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和室カフェ 其の二十九 [落語]

和室カフェ 其の二十九
於:神保町 らくごカフェ

トーク
立川笑二『あたま山』
入船亭扇橋『団子坂奇談』
入船亭扇橋『尼狐』
立川笑二『新作(怖い彼女)』

中野から神保町に移動して親子はしご。

「扇橋と」「笑二で」「「和室カフェー!」」も扇橋師主導で一応やる。
まずはいつものようにダラダラとオープニングトーク。
「こないだの沖縄のJアラート大丈夫だった?」という話から「ああいうことがあるとNHKの朝ドラが潰れるから困る」「朝ドラは沖縄が舞台になるとダメだ」「朝ドラの評価は楽屋の様子でわかる。昼席の楽屋にいるとだいたい金魚先生が再放送を見てる。面白いときは何も言わずに見てるけど、面白くないときはずっと文句言ってる」「以前深津絵里が出ているときにハマった。世代だから」「大河ドラマは45分テレビの前にいられる自信がないので見ていない。それに大河はキャストがみんなすごい。朝の戦隊モノなんかだとひとりくらい演技が酷いのがいるんだけど、その人が一年掛けて上達していくのを見るのも楽しい」などとドラマの話をかなりしていた。主に扇橋師がひとりで。笑二さんはほぼ相槌のみ。
笑二さんのカバンの中には飲みかけのペットボトルが何本も入っているという話題から「楽屋でお茶がいるか」という話に。笑二さんは自分の飲み物があるからわざわざお茶はいらないのだそうで、他の人も皆「出されるから仕方なく飲んでる」と思っているとか。熱いお茶が苦手だという笑二さんに対し、「じゃあ『ぬるめでちょうだい』っていえばいいじゃん。……めんどくさい師匠みたいだけど」と扇橋師。中には「お茶はいらない」という師匠もいるそうで、馬風師はお茶を出されると怒るほどだとか。「伯山アニさんと国立の楽屋に前座でいたとき、私はそれを知ってるし、周知だと思っていたからお茶を出さなかった。そしたら伯山アニさんが『自分が出さなきゃ』って思ったんだろうね。すっごい怒鳴られてて『お茶出さなくていいことなんてあんの』って……」。「そりゃ協会が違えば知りませんよ」と笑二さんの真っ当なご意見。さすがにそれは気の毒。
その他にも扇橋師が末廣亭のクイツキに出番があるのだが、楽屋で毎日仲入りの小満ん師と話しているといい、そこでなぜかシモの毛の話を初日にしたところ、そこから毎日シモの毛の話をしているのだとか。何故。「小満ん師匠は話しかけてくれるときに『なんか素敵な話はねえかい』って聞くんだよ。K師匠みたいに『なんか面白い話ないの』っていわれるとイラッとするけど、『素敵な話』っていわれるとなんか話さなきゃ! って思って……」だそうだ。
そこらへんで笑二さんが「落語やりましょ」と打ち切り。

笑二さんの一席め、前回も話した地元の友人と浅草スケッチをしたエピソードをさらっと話して「友だちと一緒に行って一番楽しいのは花見」と噺に入る。花見? 今頃? と思っていたら、すでに『あたま山』で頭の上に桜が咲いている状態で、頭に桜が生えた梅吉の友人である松と竹がそこに花見に来ているという状況。おお、そうなる?
梅吉が「(頭から桜が生えてても)俺たち友だちだよな?」と何度も聞くが、松と竹は「桜が見事だ」とかしかいわず「友だちって言えよ!」とキレるのがおかしい。仲入り後のトークでも扇橋師に「笑二さんてああいう問いかけ好きだよね?」と指摘されていた。
梅吉が望んでふたりに桜を抜いてもらうものの、その後の言動がちょっと足りない感じでカタコトになるのがいかにも笑二さんっぽくて面白い。

扇橋師の一席め、「その人のキャラクターに合った噺をすると上の師匠方から『その噺はアンちゃんのニンだね』なんてことを言われたりしますが、『あたま山』がニンの人は初めて見ました」。
「私は一番弟子なので兄弟子がいない。実際の兄弟でも弟はいるけど兄はいない。弟弟子は……実際の弟よりも付き合いが深いのが嫌ですね。しかも弟弟子が私を尊敬していないのがわかるんですよ。私は重箱の隅をつつく……というかじーっと眺めてるタイプ。『んー……これなあ……』とかいって。辰乃助は横は見えてるのに重箱だけが見えてない。『どこですかアニさん!』なんていって。辰ぢろに至っては重箱があることすら気づいてない」そうで。
昔は長男だけが家を継いで次男三男は大変だったと武士の次男が主人公の『団子坂奇談』に。桜は出てくるわ「奇妙な噺」だわで笑二さんとつきまくりではあるが。扇橋師で聴くのは約1年ぶり。
じっとりとした蒸し暑さが伝わってくるよう。

仲入り後、この会の特色である「行ってみようやってみよう」コーナーが次回から復活するということで、行き先を決めるトークコーナー。客からリクエストを募り、そこからふたりで選んでいく。
工場見学や屋形船といったものから、競馬やダイビング、トランポリンなどの案も。
工場や屋形船はすでに行ったことがある、ダイビングは扇橋師が怖いのでパス、トランポリンなどの体を使う系はふたりともあまり乗り気ではない様子。
ということで扇橋師はリアル脱出ゲーム、笑二さんははとバスツアーを選ぶ。一応拍手で客の民意を計ってはいたが、結局よくわからないのでジャンケン。扇橋師が勝ってリアル脱出ゲームに決定。実は私が出した案(もうひとりいたみたいだけど)。次も行かなければ。

