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けんこう一番!第二十一回三遊亭兼好独演会 [落語]

けんこう一番!第二十一回三遊亭兼好独演会
於:国立演芸場

三遊亭兼好『子ほめ』
三遊亭けろよん『転失気』
三遊亭兼好『花筏』
田ノ岡三郎 アコーディオン
三遊亭兼好『妾馬』

今日は健康診断。うちの会社は健康診断の日は有給を取れという方針なので、いろいろ忙しいんだけど休み。たまたまけんこう一番と重なっていたのでちょうどいいけど。
昨日の夜から絶食した反動で、検査終了後に病院のある新橋で有名な唐揚げ食べ放題の店に行ってランチビールとともにたらふく食らう。あんまり美味しくはなかった。来年は違うとこで食おう。
検査結果は胆石が育っているので再検査したほうがいいと言われた以外は健康。胆石なあ。たまに胸がぎゅうっと痛くなるのは胆石のせいではないかという噂もあるし。
せっかくの有給なのに結局家に帰って昼寝してたら家を出る時間に。もったいないような、休みを満喫しているような。

兼好師の一席め、最近ではマスクを外す方向へ行き始めているが、若い人を中心に外したくないという人も増えているという。「マスクをしている状態というのが普通になっていますから、進学や就職で環境が変わると周りの人に顔、私のいうところの『生くちびる』を見せたことがない」。生くちびるって。
「でもマスクをしているとみんな美男美女に見える。逆にちょっと昔の週刊誌に載ってた容疑者のように目を隠されていてもよく見える。全部見えるとそれほどでもなくなる。要はバランスなんでしょうね。人間は隠れているところを良く想像するんだそうで、『わ、凄い美人』と思っていたのにマスクを外すとがっかり、なんてことがよくある。けど、それは相手にも伝わっています。だからこれからはマスクを外した顔を見てもがっかりした表情を出さずに『想像よりも良かった』とちょっと驚いてみせるのがマナー」と自説を繰り広げる。あながち間違ってないというかホントにそうなりそう。
「最近は寄席の楽屋も変わってきて、芸協の末廣亭に出ることがあるんですけど前座さんが全員女性ということがある。男締めで着物着た女性が手をついて『おはようございます』とか『お茶でございます』とか、老舗割烹にきたみたい。そうなるとパワハラ・セクハラはダメだという空気が寄席の楽屋にも漂ってる。落語界ですよ? 私が前座の頃は先輩が袖から客席を覗いて『今日は酒の噺がウケそうだな』って言われて、口答えできないから『ハイ』って答えて。で、ウケなかったら『ウケねえじゃねえか!』って殴られた。『お前の実力!』とはいえなかったですねえ」ご無体が過ぎる。
「そうなると前座さんを叱るのも難しい。叱るのもそうだが褒めるのも難しい」と『子ほめ』に。
兼好師の『子ほめ』は初めて。
いや、これは……。
テキストに起こせば数多くの前座さんが演っているものとほぼ同じ。
なのにこの軽やかさとリズム感、テンポの良さは一体何だ。え、『子ほめ』ってこんなに面白い噺だったの? 聞き飽きたと思っていた噺をもう一度新鮮に思わせてくれるのはさすがとしかいいようがない。

けろよんさん、珍念がお店と花屋へいく場面をカットし、「行ってまいりまーす……只今戻りましたー。お店では売り切れたそうで、花屋では……」とつなげる。なるほどこういう切り方もあるのか。

