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お江戸なまらく両国亭 てんまんの会 その26 [落語]

てんまんの会 その26
於:日本橋 お江戸日本橋

三遊亭ごはんつぶ『わけがあって』
三遊亭萬橘『半分垢』
三遊亭天どん『長屋の花見』
ちゃぶ台トーク
三遊亭天どん『老後が心配』
三遊亭萬橘『駒長』

両国から一度家に戻るも、座る間もなくすぐにまた家を出る。とはいえ直で移動すると両国から日本橋なんで30分もかからないから時間が余り過ぎてしまうし。

この会は前売で買うとチケット送料が強制で発生し、それだけで当日券と同じ値段になってしまう。振込手数料を含めると結局当日券より高くなってしまう。ネットで買うとシステム手数料やら発券料やらで結局そういうことがままあるが、なんか微妙に釈然としない。まあそれらを含めても妥当な木戸なのでいいんだけど。最近金欠なので小銭に細かくなってセコイなというのは自覚している。
どうやらほぼ満席だったようだし、前売で買っておいて正解ではあったようだ。

ごはんつぶさん、前座の期間が長く、なかなか二ツ目になれずに客からもいろいろ言われることがあるという。そうなの? 見習い期間が長かったからか。「モチベーションが上がらないんじゃない?」と言われるというところから、宝くじが当たってやる気を失った社員と社長のやりとりを描く『わけがあって』。
前にも一度聞いているが、微妙に噛み合わないふたりの会話がおかしい。

萬橘師の一席め、オリンピックが終わって世間の話題がウクライナへ向いた、と話す。「なんかよくわからないですけど、ロシアへの制裁でソブリン債がどうとか。ソブリン債ってわかります? 音で聞くだけだとゆるキャラのお祭りみたい」。確かに。
ウクライナにはいいボクサーが多いそうで、「みなさんご存知」みたいな感じでどんどん語り出すが、会場にはほとんど伝わっていないのがよくわかる。
話がどう飛んでそうなったのか忘れてしまったが、お見舞いの返礼として皇室献上品のトイレットペーパーをもらったそうだ。それがとても柔らかいらしく、ちょっと引っ張っただけで切れてしまうのだという。萬橘師の息子さんが初めてのペーパー交換でそのペーパーを使ったそうだが、初めての上、そんなに柔らかいものだから大変だったようだ。トイレから出てきて発した一言がおかしい。
『半分垢』はあまり聴いたことがない。萬橘師では初めて。
大阪から帰ってきた関取が大きくなっていたと吹聴するおかみさんは何故そんなことをしたんだろう。落語には登場人物の行動原理がよくわからないものも多いが、この噺は特にわかりづらい。この人何がしたいんだろと気になってしまう。萬橘師ならうまいこと理由をつけられそうだが特に改変はなし。

天どん師の一席め、季節の噺をしたいのだが、最近は花の咲く時期が変わりやすいのでやりにくいという。「でもまあ扇橋師匠なんか二の席から花の話してましたけどね。『正月過ぎたら春だよ』って。『めっきり春めいてまいりました』とか言ってましたから。寒いわ! って思ってましたけど。こういうのは早い者勝ちですから。桜なんてね、入学式のあたりで満開になるからいいんですよ。それが早まったら毛虫が出るだけですから」と大学で行われていたライトアップのエピソードを交えたマクラから『長屋の花見』に。早いな……。
大家が長屋を三軒持っており、貧乏長屋は噺に出てくるところだけらしい。大家自身はそこそこお金を持っているようなのだが、やっぱりおちゃけだし、大根のかまぼこと玉子焼き。
なんでこんなことをするかというと、貧乏人が苦しんでるのを見るのが楽しいというとんでもない性格。いいですねえ天どん師っぽいですねえ。「こういうことをするためにお前らみたいなのを飼ってるんだからな」と言い放つ。飲め、食え、酔えとやってることはスタンダードな噺と同じなのだが、サドっぷりが突き抜けてておかしい。
重箱の中身も昆布巻きと海老が追加されているが、昆布巻きは炭に茶色の紐を巻いたものだし、海老はザリガニ。嫌がらせのためだけに婆さんとよなべして昆布巻きを仕込んだというのがたまらない。ザリガニも要所要所で出てきて指を挟まれるのがバカバカしくて最高。

