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人形町噺し問屋 その五十三 [落語]

人形町噺し問屋 その五十三
於:人形町 日本橋社会教育会館

三遊亭兼好 あいさつ
三遊亭けん玉『十徳』
浮世亭とんぼ・横山まさみ 漫才
三遊亭兼好『万病円』
三遊亭兼好『ちきり伊勢屋』

当日ひと席空きがあると兼好師のHPにあり、仕事もそれほど急ぎのものがなかったので急遽行くことにする。
とはいえ会社を定時に出てもかなりギリギリの時間。こういう時に限ってエレベーターが各階に止まったり、人波で思うように動けず乗りたい電車に間に合わなかったりしてイライラする。楽しみに落語に行こうとしているのに、イラついてちゃ本末転倒だなあ。
ギリギリ5分前に会場に到着。かなりいい席。

まずは兼好師のあいさつから。
衆議院の解散に触れ、一回リセットしたいという気持ちはわかる、自分もリセットしたいことがある、と母校で行った学校寄席のエピソードを。学校寄席を頼まれたのがたまたま母校だったらしく、散々な目にあったそうだ。それにしても学校寄席に宮治さんと兼好師って贅沢だな。木戸銭払って俺が行きたいわ。まあファーストコンタクトに本当に面白い人を聴くってのは大切だと思う。
また、最近のハロウィンなどのイベント事が新しく入ってくるのはいいが、騒ぐのは当日だけにしよう、とのこと。博多の仕事で前日の夜に行ったところ、ハロウィンのイベントと重なってしまい、コスプレの人混みに紛れ込んでしまったという。和服の兼好師も「中途半端なコスプレ」だと思われた上、血まみれの新撰組に襲われたという。なかなかシュールな光景。見たかった。

けん玉さん、高座まで満面の笑みで向かうのは兼好師の教えだろうか。
『十徳』は6〜7年くらい前に一度だけ聴いた覚えがある。誰だっけ……こはるさんだったかなあ。
まだ口調は硬いが、若々しく力強く聴かせ、素直に「頑張れ」と応援したくなる。
少し引いて声を落としてこちょこちょと何かつぶやくときの口調や雰囲気が兼好師と似ている。

とんぼ・まさみさんは関西の漫才。コテコテ? なのか? よくわからないが、どちらもボケるしどちらもツッこむ。

兼好師の一席め、マクラでフィギュアの羽生の話題を。
フィギュアファンの兼好師は、いつかあの練習で事故が起きるのではないかと思っていたという。あんなに一斉に人がリンクに入っていたらぶつかるに決まっている、噺家だって一箇所に集められて「ここで稽古しなさい」と言われたら噺がぶつかってしまう。あっちで『芝浜』こっちで『らくだ』を稽古していたら、「お前さん、起きて仕事に行っておくれよ……起きねぇと思ったら死んでやがる」となるに決まっている、とのこと。それにしてもあの状態で2位になったのはすごいが、あんな「美しい」とはかけ離れた絆創膏姿で、あんなヨレヨレで転びに転んで2位、……本当にかわいそうなのは3位以下の選手ではないだろうか、「あの羽生なら勝てる!」と思ったはずなのに、それなのに負けてしまったら、もう一生かなわない、やめてしまう人もいるんじゃないか、と。なるほどそうかもしれない。
また、スポーツ選手の向上心に触れ、錦織もベスト4に入ったのに「まだまだ」と言っている、噺家にはあの向上心はない、こないだ百栄兄さんと話していたら「100人中3人が笑ってくれればいいよ」と言っていた、とバラす。うん、言いそう。しかも口調が似ていた。
『万病円』も数年ぶりに聴く噺。これはニフティの「ぽっどきゃすてぃんぐ落語」で志ん好師(当時志ん公)だった。
いたずら好きの浪人者が反対にやり込められるときのリアクションが大げさで楽しい。
菓子屋で4種類の菓子を食べるときに、すべて仕草や食べたときの音を変えていた(と思う)のはさすが。

二席め、スイスの安楽死について触れ、「自分だったら何月何日に死ぬとなったら冷静でいられない」というところから、占い師に「あなたは2月15日に死にます」と宣言される『ちきり伊勢屋』に入る。
これは演目名としては聞いたことがあるが、噺を聴くのは初めて。
かなり長い噺で、通常は上下に分けるらしいが今日は通しで。
Wikiなどで調べた限り、オリジナルの噺とはやや変わっているようで、それが兼好師独自の改変なのか、それとも誰かの形なのかは判断できない。
ややご都合主義な展開もありながら、よく出来た噺だと思う。いろんな場面が出てくるので、演じる方は大変なのではないだろうか。
長い話ではあるけれど、「この後どうなるんだろう」と思わせられてずっと飽きずに聴いていられた。
どっぷりと噺の中の世界に浸ることができたのは、やはり兼好師の腕だろう。
それにしてもこれまで滑稽噺ばかりやってきて、「人情噺はまだ早い」と言っていた兼好師だが、圓生作の人情噺をかけるということは、こりゃあ本気で圓生襲名を狙っているのかも……。いいことだ。

帰りに兼好師自ら田植えや稲刈りをした福島のお米「兼好米」を購入して帰宅。
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