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扇辰日和 vol.82 [落語]

扇辰日和 vol.82「扇辰、胸を貸す!」
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰ぢろ『たらちね』
入船亭扇辰『田能久』
春風亭一蔵『佐野山』
入船亭扇辰『百川』

今日は連雀亭のワンコイン寄席に好二郎さんと吉笑さんが出ていたので久しぶりに行こうと思っていたのだが、出がけにもたもたしていたり、久しぶりすぎてちょっと迷ったりしていたうちに札止めになってしまっていた。まあそれもあり得るかとは思っていたのだが。
仕方がないが、そのまま中野に向かうと昼メシを食っても1時間以上余ってしまう。仕方ないので一度家に戻ろうとするも、そうすると今度は家に着いた途端にまた出なければならなくなる。なーんかすごい無駄な時間の使い方をしているなあ。

ここ最近は自分の身近な二ツ目をゲストに呼んでいる「扇辰日和」、弟子の小辰さんの仲良し枠で呼ばれたのかと思ったが、謝楽祭の実行委員長と副実行委員長つながりらしい。
今日は落語協会の新真打披露興行の大初日で、一蔵さんは本日主任のぴっかり☆改メ蝶花楼桃花師の番頭さんらしく、今日は高座が終わったら鈴本まで駆けつけるという。「今日ね、いい様子なんだよ。ちょっときて」と高座に呼ぶと、スーツ姿の一蔵さんが。
一蔵さんについては「前座のときはすごかったねえ。よく気がつくし、後輩たちにもよく小言言っていたし。こういうのは周りはちゃんと聞いてますからね。それになんといっても前座の頃から痛風持ちっていうのが素晴らしい。噺家は痛風持ちが多いんですよ。でも前座からってのは初めてじゃねえかなあ。失礼ながら『体質的なものがあるの?』と聞いてみたことがあるんですよ。そしたら『酒です!』って。相当好きみたいですね」。って一蔵さんは噺家になる前がすごそうだからなあ。
『田能久』は久しぶり。
ウワバミに飲まれそうになってパニクる久兵衛さんの様子がおかしい。
……しかしまあ前に天どん師でこの噺を聴いたときに本人が言ってたけど、この噺もまあかなりご都合主義というか都合のいい噺ですなあ。

一蔵さん、「痛風亭一蔵でございます」と自己紹介。前座の頃に痛風の発作が出て、足を引きずりながら楽屋仕事をしていたときに扇辰師に声をかけられたという。正直に痛風ですと答えたら「粋だね」と褒められたことを覚えてるそうだ。
「扇辰師匠は『親友のお父さん』みたいなものなので……」といつもよりだいぶお行儀良さそうな感じ。
相撲が好き、という話からコロナ禍で唯一よかったことは相撲のチケットが取りやすく、しかもマス席がふたりで座ることになったことだという。ただ、そうするとマス席につれてきてくれたお客に対してヨイショがしづらいとこぼす。連れてきてくれたお客の贔屓力士が買っても負けてもヨイショする方法があったそうだが、コロナ禍で会話がしづらくなったためにそれが効かないのだとか。
相撲の話から『佐野山』に入る。
意図してだろうが、以前に比べてだいぶ抑えめに演じているように見える。

扇辰師の二席め、『百川』自体も久しぶりだが、扇辰師のものとなると6年半振り。えー? なんかすごい頻繁に聞いているようなイメージだったのだが。しかもこれまで記録にあるだけで2回しかない。ただその前にも一度くらいは聴いているはずだが、それでもそんなもんか。印象ってあてにならんな。
全体的にコミカルでややクサめな感じ。

こういうあまりうまくいかないなと感じた日は無理になにかしようとせず、おとなしく家に帰って早めに酒を飲み始める。
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第4回 兼好集 [落語]

