ、辰っつぁんは今年還暦。アタシも来年還暦。楽屋で盛り上がってるのは病気の話。今同じ病気に罹ってるんだよ」だそうで。
噺は久しぶりの『十徳』。十徳の名前の由来を教わった男が仲間に伝えようとして「知りたくねえよ」といわれて涙ぐみ、「お前もナヨナヨした噺やってんじゃねえか」とセルフツッコミ。

扇辰師、「最初のふたりは新作をやったようだけど、『ザ・卓球』と『ヤンママ』だって。楽屋に入ったのは30分くらい前だから聞いてないんだ。なんだよ『ザ・卓球』と『ヤンママ』って。どんな噺かもわからないし」とボヤく。新作はねえ。
「……それはいいんだけどさ。遊雀さん……短かったねえ」やっぱり?
「今日はものすごく気持ちいい気候じゃないですか。そんなときにこんな薄暗いところに来ていただいて……。でもね、今日はやる気が出ないんだ。というのもこの会場に来るときに、前をカップルが歩いてて、手をこうやって指を絡ませてんの。こうだよ? それで横についーっと入っていって……。こことは違う薄暗いところに行くんでしょうなあ。まあ今日はこの爽やかな天気ですから、……ひとつ暗い噺を……」と『藁人形』に。
お熊に騙されて逆上した西念を抑える若い衆のなだめ、脅し、諭しといろんな感情の変化を自然に演じるところはいつ聴いても上手いなあと思う。

さて今日はこの後は高校の同級生飲み。1月で3回めって多すぎじゃねえ?
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両国寄席令和6年5月6日 [落語]

両国寄席令和6年5月6日
於:お江戸両国亭

三遊亭栄楽『浮世床(夢)』
荒木巴 奇術
三遊亭兼好『千両みかん』

今日は早起きして遠出を……と思ったのだが、起きてみたらどんよりと曇り空。なんだよーとテンションが上がらずグズグズしていたらいつも起きるような時間になってしまった。
とはいえ9時前には家を出て犬吠埼まで。
犬吠埼は10年ほど前にも初めて買ったバイクで行ったことがある。今考えてみれば100ccのバイクでよくもまあ3時間以上もかかる場所へ行ったもんだ。
しかもそのときはバイクにスマホを固定する器具などもつけていなかったので、時々止まっては道を調べながら行くという。しかも帰り道は雨に振られてしまい、水に弱いスマホを雨の中で取り出すこともできず、迷いに迷って6時間以上かかって半泣きになりながら家にたどり着いたのではなかったか。バカだねえ。
今じゃスマホを据え付ける器具もあり、USB電源もあるので充電できる(今日はちゃんと充電できるケーブルも持っていった)。スマホも水に強くなったので多少の雨なら平気だろうし、何ならワイヤレスイヤホンで道案内を聞きながら運転することだってできる。それになによりいざとなったら高速に乗れるのも心強い。てなわけで道に迷うこともなく、ほぼ時間通りに往復できた。とはいえ今日も帰り際にポツポツと雨に降られ、なんだ俺が犬吠埼に行くと雨が降らなきゃならんのかと若干イラつく。まあすぐに止んだけれども。
バイクのギア操作もだいぶ慣れ、ギアチェンジも滑らかになってきた。坂道発進もちょっと緊張するが問題なくできる。けど気を抜いてるとなんでこんなとこで、というようなところでエンストしたりする。あともう少し慣れが必要ですな。あと基本本番に弱いタイプなので、後ろに車がいたりするとすごく緊張する。
で、両国寄席の仲入り後に合わせて帰宅。帰りに買い物をしたいのでバイクを乗り換えて両国亭に向かう。

この4連休で兼好師を毎日コンプリート。ていうか29日からの1週間で兼好師の会は6つ行って9席聴いてる。我ながら頭おかしい。まあだいたい毎年GWは兼好ウィークになるんだけど。

兼好師、「今年のGWは前半と後半に分かれていたが、ちょうどその前半と後半部分は天気に恵まれて、谷間の平日は雨などであまり天気がよくなかった。天気といえばここ最近は気候が極端なので、あともう少ししたらいきなり暑くなるんでしょう。昔はもっとちゃんと季節があって、食べ物なんかも季節のものが食べられていた」と『千両みかん』に。
兼好師のは約3年ぶり。そんなに聴いてなかったっけ。
番頭が半泣きになりながら床屋の親方に「(主殺しの)磔を見たことがありますか」と訪ねた際に、やけに微に入り細を穿ちながら磔の目撃談を語る。それを聞いて番頭がパニックを起こすのが気の毒ながらもおかしい。

