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らくご長屋 扇辰独演会 [落語]

らくご長屋 第8回扇辰独演会
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰ぢろ『子ほめ』
入船亭扇辰『紫檀楼古木』
入船亭扇辰『匙加減』

映画『幕末太陽傳』とセットの会。もちろん落語だけでもいいのだが、落語映画の傑作と言われている本作を観たことがなかったのでこの機会に観ることに。
なるほどなるほど、『居残り佐平次』をベースにいろんな廓噺のエッセンスが全体に散らばり、落語ファンにはたまらない。
……がWikipedia見てみたらすごい嫌なこと書いてあった。それだけで俺はもう観ることはないだろうなあ。そのシーンが見たくない。

扇辰師の一席め、辰ぢろさんが「親が教員なのに噺家になって親不孝だ」といった発言を受け、「……親が教員だからって噺家になるのは親不孝なのかね!? そんなこといったら俺の親父なんて税理士だよ? ……アイツは選民思想があるな」とチクリ。まあ教員てのは堅いイメージがあるけれど、確かに親はあんまり関係ないような。
「この会の前に『幕末太陽傳』の上映してたんだって。ご覧になってた方は……結構いるんだね。……しかしイヤミなことするねえ。あんな傑作の後じゃ今日は廓噺できねえな」と苦笑する。そんなことないけどね。むしろ『居残り』聴きたい。
扇辰師はもちろん何度も観たことがあるそうで、いろいろと思い入れのあるシーンなどについて話す。「一番いいのは花魁ふたりが中庭で乱闘するシーン。あれは何度でも観られるね」とのこと。
「しかし裕次郎、小林旭、岡田真澄っていう男前で売ってた役者ほど棒読みなんだよね」と笑いながら話す。俺もそれ思った。特に裕次郎。子どもの頃に『太陽にほえろ!』観てたくらいだけど、「こんなに演技下手なの? というか昭和の映画界ってこれでよかったの?」と思ったくらい。
「冒頭に昭和30年代の品川の風景が流れるんだけど、あれを見ると品川もだいぶ変わったねえ。特に海側なんて何もなかったのに、今じゃ未来都市みたいになってるからね」と話す。私は冒頭に出てきた第一京浜の陸橋のあたりを仕事で通ることがあるのだが、たしかに周りの風景は一変している。けどひと目見て「あれ、これ八ツ山橋のところじゃね?」なんとなくわかった。
昔と変わったものといって携帯電話の進化についても。「しかしまさか手ぬぐいでスマホを使う仕草をするなんて思いもよらなかった。しかもそれで通じるんだから」と話す。
そんなあたりから「昔はあって今はないもの」という流れで『紫檀楼古木』に入る。
『幕末太陽傳』を観た後だからか、主人公のひとりであるご新造が芸者あがりか花魁あがりのような色気を感じる。
また、下女のおきよのキャラクターがいい。叱られて不満げに視線を泳がせる仕草などはさすが。それだけで感情の揺れが伝わってくる。

二席め、来週行われる「扇辰日和」の宣伝を。「1時45分という半端な時間に開演になっていますが、2時前にきていただければ。45分にはあの選民思想があがってますから」と相変わらず弟子に厳しい。
噺は舞台は八丁堀だが品川も大きく関わる『匙加減』。どストレートな廓噺ではないけれど、絡み方の具合が絶妙なところ。どことなく品川の妓楼の雰囲気を感じられる。
小悪党の叶屋、それを上回るワルの大家、堅物の若先生、名奉行の大岡越前とどれもキャラクターがキッチリと立っていてとても聴きやすい。特に叶屋は最初は愛想が良かったのがどんどんと本性を表して卑しくなっていくその移り変わりが鮮やか。そしてその叶屋を手玉に取る大家のややクサいといえるほどの大げさなアクションも楽しい。

今日は二席とも「いかにも扇辰師!」という噺で大満足。
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