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実力派二ツ目独演会 らくご長屋 小辰独演会 [落語]

実力派二ツ目独演会 らくご長屋 小辰独演会
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭小辰『のめる』『藁人形』『ねずみ』

なんだかんだで家を出るのが遅くなり、着いたのは超ギリギリ。小辰さんが高座に出てくるのと同時に席に着く。

主催のオフィス10の社長が倒れたのが前回のこの会の当日夜中で、「だったら中止にすりゃよかったじゃねえか、と……。でも大病して戻ってきたから、もう死なないでしょ。大体落語界はいい人から死ぬんです。志ん朝談志とみてください。志ん朝師匠がだいぶ先に逝った。だから死にません。もっとも亡くなってももうお嬢がいるんだから大丈夫でしょう。ひとりでやっていけるよ。そしたら会社名を『オフィス11』にするとか。いやひとり減るから『オフィス9』かな。……こういうことをいうとお嬢の目が怖い」とシャレの効いたエールを。
この会ではまだ言っていないということで真打昇進の報告を。「いつまで言っていいのか加減がわからない」そう。
「真打になるからって何が変わるわけではないのですが……。でもこの時期にガラッと変わる人もいますからね。よく覚えてるのは龍玉師匠。二ツ目の弥助時代は雲助師匠そっくりで『小雲助』みたいに言われていましたが、真打昇進が決まった頃からガラッと変わったのが袖で聴いていてもわかりました。お客さんや他の師匠たちからも『あそこから変わったよね』と指摘されてましたから。……私も『小扇辰』っぽいところがありますから、ぜひ脱却したいところです」。頑張って。
さて一席めの『のめる』は小辰さんでは初めて。
大根の案をご隠居から授けられたときに「だからそれを聞いてどうすんですか!」とブチぎれるのがおかしい。
八公が騙しにきていると見抜いたときの半公の表情や仕草がなんというか小狡い感じが実によく現れている。
「大根百本醤油樽に……」に最初は「無理だ」とか「タガがはじけるよ」と答えていたのに、最後は「詰まるんじゃねえか、頑張れば」と変わるのも楽しい。

そのまま二席めに。
「今の噺のように、騙す噺というのはいろいろあって……。そういえば騙すとはちょっと違うんですが、ニュースで見たのがある地方、愛知だったかな、でスーパーでフグの肝を売ってたんですって。なんかその地方では普通みたいですね。でも本当はダメですから店長が捕まって。インタビュー受けてたんですけど、『今後こんなことがないように肝に銘じます』って……。でも福井の方ではフグの肝を糠漬けにして食べます。なんで毒が抜けるのかは今でもわからないそうですが、先人の知恵なんでしょう」と糠の効用の話へ移り、糠屋の娘が登場する『藁人形』に。『のめる』と面白いところで被っている。
まさに「小扇辰」っぽく扇辰テイストが溢れる一席。
お熊の蓮っぱな色気のある感じなどが似てるなーと思う。
それと戸をどやして開けるときの仕草なども本当に扇辰師っぽい。なんだろう、手の動かし方とかなのだろうか。

三席め、最近ようやく旅の仕事が戻ってきたといい、「『旅』と聞くと『仕事』と思ってしまう。皆さんは旅行ですから『楽しい』と思うでしょうが……。いや楽しいのは楽しいんですが、なんでしょう、向こうに着いた途端『帰りたい!』って思っちゃうんですよ……」だそうで。俺にはわからん感覚だなあ。
これまた端正な『ねずみ』を掛ける。
でもなんだろう、あくまで私の感覚だけれども扇辰師よりも他の柳家の師匠っぽい感じがする。小せん師とか。まあ入船亭は柳派だから当たり前なのかもしれないが。
ニコニコと人のいい甚五郎が、飯田丹下が掘ったという虎を見た時の表情をなくすときの顔のグラデーションがいい。実に自然で甚五郎の心の動きがわかりそうな感じがする。

今日はどれもよい感じに仕上がっているようで、満足度が高い。
タグ:入船亭小辰
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