帰宅後にアマプラで井上尚弥vsネリの一戦を見る。みんなが見てるからなのかわからんが、数秒に1回再読み込みが起きて中断されるのがうっとおしい。もうちょっとキレイに見たかったなあ。でもまあ勝って何より。
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しのばず寄席 5月5日 夜の部 [落語]

しのばず寄席 5月5日 夜の部
於:上野広小路亭

立川笑王丸『山号寺号』
立川談洲『締め込み』
三遊亭遊雀『四段目』
リトル清宮 ものまね
瀧川鯉昇『茶の湯』
神田山緑『五貫裁き』
キラーコンテンツ 漫才
三遊亭兼好『粗忽の釘』

昨晩はそこそこ飲み、二日酔いってほどでもないがちょっと酒が残ってるようだったので朝バイクはやめてゆっくり寝る。このGWゆっくり寝たのは初めてじゃなかろうか。

笑王丸さん、すげえ名前だな。こういうのつけるのは談笑師かと思ったら大当たり。
名前はいかついが童顔で親しみやすそうな見た目。滑舌もテンポも良く聴きやすい。さすが談笑一門。

談洲さんは久しぶり。
「こないだヒップホップダンスとジャズダンスのダンスバトルの合間に一席やるという仕事に行ってきました」と見事なDJのMCを再現する。「羽生結弦くんより見事に滑りました」だそうで。
風呂敷包みが元で夫婦喧嘩が始まるが、「こんないい女を男が放っておくはずがない。お前浮気をしてるんだろう」「お前さんこそ一番の色男なんだから女ができてるんだろう」とお互いを褒め称え続けるという喧嘩なんだか愛の告白なんだか。聞いていられなくなった泥棒がつい出てきてしまうという。「あなたがたそう言ってますけど、いうほどじゃない」という一言がおかしい。
しかしまあ面白いなあ。さすが談笑一門(本日2回め)。

遊雀師、談洲さんの高座を聴いて「あれいい工夫だよねえ。古典落語ってのは誰かが作った新しい工夫がウケるとそれがやがてスタンダードになっていく。もしかしたらあれが今後のスタンダードになるかもしれないね。そうするとアタイもお客さんも歴史の証人になったかもしれない」とべた褒め。
「彼は今後売れるかもね。そしたらお金ちょうだい。……おい聞こえてんのか!」「聞こえてます!」となんちゅーやり取りをしてるんだか。
「今度歌舞伎町で初めて歌舞伎をやるんだってね。『歌舞伎町』って戦後『こういう名前を町名にすれば歌舞伎がこざるを得ないだろう』ってんでつけたんだって。そしたら結局来なかった」へえー、そんな来歴があったとは。
歌舞伎の話から『四段目』に。

二日連続で離昇師。前のリトル清宮先生のネタを見て、「昔『現役時代の王に似ている』といわれて、野球中継が雨で中止になった場合の穴埋め番組に出させてもらったことがある」と思い出話を始める。ただ、鯉昇師はメニエール症という持病があり、これによって球技ができないので野球をまったく知らなかったそうで。
青豆の粉の他に絵の具や洗剤が入っているというとんでもない茶の湯。近所から「アオミドロ」と呼ばれているのがおかしい。

3日連続で兼好師。
重いタンスを背負ったまま新しい長屋にたどり着くまでの苦労話をべらべらと喋り続ける主人公の軽薄っぷりが相変わらず楽しい。話しながらもちょいちょい「よいしょ」という感じで担ぎ直しているのがたまらない。

さてGWもあと1日。明日は朝早く起きてツーリングへ行きたいなあ。
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瀧川鯉昇 三遊亭兼好二人会〜けんけんと鯉のぼり〜 [落語]

瀧川鯉昇 三遊亭兼好二人会〜けんけんと鯉のぼり〜
於:清澄白河 深川江戸資料館

柳家しろ八『動物園』
瀧川鯉昇『千早振る』
三遊亭兼好『宮戸川』
瀧川鯉昇 三遊亭兼好 お喋り
三遊亭兼好『孝行糖』
瀧川鯉昇『ねずみ』

今日も早起きして朝バイク。3時間ほど走って自分の母校やその周辺を回る。そのために昨日遅くまでかかってブログを書き上げ、睡眠時間も削っている。俺がこんなに勤勉だとは。

