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第二十四回 東海道神奈川宿寄席 [落語]

第二十四回 東海道神奈川宿寄席
於:横浜 横浜西公会堂

三遊亭しゅりけん『道灌』
三遊亭兼好『鈴ヶ森』
三遊亭わん丈『五貫裁き』
三遊亭わん丈『新・蝦蟇の油』
三遊亭兼好『宿屋の富』

久しぶりににぎわい座以外の横浜に。
いや人すげえな。いくら緊急事態宣言明けたからって。……てものすごいブーメランですね、ハイ。

しゅりけんさん、いつもながら他流派ではあまり演らない場面をふんだんに散りばめた『道灌』。
上手くなったなあ、としみじみ思っていたら、あれ、賤の女(しずのめ)の雨具の断りの場面吹っ飛ばしたよね!?
その後何事もなかったかのように噺を続けており、それも成長したんだなあとしみじみ。俺は親戚のおじさんか。

兼好師の一席め、「人間油断してるとミスをする。それは噺家も同じ。それも二ツ目から真打、というときよりも前座から二ツ目に昇進するときが危ない。……さっきのしゅりけんはもうすぐ二ツ目になるんです」と意味深な発言が。
このところはニュースがコロナ関連のものしかなくてあまりマクラも代わり映えしなかったのが、ここのところ一気にいろいろなニュースが入ってきて戸惑い気味だという。「なんか白鵬がポニーテールになっているような感じ」。引退やら訃報やらが続いたからねえ。
いろいろと醜聞も持ち上がってる中、「日大はいいですね、なんかいいタイミングでちょうどいい感じのニュースを出してくる。それも早稲田とか慶應とか東大の人が悪さしたなら『なんでそんなに頭いいのに悪事に手を染めるんだ!』と腹も立ちますが、日大だと『そうだよねー、やるよねー、わかるわかる』ってなりますからね」と無茶苦茶をいう。でもまあわかる。
そんな憎めない悪党の話から『鈴ヶ森』に。
兼好師では2年ぶり。
すっとぼけた新入りと噛み合わない会話を交わしている親分のイライラ具合が相変わらず楽しい。
怒りがピークになると口調が丁寧になるというのも学校の先生のようでたまらない。
「おめえ最近仕事したのか」という親分の問いに「カボチャをくり抜いて蝋燭を立てるという……」と季節感を取り入れるはさすが。
季節感といえば、鈴ヶ森で新入りのお尻に刺さるのは今日はサツマイモだった。

わん丈さんの一席め、今日兼好師からの第一声は「わん丈くん、今日は仲入りだから」だそうだ。
わん丈さんは今日はゲストで一席だと思っていたら二席で、さらに最初はABAB形式になっていたのをABBA形式になって一席は大きめのネタをせざるを得ない状況になったようで、「その割にはチラシの私の扱い小さくない!?」。
というかなんでこの会はいつもABAB形式でやろうとするのだろうか。でいつも兼好師がABBA形式に戻すという。いい加減学ぼうよ。
地元滋賀の話から「みんな高校生の頃はグレる。私も一度金髪で登校して親を呼ばれた」そうだが、その時の御母堂の行動が奮っていて、わん丈さんと同じ色に染めて学校にきて「遺伝です」といったとか。なにその粋な返し。思わず会場から大きめの拍手が起きる。
そんな小さな悪さをするというところから『五貫裁き』に。
『五貫裁き』自体は落語を聴き始めた頃に出会っていて、割とポピュラーな噺なのかと思っていたらその後高座ではほとんど出会わず、私としては結構なレアネタ。噺自体はとても好きなのだが。
大岡裁きを受けた後の大家の張り切りぶりがおかしい。

二席め、コロナ禍で出かけられず、家で稽古ばかりしていたら4歳の娘さんの方が言いたてを覚えるのが早いという。『孝行糖』なども覚えたとか。
この『蝦蟇の油』は以前にも聴いたことがある噺。
最初は普通の古典かと思わせつつ(「これはまだ娘は覚えてない」そうだ)、2回めからはジャパネット高田楓の甲高い声でコエンザイムQ10まで配合されるという怪しげなもの。
蝦蟇の油を取るのもサウナのロウリューでというのも昨今のサウナブームが反映されている。
全体的に悪ふざけに溢れていていかにも圓丈一門らしくて楽しい。

兼好師の二席めは年に一度はコンスタントに聴く『宿屋の富』。そんなもんだっけ。年に2回くらい聴いているイメージなのだが、そこまでは当たってない。
さんざん宿屋でフカしたあとに「宿代は後で番頭が持ってくるから」と踏み倒す気満々になっている。考えてみたらこの一文なしは何の目的でこの宿に泊まってるんだろう。
相変わらず湯島天神の境内で取らぬ狸の皮算用で話に花を咲かせている男たちが面白い。