仲入り後はこの会の特徴であるちゃぶ台トーク。
圓丈師のことについて萬橘師が話を振ろうとするも、ふたりともすぐにヤクルトの話やボクシングの話に脱線するのでなかなか話が進まない。
名古屋の圓丈師の話をする前に、萬橘師の地元の豊川の話をしろ! と天どん師が混ぜっ返す。が、萬橘師も豊川稲荷くらいしか思いつかないようで。
さんざん遠回りしてようやく話が戻る。が、「別に何もないよ。『死んじゃったなあ』くらい。形見分けもまだしてない」そうで。
ふう丈さんわん丈さんを引き取ったいきさつなども語る。特に話し合いなどもなかったそうで、「ふんわりと決まった」そうだ。というか上の人たちが揃って断ったそうで、その言い方がそれぞれ特徴的だったとか。
「弟子なんかリスクしかないじゃん。今後もし彼らが人を殺しちゃったら僕が一緒に謝んなきゃなんないんでしょ」。謝って済む問題かなあ。
「真打になったときに口上とか並ぶのやだよー。その期間だけ失踪しようかな」とかいろいろぶつぶつ。
ふう丈さんには「琴調先生と仲いいんだから先生のとこ行けば?」といってみたところ、「分野変わっちゃうじゃないですか!」と漫才のように手の甲で突っ込まれたという。「『お前さすがにそれはダメだろう! 師匠になるかもしれないんだぞ!』って小言言っといた」そうだ。よくあることとはいえ、兄弟子が師匠になるってのはお互い気苦労が多そう。ふう丈さん入門時にはまだ天どん師も二ツ目だったんだもんなあ。

天どん師の二席めは久しぶりに聴く『老後が心配』。
高座上でゴロゴロ転がりまわる噺だが、今日は舞台の上に高座を組んでおり舞台の上まで落ちる。舞台の上で転がりながら「予定にはなかったのに落ちたー。……思ったより高かった……これどうやって戻ろう……」とゴロゴロ。「……まあいいか……」と普通に立ち上がって高座に戻り、反対側にも「一応落ちとこうか。……でも(高座に上がるための)段差あるから怖い……」と言いながら落ちる。「……地味に痛い……」だそうだけどしらんがな。
最後は高座の上でもう一度ゴロゴロするのだが手と足をわさわさ動かしながら「50になったらやめようかな……」とポツリ。まあ動きもそうだし、テンションを保つのが大変そう。

萬橘師の二席め、『駒長』も普段なかなか聴かない噺。まあ今のご時世には向かない内容ではあるけれど。
だからといって安易な改変などをしないのが逆に萬橘師らしいというか。今日は珍しく二席ともスタンダードな型。
しかしそれにしてもお駒は長兵衛を好きなわけでもないのにいやいや一緒にいる。なのになぜか立場的にはお駒のほうが上っぽい感じ。噺ができた当時には珍しくなかったのかもしれないが、今ではちょっと不思議な関係に映る。長兵衛は強気なんだか弱気なんだか、暴力的なんだか臆病者なんだかつかみどころがない感じ。これを違和感なくやるのは難しそう。
今日は二席とも珍しい噺が聴けて嬉しい。これならお得だなあ。
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三遊亭遊馬のツキイチ落語会 [落語]

三遊亭遊馬のツキイチ落語会
於:両国 江戸東京博物館小ホール

三遊亭遊馬『転宅』『粗忽の使者』『崇徳院』

天気がいいので洗濯が終わったら早めに出かけてメシ食って会場近場で写真でも撮って……と思っていたら昼メシを食おうと訪れた店が定休日。そうなるとその店の周りは全然知らず、しかも徒歩ならぶらぶら歩きながらよさそうな店を探すのだがバイクなのでそれもできず。あてもなくバイクでふらふら走ってすっかり予定が狂ってしまった。ううむ。