第4回 兼好集
於:水天宮前 日本橋劇場

三遊亭けろよん『雑俳』
三遊亭兼好『熊の皮』
春風亭昇羊『のれんわけ』
三遊亭兼好『花見の仇討ち』
三遊亭兼好『明烏』

兼好師のコロナ感染によって延長になっていた会。
本来は平日だったのだが土曜に移動したのはありがたい。

兼好師の一席め、最近はいろいろなことが起こりすぎてもはやコロナが明るいニュースのように扱われているという。
先日の地震の際には長女さんから電話があったそうだが、そのときには仕事で岡山に行っていたそうだ。東日本大震災のときも大阪に行っていたそうで、「自身のときはいつも家にいない」と言われたとか。
そんなところから「今の時代は強いリーダーはいらない。家庭でも奥さんのほうが立場的に少し強くて、でも有事があった際には男が進んで死んでいくというというのが理想なんじゃないですか。……そう思うとウチは時代の先取りをしていた」と主張し、強い奥さんが出てくる噺に。
そうはいっても兼好師の場合は悪妻というよりも「夫をうまくコントロールしている仲良し夫婦」の形なので聴いていて嫌な気持ちにならないのがいい。

昇羊さんは初めて。
今回から二ツ目のゲストを呼ぶことになったそうで、「次回以降もそうなるかはお客さんの反応次第」という。
5日前に兼好師からオファーがあったそうで、引き受けたのはいいが今日は横浜で両親と奥さんと食事会が予定されていたそうだ。そこそこいいレストランのコース料理を予約していたのがだ、前菜を食べたあたりで奥さんと両親を残して出てきたのだとか。うーわ奥さん気の毒というか。
噺はお店の番頭さんと手代が同じ女性と結婚の約束をしていて、それを小僧の定吉に打ち明けるというもの。
着ている襦袢を直してもらうという場面があるのだが。襟を治すのに腕に抱かれるってどういう状態? ってのがちょっと想像がつかない。こういうささいな違和感で噺が入ってこなくなるのはちょっともったいない。

兼好師の二席め、岡山に行った際に、昼席と夜席の合間に会場の隣にあった城址に行った時の話をマクラに。
花見の余興の稽古をする場面で、「卒爾ながら火をひとつ御貸してくだされ」という場面でどうしても「おう、火ぃ貸しつくれ」と職人言葉が出てきてしまうというのがおかしい。どんなに侍らしく振る舞おうとしても頭のてっぺんから「あう!」と出てきてしまうのがたまらなく面白い。
「やあやあ汝は何の誰兵衛よな」というところも「本番は誰か悪そうなやつの名前入れとけ」といわれて「やあやあ汝は橘家文蔵よな」となるのも楽しい。

三席め、源兵衛と太助の札付きコンビの奮闘ぶりが楽しい。
ちゃんと源兵衛と太助それぞれにキャラの性格をつけているため、今誰が話しているのかがキッチリとわかってすんなりと聞きやすくなっている。
源兵衛は「『倅を遊びに連れてやってくれ、その際の勘定はウチが持つ』っていわれてんだよ。それが帰られちゃったら手銭で払わなきゃならねえ」となんで若旦那を帰したくないかという理由も付け加えられていた。なるほど。

次回のチケットも購入。買ったはいいけど、また平日だけど大丈夫かなあ。
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第7回 ワンコイン寄席 三遊亭わん丈落語会 [落語]

第7回 ワンコイン寄席 三遊亭わん丈落語会
於:三郷 鷹野文化センター

三遊亭わん丈『新・蝦蟇の油』『お見立て』『井戸の茶碗』

最初かわら版でパッと見た時は「三郷鷹野文化センター」が「三鷹文化センター」に見えて「三鷹かー、いくらワンコインでもなー」と思っていたのだが、よくよく見てみると三郷だった。バイクなら30分ちょっとじゃん。それなら行くべし。しかし老眼の進行具合がヤベーな。

わん丈さんは『笑点』に出演したそうで、会場には「あの笑点の」みたいな扱いになっていた。……なんか東京のすぐ隣なのに完全に田舎の地域寄席じゃんか。まあ三郷って地理的には近いけど公共交通機関的には結構遠いんだよな……。
わん丈さんが話し始めてもずっと隣と喋ってるおばちゃんも多いし、なんだかなと思うもまあ地域寄席ってそんなもんだし俺ヨソ者だし文句は言えない。

