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ノラや寄席(第238回) 遊雀・宮治の会 [落語]

ノラや寄席(第238回) 遊雀・宮治の会
於:高円寺 koenji HACO

三遊亭遊雀『旦那の雑煮』
桂宮治『阿武松』
桂宮治『狸賽』
三遊亭遊雀『御神酒徳利』

今日は個人的芸協祭り。芸協でのお目当てのこの3人を一日で聴けるなんて滅多にないのでは。
本来は遊雀師の独演会らしいのだが、無理に宮治さんに二席入れてもらったのだとか。

遊雀師の一席めはかなり珍しい噺。速記本なども残っていないので、あらすじを元に新たに作家に書き起こしてもらったと仲入り時に言っていた。トイレに行こうとしてTシャツステテコ姿で。
おかみさん公認でお妾をふたり囲っている旦那が、正月に家で雑煮を2杯食べてお腹いっぱいのときに「あの子たちにもお年玉をあげにいっておやりなさいな」と送り出され、ひとりめのお妾さんの家でも雑煮を2杯無理矢理食べさせられ、息も絶え絶えのところふたりめのお妾さんにも……という噺。
あらすじだけだとどうということもないのだが、遊雀師が演るととにかく面白い。おせちのお重を開けた時におかみさんもお妾さんもいちいち「黒豆は〜」などとおせちの歌を歌うのがおかしい。

二席め、一日で『御神酒徳利』がかぶるのは珍しいのではないだろうか。年末の大掃除が発端なので、時期としてはちょうどいい頃なのだろうが、『御神酒徳利』自体久しぶりだったのでちょっとびっくり。
同じ一門だからか、遊馬師と似たくすぐりが入る。とはいえやはり細部は異なっていて、その違いも興味深い。
お稲荷さまの力を借りて「そもこの大阪という土地は〜」とたまわる箇所はとにかく芝居っ気たっぷりにクサく演っていて大爆笑。

宮治さんは相変わらず「待ってました戸越銀座!」と声を掛ける常連のお客さんを「早く死んでくんねえかなあ」などといじり倒す。宮治さんは初めてらしいお客さんから「ひどい」と声が上がったらしく、「嘘ですよ、本当はちょっとしか思ってませんから!」とあくまでも毒を貫く。
とはいえ、正直なところちょっとこの声掛けにはうんざりする。声掛けの正しいマナーは知らないけれど、甚五郎噺のマクラでよく使われるように、噺家を住んでいる地名で呼ぶのは黒門町や矢来町、目白のように「名人」と呼ばれた人に向かって使うものではないだろうか。宮治さんは好きだし、上手いとも思うけれど、まだ二ツ目になって間もない人を名人扱いはどんなものだろう。それも一度や二度なら洒落ですむが、81回(本人がカウントしていて、宮治さんに告げたのだそうだ)となると、これは逆にイヤミなんじゃないかなぁ。それに宮治さんがメインの会ならそれもいいだろうけど、今日の本来の主役は大先輩である遊雀師なわけで、それを差し置いて声がけってのはなんか違う気がする。とにかく声かけりゃいいってもんでもないだろうに。あとせっかくマクラが面白い噺家さんなのに、このおじさんがいるとマクラがこのおじさんの話になってしまうのも嫌だ。大体俺は自分の存在を噺家さんにアピールする輩が嫌いなんだ。変な声で笑ったりやたらでかい声とオーバーアクションでウケたり、耳障りで仕方ない。そういや遊雀師の客でもそういうのいたなぁ……耳に刺さるような奇矯な笑いと大げさな手叩き、ノラやみたいな狭い小屋でやらなくてもいいだろうに。粋じゃねえなあ。なんでもない小ネタに爆笑とかこっちが醒めるんだよ。あーなんか愚痴が止まらない。粋じゃねえなあ。

さて今日のネタはどちらも宮治さんでは初めて聴く噺。
『阿武松』はおふざけも少なめで正統的にしっかりと。板橋の宿で身投げのワケを話すときは泣かせにきていたような気がする。
この間聞いた一蔵さんもそうだが、宮治さんもなかなかの体型なのでこの噺にはよく合っている。

一転『狸賽』はおふざけてんこ盛り。
賭博場で思い通りに転がってくれない狸に向かって「たーちゃん! ちゃんと動いて!」「たーちゃん! それ違うー! 滑るんじゃなくて回って!」「もー、たーちゃーんその回り方じゃフィギュア!」となぜか男らしかったはずの博打打ちがオカマっぽい感じに。宮治さんの噺には結構このオカマっぽいキャラが出てくる。このキャラが場を引っ掻き回すのが面白い。
オチは「このサイコロは(インチキ)臭えな」「オナラしやがった」とよりストレートに。遊雀師に「くだらねぇ噺だねぇ」と呆れられていた。

いろいろな方向の噺が聴けて、楽しい会だった。
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