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第九回 大師匠噺 [落語]

第九回 大師匠噺
於:両国 お江戸両国亭

三遊亭ごはんつぶ『転失気』
隅田川馬石『ざるや』
三遊亭天どん『寝床』
三遊亭天どん『よかちょろ』
隅田川馬石『笠碁』

予報通り移動時に雨が降り出す。最近の天気予報はすごいなあ。
本来はこの会は天どん師と龍玉師の二人会なのだが、今日は龍玉師がダブルブッキングをしてしまい、もう一方の方へ行っているために兄弟子が代演だという。もう一方の会は雲助師との会だそうで、じゃあしょうがないか。

ごはんつぶさん、今日は古典の会だからか前座さんも古典で。
なんか落ち着いた感じ。
なぜか登場人物が全員上を向いた感じ。珍念はいいんだけど大人も上を向いているので視線が合わないなーと思っていたら「転失気」がおならだとわかったところで「和尚も知らねえんだ……お時間でございます」と斬新なところでブッた斬る。

これには馬石師も驚いたようで「あれいいんですかね」と戸惑い気味。
それにしてもごはんつぶって、とやっぱり名前に反応する。子どもの頃に口元のホクロを指して「ごはんつぶついてるよ」と散々いわれたらしく、「ごはんつぶって俺のことかなと思った」とか。
前座時代を思い出したのか、最初の1年間は本当に嫌だった、と話す。
縁起担ぎを立前座から厳しくいわれ、ほぼイチャモンに近いこともあったとか。
そんなところから『ざるや』に。
ざるやを呼び止めるところからでちょっと短め。
馬石師のざるやは「旦那から巻き上げてやろう」という悪意というかいやらしさをあまり感じない。
多分馬石師のキャラが出てるんだろうなあ。

天どん師の一席め、「あの一門はスキあらば『ざるや』を演るなあ」とぽつり。たしかにあまり他の一門より聞くことが多い気がする。
ごはんつぶさんの高座にも触れ、「10分やるっていったときに『転失気』演りたいですっていったんですよ。あいつ10分以内の噺も何本か持ってるんですよ。稽古つけたんで。で、『噺を切ってもいいんですか』って聞かれたんで刈り込むのかなと思って『いいよ』って答えたんです。そしたら10分過ぎても終わらないからあと5分くらいこぼれるかと思って馬石師匠に『うちの弟子がスミマセン』って謝ってたんですよ。そしたらいきなりアレですから。クビにしてやろうかな」そんなに?
天どん師は先にネタ出しの『寝床』を。
旦那が折に触れてちょいちょい「ぼえ~」と挟んでくるのがたまらなくおかしい。ジャイアンか。
ジャイアンキャラらしく、旦那は周りが聴きたくないと思っているということにギリギリになるまで気づかない。そしてちょっとおだてただけで機嫌を直すのもそれっぽくておかしい。

二席め、「旦那の遊び」というテーマの会なので二席めもそうしようかと思ったが、大旦那が遊ぶ噺というのはあまりなく、しかも2回くらい前のこの会で演ってしまったということで、若旦那の遊びの噺で『よかちょろ』に。
この噺は久しぶりに聴く。大旦那をおちょくる若旦那のキャラが天どん師にハマっている。

馬石師の『笠碁』は初めて聴く。
いつも柳家のものばかりで、古今亭の型は初めてかもしれない。一之輔師が馬生型かもしれないとのことだが、かなりオリジナル入ってるしなあ。
笠をかぶった旦那が首を振ってお店を覗き込むという場面はなし。
喧嘩していてもやっぱりどこか穏やか。馬石師のこのえもいわれぬ柔らかい雰囲気ってのはちょっと独特のものがある。

終演後、受付で天どん師がトリの鈴本七月上席のチケットを師が手売りしていたので一枚購入。
天どん師コンスタントにトリとっててすごいな。
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なかのらくご長屋 小辰・吉笑二人会 [落語]

なかのらくご長屋 小辰・吉笑二人会
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭小辰『鈴ヶ森』
立川吉笑『明晰夢』
立川吉笑『黄声』
入船亭小辰『ねずみ』