遊馬師が毎月23日あたりに開いている会で、今月はたまたま祝日なので初めて来れた。
つか遊馬師を聴ける機会が少ない。
聞いてみたら後援会は解散してしまって、もう板橋のみやこ鮨での遊馬百席はもうないのだとか。なんと。
いや後援会入ってなかった俺が言えた義理ではないのだが。
土日で都内近郊で会やってくださいよとLINEで頼んでみるもあまり色よい返事がない。

そう思っていたら、ほぼそのままマクラでその話が出た。
聞けば遊馬百席がみやこ鮨でできなくなったために改めて勉強会を開こうと会場を探していたところ、ここを見つけたのだとか。平日の昼間なら他の人とかち合うこともないだろうと年間だかで一括で抑えているという。「お客さまは気軽に『土日で』というんですが、仲間たちも考えることは皆同じで会場がなかなか借りられない」だそうで。
いやいやそうはいっても。
「お客さまに『今日は祝日だから行けます』っていわれてようやく気づいた次第で……今日はいつも来ていただいているお客さまもお気づきかと思いますが、人が入っている。いつもと違う風景で驚きました」。ほらー、土日なら客が入るんだからやってよー。まあ「祝日だから行ける」ってLINEで予約したの俺だけど。
で、この会場も再来月からまた改修が始まるため、来月でツキイチ落語会はいったん終わり。「改修が終わるまで待つか、他の場所を探すか……。あとはもう勉強しないということも考えられますが」っていやいや。でもなんかあんまり積極的にやらなさそう……。なんかどこか欲がないというか。

客席には小さな子もいて、どうも遊馬師の『こども落語』シリーズを聴いているっぽい。そんな会話がちらっと聞こえてきた。落語とのファーストインパクトで遊馬師はとてもいいと思います。というか俺も近いものがあるので。
そんな小さな子もいるのでどうしようかと思いつつ普通どおりに、とお妾さんの噺に。
泥棒が旦那の食べ残しを漁る一品目はだいたい刺身だが、その後の品がそれぞれ人によって異なっていて、それがなんとなく楽しい。遊馬師はイカ納豆。なんでそんなものを。
泥棒が酒に弱いににも関わらず、お菊にいわれて駆けつけ三杯飲まされてキッチリ戦闘能力を奪われていくのがおかしい。

二席め、噺の主役が治部田治部右衛門と三太夫から留っこにシフトチェンジをするパターンとしては、治部右衛門が屋敷に到着したら視点を留っこに変えて留っこが会話を再現するものと、ある程度までは侍ふたりが話していて途中から留っこに変えるもの、尻をつねる最後まで侍視点で進むものといくつかあるが、遊橋のは3つめのパターン。噺の半分くらいでいきなり留っこが登場して主役が変更される。そういうのを違和感なく展開できる落語ってすごいな。

三席め、入れごとや脱線も少なく、スタンダードな型。でもなんだろ、そこここの細かいところに兼好みを感じるのだけれども気のせいだろうか。なんかやたら明るい熊さんとか「三軒長屋、みーつけた」と歌うところとか。
若旦那が病を告白するときに、「でもお前さん、下品に笑い出しそうだから……」というフリからの熊さんが「肥(こえ)患い」と聞き違えて盛大に笑うという伏線を回収する。これは初めて聴いたかな。

というか三席とも私が最後に行った遊馬百席で掛けた噺だった。偶然なのか意図的なのか。とはいえ久しぶりに複数のネタを聴けてよかった。

終演後、お見送りに出ていた遊馬師と久しぶりに声を交わすも他の人も多いので「どうもご無沙汰」程度。やっぱり土日の会が必要だなあ。
タグ:三遊亭遊馬
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