終演後、久しぶりに兼好追っかけ仲間とちょっとだけ飲む。一時間くらいでふたりで黒霧ボトル一本空いたのはピッチ早すぎたような。まあ私の割合はそんなに高くないけれども。普通に酒が飲めるのがこんなにありがたいものとは。
めひかりのフライも熱々。揚げたてのフライ久しぶりに食った。家じゃ揚げ物しないからなあ。ごちそうさまでした。
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扇辰日和 vol.80 [落語]

扇辰日和 vol.80 「扇辰、胸を貸す!」
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰ぢろ『狸札』
入船亭扇辰『天災』
入船亭遊京『錦の袈裟』
入船亭扇辰『幾代餅』

昼はひとり焼肉食べ放題。
非常事態宣言があけて久しぶりに外で酒を呑みながらメシが食えた。昼ビール最高。焼肉食いながらだとなんであんなにビール飲めるんだろう。
腹がはじけるほど食って飲んだと思ったけど家帰って体重を量ると0.8kgしか増えてなかった。そんなもん?
うちへ帰って腹いっぱいで昼寝。あーなんて幸せな土曜日。

数分遅れて会場へ。市松模様にならないほどたくさんの客が入っている。
今日の会は配信もしているのだとか。

辰ぢろさんが降りて『からかさ』が鳴るかと思っていたら『東京節』。配信のためにいつもの出囃子CDが使えないそうだ。配信でも使えるCDの中から特によく考えず「明るい唄でいいじゃねえか」と選んだそうだが「私の芸風とまったく合わない」。
昨日から末廣亭の昼席に出ているそうで、口開けからすぐの出番だそうだ。「……いかに末廣亭から重用されていないというね……」とボヤきから。特に昨日は台風で、前座が上がる時間になっても客が入らなかったので開始が20分遅れたそうだ。
「前座のときは3人。私のときに9人。つばなれしてねえの。……まあそれも当然なんだけど。台風の中こないよ」だそう。まあそりゃそうか。
ゲストの遊京さんについては「私はね、後輩だけどファンなんだよ。あのとぼけた話し方とかね。この『扇辰日和』は今回で80回だけど、『前に出てもらったことあるよね?』と聞いたら初めてだって言うんだよね。そうだっけ? 頼んだけど日程が合わなかったとかかな。……辰乃助が横槍入れたのかな。やりそうだな」と辰乃助さんにアツい風評被害が。
「彼が仲入りにたっぷりやってくれますから!」と大いにハードルを上げて一席めに入る。
「落語には江戸っ子てのが出てきまして大層えばってたそうですなあ」と始まり、江戸っ子を大げさに強調した八五郎が隠居のところに飛び込んでくる。江戸弁が強すぎて「離縁状」が「れえんじょう」になっているのがおかしい。
紅羅坊名丸のところに行ったときに手紙を読んで顔をしかめて手紙を読みながら八五郎の顔を盗み見る表情がなんとも。

遊京さん、二ツ目に昇進したての頃に中国一周をしたことがあるが、その際に温かメールをくれたのが扇辰師だけだったとか。
噺に入り、「隣町の奴らに腹下しのときに負けた。向こうは八人でこっちは五人だった」というくだりで「それ勝ってるんじゃねえか?」というツッコミが入ったのは初めて聴く。私がいつも思っていることを初めて代弁されてて嬉しい。
「おめえのカカアは跳ねっ返りだから」という煽り文句や、「口移しで教えてあげるから」といわれて与太郎が照れるとか定番のくすぐりが省かれ、スッキリとした印象。しかしこの与太郎のおかみさんはなんかいい女っぽいのが伝わってくる。
しかし町内の若い衆たちを華族のお遊びとするのはちょっと無理があると思わせてしまうかな。上手い人はここらへんをスルリと違和感なく納得させてくれるんだけど、遊京さんは他をカチッとしてるだけにこういう強引な理論のところで違和感が出てしまうのかもしれない。

扇辰師の二席め、久しぶりの『幾代餅』。『紺屋高尾』はたまに聴くが。
清蔵が一年金をためて親方のところに金を受け取りにきたときに「(幾代に会わせるといったのは」ありゃ嘘だ」とさらっと流すのがおかしい。
さらにその後、吉原に清蔵を送り出す段で「与太郎と一緒に行くのはやめとけ、あいつはいいところ持ってっちゃうからな」と遊京さんのネタにさらっと絡めるのが上手い。
清蔵が戻ってきたときにいろいろと錯乱しているところを親方が抱きとめて「わかった。大丈夫、大丈夫だ」と諭しているところはなんだか清蔵の姿が見えたように思えた。あと幾代が駕籠から降りてくるところもその情景が目に浮かぶよう。
クサくやらずに端正に丁寧に、という感じで堪能いたしました。

夜中になってもまだ腹いっぱい。1か月に1回は多いか。2か月に1回にしておこう。
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