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三遊亭天どん独演会 新作大全 [落語]

三遊亭天どん独演会 新作大全
於:両国 お江戸両国亭

三遊亭ごはんつぶ『女子高生の設定』
三遊亭天どん『にゅう』
ストレート松浦 ジャグリング
三遊亭天どん『ぺたりこん』
三遊亭天どん『友引寄席』

雨降ってるわけじゃないけど昼酒を呑むために電車で会場までむかう。「呑めるときは呑んじゃえ」という思考はアル中に向かうようでおっかない。もともとそんなに酒が好きだったわけじゃないんだけどなあ。

ごはんつぶさん、名前についてのひとクレームを入れてからこういう会なので前座も新作をやります、といって噺に入る。
残業しているサラリーマンふたりの片方が、「自分は女子高生が好きでしょうがない。なので34歳のオッサンだけれども、『自分は女子高生なんだ』と思って生きている」とカミングアウトするという噺。
唐突におかしな人の世界に巻き込まれるというのは天どん師の新作世界と通じるものがある。
女子高生が好きな理由というのもいろいろと主張が入り込んでいてなかなかヤバい。でもそのヤバさが面白い。

天どん師の一席め、圓朝作の……これ「新作」と言っていいのか、もはや圓朝噺は古典のような。
タイトルは知っていたけど聴くのは初めて。『牛ほめ』と『代脈』を混ぜたような。
道具屋の奉公人である主人公の弥吉が主人の名代で目利きに行くことになり、そのコツとして「わからなければ『風流でございますなあ』と言っておけばいいんだ」と教わり、その後「風流でございますなあ」を連発するのが面白い。またその時の天どん師の言い方がもう。ちょっとスンっとなるのがたまらない。
弥吉が客の家の庭先ですっ転ぶシーンがあるのだが、淡々と語っているけれども、弥吉のその姿が目に見えるよう。面白いなあ。

ストレート松浦先生、両国寄席は色物のときは高座の台を片してスタンダップでできるようにするのだが、今日はそれをしない。なので立て膝でジャグリングを行う。
松浦先生曰く、膝立ちでのジャグリングは体幹を使うらしく、最初のお手玉で汗だく。
なのにシガーボックスや中国独楽もひととおり行う。特に中国独楽は高座の上も下も狭く、蛍光灯を割ってしまうんじゃないかと別の意味でハラハラする。
天どん師を応援するために、と回した皿が乗った棒を譜面台に挿すという技を繰り出す。同時に6枚の皿を並べようとするのだが、6本もあると最初に回していた皿が止まりそうになり、それを再度回したりするのですごく忙しそう。「持ち時間を無視してやります!」と汗だくで宣言。

天どん師の二席めは圓丈師の出囃子で登場する。「あの出囃子を聴くと身体が痺れて動けなくなる」と相変わらずの不仲ネタをぶっこむ。
「師匠のネタには合わないんだけど、圓生師匠から『これにしろ』って言われたから頑なに変えないらしいですよ」と豆知識。
「ところで松浦さんがすごいことしてましたね。……なんかみんな僕の会は自由にらやっていいって思ってるみたいなんですよね」どポツリと漏らすのがおかしい。
『ぺたりこん』もネタの名前は知っていたけれども初めて聴く噺。こないだ小辰さんが新作を演ったときに「入門前に聞いていた新作」としてワンフレーズだけマネしてたなー、というくらい。
なぜか机から手が離れなくなったサラリーマンの噺で、天どん師の演目解説でも「モーレツ社員や終身雇用が前提になっている噺」とのことで、確かにいまの世情からするとちょっとピンとこない。
仕事ができないサラリーマンが、会社の前から電話してくるというシーンがあるのだが、「師匠は時代に合わせてここに携帯電話とか出したんですけど、僕はそのまま演ります」と公衆電話を使うという設定。これもこれでいまの世情に合わないが、そうしないと矛盾が出てしまうかららしい。やっぱり天どん師ってこういうところを俯瞰で見てるんだなあと思う。
机の一部として生きていくと覚悟を決める主人公から哀愁感が漂うが、それにもセルフツッコミを入れたりする冷静さも楽しい。

三席めの『友引寄席』は何度か聴いているが、今日が一番面白かったように思う。
なにが変わったってわけじゃないんだけど。
セレモニーホールスタッフが思いつきで始めた「友引寄席」に迷い込んでしまった人の噺なのだが、出てくるスタッフたちのクセがすごい。
不吉な小咄しかしない男とか、「パンツ破けたよ」を自分でウケながら解説しちゃう女子社員とか。

この会は文化庁芸術祭の参加公演らしい。
他は知らないけど大賞でいいんじゃないですか(適当)。そしたら遊馬師の時と同じく、大賞受賞した会を聴けてたことになるなあ。だからなんだと言われたらそれまでですが。
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