一席め、滋賀のお母さんの話などのマクラからモノ売りの噺に入る。
わん丈さんの『新・蝦蟇の油』は何度か聴いているが相変わらず古典パートと新作パートの落差が面白い。

二席め、「今日はお子さんも何人か来ていただいているので……。じゃあわからないことがあったらおうちに帰ってからお父さんに聞いてください」と廓噺に。
そういや全然話が違うけど、昨日久しぶりに動物園に写真を撮りに行ったのだが、そこで「〇〇ちゃんはね、ママのお尻から出てきたんだよ」という5~6歳くらいの娘に対して「〇〇ちゃんはホントはお父さんのおち○ちんから出てきたんだよ」と教えていた父親がいた。いやまあ間違ってないのかもしれないけど、何教えてんの父ちゃん。ということを思い出した。
「花魁は病気だ」と伝えた後の場面から始まる。
いろいろと喜助に無理難題を伝える喜瀬川花魁だが、なぜか喜助に対しても色仕掛けというか色っぽい言い方で頼み事を行うし、罵倒するのも「そんなこともわかんないのかい、ん馬鹿」と甘えだすのがおかしい。

三席め、予定よりもちょっと押しそうということで「少し長めになりますけどやっていいですか」と断ってから噺に入る。
少し短めにするためか、屑屋たちが若侍の素性を噂する場面などもカット。
千代田卜斎の頑固ぶりが意固地というかかなりのもの。清兵衛さんがやや軽めのため、その対比が面白い。

次は一蔵さんらしい。こりゃあ来なきゃなあ。
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両国寄席令和4年 3月10日 [落語]

両国寄席令和4年 3月10日
於:お江戸両国亭

三遊亭けろよん『雑俳』
三遊亭好二郎『たけのこ』
三遊亭兼太郎『ざるや』かっぽれ
三遊亭好の助『狸賽』
三遊亭楽之介『初音の鼓』
三遊亭楽生『寿限無』
三遊亭しゅりけん改メ兼矢 二ツ目昇進披露口上
三遊亭兼矢『雛鍔』
マギー隆司 奇術
三遊亭兼好『不動坊』

兼好一門勢揃い。
開場時間の17時半をちょっと過ぎた頃に着いたのだが、もうかなりの混みよう。マジか。ここまでとは予想していなかった……。
運良く3列めのどまんなかにひと席だけ空いていたのでずんずんと入り込む。こういうときは遠慮とかしてられない。

好二郎さん、弟子入りのときの苦労話というか、好二郎自身は九州に兼好師がきたときに何度も落語会へ行って、それで何度も頼み込んでやっと入門を許してもらったという。「なのに兼矢はちょっと違っていて、両国寄席とか梅屋敷寄席とか、木戸銭が千円のところしかこない。アイツは質より量を選んだ。最後の方なんて『師匠、そろそろとってもらえませんか』とか言ってましたから」だそうだ。なんか兼矢さんっぽい。
梅屋敷寄席に続き、縁起のいい噺ということでよく伸びる筍の噺を。喜多八師の型で小辰さんもやっているのと同様のもの。
悪だくみをする屋敷の主人の童心が楽しい。

兼太郎さんも兼矢さんの弟子入りのときの様子について話す。「私もそのとき荷物持ちで一緒にいたんですが、『ダメだよ』って断られたら『あっ、そうスか。じゃっ!』って帰っていきましたからね。もうちょっと粘れよ」。これも兼矢さんぽい。
入門後についても。「兼矢は私がちょうど二ツ目に昇進したときに入ってきたんで、あまり小言とか言ったことがないんです。でも私が『今日の高座どうだった?』って聞くんですよ。そうしたら『兄さん、悪くないです』って。……超上からじゃん、すっげえ角度つけてくんじゃん。なんだソレ。それじゃまずいと思ったのか、その後にも聞いてみたら『兄さん、最高です』っていうようになった。『どこら辺が?』と聞いてみると『……どこでしょう』って……」。これもまた兼矢さんは言いそう。
噺はめでたく『ざるや』。「ざるやさん、好きな食べ物はなんだい?」「たけのこです。伸び上がる」と弟弟子のネタも拾う。
落語は短めに切り上げ、ご祝儀のかっぽれを。
格闘技をやっていたからなのか、身体の軸がどっしりとしていてまるでブレない。片足で回転するところなどもかなりキレイに回る。今まで何度かかっぽれを踊る人を見たが、一番安定感があったんじゃないだろうか。

好の助師、冒頭でたぬきが訪れてくる場面では「誰だい?」「はふひです」「誰?」「はふひ!」「兄貴?」「兄貴じゃなくてはふひ!」……というようなまどろっこしいやりとりはなく、「誰だい?」「たぬきです!」とハッキリと発音しているのが潔い。しかもこんなにハッキリ「たぬき」と言ってるのに家主は受け入れてくれずに「え?」「誰?」と何度も聞き返すのもおかしい。

