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第百十二回 一蔵ひとりの会 [落語]

第百十二回 一蔵ひとりの会
於:神保町 らくごカフェ

春風亭一蔵『出来心』『蛙茶番』『お見立て』

今日は謝楽祭。3年ぶりに客を入れての開催だが、食べ物の屋台は出ないし、以前のようにいろんな芸人さんが会場内をうろついたりしないのでサイン待ちの行列ができることもない。たまに大物が歩いてたりして、私が会場に入ったらさん喬師がひとりで歩いていた。ええっと思い、サイン帳、いやカメラ、と思っているうちにあっという間に人が並ぶ。あらら、と思っていたら最初のひとりだけにサインして終わりだったっぽい。

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Nikon Df

3K辰文舎のステージもなさそう。「落語協会黙認誌」の『そろそろ』と一朝一門キーホルダーを買ったくらい。一朝一門キーホルダーは誰が出てくるかわからず。売り子の一左師に「誰のがいいですか?」と聞かれ、「一蔵さんかなー」と答えながら開けてみたら一左師のだったときの微妙な気まずさといったら。
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さてその一蔵さん、今日の謝楽祭での落語会の出番があったようで。事前抽選制で、気づいたら受け付け終わってたんだよなあ。今日湯島天神行ったら「当日券売り切れました」って当日券出たのかよ! だったら10時に行ったのに。
とはいえ先週池袋でひとりの会スペシャルがあって翌週通常のひとりの会っておかしいだろ。
どうやら一蔵さんも今日の会を忘れていたそうで、かわら版を見て気づいたとか。チラシも作っていないので客も15人といつもよりだいぶ少なめ。二ツ目で最後なのに。
週半ばの内幸町の会でもネタおろしをしたそうで、「さすがに1週間に3つのネタおろしはムリ」とのこと。「でも一応最後なんでスペシャル感を出したい。そこで、第一回のときと同じネタをやります!」だそうだ。「今の世の中は便利ですね、らくごカフェのスタッフが第一回めのネタをインターネットで調べてくれて、このネタだったらできるんじゃねえかなーって」。てそのネットってもしかしてこのブログじゃねえかな。一回めにもきていて、その時初めてらくごカフェにきたんだよなあ。このときの記事を自分で読み返してみたが、この頃は短くあっさり切り上げてるんだよな。なんで今はこんなにダラダラ長いのか。
一席めは『出来心』といいつついわゆる『間抜け泥』のところまで。第一回目ではちゃんと出来心のところまでやってたようだが。
前座の頃はよく『出来心』を掛けていたそうだが、ここ5年ほどはまったくやっていなかったという。そういや最近は前座でもあまり『出来心』を聴かないなあ。「久しぶりにやったけどすっごい楽しい」だそうで。「でもその当時の噺とはまったく別になっているでしょうね。間とか押し出しとか」。9年半以上も前だから私も詳しくは覚えていないが、多分そうだろうなーとは思う。「最近の一蔵さんの落語」になっていた。

そのまま二席め。「みなさん気づいたかもしれませんが、今日後ろで披露目のチケットを売っている子、あれ私の長女です」で客が全員振り返る。ほええ。いつも「私を女にしたような」といっていたのでどんなんだと思ってたのだが、もうホントに普通のかわいらしいお嬢さん。「いよいよ家族総出でチケットを売ってます」。
一蔵ファンならおなじみの長女をネタにした鉄板マクラ(『塾』『高校の卒業式』『大学の落研』など)を総ざらい。もはや懐かしいと思えるネタも、地方へ行けばまだ現役だとか。そういやこないだ三郷の会で塾のマクラやっていたような……。マクラもまずはこの会でネタおろしをし、地方で掛け、それで受けたら寄席でもやるそうで、寄席でも掛けられる鉄板ネタは10年やって10個くらいらしい。
長女さんが落研時代に指導にきていたのはその大学のOBの師匠だったそうだが、最近ではやっぱりその学校OBで二ツ目のお弟子さんが稽古をつけにきていたとか。仕事でその二ツ目さんと会ったときに娘さんのことは隠して「大学の落研の指導なんて女子大生に囲まれて楽しいんじゃないの?」と聞いたところ……という新しいネタも加わっていた。
落語も人前で披露してウケた経験を一度でもしてしまうとその経験が忘れられないそうで、昔はそれがお芝居だった、と『蛙茶番』に入る。第一回目ではこのネタがトリネタだったのだが、それはネタおろしを真ん中に入れていた都合だったとか。
この噺は前座のときに覚えたそうで、後半は笑いどころが多いが、仕込みの前半は笑いどころが少ないので我慢の噺なんだとか。前座時代に勉強会を開いていた一蔵さんだが、そのときは全編スベったそうで。前座で勉強会などは当時誰もやっておらず、その時の苦労話なども三席めのマクラで語っていた。
終始テンション高めで、バカ半の短慮で乱暴者っぷりが弾けまくり。似合うなあ。