昨年もGWに開かれた鯉昇師と兼好師の二人会。昨年は前日夜に胆石の発作を起こし、ほぼ寝ていない状態できたため、高座中うつらうつらしてほとんど覚えていないという大失態。そういやあれから胆石の発作が出てないな……。

鯉昇師の一席め、この師匠の話すテンポやテンション、スピードがものすごく心地いい。ゆったりとした話しぶりで気負ったようなところはないのにところどころで面白いことを入れ込んでくる。それがすごく楽しい。
最初は普通の『千早振る』だったのだが、「お前『竜田川』ってなんことだと思う? ヒント。ナイル川。インダス川。チグリスユーフラテス川」「あ、川の名前ですか?」「残念。モンゴル出身力士だ」のあたりからちょっと変わった千早に。
千早太夫は南千住のロシアンバーのチハヤスカヤだし。チハヤスカヤに振られた竜田川がモンゴルに帰るのだが、やっぱり豆腐屋になる。おからが重要な話の流れ上、豆腐屋にならざるを得ないのだが、モンゴルに豆腐屋があるんかい、というおかしさがある。
落籍れた旦那から離縁されて落ちぶれたチハヤスカヤが、最後にもらった味噌ひと樽をラクダに乗せて竜田川のところにくるというのもシュールすぎる。モンゴルにラクダいるのか……?

兼好師の一席め、最近の日本では75歳以上か2000万人になったと話す。これはオランダの人口よりも多く、オーストラリアの人口よりもやや少ないくらいなのだそうだ。「オーストラリア行ったらカンガルーとコアラと高齢者に会うようなもんです」。ん?
「これだけの人数がいるんだったらいっそ名古屋あたりで独立してしまえばいい。愛知と岐阜があればいいんじゃないですか。お金もそこそこ持ってるし、そこだけで経済が回るでしょ。『高齢化のせいで経済が』とかもいわれなくなりますし、どちらにとってもいいと思うんですけどねえ」とぶち上げる。「政治家なんかも二階さんなんかそっちの国ではまだ小僧ですよ。鯉昇師匠もあと数年でそっちですけど、そっちでは前座ですから」と楽しそう。
「高齢者が若さを保つのは色気が必要。ここだけのハナシ、五代目の圓楽師匠なんか最晩年にふたりの女性に自宅の合鍵を渡してましたからね。……ヘルパーさんですけど」と見事に落としてから『宮戸川』に。
お花を見つけた叔父さんが、小鼻をピクピクと動かしてからニヤーっと笑うその表情の動きがお見事。
寝ている婆さんを見て「昔は今小町と呼ばれたいい女だったんだがなあ。俺も業平って呼ばれてた」とつぶやくと先ほどの『千早振る』があったのでウケる。こういうの上手いなあ。その婆さんを見ながらも「まあ今もいい女ではあるんだけどな」とか妬いている婆さんを見て「何だお前かわいいな」といったり、いまだに仲良しな老夫婦の姿が微笑ましい。

仲入り後にふたり揃ってのトークコーナー。
「去年もあったんですけど、なにを話したのかなにも覚えていない」というおふたり。「前座さんがこの会のことを書いているブログとかも調べてくれたんですけど、とても話せるような内容ではないそうで……」とこのブログも見てもらったのかな。まあ前述のように昨年はとにかく眠かったので、内容も覚えてなくてろくなこと書いていないのだが。
離昇師の「今日は満席ですけど、コロナの間のひと席おきという配置に慣れてしまって、隣に人がいるのが嫌だという人がまだいるみたいですね。『その点お前の会は程よく空いてていい』なんてことをいわれますけど」という話をきっかけに、寄席の座席の話に。
末廣亭の椅子は鈴本のお下がりだったことがある、とか桟敷は普段2列しか入らないが正月などの特別な興行のときは4列入れてしまうとか。「桟敷は茶筒と同じで、お客さんが笑うと間隔がいつの間にか詰まっていくんですよ。だから開演後30分くらいの場所に爆笑派の人を出して、寄席が湧いた後にどんどん客を入れちゃう」という裏話?が興味深い。
「それと昔の末廣亭はトイレが男女共用だったんですよ。入口は分かれてるのに中は同じ。昔はご婦人が寄席にくることをあまり想定してないんだ。それに男性が小をするときの場所が、便器があるんじゃなくて壁に向かってやるスタイル。個室はその後ろを通らないと行けない。そうすると女性はトイレに行くのに4本くらい見なくちゃいけない」「4『本』って本で表せないでください!」とほぼ聞き役に徹していた兼好師も楽しそう。

