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第45回 僕のらくご道 三遊亭天どん独演会 [落語]

第45回 僕のらくご道 三遊亭天どん独演会
於:中野 なかの芸能小劇場

三遊亭天どん『氷の上』
三遊亭ごはんつぶ『星レビュー』
三遊亭天どん『新作(転売ヤー)』
三遊亭ごはんつぶ『権助提灯』
三遊亭天どん『帯久』

こたつで昼寝してパッと起きたら家を出る予定の時間。急いで準備して必死で走り、開演時間ギリギリに会場に着く。
受付の人が席を外しており、たまたま近くにいたごはんつぶさんに受付をしてもらう。とそこに天どん師がふらりとやってきて、「もう出ていいの? あ、どーも。大丈夫ですよー。僕が行かない限り始まりませんから」と言ってもらう。
席に着いたところですぐに開演。まずはご挨拶。「なんかねー、袖で見ててもこの会には『これから始まる!』っていうワクワク感がないんですよ」と客にダメ出しから始まる。
「この会ももう45回ですよ。ということは45本新作を作ったってことですよ。もっと褒めてほしい」。相変わらずストレートですな。
ちょっとニヤニヤしながら「出世の話ししましょうか。欲しがってるんでしょ?」。
「あ、出世といえば弟子のことを褒められることが結構あるんですけど、そのとき必ず『天どんさんの弟子なのに』っていわれるんですよ。どういうことですか。弟子の顔面殴ってやろうかと思いますね」とバイオレンス。
「笑点、一之輔くんがレギュラーになりましたね。宮治なんか前は一之輔くんにべったりくっついて『師匠、師匠……あ、天どんアニさんチース。……師匠師匠』ってやってて『いいねえ、あからさまだねえ』と思ってたら先にメンバーになって、立場が逆転しそうになりかけてた。それをまた戻したのでよかったんじゃないですか」などといかにも天どん師らしいシニカルというかひねくれてるというか。
「僕としては三平アニさんを推してたんですけどね。鎧武者姿で『武者修行から戻ってまいりました!』って。……ほらこういう空気になるでしょ。ただひとりをのぞいて日本中が『お前じゃない!』ってまとまるんですよ。 こんなことできるの三平アニさんしかいませんよ。戦争がなくなりますよ。で、次の週から別の人が出てる」。面白いといえば面白いけど……。
その後も一之輔師の二ツ目時代の思い出話なども。おそらくここらへんの話は配信の会でも話すのかな。

まず一席め、「今日しかできない噺をやろうと思いますよ、これで季節を感じてもらえれば」と雪が降った次の日に氷の上で滑って転んでいるおじさんの動画を撮ろうとしている男の噺。しかし同じ趣味を持つ会社の部長と鉢合わせ、お互いがお互いを転ばせてその動画を撮るためににらみ合うという手に汗握る、というかくっだらないといえばくだらない、いかにも落語らしい噺。
相手を滑らせるためにクオリティの低い猪木のものまねや、滑舌が悪すぎてもはや「だばせだびで」になっている山瀬まみのものまねなどが楽しい。
結局はふたりとも同時にコケ、天どん師は高座の上で大暴れ。ある意味予想通りではあるが。

ごはんつぶさん、高座に上る前に山台や緋毛氈や座布団を直す。そのため拍手をするタイミングがつかめない。「師匠のあとに上がることは前座の頃からよくあったんですが、師匠のあとは高座が乱れてることが多くて……。拍手しづらくてすみません。しかし最近、協会でああいうことがあって、活動家が頑張ってるというのに『顔面殴ってやろうかと思った』とかいっちゃうんですから……」としれっとこする。
噺はレストランで食事をしているカップルの女性の方がレビューをすることにハマっており、そのレビューをする際の基準について話し、「先輩にすごいイケメンがいて、(彼氏の)タカシくんを星1とすると……」などとなぜか基準値が低い。
よくこういうことを思いつくなーと思う。

天どん師の二席め、「弟子の噺を袖で聞いてたら、師匠と弟子って似るんですかね、僕のネタおろしの噺と構成がほとんど同じなんですよ。でもやるしかないんですけどね。でも僕も師匠が死んでからすごく楽しいんですけど、『師匠がやりそうだな』って噺を作ってきました」と最近それよくいうよね。結局のところなんだかんだいいつつ圓丈師の影響は大きいんだろうなあ。
「天然というか素直な人ってすごいなと思いますよね。〇〇師匠のところの□□くんっているんですけど、師匠が浅草によく出ている関係もあって、小朝師匠から『□□くん、浅草でトリとりなよ』っていわれたんですけど、『この時期だと赤字になるから嫌です!』って答えたんですよ。考えられます?」。すげ。
噺にはまず男女が登場し、プレゼント交換を始める。ホントにごはんつぶさんの噺とシチュエーションが似ていて会場から笑いが漏れる。
男はプレゼントのバッグを転売ヤーから買っていて、それを詫びていたら実はその出品者が彼女だった、というもの。
彼女が転売行為を正当化するために大演説をぶち、男が素直に洗脳されていく様がおかしい。マクラはその仕込みだったのね。その話の節々に「5段階でいうと」とごはんつぶさんのネタで繰り返し使われていたフレーズを織り込む。噺が似ているとこういう親和性も高い。

仲入りを挟んで再びごはんつぶさん。二ツ目になって出番を増やしてもらえたということか。
「後半は古典の部ということで……」と『権助提灯』。前座の頃も何席か古典を聴いたことがあるが、古典派にまったく引けを取らないキッチリとした一席。権助の吐く毒も辛辣でおかしい。これも天どん師の教えの賜か。

天どん師の二席め、「ホントは袴を履いてやるような噺なんですけどね、袴忘れちゃったんですよ。なので皆さん『袴を履いてるもの』として想像してくださいね」と無理難題を仰る。
『帯久』を聴くのは初めて。天どん師は「僕は名演を次世代に引き継ぐような役割じゃないんで。『こんなのもあるんだ』っていう程度に聴いてください」と謙遜するが、あまり爽快ではない内容の噺でもあの朴訥としたというか飄々とした語り口だとそれほど陰鬱とせずにサラリと聴ける。
泉家が帯屋に罵倒されて帰るシーンでは「あー嫌ですねーこういうの本当にやりたくない」と優しい一面も。
お裁きの場面では「ああーこれはしまったー。いやあ奉行うっかり(棒)」とかやたら軽い大岡越前がいかにも天どん師らしい。
確かに人情噺の味わいが高く、さん喬師などが掛ければ重厚になるんだろうと思うが、天どん師の軽くサラリとした味わいも楽しい。
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