三席め、一蔵さんの『お見立て』は久しぶり。
喜助に無理難題を押し付ける喜瀬川が色仕掛けをしようとするのだが、「やめてください、汚れる!」と通用していないのがおかしい。一蔵喜瀬川だから余計に面白いのかも。
杢兵衛お大尽の泣き声が「オーオーオー」とすごい唸り声で「オットセイのお産だねコレ」と喜助が呆気にとられるのも楽しい。最後の場面はなんかだいぶ端折られてた?

一回めの詳しい出来までは覚えていないが、でも全然違ってただろうな、というのは想像がつく。やっぱり三席とも最近の一蔵さんらしい形になっていた。
タグ:春風亭一蔵
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清瀬けやき亭 落語応援会(第116回) そうだじゅげむきこう。 [落語]

清瀬けやき亭 落語応援会(第116回) そうだじゅげむきこう。
於:清瀬 清瀬けやきホール

三遊亭天どん ご挨拶
三遊亭天どん『棒鱈』
三遊亭ごはんつぶ『ぱん違い』
三遊亭天どん『いつもの歌』
三遊亭天どん『普通の一日』

久しぶりの清瀬。雨が降りそうということで一瞬迷ったのだが、天どん師の独演会で1000円て交通費かけて行ったって安い。と思ってたら雨も降らなそうなので結局はバイクで。空気が涼しく、バイクで走るのが気持ちいい。

まずは天どん師のご挨拶。「僕今日は自転車で来ました。あの坂をこいで」。天どん師の地元の東久留米には私も以前住んでいたが、ちょっと谷なんだよね。隣の清瀬やひばりヶ丘に行くには結構急な坂を登らなきゃならない。「年齢の衰えを感じましたね。昔は自転車で登りきれたのにもう無理でした。坂を登りながら『サメ軟骨ー!』って叫びました。……今日は地元ネタ受けないな」。相変わらずのボヤキ節。
「この会は僕が二ツ目の頃に『清瀬でも落語を』といわれて、50人も入れば満席の和室から始まった。3回くらいやって『筋道ができた』って真打を呼ぶようにもなって。さらにコロナにもなったんで僕が出るの3年半ぶりですよ」。いろんな人が出た会ね。
「100回め記念の会にも呼ばれてたんですけど、コロナでなくなっちゃったんですよ。だから今日で116回めといってますけど、100回めをやってないんですよ」。と会場スタッフにもケンカを売る。
プログラムにはごはんつぶさんが開口一番で天どん師が三席続けて、と書いてあったが、「この後は僕が一席古典落語をやりますよ。古典やらないと『アイツまた訳の分からない噺してる』っていうんでしょ。でその後に弟子が出てきます」。兼好師のスタイルですな。「まあ僕が休憩したいだけなんですけど」とぶっちゃける。

予告通りまずは天どん師。
西武池袋線に乗っていたときに、「ちょっとやんちゃそうな子たちが4人乗ってきた。『うわあ電車だあ』っていうくらいの頭悪そうな。で、僕を挟んで2対2で分かれて立ったんですよ。普通分かれた人同士で話すじゃないですか。でもバカだから僕を挟んだまま普通にみんなで話してるんですよ。『ミニストップで腕相撲したら〇〇先輩超強え』とか……。周りから見たら僕もそれをやってるって思われるんですよ」とノリでイキってる人たちの話から『棒鱈』に。
田舎侍の唄とそれにやられる江戸っ子たちの表情がおかしい。

