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新宿末廣亭 令和三年三月下席 夜の部 3月28日 [落語]

新宿末廣亭 令和三年三月下席 夜の部 3月28日
於:新宿末廣亭

東京ボーイズ 歌謡漫談
三遊亭とん馬『宗論』 かっぽれ
神田松鯉『天保六花撰 河内山宗俊 玉子の強請』
柳亭小痴楽『磯のあわび』
きょうこ 江戸手妻
三笑亭夢丸『十徳』
三遊亭圓馬『ずっこけ』
ボンボンブラザーズ 曲芸
三遊亭遊馬『小間物屋政談』

最近いろいろあり、さらに今週は仕事も山場。
気合いを入れるために一発ひとり焼肉へ。
食べ放題飲み放題で5千円弱なのだが、なかなか満足度が高いので何度か行っている。さすがにひとりでは初めてだが。
はちきれんばかりに食べて飲む。焼肉食ってるとビールをいくら飲んでも酔わないのが不思議。ジョッキ5杯って普段ならかなり酔うはずなのだが。

腹がくちくなったまま一度家に戻り、野球を見ていたらさすがに寝てしまった。
そのままボケっと野球を眺めていたら末廣亭に着いたのが6時前になってしまった。
この芝居はサラ口が遊子さん音助さんの交互なので最初から行こうと思っていたのだが。
しかもプログラムは終演が9時だった場合の時間割だったようで、すでに圓楽一門交互や太福さんの出番も終わっていた。マジか……。

とん馬師、ややネタとしてクドいかなと思わせるところはあったが、軽い口調でサラリと聴かせる。かっぽれもさすが。こういう余芸を見せてもらえるとすごくお得な気がする。

松鯉先生、人間国宝となっても偉ぶった感じもなく、親しみやすそうな語り口が心地いい。
宗俊が玉子屋でこれからどうやって強請りをするのかと気になるところで切れ目。続きを聞きたい。

小痴楽師、兼好師以外で『磯のあわび』を聴いたのはふたりめ。
小痴楽師の持つどことなく軽薄な雰囲気が、まっすぐなバカの与太郎のキャラクターと相まってとても面白い。
小痴楽師のフラはいいなあ。結構好き。

夢丸師も久しぶり。今日の面子は軽い噺で軽い口調ながらもすごく聴きごたえのある感じで素晴らしい。
変に現代的なアレンジを入れないのもいい。なんか芸協は「古典でもどっかしらに現代アレンジを入れて話の雰囲気をぶっ壊す」というイメージがあるのだが、今日はそういうの一切なし。現代アレンジもスッと入ってれば違和感なく面白いんだけどね。

圓馬師、『ずっこけ』の立小便のところまで。高座では『酔っ払い』といっていたが。オチの「ずっこけ」の場面まで行かなかったからかな。でもそんなこといったら『替り目』や『真田小僧』だってたいがいはそうだけどね。
今日は普段あまり聴かないネタが揃っていて楽しい。

遊馬師、この実力者揃いの顔付の中でのトリというのはファンとして嬉しい。
芸協古典本格派の若手エースとして協会や寄席に認められてきていると思ってよろしいんでしょうかね。先月は浅草でもトリだったし。
ニコニコとしながらも強引な大家が食わせ者で楽しい。でもこの人もちょっと強引なだけで悪い人ではないんだよなあ。
結局この噺に出てくる人は誰も悪くないのに、一時的とはいえ全員が不幸になっているというのが切ない。最終的には小四郎は幸せになるけど、これを見た先の女房のおときは複雑だろうなあ。
なんてことを考えながらいい声の噺を堪能する。

そういえばLINEの遊馬友の会で6月と12月の国立の独演会のお知らせがきていた。夏冬で圓朝作の『牡丹燈籠』を通しでやるとか。また新しい試みをしているようなので即刻購入する。こういうところで遊馬師と直接やり取りできるというのも今っぽい。
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上尾×落語 Vol.4 三遊亭兼好独演会 [落語]

上尾×落語 Vol.4 三遊亭兼好独演会
於:上尾 上尾市文化センター小ホール

三遊亭しゅりけん『弥次郎』
三遊亭兼好『長屋の花見』
三遊亭兼好『不動坊』

桜も一気に満開。
会場の周りには見事な桜が咲いていた。菜の花との取り合わせが美しい。

しゅりけんさん、なんか聞くたびに上手くなってるような気がする。
今日は久しぶりに狭めの会場で高座に近い席に座ったからか、「スゥーっ」という息継ぎの大きさがちょっと耳についたかな。