兼好師の二席め、最近の体組成計はすごいらしく、身長と年齢を入れて測ると、体型を割り出してそれに似合う服装のコーディネートをしてくれるサービスを服屋と共同開発したのだとか。そらすごいなあ。
「でもイヤですよね、もし体重を測って『似合う服装』としてまわしとか出てきたら。『えっ、まわし!?』ってなる。両国で相撲をやっているときは1回くらい行くようにしてるんですが、こないだ行ったときは浅丘ルリ子さんがいらしてた。ただでさえ細い方なのに、砂かぶりでお相撲さんの横にいるもんですからものすごく細く見える。しかも土俵の脇にお相撲さんがいるのでそれを避けて土俵を見ようとするから身体が斜めになる。そうするときなこもちに刺さってる楊枝のような……」。すごい表現するなあ。
相撲のマクラなので『大安売り』か『花筏』だろうなとは予想がつく。
毎度のことだが、相撲の勧進元が「花筏と千鳥ヶ浜大吉の取り組みをしてくれ」と頼みに来るときに、「花筏は病気ではない」という根拠をいろんな人にインタビューし、それを再現するという演出がおかしい。今日は酒屋の小僧が「知らない人と話しちゃダメって言われてるんで……」とか、芸者が「お客様のことは……え? ……こんなにいただいてよろしいんですか……?」とかインタビュー直前の様子まで再現しているのが最高。
提灯屋が土俵入りする際にお焼香スタイルで塩をまき、取り組み間際に「南無阿弥陀仏」とこぼしたのを大吉が聞いて「やっぱり俺を投げ殺す気だ、……だからお焼香を……!」と伏線回収するのも楽しい。

先日の読み通り広瀬和生氏がきていたので仲入り時にサインを入れてもらう。
広瀬氏は落語の最中にはメモを取っていないのに、なんであんなにこと細かに詳細を覚えてるんだろう。やっぱ東大卒の人の頭脳は違うんだろうか。
と思って聞いてみたら、「終わった後にメモはとってますよ」とちらりと見せてくれた。「自分でも読めないんですけどね……」と笑っていたが、ひとつの会にそんなびっしりとっているようにも見えず。それであれだけの内容の本を書くんだからなあ。俺なんかこのブログ書くのにも「何話してたっけ」と思い出すのを苦労するし、書いたら忘れちゃうのに。

アコーディオンの田ノ岡三郎さん、この会のゲストでは最多の三回め。
『愛の讃歌』『二人でお茶を』に続いて渋谷駅の東急東横線下りの発車メロディ(元カシオペアメンバー作曲だとか)、オリジナル曲の『KITE』、最後に『上を向いて歩こう』。
アコーディオンの右手のボタンはひとつで和音が出るんだと初めて知った。

三席め、正月以外では珍しい黒紋付に袴姿で登場する。
最近はお賽銭もキャッシュレスになってきているとかで、「そんなので御利益あるんですかねえ……」と懐疑的。
出雲大社ではあのしめ縄に五円玉を投げて刺さると良縁に恵まれるという言い伝えがあるらしく。「あれをやってみると自分のが刺さる代わりに落ちてくる五円玉もある。てことはどこかで別れてる人がいるんでしょうねえ」と黒い笑みを見せる。……でも五円玉ってことは最近できたジンクスなのでは……。
昔は身分制度があったので結婚も簡単ではなかったと『妾馬』に。今日は『子ほめ』といい『妾馬』といい、兼好師では珍しい噺が聴けて嬉しい。
冒頭の大家とのやりとりも楽しく、「うまくすれば侍になれる」といわれたときに「えー、侍? でも俺は大工って仕事好きだからねえ。じゃあ二刀流で行こうか。あのしゃっちょこばった服を着て腰にノコギリを挟む」という反応がおかしい。
この八五郎が単なるガサツなだけでなく、幼い頃から苦労を重ねており、気を利かせたりするのが兼好師らしい。「殿様、お土産。大家には『いらねえ』っていわれたんだけどさ」とたもとから佃煮を出すのも楽しい。
そこここに母思い妹思いなことを言ったり、母親も女手ひとつで八五郎とおつるを育てたという設定も加わり、八五郎一家の家族の物語にもなっていた。楽しいだけでなく、ほんわかと心が温まる一席。今はほとんどだれもやらないという八五郎が出世をした後半部というのも聴いてみたいものだ。
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