兼好師の二席め、「昔は与太郎も世の中から受け入れられていた」と『孝行糖』に。噺の前のバカの小咄が初めて聴くものだった。
相変わらず賑やかで気のいい人がたくさん出てくるので、聴いていてぱっと明るくなるのがいい。

鯉昇師の二席めの『ねずみ』はほとんど改変もなくスタンダードな形。ただねずみを彫るときには甚五郎だと明かさない。とはいえ彫ったネズミの脇に「ねずみやに泊まってください」という但書きに甚五郎の名前があるという粋な形に。
評判となったねずみやが、「江戸から来たんだ、泊めつくれ」と旅人からいわれ、「あそこにいる人が泊まるのを待っている人たちの最前列。最後尾は小田原まで続いているので小田原まで行ってください」とにべもないのがおかしい。

今日はこれから高校時代の友人と飲み。最近歯茎に菌が入って腫れているので抗生物質を飲んでおり、酒は飲んでいないのだが大丈夫か?
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プチ人形町落語会 [落語]

プチ人形町落語会
於:人形町 日本橋社会教育会館

三遊亭遊馬 『百川』
三遊亭兼好『町内の若い衆』
柳家三三『山号寺号』
笑福亭たま『寿限無』
旭堂南湖『難波戦記より 真田大助』
春風亭一之輔『蔵前駕籠』
論破王決定戦

GW恒例、年に一度のお楽しみの会。
前の会の会場からもほど近く、小網神社へお参りもしながらのんびり歩く。

これまでは毎回オープニングトークでじゃんけんをして出演順を決めていたのだが、今年は楽屋で「厳正なるあみだくじ」を行ってすでに決めてきたという。「毎年この時間が無駄だったとようやくわかった」と兼好師。
昨年のオープニングトークでは撮影可だったのに、カメラを持っていないという悔しいことがあった。今年はその轍は踏まぬと重い一眼レフを背負ってやってきた。……のに撮影タイムなし。……うんまあ俺初回から皆勤だけど、撮影タイムあったの去年だけだったしね。

トップバッターは遊馬師。……あれもしかして今年初かい? いや土日の会はみんな飲み会付きだし、こないだ寄席のトリは一蔵師の鈴本トリと重なって、初鈴本主任を優先しちゃったんだよな……。ファンにあるまじき……といいつつ、土日に普通の会やってよー。
「最近は人手不足だそうで」と振ってから『百川』に。
え、この会でそんな大ネタを? というか毎年この会はネタ出しをしてチラシなんかも作ってるのだが、今年は何も情報がなかったな。たまさんが時間がなかったのか。
百兵衛さんの訛りがいつもよりもだいぶ強めで、聞き慣れている耳でもだいぶ聞き取りづらいほど溶けている感じ。それがまた面白い。
くわいのきんとんを丸呑みして百川の主人と話しているところで切り上げる。このときオチを盛大に噛み倒す。これが大いなる伏線となるとは……。

兼好師、いただき女子が短期間に一億五千万集めたことに感心している。GWは男が女性に金を巻き上げられることが多いのだとか。
『町内の若い衆』は相変わらず金公のおかみさんのキャラクターがすごい。
私はひとつだけ兼好師で気になっていることがあって、サゲのセリフを言いながら頭を下げるのでオチが最後まで聞こえないことがある。今日も「町内の若い衆が」で頭を下げきってしまった。この噺のオチのいちばん大事なところは「若い衆がよってたかって作った」っていうところだと思うんだけどなあ。

三三師、最近は浅草は外国人ばかりだといい、彼らが着物を着ている見て「半衿のところがこんな感じでピラピラしていますな」と着物の中から首筋に手を出してピラピラと指を動かすと大いにウケ、「そんなに評判がいいならこのまま噺やりますけど」。
アドリブの山号寺号では「遊馬さんエロオヤジ」「一之輔さん問題児」など。ここらへんはいろんな時代が混ざってカオスになるのが楽しい。

たまさんは「これから『寿限無』をやります。……というと『そんなんやめてくれ、もっとちゃんとした噺を聴かせてくれ』っていう人いますけど、そういう人ほどちゃんと『寿限無』を聴いたことがない」という。……そうなの?
寿限無の言い立てははスタンダードな形ながら、寿限無氏の晩年を描いた噺。『寿限無』の改作というかアフターストーリーみたいなものはいくつか聴いたことがあるが、なんだか回り回って私も実際には聴いたことがないけれど本来の『寿限無』のサゲみたいな終わり方になっていた。