降水確率が高いので電車で行く。
ハシゴする予定なのでバイクの方がいいんだけど、雨の日は乗らない軟弱派なので。

やっぱり小辰さんもこの会の開始時間の早さを嘆く。
今日はこの後に同じ会場で菊之丞師や小満ん師などの独演会があり、全部で5公演あるそうだ。開演前にアナウンスがあり、さすがに最後は失笑というかそんなにやんのかよ、というような笑いが漏れる。
小辰さんも「5回転ですか?」と驚いた様子。こういうのも「回転」っていうのかな? 私は「回転」というとうっふん系のお店で使われる用語だとばかり。小辰さんの出身の大塚も本場というか盛んだからね。
「このお客さんたちも何人かは残るんじゃないですか? いや、ここじゃなくたってどうせこの後どこか他の会に行くんでしょ? 朝早くからくるお客さんは大体そういうもんです。中野の駅前からだってブロードウェイを通らないで脇の道からくるような人たちでしょ?」なぜわかる。その通りです。
後の師匠たちとあまり被らないような噺をしなければ、と少し考えて泥棒の噺を選ぶ。
なんというか小辰さんの話しぶりは落ち着くというか心地よい。二席めの『ねずみ』もそうだが、あまり派手なことをしなくてもなんかおかしい。『鈴ヶ森』のようにかなりスラップスティックな噺でも派手すぎないからか聴いていても疲れないのが心地よさの元かもしれない。

吉笑さん、足を怪我しているそうで、正座用のあいびきという補助椅子を持って登場。
MRIを撮りに行ったそうだが、閉所恐怖症気味なところがあり、それを紛らわせるためにMRIに入っている間に落語の稽古をしたのだが……という話をマクラに。もうほぼ治ったとのことだが、ちょっと足を引きずりながら気味だったのでお大事にしてほしい。
一席めは古典チックな新作。落語黎明期の時代の噺で、友人の誘いで寄席なるものに行ってみると、出てきた前座が先程自分たちが話していた内容をそのまま落語として話し始め、さらに劇中劇ならぬ噺中噺の中の人物がまた寄席に行き……と入れ子構造になっている。
さらに最初に登場した人物たちも「俺たちも落語だ」とメタ的なことを言い出して……という非常に複雑というか、今どの階層にいるのかわからなくなる。が、そのカオスな感じが面白い。毎回思うがよくこんな噺思いつくなあ。

二席め、自分は立川流なので粋やらいなせやらがよくわからず、先程の噺はその憧れなのかもしれないとのこと。
立川流の中で粋な噺家といえば先日亡くなった左談次師で、楽屋に入ってきたときの「おはよう」を「おぁんよ」というのが粋だった、という。他の協会だと雲助師も同じように「おぁんよ」というらしい。
その挨拶と同じくらい声をかけられて嬉しがったのが「あんちゃん、やってるね」という言葉で、これは万能の言葉なのだという。
二席めも古典風新作で、町内対抗でかけくらべをしているのだが、町内一の韋駄天のタケが隣町の代表に勝てない、ご隠居さん知恵を貸してください、という噺。
ご隠居は応援の差が原因だというが、自分たちだってタケに「あんちゃん、やってるね」と応援しているという。そんなものは応援といえず、必要なのは「黄色い声」だと実演してみせる。正座しながらぴょんぴょんと飛び跳ね、足は平気なのかと心配になる。
これは珍しく理屈っぽくない感じ。
いつもは状況説明がちょっと鬱陶しいと思ってしまうことがあるのだが、今日は二席ともそんな印象はなく楽しめた。

終演後、近くの松乃屋で昼食を摂る。
近くの席に3~4歳くらいの女の子を連れた親子がいて、女の子はどこか怪我をしているのかしきりに痛い痛いといいながらずっとぐずっており、時折大きめの泣き声を上げる。
うーむ食事中ずっとこのぐずりっぷりを聞かされるのか、と思っていたのだが、親子が頼んだものがきたら「からあげたべる」といってあっという間に機嫌が治ったようだ。唐揚げの偉大さをまざまざと見せつけられる。
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