兼好師の一席め、緊急事態宣言が明け、一番危ないときにありがとうございますとご挨拶。
今回の緊急事態宣言は栃木が入って緊張感が薄かったので、解除されても人の数はそんなに変わらないのではないかと思ったが、やはり上野などは人が多かったという。
これでいつ次の波がくるかわからないので、もういっそ全国民二週間ごとに完全にオンオフし、人的に波を作ってしまえばいいという奇策を打ち出す。
今日などは桜も満開で、花見にはいい日だと桜にまつわるマクラをいくつか。曰く、日本の城に桜が植えられたのは明治からだそうで、時代劇に花を愛でる殿様というのが出てきたら間違いだとか、町屋の焼き場の桜が素晴らしく、いくらか香典を持っていくだけで精進落としを飲み食いしながら花見ができるとか。
そんなマクラからは当然と言えば当然の『長屋の花見』に。
大家が結構強権的で、ムチャ振りをするときにすぐに店賃をカタにする大人気なさが楽しい。
対して長屋の連中も大家に対して好き勝手いいながらも一定の親愛の情がある言動が見え、このバランスが心地いい。
「大家といえば親も同様、店子といえば子も同然」を実践しているようで、このじんわりとした間柄がいかにも兼好師らしくていい。
そういえば最近はみんなこの「同様」と「同然」の言い換えをせず、統一してることが多い。兼好師は親と子で変える派のようだが、こういうのを注意してみるのも興味深い。

二席め、キッチリひと月振りの『不動坊』。
兼好師は同じネタは東京近郊の場合は最低ひと月あけると以前に言っていたので、最短で再聴ということになるか。まあもしくは上尾は地方扱いなのかもしれないが……。
とはいえ『不動坊』はネタとして大好きなので何も問題はない。
「不動坊が死んだ」と聞いた途端に吉公の目に宿る狂気の光がたまらない。この静かに鬼気迫る狂気とそれによる言動がまた腹が捩れるほど面白い。
また、大家の家を出た後、ストレートに「わあ、嬉しいー!」と素直にテンションMAXになるのも兼好師の突き抜けた明るさの賜物か。
一切の邪気がなく、思わず「よかったねえ」と言ってしまいそうになるような浮かれっぷりに自然と頬が緩む。
吉公の狂気に大きなリソースを割いているからか、後半の屋根の上の作戦についてはくどくどしい入れ事などを抑え目にしている印象。そうはいってもチンドン屋の万さんのキャラなど面白い要素は満載で、『浮世床』のような「わーわーもの」のような雰囲気も味わえるお得な噺だと思う。

次回は扇辰師とか。そんなの予約するしかないじゃないですか。
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柳家小せん勉強会 鐙の会 [落語]

柳家小せん勉強会 鐙の会
於:高円寺 koenji HACO

柳家ひろ馬『金明竹』
柳家小せん『盃の殿様』
柳家小せん『鷺とり』

高2の姪っ子が盲腸で入院していたらしい。
本当は昨日のお彼岸に墓参りに行ったときに渡せればよかったのだろうが、先月墓参りしたばかりだし、仕事でヘトヘトなのでパスしてしまう。
最近は盲腸でもほとんど切らないと聞いていたが、お腹の左右とへその辺りを1cmばかり切ったのだとか。俺は10cm近く切ったんだけどなあ。しかも小学生の成長期だったから傷がひきつれちゃって汚い感じに……。さすがに姪っ子に向かって「それじゃあアソコツルツルか、ゲハハハハ」というお約束盲腸セクハラをかますワケにはいかず(誰にもかませないけど)、おとなしくLINEでお見舞いのAmazonギフト券を贈っておく。こういうところでいい叔父アピールしとかないとね。しかし今は便利ですな。

さて毎月開かれている小せん師の会。
前々から行きたいと思っていたのだが、基本的に平日なので諦めていた。昨今の事情で数回のみ土日の夕方にしたのだとか。初めて行けて嬉しい。

前座のひろ馬さん、目鼻のはっきりした役者のような顔立ち。どことなく好二郎さんに似ているような気がする。
噺はまだ覚えたのを一所懸命やっている感じ。頑張れ。

小せん師の一席め、今日は荒天だけれども暖かく、春が近づいてきたと話す。暖かくなると浮かれた気分になると『盃の殿様』に。
あまり聴く機会がない噺で、今まで2〜3回しか聴いたことがない。特に真打で聴くのは初めてではないだろうか。
駄々っ子の殿様も小せん師がやるとどことなく品があるというか、どこか愛嬌があるというか。
国元に帰ってから家老の弥十郎を傾城の花扇に見立てて酌をさせ、「もっと痛いような痛くないような加減で余の膝をつねらんか」といったときの弥十郎の表情がお見事。「こんな恥辱……」とセリフとともにかしずかされるのがおかしい。
考えてみたらこの噺、江戸時代のリモート飲み会じゃないか。
リモートで酒を受けた花扇の飲みっぷりが色っぽい。