楽生師、さっき楽太さんで聴いたのと同じ型。ということは圓楽師の型なのか。

仲入り後に兼矢さんの二ツ目昇進口上。通常こういうときは周りからなにをいわれても当人はポーカーフェイスで切り抜けるが、兼矢さんはずっとニコニコ。
楽之介師の口上では「大師匠の好楽さんは元は彦六一門。兄弟弟子に先代の春風亭柳朝さんがいるが、その弟子の小朝さんが売れたときには『小朝の師匠の柳朝です』と言っていた。普通噺家の自己紹介は『誰々の弟子の〇〇です』というのに逆になった。兼矢さんには兼好さんに『兼矢の師匠の兼好です』と言われるように頑張ってほしい。……兼好さんは意地でも言わないでしょうが」とのこと。
兼好師からは「兼矢は不思議な子で、他の弟子は『入門してこれくらい経って、元の力がこれくらいだったんだから、これくらいはできてほしい』というのがなんとなくわかった。でも兼矢だけはわからない」と評価される。それだけ伸び代があるってことじゃないですかね。
10秒間だけ撮影OKタイムが出る。
DSC_4072.jpg
DSC_4077.jpg
Nikon Df

さて兼矢さん、昼とはまたネタを変えて『雛鍔』。
私もそんなたくさんの人のを聴いたことがあるわけではないので間違ってるかもしれないが、これは一之輔師のじゃないかなあ。
ご隠居から詫びを入れられ、「火事見舞いでもあれば伺えるのに。ご隠居が今日きてくれなければ明日あたり近所に火ィつけに行くとこだった」とか、ご隠居から小遣いをもらいそこねたときに舌打ちしたりとか。今後はこういう毒を含んだ噺も増えていくのだろう。そのときにどのような表現になるのか楽しみだ。
俺はあの兼矢さんの甚兵衛さん的な雰囲気が好きなので、それがうまくブレンドされていければいいなあと思う。

マギー隆司先生、「まあみんな兼好師匠聴きたいだろうからね、短くね」というが、先生のゆるいマジックも長い時間見たいです。

兼好師、いつも言っていることだが吉公の狂気と正気の狭間の目つきの変わりぶりが素晴らしい。さらに風呂屋で吉公の狂気に巻き込まれた生薬屋の旦那の怯え方もおかしい。言葉で描かれているわけでもないのに、巻き込まれまいとする周囲の引きっぷりが見えるのがすごい。風呂屋の場面の面白さについては随一ではなかろうか。
モテない三人組が長屋の屋根の上でふんどしを外して寒さに耐えているという場面のくだらなさもたまらない。いやーコレやっぱすごいよ。

さてそれにしても兼矢二ツ目昇進の会というのはないのかなあ。もうちょっとちゃんとした写真撮りたい。
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亀戸梅屋敷寄席 令和四年三月十日 [落語]

亀戸梅屋敷寄席 令和四年三月十日
於:亀戸 亀戸梅屋敷 藤の間

三遊亭楽太『寿限無』
三遊亭楽花山『真田小僧』
三遊亭ぽん太『猫と電車』
三遊亭好二郎『熊の皮』
三遊亭兼矢『お見立て』
三遊亭圓橘『悋気の火の玉』

有給。
近所にあったタイ料理屋が閉店してしまった。
最後のふた月ほどはこれまで以上に行くようにしていたのだが、最後の2日はずっと満員で入れず、ママさんとちゃんと別れを言えなかったのが少し心残り。
そんなことを思いつつ、食べ放題ランチがあるという高田馬場のタイ料理屋へ行ってみる。うん、まあ普通。でもタイ米を思う存分食べられるのはありがたい。カノムチンの味の奥にバンコクの路地裏の匂いを感じた。

今日は兼矢さんの二ツ目昇進口上があるというので、両国寄席には行くつもりでいた。
が、好二郎さんのインスタを見ていたら梅屋敷寄席でも兼矢さんが出るということだったのでこちらにもきてみる。

楽太さん、寿限無の謂れを家に帰っておかみさんにも講釈するという型で、これは初めて聴いたかも。もちろん落語なので聞きかじりの講釈はいつの間にか間違っている。

楽花山さん、兼矢さんと同じ大学だったそうで。ただキャンパスが違うし学年も異なるので会うことはなかったらしいが。
関西の大学だったということで、上方版の『真田小僧』。なるほどこの話の内容だと上方弁の方がしっくりくるかも。濡れ場などもこっちの方がややどギツめか。