南湖先生、毎年書いてるけど南湖先生の声を聴くと「GWだなー」と思う。
講釈のスタンダード、軍記物をテンポよくぽんぽんと語り続ける。落語の『やかん』や『五目講釈』で聴いている元ネタを聴いているようで楽しい。

一之輔師、「毎回たまアニさんにネタ出しをしろっていわれて出すんですけどねー、『蔵前駕籠』をトリネタのつもりで出してないんですよ」と相変わらず気怠げに。ていうかさっきも書いたけど今年ネタ出しの情報どっかにあった? チケット取ったe+の該当ページにも会の詳細はほとんど書かれてないんだけど。
「女郎書いの決死隊」男の暑苦しさと駕籠屋の親方のシニカルな口ぶりとの取り合わせが面白い。

大喜利は「論破王決定戦」。客からYes/Noで答えられる形式または二択となる選択肢が提示されている問題を集め、そのお題でふたり一組でディベートするというもの。
初戦は三三師vs一之輔師。テーマは「日本人が食べるべきお菓子は和菓子か洋菓子か」。和菓子派が三三師で洋菓子派が一之輔師。
自分がどちらの意見を主張するかは自身の本来の主義主張とは関係なく司会のたまさんに振り分けられる。なので洋菓子好きの三三師が無理矢理和菓子派の主張を繰り広げることになるのだが……。結構三三師ってこの会の大喜利でルールを無視するというか根底からひっくり返りかねないことを言い出すきらいがあるような。
とりあえず持ち時間1分でそれぞれ主張を行い、もう1分でディベート(罵り合い)をするというもの。とりあえず最初のお題は一之輔師が勝利する。
二回戦は遊馬師vs兼好師。おいおい俺はどっちを応援すりゃいいんだ。でテーマは「落語界にコンプライアンスは必要か」。必要派が遊馬師で不要派が兼好師。遊馬師は「コンプライアンスは必要です。なぜならコンプライアンスができたからです」と主張としてはほぼ中身がないのだが、あの声と堂々とした喋り方で説得力がものすごい。一方兼好師はいつもの立ちトークやマクラそのままにとにかく面白く不要説を説く。だがディベートになると遊馬師の堂々とした話しっぷりが兼好師のツボに入ってしまい、ほぼなにもできないまま寄り切られた感じに。ここでも遊馬師は噛みまくりながらも力技でねじ伏せたような一戦。
三回戦にたまさんvs南湖先生。テーマは「パパ活した議員は議員辞職すべきか」。辞職派が南湖先生で辞職不要派がたまさん。理論としては完全にたまさんなんだろうが、女性客が多かったからか主張は受け入れられずに南湖先生の勝利。
準決勝は遊馬師vs一之輔師。なお南湖先生はシード。テーマは「『笑点』メンバーは60歳で定年にすべきか」。定年必要派が遊馬師で不要派が一之輔師。これは詳細は書けないが私の中のベストバウトだった。一之輔師もメチャクチャなことをいっているが、遊馬師はさらにメチャクチャなことをいい声でいい、好楽師の弟子の兼好師も巻き込んで超カオス。もはや怪しげなセミナーか宗教家のようになってきた遊馬師が勝ちをおさめる。
決勝戦、遊馬師vs南湖先生で「大阪万博マスコットのミャクミャクは悪か」。「悪ではない」が遊馬師で「悪」が南湖先生。むしろ大阪万博自体が「悪」となっており遊馬師不利かと思われたが、あの怪しげトークで会場全体を怪しげな教えに染めていく。「マスコット」を「マスカット」と噛み、「今日は私は噛む日です。私は噛みます。なぜなら私は神だからです」と怪しさはいよいよマックスに。三三師も「このために今日カミカミだったのか! まさか伏線だったとは……!」と悪ノリ。「さあ皆さん私を信じなさい。私は神です」ともう会場は完全に遊馬師のペースに飲み込まれていた。もちろん優勝は遊馬師。
いやー、落語ファン歴=遊馬ファン歴で、15年以上遊馬師を追っかけてた俺が遊馬師の新たな才能を目のあたりにできるとは。来年も絶対にこよう。
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入船亭扇橋の会 [落語]

