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扇辰日和VOL.68 [落語]

扇辰日和VOL.68
於:中野 なかの芸能小劇場

柳家寿伴『黄金の大黒』
入船亭扇辰『野晒し』
さとうさおり ライブステージ
入船亭扇辰『死ぬなら今』
入船亭扇辰『夢の酒』

最近なかの芸能小劇場に居続けが多いな。
とはいえ2時間空いているのでいつものように高円寺までタイ料理を食べに行く。
いつもはワンコインでタイカレーを食べられる店に行っていたのだが、この前駅前にほぼ同じ値段でさらにメニューが多い店を見つけた。最初の店は最近私が一番好きなレッドカレーをランチメニューから外してグリーンカレーしかなくなってしまったのだが、駅前の店はレッドカレーもある。こないだはさらにひとりでランチメニューを2品頼むという『孤独のグルメ』みたいな食べ方をしてしまった。それでも千円ちょっとなんだからコスパはすごくいい。さて今日はどっちにしようかなーと考えていたら、途中でまた別のタイ料理屋を見つけた。高円寺なかなか競争率高いな。
で、そこは蒸し鶏ご飯やひき肉炒め、タイラーメンなどの普通のランチメニューがいくつかあるのだが、その全品にタイカレーやご飯、サラダ、スープ、デザートの食べ放題が付くという。いやいやいやご飯メニューのサブ食べ放題メニューにカレーって。しかしもしそれが本当なら2品頼むよりも安上がりだ。
物は試しと入ってみると、本当にランチバイキングがやっている。カレーはグリーンカレーとマッサマンカレー。レッドカレーでなかったのは残念だが、タケノコの炒め物や春雨サラダもある。この春雨サラダのヤムウンセン好きなのだが、あまり食べる機会がないのでこれは嬉しい。食べてみるとまあエビは入っていないが味はヤムウンセンだ。蒸し鶏ご飯のカオマンガイもちゃんと炊き込みご飯のようだ。
結局全品を腹いっぱいになるまで食べてしまう。バイキングってやめ時が難しい。
しかしこれでまたなかの芸能小劇場にきたときの昼飯の選択肢が増えた。

さてそんなパンパンの腹を抱えて「扇辰日和」に。
ネタ出しは『野晒し』。こないだ聴いたばかりだからどうしようかなーと思ってはいたのだが、まあいいかと当日券で入る。予約と当日で値段が変わらないのは助かる。
余談だが某主催者の半年以上も先のチケットを4枚セットとかで売ってるのもどうかねえ。当日券で買うのと1枚あたり200円しか違わないから全部で800円しかお得にならないのに、半年後にどうしても外せない用事が入ってしまったら2500円分がパーになるわけで。あまりにもリスクに対してリターンが少ないような……。別に整理番号が早くなって入場順が早くなるっていったってなかの芸能小劇場はほぼどの席で見たって一緒だしなあ……。

前座は寿伴さん。……やっぱりはい辰さんやめちゃったのかなあ……。いや辰乃助さんも入門してすぐに腰をやってしばらく休んでた時期があったからそういうこともあるかもしれない。
さて寿伴さんは落ち着いていてなんとなくオーラというか雰囲気がある。
噺もてらいがなくいかにも柳家の前座という感じ。なんかすごく好印象でなんだか応援したくなる。
大家に呼ばれた理由を探して長屋の連中が話しているときの「大家の猫を食った一件かな」というくだりに「コイツの嘘に付き合うな、大家の猫さっき見たよ」と加えたのは猫好きとしては好印象。やっぱり噺の中とはいえ、猫食っちゃうのは猫好きとしてはちょっとね……。

扇辰師の一席め、寿伴さんの紹介から前座時代の苦労話をし、「それでも最近の前座は大変だと思うよ、噺家多すぎだもん。いちいちそれぞれの師匠のお茶の好みや着物の畳み方を覚えなきゃならないし、それに出囃子の太鼓も全部覚えなきゃならない。三味線は猫や犬の皮を使って太鼓は馬の皮。動物愛護団体に怒られそうだけど、それでもイルカやクジラの皮じゃなくてよかった」と実にスムーズにサゲの仕込みを入れて噺に入る。
今日も『さいさい節』は絶好調。なんか今日はいつにも増してコブシが効いていたように思えた。
幇間の新朝の「あそこにアタシがいたのをご存じない? んんー愚か愚か愚か~」というセリフがなんか妙に好きなんだよなあ。

さとうさおりさんは私はこの会で3回め。
前に見たときはもっと落ち着いたような雰囲気に見えたんだけど、今日はショートカットにワンピースという出で立ちでなんかかわいい。
スリーフィンガーの弾き語りが好き。
なんだろうこの最後の音を押すような歌い方なんか誰かに似てるなーと思うんだけどそれが誰かが思い出せない。

扇辰師の二席め、「今日の『野晒し』は結構前からネタ出ししていたんですけどね。今朝もう一席何やろうかなと考えてて『前回何演ったっけ』と確認してみたら前回も『野晒し』演ってたんだよ」。はい。
「でもネタ出ししててもう変えられないから演りましたがね。申し訳ないんであと二席演ります」と大サービス。あ、知っててネタ出ししたんじゃないんだ……。
先日まで池袋のトリをとっていたので、そのために用意していたけれども他の噺家とついたりなんだりしてできなかった噺、として『死ぬなら今』。扇辰師では初めて聴くんじゃないかな。
寄席サイズだからかコンパクトに短めに。しかし閻魔大王の表情などはやっぱりいい。たもとに賄賂を投げ入れられたときの目の泳ぎ方などもなんかリアルで面白い。