ぽん太さん、戦中の漫画家、田河水泡作の落語だそう。田河水泡作といえば『猫と金魚』が有名だが、他にも90作ほどあるという。それを演じる依頼を受けているそうで、今日はその中の一作をかける。
「古典落語といいながら、稽古は現代の人につけてもらってるのでどこか現代風になっている。でもこれはその当時のままを解凍しているようなものですから……。もしかしたらもう賞味期限は切れているかも」。
噺は校長先生から猫を貰ってくれと頼まれた用務員さん(?)が子猫を連れて電車に乗り込むというもの。電車と言っても多分路面電車だろう。
電車には猫は持ち込めないので、どうにかして車掌にバレずにごまかそうとする。まあたしかに現代からすればちょっと弱いかも……。
『のらくろ』といい『猫金』といい、田川水泡は動物好きだったのかな。

好二郎さん、兄弟子らしく兼矢さんの紹介から「めでたい時期にはめでたい噺を掛ける」と『熊の皮』に。……めでたいの? まあめでたいことがあったから赤飯のおすそ分けがあった、という話の流れだからいいのか。
この甚兵衛さんのおかみさんは結構な悪妻? 甚兵衛さんに仕事を押し付けるときはかなり高圧的で笑い方が悪人のそれ。兼好師とはだいぶ違うなあ。
甚兵衛さんと先生の会話部分もちょっと説明不足というか、わかる人にはわかるけど、初めて聴いた人には通じるかな? という感じ。時間的にカットカットしたらそうなったってことなのか。なんか絶妙に惜しい感じ。

さて兼矢さんとしての初めての高座。
弟子入りのときの話で、兼好師に「出身はどこ?」と聞かれ、「山口です」と答えたところ、「俺会津なんだよ」といわれたという。が、「? そうですか」と返して呆れられたそうだ。まあ正直私も長州と会津の因縁は、小学生の時に林間学校が会津だったからなんとなく知っているくらいで、実際のところはよく知らないのだけれど。
とはいえ兼好師は地元での仕事も多く、その際に山口出身だとバレておじいさん世代に謝罪を求められることもあったのだとか。「まあ『すいませんでした』っていったら『いいよ』って許してもらえたんですけど」だそうだ。
そんな「自分は田舎者だ」という自己紹介から田舎者にシンパシーを感じると『お見立て』に。
これもまた兼好師の型とは大きく異なっている。
大体の人は杢兵衛お大尽を振る口実として最初は「患った、風邪が悪化した」というものが多いのだが、兼矢さんはこの時点から恋患いということにしていた。確かにそうすれば次の「恋患いで死んじゃった」という展開には理屈が繋がりやすいので、なるほどと思った。が、そうすれば「見舞ってやんべ」となるのは当然で、そうすると「どうしても帰らないお大尽」という野暮天を笑うという構図にはなりにくい。
それに、この喜瀬川の言い訳は理屈の通らない無茶苦茶なことをいっていることとそれに困る喜助、さらにそれに気づかないお大尽という構図が面白いのであって、言い訳の理屈が通っていることは実はそんなに重要に重要じゃないんだなあと気づいた。
とはいいつつもまずは前座噺から離れ、真打も掛ける噺を堂々とアレンジを加えて演じていることに感慨深いものがある。頑張れ。

圓橘師、「『お見立て』という噺はリズムが大切。……今日のあれでは……」とかなり辛口の講評を下す。「なんで私がこんなに厳しいことをいうのかというと、私が『読書会』というものを開いていて、外国作品などを読んで『ここはこういう意味でこういうことを話している』とかなんとかみんなで話し合っている。そこでチェーホフだったかな、私が『これこれこうだ』と話したら、アイツは文学部出身ですから『師匠、その解釈は間違っています』って」。……すげえな大叔父筋に当たる師匠にそんなこといっちゃうの? イマドキというか……。
縁起の話もしていたと思ったが、『悋気の火の玉』って縁起いいの? 人ふたり死んでるけど……。「燃え盛る」ってことで縁起いいのかな。謎。

終演後に出口に好二郎さんとスーツ姿の兼矢さんがいたので祝儀を渡して(←重要)、両国寄席にも行くことを伝えて一度家に戻る。
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