ごはんつぶさん、天どん師のツイートによると二ツ目に昇進してもそのままの名前で行くんだとか。師匠と同じくそのまま真打まで!? 天どん師が圓丈襲名してごはんつぶさんが天どん襲名というW襲名があったりして。
以前にも聴いたことがある、とにかく「パンティ」を連呼する噺。無理がありすぎるけど勢いで突破する力強さが楽しい。

天どん師の二席め、「あいつ僕の地元の近くで何をしてくれるんですかね。でも一応今日は何を演るのか聞くんですよ。そしたら『はい、パンティの噺を』っていうから。僕も師匠なんで重々しく『おう』なんていったりするんですけど」。それを想像するのが楽しい。
「東久留米は平和な街なんで自転車のかごに買い物した荷物を置いても大丈夫だろうとマグロとイカの刺身を置いておいたんですよ。……なんですか。トロですよ。トロを買える男ですよ。そんで戻ってきたらマグロがなくなっていて。……向こうにいるカラスがなんか赤いものをぶら下げてるんですよ。僕のマグロをでっかいベロみたいにして。泣きながらもう一度トロを買いましたよ。トロを買い直せる男ですよ」。
「これからの噺はそんな東久留米のロータリーをイメージしてます」。私もよく知ってるあのロータリーですか。
この噺は一度聴いたことがある。ごはんつぶさんが「パンティ」連呼なら師匠は「クソみたいな歌」を連呼。
実際に歌われる「クソみたいな歌」がホントにクソみたいでそれが面白い。あの歌をあのロータリーで歌われてたら当時の俺は避けてただろうなあ。「鉄矢の歌詞を剛の唄い方でまさしの尺でやるな! 九州コンプリートか!」というツッコミがおかしい。

三席め、マクラを聞いてマヨ入りパンケーキを焼き始めたところで「あー『普通の一日』かー。この噺あんまり好きじゃないんだよなー」と思った途端に会が始まる前に食べた山田うどんが効いてサゲ直前までワープ。不覚。
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人形町噺し問屋 その95 [落語]

人形町噺し問屋 その95
於:人形町 日本橋社会教育会館

三遊亭兼好 ご挨拶
三遊亭けろよん『狸札』
三遊亭兼好『短命』
宮田陽・昇 漫才
三遊亭兼好『出世浄瑠璃』

最近うちの会社がヤバい。
いや経営的なこととか社長のパワハラとかそういうことじゃなく。まあ経営の実際のところとかは知らんし社長のパワハラはとどまるところをしらないのだけれども。詳しいことはいえるわけもないのだがヤバい。
そんなヤバい職場を抜けて人形町へ。

まずはご挨拶。
オリンピックの収賄の話から「いっそアオキは洋服だけど袖を広げた『袖の下シャツ』とか出したらいいんじゃないですかね」と軽くジャブ。
人間は古今和歌集の昔から夏から秋に移るときに「あっ、秋だ」と驚くそうで。「こないだ『今年の梅雨は短かったね』といっていたのにもう夏も終わりですよ。で、私は月末にカレンダーをめくる係なんですが、仕事の予定を書き込んでる大きなカレンダーをめくって『今月の仕事はこんなのがあるのか、うわっ萬橘と3回も会う』なんていっていたんですが、この人形町の文字がないんですよ。『あれー、今月会場取れなかったんだっけ?』なーんて考えながら見てたら今月は2日なんですよ! いつもは10何日あたりにしてるんですけど。だから自分の感覚的にはあと2週間くらいあると思っていたんですけど……。あのね、私前回ちょっと理由があって怪談噺をしたんです。で、覚えられないし嫌々だったから終わった途端に『やったー、もうこれでやらなくてすむ!』とぽーんと忘れちゃったんでしょうね。今日の予定とともに。で今日やるネタを大慌てで考えたり。で、『あっ、ゲスト!』ってゲスト頼むの忘れてた」。毎回イラストとエッセイ入りのプログラムが配られるが、あれ1日で作ってるんだ……。
「そんなわけで前回からあんまり日が経ってないんで、ここで話すことがないんですよね……。あ、よく太ってる人が『体質的にすぐ太っちゃうんだよ、ホントはあんまり食べてないよ』っていうじゃないですか。アレはウソです。太ってる人は食べる!」と落語教育委員会の九州ツアー2泊3日での歌武蔵師と喬太郎師の食べっぷりを面白おかしく話す。好二郎さんが運転手を兼ねていたそうで、眠くならないように食事をライス抜きにしたりSAでコーヒーを飲まされている横でとにかく食べまくっていたらしい。
夜にホテルの喬太郎師の部屋で食事を兼ねて呑んでいたら、博多にいる義理の父と初めて会うという歌武蔵師をテーマに喬太郎師が小芝居を始め、それに歌武蔵師も乗っかっていくという。なにそれ超見たい。