入船亭扇橋の会
於:都内某所

入船亭扇橋『真田小僧』『黄金餅』

今日は落語2つ予定があるので朝しかバイクに乗る時間がない。なので早起きして片道2時間くらいで行けるところ……と考えて親父の墓参りでも行くか、と思いつく。親父の墓はなんでか我が家とは縁もゆかりもない場所にある。母親がいうにはいい寺がなかったということらしいが。
埼玉の北の方にあるのでちょうどよかんべ、時間が余ったらメシでも食おう、と思っていたら甘かった。まあ道が混んでるのなんの。東北自動車道と並走している122号はビッチリ。まあもう半クラでの低速走行の練習と思うしかない。
結局目的の半分くらいの距離で断念して戻ってくる。それが結果的には正解だった。ゆっくりメシを食って会場へ向かうと時間ピッタリ。

かわら版などにも情報を出さず、チラシなども撒かない、会場の常連客に向けた会。会のタイトルも別にちゃんとあるんだけど、まあ一応。
扇橋師のブログにも出ていない。

一席め、先日の「噺す男」の裏話をたっぷりと。まあほぼほぼグチというか。
芝居なので小道具があるのだが、それがあると噺家はかえってやりづらいのだとか。酒を飲むシーンでは一升瓶と湯呑みを使っていたのだが、「あるとできないんですよ。芝居の役者さんは『動きの幅が広がる』っていうんですけど、噺家は逆です」だそうで。
『噺す男』に出てきた「元噺家で木戸番として働いていた男」にはモデルがいるそうで。先代柳枝師の弟子で、先代の扇橋師とも近い世代の人だったとか。
「一席めに『一目上がり』をやって、ひとり芝居で『一目上がり』についてイジる場面がある。で、そのひとり芝居で先代文楽の『心眼』の良さを語る場面があって、落語の二席めで『心眼』をやるんですよ。……地獄でしょ!?」。あー俺もプレッシャーすごそうだと思ったけど、やっぱりなあ。
「演出としては洒落たことやってんなと思いますけど、そもそも『一目上がり』なんてウケないんですよ。『一休禅師の悟だ』『五!?』『ドンッ』ってないでしょ。で『心眼』ですよ。ありがたいことにお客さんも半分落語ファン、半分芝居ファンなんですよ。落語ファンは芝居も見てくれるんですけど、芝居ファンは落語に興味ないんですよ。芝居ファンにしてみたら『コイツ地味で暗い噺ばっかりやってんな』って思われるじゃないですか」。まあ『心眼』は笑いどころも少ないしいきなりは辛いような……。
落語と芝居の稽古の違いとかについてもいろいろと思うところがあったようで、戸惑いなどもあったようだ。「我々の稽古なんていい加減ですから。確かに長い噺のアゲの稽古なら2時間とかかかりますけど、芝居だと最低5時間」だったそうで。
「真打に昇進してから前座さんに『お稽古お願いします』と頼まれることもあるんですけど、私は基本的に断ってるんです。私は師匠から『できるだけ元を辿れ』と教わってますから、『俺じゃなくてもっと上の師匠にお願いしなさい』と。でも中には聡い前座さんがいて、その子の師匠がそばにいるときに私に頼むんですよ。そうするとその師匠から『悪いんだけど頼むよ』って言われるんで、『わかりました一之輔アニさん!』っていうしかないじゃないですか」。
「で、稽古つけるときはできるだけ教わったとおりにやるんで、自分のくすぐりとか削るんですけど、こないだそうやってたら自分の知らない言葉が自然と口から出てきて驚いた。なので今日はその噺を……』と『真田小僧』。
「薩摩に落ちた」の最後まで。
「自然と出てきた知らない言葉」ってなんだったんだろうなあ。

二席め、小学生の頃に行った林間学校で、近所の方までにお土産を買ってくるように、と親御さんから言われた扇橋少年が買ってきたものの話をマクラに。
扇橋師の『黄金餅』は初めて。
長屋から麻布十番までの道のりを並べたあと、「今のルートをGoogleマップで調べると約2時間かかる。確かにそれはくたびれる」と現代的。
焼き場のシーンでは本来グロテスクな感じもするが、金兵衛の鬼気迫るテンションに押されるのかあまりそんな感じもしない。
オチも「その金を元手に大儲け」で終わらず因果応報的なものに変えられていた。でもその形はいくつかの他の噺でもやってるものだしなー。
タグ:入船亭扇橋
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