三席めの『夢の酒』、先日撮りだめてた『超入門!落語ザ・ムービー』を見ていたら、扇辰師の『夢の酒』にアリキリの石井とたんぽぽの白鳥が夫婦役で芝居を当てていた。それがまた妙にしっくりときていて、今までお花はヤキモチ焼きだけれども可愛い女性というイメージがあったのだがそれを塗り替える強烈さがあった。
なので今日は新しいイメージで新鮮に聴けた。
大旦那がお花からすぐに昼寝するように強要されるシーンでは、お花を止めても止めても話すことをやめずに結局押し切られてしまうというのを大旦那のセリフとリアクションだけで表現するのだが、このシーンがやたらに長いのがまたおかしい。

帰りはすっかり晴天になり、バイクで走るのが気持ちいい。夕方は雨の予報だったので帰りは雨を覚悟していたのだが。こういう「話が違う」のは大歓迎。
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なかのらくご長屋 兼好毎月連続独演会 30年9月 [落語]

なかのらくご長屋 兼好毎月連続独演会 30年9月
於:中野 なかの芸能小劇場

三遊亭しゅりけん『元犬』
林家扇『ぞろぞろ』
三遊亭兼好『藁人形』
三遊亭兼好『時そば』

微妙な空模様。
天気予報では雨降らないと出ていたために、すっかりバイクで行く予定で時間繰りをしており今から電車行ったら間に合わない。
仕方ないので小雨の降る中バイクで会場に向かう。話が違うじゃないか。

しゅりけんさん、プログラムにはじゃんけんさんと出ており、今日は急遽だったらしい。「悲喜こもごもあるでしょうが」ってなんか言葉の使い方がおかしい。
出番は本当に急遽だったらしく、なんか噺もどことなくぎこちないというか思い出し思い出しやっているような感じ。
と思ってたらご隠居の家で「鉄瓶がちんちん」のところで完全にホワイトアウト。ここまで見事な絶句も珍しい、というくらいストーンと止まった。それでも(本心はどうかわからないが)あまり焦ってるようにも見えず、会場の空気もなんだか暖かい。しゅりけんさんのフラなのか。

一席終わって袖に引っ込み、めくりを持ってくる。めくりには兼好師の名前が出ており、さっき「私の後に二ツ目さんが出て、その後に師匠」って言ってなかったっけ? と思っていたら何事もなかったかのように引っ込める。そして出囃子も鳴らずに無音。
いろいろテンパりすぎだろ、と思っていたら扇さんが登場。どうやらCDが壊れたっぽい。

兼好師と扇さんというのも珍しい組み合わせ。「諸事情ありまして『出ていったら』と言われまして」とのことだが、稽古をつけてもらいにきてたのかな。今までそのパターンで何人かこの会に出てるし。
「……皆さん、何を言いたいのかわかってます。(頭を指して)これでしょう。でも18の頃から20代の半ばの女性としていちばんキラキラした時代を穴蔵のような埃っぽい楽屋ですっぴんで過ごしてきたので、その反動なんです。髪があるうちはいろんな色に染めてみたいなと思って」とのこと。18からかあ。確かに女流で10代からというのは珍しいかも。
でもねー、俺の頭が固いんだろうけど、そのルックスだとなんか噺が頭に入らないんだよなあ……。頭に浮かぶイメージと目から入ってくる情報がうまく融合しないというか。いっそ新作の方が合いそう。

兼好師、先日久しぶりに扇さんと会ったときにすぐにはそれとわからず、じゃんけんさんかしゅりけんさんがそういうお店で借金をして師匠に取り立てにきたのかと思った、とのこと。
「彼女は木久扇師匠の弟子というハンデを背負ってる」とさらりと毒を吐き、「前座仕事というのはお茶汲みにしろ着物を畳むにしろ、女性の方が上手いんです。だから前座時代は重宝されるんですが、その分二ツ目に昇進すると仕事が激減する。そこにいくと男は気の利かないのは前座の頃から使われないのであまり二ツ目になってからの差がない。だから彼女はいまあ大変なときだと思いますよ。ぴっかり☆でなし、一花でもなし、かといってこみちでもないという」。確かになあ。
そんな女性たちの苦労の話から怖い女が出てくる『藁人形』に。兼好師では珍しく、正統派の滑稽噺ではない。『藁人形』は扇辰師でしか聴いたことがないなあ。
おくまが西念を騙すのは同じだが、扇辰師は女郎仲間と賭けで騙したのに対し、兼好師のはストレートに「ああいうのが以外にお金を持ってるんだ」と巻き上げる。……どっちもタチ悪いなあ……。
途中で「さあこうなると暖簾に腕押し糠に釘、まったく反応がない」のようにさらっとサゲの下準備というか仕込みを入れていてこういうところが上手いと思う。

二席めは「そんなに暗くて長い噺は演りません」と江戸で蕎麦が流行った来歴から『時そば』に。
二日めの蕎麦屋のうどんより太いそばをたぐるときの「どぽぽぽぽぽ」という音がなんとも言えない。
予告どおりさらっとやってドンとウケて終わり。
これだけメジャーで誰もが知る噺を、これだけ毎回毎回爆笑させられるというのは見事だと思う。
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