けろよんさん、初めての『狸札』。
まだ慣れていないからなのかややあっさりめ。
サゲは通常の「札が札持ってきちゃいけねえ」とは異なる形だった。

兼好師の一席め、「この時期政治家は『統一教会』という言葉に敏感になっている。『きょうかい』……『落語協会』とか『落語芸術協会』とかにも拒否感を抱かないかと圓楽党は期待してるんですが……。明日は圓生師匠の命日で、五代目の圓楽師匠がご存命の頃はみんなで墓参りしてたんですがね。今は前座さんが行くくらいで……。今は葬式も様変わりして、家族葬や音楽葬が多いらしいですね。私はこれという好きな音楽がないんで、落語のCDなんかかけてほしいですね。五代目小さん師匠の『青菜』とか。おかみさんが押入れから出てくるところで私も棺から顔を出すとかしたい」。それはホラーです。
お弔いの話から『短命』に。高座で聴くのは5年ぶりなのだが、私の兼好あるあるで先日車の中で聴いていた。とはいえやはり落語は生の高座で聴くに勝るものはない。
お焼香を食べていたと聞いたときのご隠居の表情や、その間違いを指摘されたときの八っつぁんのリアクションの楽しさはCDでは味わえない。
短命のワケをようやく気づいたと思ったらなぜかやたらとモジモジしているところもおかしい。「あっ、なーんだそういうことですか。なんだおまんまとかコタツとか出さなくても『歌武蔵』ってひとこと言ってくれればわかったのに」というひとこともエッジが効いている。
長屋へ戻ってかみさん相手に短命ごっこを始めるのだが、おかみさんも面白がってノリノリというのが新しい。「どこで覚えてきたのこんなお金のかからない遊び!」と楽しそう。「なに? おまんま持って揺れるの? こう?」と揺れるのが小島よしおの「うぇ~い」と同じ感じで体を揺らすのもおかしい。

宮田陽・昇先生、「どうも、こないだ頼まれました」「空いてるのが悔しい」。
あれ、陽先生の見た目がだいぶ変わったような……。大竹まことみたいな感じ。
広島県を指し示すネタのときに「北海道、青森、秋田、宮城、山形……」ん、岩手飛ばした! 俺は岩手と東京のハーフなので気づく。そののちにも「山形には世界で活躍している人がいます。大谷翔平」「岩手だな!」「菊池雄星」「岩手だな!」「美味しいものもあります、わんこそば」「岩手だな! お前岩手泥棒か!」と岩手ネタが続く。飛ばしてたくせにー。
たっぷりと爆笑の渦を巻き起こす。

兼好師の二席め、珍しく袴姿。てことは武家噺? でも『陸奥間違い』はこないだやったしなーなどと思っていたら、まったく知らない噺。二月連続でネタおろし!? やったね。
落語は講談や浪曲が元ネタになっていることが多く、意外なところでは『粗忽の使者』もそうなんだとか。へええ。これから演る噺もそうです、と『出世浄瑠璃』に。
松本城主の松平丹波守が、参勤交代の途中で碓氷峠で一休みするところから始まる。これがまた秋の紅葉の景色を見事に描き出し、情景が見えるよう。そこで唸り声のようなものが聞こえてくるのだが、それは信州上田の松平伊賀守の家臣で尾上久蔵と中村大助のふたりで、尾上久蔵のどもりをなおすために義太夫の真似事をしていた、というもの。
「ちょっとやってみろ」という丹波守の命令で義太夫を語るのだが、その唸る声はさすが兼好師。いずれ「音曲噺といえば兼好」となっていくかもしれない。
実は自身もどもりの気味があり、それを隠すために威圧的な振る舞いをしていたという伊賀守のキャラもいい。

前回から2週間しか空いてないとは思えない満足の会でした。
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