扇橋師の二席めもまた奇妙な噺というかあやかしの噺。もう今日はそういうテーマの日と決めたらしい。この噺も約1年ぶり。
落ち着いていた兄貴分が妙なことが起こるたびにどんどん冷静さを失ってパニックになっていくさまがおかしくも気の毒。

笑二さんの二席め、「今日はホントそういう噺ばかりなんで、本当は違う噺をやろうと思っていたネタを変えます」と新作に。
渋谷の喫茶店のマスターのところに地元の友人が訪れてきたのだが、彼女を駅前で撒いてきたという。なんだよ、彼女も呼べよとマスターが言うのだが、「いやあ俺の彼女怖いんだよ」といかにサイコなのかを話す……というストーリー。タイトルは不明。
笑二さんのネタに「わかればなし」という演目があるようだが、どんな噺かわからないから特定はできない。多分違うような。
結構ミステリ的というかホラーというか、『世にも奇妙な物語』的な雰囲気が漂う。もしこれが即興でできてるんならすごい。
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扇辰日和 vol.85 [落語]

扇辰日和 vol.85「アメリカ凱旋公演」
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰ぢろ『道灌』
入舟辰乃助『動物園』
立川志の春『ちりとてちん』
玉川奈々福『寛永三馬術 大井川乗り切り』曲師 広沢美舟
座談会〜アメリカ公演〜
入船亭扇辰『天狗裁き』

先月に行われた扇辰師のアメリカ公演のメンバーを一堂に集めた会。扇辰師も言っていたが、「今どきこのメンバーが3000円じゃ聴けないよ」というまことにお得な会。扇辰師曰く、会の日は先に決まっていて、たまたま全員が今日空いていたのだとか。そりゃすごい。

辰ぢろさんは唯一の非アメリカメンバー。さすがに協会の前座仕事を10日間も休めないのか。

辰乃助さん、挨拶に「ハウアーユー」。アメリカかぶれ。
「一蔵アニさんに外国の人向けの相撲の本というものを借りまして。英語で書いてあるのでよくわからないんですけど、十両のことを『テンダラー』、前頭を『フロントヘッド』、小結を『リトルリボン』と書いてあった」。確か一蔵師でも同じことを聞いたような。
アメリカでなんのネタをやればいいのか扇辰師に相談して、アドバイスされたのがこの『動物園』だったとか。ただし扇辰師は酔ってまったく覚えてないのだそうだが。
いろいろダジャレも入っていたが「それアメリカじゃやってなかったでしょー!」とメタでバラす。まあダジャレは通じないだろうし。
入船亭で『動物園』って珍しいような。トラではなくライオンに入るのだが、歩き方がなんか変。わざとなのかヘタなのか。

志の春師、あれ真打昇進後初かな。もう4年近く聴いていなかった。
志の春師は海外公演は何度か行っているそうで。とはいえ落語を英語にしてもそれほど印象は変わらないのだそうで、『転失気』の冒頭部分を私にもわかるような英語で実演する。固有名詞が多いので、それほど日本語と変わらないのだそうだ。なるほど?
以前シンガポールで『転失気』をやったら椅子から転げ落ちる人がいるほどウケ、「『転失気』は日本の宝だ」とまでいわれたとか。
志の春師もアメリカでやったネタを。
お世辞の上手い金さんが何を食べても「上から読んでも下から読んでも」と繰り出すのがおかしい。「灘だな」「鯛いた」「うなぎなう」とかそんなんだけど。
ちりとてちんを食べる際に六さんが「江戸っ子の生き様見とけ!」と見栄を切っているのに、ご隠居が冷静に「台湾土産なんだけどね」と返すひとことが鋭い。

奈々福先生も海外公演は何度も行っているそうで、毎回同じネタをやって各国での反応の違いを楽しんでいるのだそうだ。今回もそのネタを持っていこうと思ったら、呼んでくれたイェール大学の教授から「どうしてもこれ」とネタの指定があったそうで、「私の持ちネタの中で一番大変で疲れるものを選ばれて……」とのこと。その教授は奈々福先生のYouTubeで見ていたそうで、ご指定が入るのも納得の堂々としたコブシの回しっぷり。腹の底から出ている声を真正面から受け止めるとこちらまでも気持ちいい。

座談会では扇辰師が司会で辰之助さん志の春師、美舟先生、奈々福先生がアメリカ公演の話を。
公演自体の話は少なめで、前準備や移動、それと飲んだ話に大半が費やされる。複数人数でどこか行くなんて、昔いた会社で社員旅行でタイに行ったとき以来ないなあ。それ以外は旅はほぼひとり旅ばかりだけど、こういう話を聞くとなんかやっぱり楽しそう。

扇辰師の『天狗裁き』もアメリカでのネタなのか。なんか誰かが「海外だとわかりやすくてウケる」ようなことをいってたのを聞いたことがあるなと思っていたら兼好師と扇辰師だった。そういや扇辰師はヨーロッパ公演も行っていて、その時も『天狗裁き』をやっていたといっていたっけ。
海外を意識してなのか、夫婦喧嘩で「さあ殺せ」といってはいても、実際に殴るシーンはなし。隣の男とは殴り合いをしているのに。
天狗に助けられ、また夢の話を聞かせろといわれるのかを身構える熊五郎に「ワシは天狗じゃによってそんな話は聞きとうはない」といいつつたっぷりと間を取っての「……が」のひとことがまことに面白い。

たっぷり3時間近くのボリュームでコスパ最高の会でした。
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