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人形町噺し問屋 その105 [落語]

人形町噺し問屋 その105
於:人形町 日本橋社会教育会館

三遊亭兼好 ご挨拶
三遊亭げんき『無筆の小咄』
三遊亭けろよん『真田小僧』
三遊亭兼好『錦の袈裟』
山本光洋 パントマイム
三遊亭兼好『鰻の幇間』

いったいいつまで暑いのか。暑いのは好きだけど、さすがにこれだけ続くとなあ。まあ暑さ寒さも彼岸まで、だから来週くらいまでは仕方ないのか。

兼好師のご挨拶も暑さの話題から。もうここ最近は導入がこれで固定されてる感じ。
「今年は日本全国いろいろ周りましたけど、もうどこも暑いの。北陸や東北でさえ暑い。こないだは佐久平という新幹線なら軽井沢の隣の街へ扇遊師匠と白酒アニさんとらっ好くんの4人で行ったんです。軽井沢っていったら避暑地じゃないですか。でも暑いんです。白酒アニさんて黒いところがないパンダみたいじゃないですか。だからもうすっごく暑いの。ずっと『避暑地のくせに暑いのかよ』って文句言ってるんですよ。お昼に『峠の釜めし』を出されてもそれを食べながらずっと『避暑地のくせに。釜飯なんかで騙されない』って」。それは暑苦しそう……。「それに比べて扇遊師匠は大人ですねえ、文句も言わず新幹線を降りた途端に『帰ろう』って……」。
「あのー、コロナ禍中はどこいってもモニターに顔が表示されて検温する装置があったじゃないですか。今あの映像って裏で売買されてるんですってね」。ええっ、と会場に悲鳴が上がる。「この時間のこの場所にどういう年齢層の男女がきているのかっていうのがすぐわかる。何なら体温もわかる」。いわれてみればもっともだけど……。「でも皆さんは『なんだか気持ち悪い』くらいじゃないですか。私はさらに恥ずかしいんです。ご存じの方もいらっしゃるでしょうが、私は写真を撮られたりするときに必ずこうするんです」、と顔の前でダブルピース。もうよく存じております。「検温のときもほとんどこうやってた。で、さらに周りに人がいないときにはカメラに向かって話しかけてた。『ほーらやっぱり熱ないだろ』とか……。だから買い取った業者が映像を見たら『またこの着物のおじさんがなんか言ってる』って思われる」。まあそれはなかなかの奇行かと……。
「今年は『落語教育委員会』で東北ツアーをやりました」ということで、会津若松では毎回冒頭にやる『携帯の電源を切れ』コントを始めたらポカンとされた話や山形から秋田へ行くのは鈍行しかなくて横向きシートの列車で4時間かかった話、仙台で溜まった洗濯物を洗おうとしたらホテルに泊まっていた女子高生の集団にランドリーコーナーを占領されていた話など。着物の帯なども洗濯しようとしていたため、そのときは電気ポットのコードを帯代わりにしていたそうで、それを女子高生に目撃されてしまったそうな。「ようやくいなくなったと思って洗濯機を開けたら、洗濯物がまだ入ってるんです。女子高生の洗濯物だとはわかっているので、勝手に出すわけにも行かない。どうしようかと思って考えていたら、女子高生たちが戻ってきた。そういうときって女の子って『キャー』とか『やだー』とかいわないんですね。喉の奥から『お゛お゛う゛っ』って……。私がランドリーコーナーから出ていくと、後ろから聞こえてくるんです。『やだーもう一回洗わなきゃ』……。おじさんに洗濯物を見られたらもう一回洗わなきゃいけないんですか!?」。理不尽。

げんきさん、毎回聴くたびに徐々に噺家っぽい話し方になっているような。

けろよんさんの『真田小僧』は初めて。前座らしくほぼ兼好師のまま。兼好師で聞いたとこのないくすぐりもあったんだけど、なんだっけ……。「10円ここまでーーーー!」にはまだ多少テレが見える。
一時期うんざりするほど聴いた『真田小僧』だが、なんと去年の真打披露興行で聴いて以来約1年ぶり。やっぱり前座の間でもネタの流行り廃りがあるのだろうか。

兼好師の一席め、「内閣が多少変わりましたけど、写真なんか見ててもなんだか重みが足りないような気がしますね。でも最近はみんなキレイになった。男性化粧品の売上がコロナ前から13倍になってるんですって。確かに渋谷なんか行くと若者はすごくキレイなんです。『きたなくたっていいじゃないかおじさんだもの』ってのは私の世代くらいまでで終わりじゃないですかねえ。これまでは電車の中で若い子に『汚いおじさん』という目で見られても、周りを見回せば必ず同志がいた。でもこれからは若い子からだけでなく、同世代のオジサンからも『怠りましたね』と冷たい目で見られるのかもしれません」。やだなあ俺完全に冷たい目で見られる側じゃん。
「昔はもっと社会全体が若かったので、『隠居』といっても30代40代の人もいた。『若い衆』なんていったら今でいう高校生くらいで、女の子にモテたいなんて考えながら毎日が楽しいんでしょう」と『錦の袈裟』に。
与太郎のおかみさんが若い衆から「ツノの生えた一休さん」と恐れられているのがたまらない。錦のふんどしを散弾するときも「ポクポク」と一休さんのあのポーズをするのもおかしい。錦のふんどしを締めた与太郎を見て「お前さんとも長いこと一緒にいるけど、股ぐらを尊敬したのは初めて」というひとこともすごい。
夜が明けて振られた男たちが与太郎を迎えにいったときに次の間の棚を漁り、「何が出てきた?」「羊羹」「甘納豆じゃねえのか」といいながらなぜか羊羹を頬張るのも楽しい。

二席め、「最近はどの業界でも人手不足と聞きますが、落語界はそんなこともなく……。お客不足の方が深刻ですね。人手不足でなくなる仕事というのも増えて、お座敷芸ではない幇間、いわゆるたいこもちなんてのも絶滅したんでしょう」と『鰻の幇間』に。兼好師では6年ぶり。
細かい繰り返しが多いこの噺だが、それをさらりとあっさりめにしているのでテンポよく噺が進む。
旦那の前で酒やお新香、鰻を飲み食いするときに、口に入れてから一瞬の間があき、それが一八の戸惑いが詰められている。
旦那が帰ったとわかった後で、まずい鰻と思いながらも「帰ったんなら旦那の分も食べちゃおう」と自分のお重に移し、お茶をかけてウナ茶でかっこむのが一八のセコさというか図々しさが出ている。それを食べているときに勘定書きを見せられてむせるのがいかにも兼好師らしい芸の細かさ。
騙されたと悟った後で女中に小言をいうシーンではさすが兼好師、酒も徳利もお猪口もお新香も鰻もすべて文句をつける内容がオリジナルの内容になっていた。
特に鰻に対して「これ鰻か? こんなに骨ばかりで……。これタチウオかなんかを蒲焼にしたんじゃないの? ……なんだ(人差し指を口の前に立てて)『シー』って!」というのがおかしい。この後に「お供の方が『本物の』鰻を5人前お持ちになりました」というセリフがあり、「実はこの店は鰻だけはまともなんじゃないか、男はそれを知ってて一八を連れてきてタカったんじゃないか」などといろいろな想像が膨らんで楽しい。

明日は健康診断のため絶食禁酒。飲み食いできる時間は開演時間中に過ぎてしまったので明日まで何も食えない。まあ不味そうな食い物の噺で助かった。
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