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大佛次郎没後50年特別企画 猫尽くし 再び 名作落語の夕べ [落語]

大佛次郎没後50年特別企画 猫尽くし 再び 名作落語の夕べ
於:桜木町 横浜にぎわい座

金原亭駒介『道具屋』
三遊亭萬橘『猫と金魚』
三遊亭兼好『猫餅』
桂小すみ 猫と音曲
古今亭志ん輔『猫忠』

横浜だし兼好師一席だし普段ならパスするかもしれない会だが、他の顔付けがいいこと、それに何より兼好師で聴いたことのない噺がネタ出しされてる。そして猫尽くし。そら行くでしょ。

萬橘師、今年は巡り合わせが悪くてなかなか行けない。ホントは明日の柏の会に行こうかと思っていたのだが、どうにも休日出勤しないと間に合わなそうなので。
「ここは野毛動物園が近くにあっていいですね。私は動物園が大好きで。上野動物園にも行くんですけど、ハダカデバネズミってのがいるんです。……ハダカもデバもネズミも全部悪口ですからね。娘に言ったら『風呂上がりのパパだね』って……。うるせえバカやろー」。まあしょうがないっつーか。萬橘師唯一のCDのジャケットのイラスト、坂本頼光先生が描いたらしいけど、ほぼ水木しげる御大のねずみ男だったからなあ……。
「娘は最近ホントに生意気でね。近所のおばさんに会ったら『パパそっくりね』と言われて悔しがってましたけど。ザマーミロ」。それもちょっと違うような気もするけど。
「まあなので猫は捕食される側で怖いところもある」と『猫と金魚』に。
とにかく旦那がハイテンションでツッコミも激しい。これはほぼひとり漫才のよう。
金魚が猫に食べられないようにするアイデアを番頭がいくつか出していくが、キテレツなものばかりで旦那が激怒しながら却下していくのがおかしい。
萬橘師らしく本来の「濡れ鼠」のサゲの後にも追加されており、店を挙げての大騒動になっていく。

兼好師、「大谷くんのことで本当にショックを受けている人もいるそうですが、……ここは大丈夫そうですね。そもそも土曜の夜に落語にこようという人は大谷くんにハマらないでしょう。それにまあ……見たところ、もう……」と軽やかに毒を吐く。
「しかしお相手の方もよく大谷くんに選ばれたなと思いますが……意外と早い者勝ちだったかもしれませんよ、彼は野球バカで野球にしか興味がないから『結婚して』っていったら『いいよ』って答えてくれたのかも……」。そんなまさか。
「しかし彼はすごいですね。メジャーリーグでピッチャーとバッター両方でトップなんですから。『古典と新作どっちもやります』なんて半端な二刀流じゃないですからね。天才なんでしょうねえ。落語だと『名人』とか言われますけど、今は名人ていう人はいないですねえ。よく『〇〇名人会』ってありますけど、そこには名人は出ない! 私も呼ばれたたりしますけど、楽屋で『誰が名人?』で笑い合ってる。だから名人会ってのは行かない方がいいです。まだ親子会とか兄弟会とかの方がいい。……でも本当の親子会とか本当の兄弟会とか行っちゃダメ」とどんどん爆弾を落としていく。
特に大佛次郎とか猫について話してないような気がするな。
『猫餅』は元は浪曲とか講談のようだ。圓窓師が『いただき猫』という演題で落語化したようだが、まあこれじゃないだろうな。あとは扇治師も掛けているそうだが、扇治師では聴いたことがないので兼好師が教わったのかはわからない。兼好師が他で掛けたような情報もないのでおそらくネタおろし?
舞台は小田原。小田原といえば『竹の水仙』が思い起こされる(他の土地のこともあるけど、兼好師は小田原)が、なんとなく雰囲気も似ている。と思っていたら果たして甚五郎の若き日の噺。もちろん他の甚五郎噺のように最後まで甚五郎であることは明かさないのだが、落語好きならすぐに「あ、これ甚五郎だな」とわかる。
金勘定ができる看板猫がいる餅屋なので「猫餅」。この猫を対面の店が……と『ねずみ』にも似た展開。
猫餅の婆さんのことを気にかけてくれる大工の八五郎がおり、彼が彫った猫が「頭が大きくて手足が短くて丸くて目と口がデカくて……これ猫か?」とどう聞いてもド〇えもん。「これは耳がない方がいい」と甚五郎が耳を落としてしまい、いよいよ国民的青ダヌキに。甚五郎が自分が彫った猫の代わりに「この猫を代わりに貰っていくな」と持っていってしまう。ストーリーには大きな影響はないのだが、この猫がちょいちょい出てきて笑いを誘う。
甚五郎が江戸から京都に戻るときの噺らしく、時系列的には『竹の水仙』『三井の大黒』『ねずみ』よりも前の話で、「名人」と呼ばれ始めた頃のようだ。若々しく明るく、江戸っ子のような雰囲気も持っている。兼好師の『三井の大黒』は聴いたことがないのでわからないが、『竹の水仙』や『ねずみ』でも明るく冗談を好む人物として描かれており、その若い時分だとすると不自然ではない。

小すみ先生は相変わらずの超絶テクニック。
猫テーマなのでもちろん『猫じゃ猫じゃ』からなのだが「猫が出てくる唄ってこれくらいしかないんですよ」と困っていた様子。エジプトでは猫がバステト神として敬われていたことから『月の沙漠』などを。
大佛次郎の猫好きエピソードを本持参でハイテンションで紹介しまくるのも楽しかった。

志ん輔師、自身の大佛次郎のエピソードを語ろうとするが、「中学生の頃に『天皇の世紀』を買って3行ほど読んだ」くらいしかないそうで苦笑い。
『猫忠』は8年以上前に笑二さんで聴いたきり。さすがにもう内容を覚えておらず、こんな噺だったっけかと再確認する。
『義経千本桜』のパロディだそうで、確かに元ネタを知っていたほうが楽しめるのだろうが、さすがに志ん輔師のテクニックでグイグイと飽きさせずに聴かせてくれる。
お師匠さんの家を覗くときに「そっちの節穴は見えないよ、こっちのほうがよく見える」と普段からちょくちょくお師匠さんを覗いてるのがわかるセリフがおかしい。

野毛で一杯やってから帰ろうかとも思ったが、我が家の猫が恋しいのですぐに帰る。
というか猫テーマの会なのに、猫好きの師匠が誰も出ていないってのもすごいというかなんでこのメンバーだったんだろ。
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