二席めは「ごく軽く、バカバカしい噺を」ということで『鷺とり』に。
「全編『そんなわけないだろう』という感じで、いかにも落語じゃないですか」とのこと。二ツ目のわか馬時代にも何度か聴いたなあ。
ここ最近は一蔵さんのパワフルなものばかりだが、小せん師の飄々とした軽い感じのも実にいい。
このさらっとした感じが小せん師の魅力のように思う。
さらっとしつつも全体が笑いに包まれ、聴いていて疲れないのがいい。

いつもなら高円寺にはバイクで行くのだが、さすがに今日は電車で。久しぶりに新宿通ったけど人多いなあ……。
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第九十五回 一蔵ひとりの会 [落語]

第九十五回 一蔵ひとりの会
於:神保町 らくごカフェ

春風亭一蔵『長屋の花見』『禁酒番屋』『阿武松』

先週買った新しいmacをようやくセットアップする。ライブラリの容量がやたら重くて190GBもあり、新しいmacにコピーしきれないと思っていたら、これまでのiPhoneのバックアップデータが140GBもあるんでやんの。こいつを消去したらあっさり移行完了。よかった。
Appleに問い合わせながらやったのだが、後ろで猫が暴れていて、途中カーテンレールから落ちそうになったのを助けたりしてお姉さんに笑われる。あと電話口でココアがゴロゴロいってたのも絶対向こうに聞こえてる。
とはいえまだ環境のコピーが終わっただけなので、これからアプリのセットアップもしていかなければならないのだが、その前にタイムアップ。

一席め、お彼岸の中日ということでお墓参りに行ったという。火のついたお線香を手に持つと「お大尽、こっちこっち」と『お見立て』の喜助になってしまうと笑わせる。
明日からは落語協会新真打披露目の初日だそうで、普段なら20日の夜中に寄席の準備を急いでするのだが、今年は鈴本は休席なので昨日までにすっかり終わっているのだとか。
事前に正太郎改メ柳枝師の真打昇進3点セットの準備を手伝ったそうだが、今年は密になるということで協会の2Fが使えない。そのため、正太郎さんの実家で行ったそうだ。
「話のネタには聞いてたけど、あれは城だよ、城!」だそうだ。へえ。そういやいいとこのお坊ちゃんなんだっけ。
番頭のぴっかり☆さんたちと正太郎さん以外4人で15畳はある仏間で作業をしてたら、ことあるごとに正太郎さんからコーヒーブレイクやらティーブレイクの差し入れが入り、なかなか進まなかったそう。
そんなことを話している時に大きめの地震。「皆さん落ち着いて。……こういうときにサッと上手いこと言えればいいんだけどなあ。……いま俺がジャンプしただけだから!」。
久しぶりに3人以上で集まって、わーわー話しながら作業をしていたのが楽しかったと『長屋の花見』に。
一蔵さんがやると長屋の男連中がどんどんやさぐれていく感じがおかしい。大家から「酒と蒲鉾と玉子焼きがある」と聞いた直後の態度と種明かしされた後の態度の落差がたまらない。
花見の場面では沢庵を「その玉子焼きとっつくれ」と大声でいった男が大家に気に入られ、「店賃引いてやるぞ」といわれてどんどんヨイショしていくという、これまた一蔵らしい型になっていた。

二席め、久しぶりに学校寄席に出演したという。一蔵さんの他に扇好師、正楽師、さん喬師という豪華な顔付けで、前座さんだけが芸協だったという。この前座さんがまれに見るポンコツで、いろいろとしくじっていたそうだ。中でもさん喬師に言われて返した言葉がものすごく、「弟子だったら明日真打昇進する喜三郎でさえ破門になる」レベルだそうだ。
最近はYoutubeでチャンネルを持っている演芸関係者も多く、よく落語会を主催している夢空間も始めたそうだ。一蔵さんはその中の『寄席メシ』というコンテンツに出演しているそうで、寄席の近所の店を紹介するというもの。1回で2店分撮影したそうだが、実際に一蔵さんが食べるので、2軒目は満腹で入らなかったという。仕方がないので腹が減るまで呑んで待ってて良いということになったのだが、そこで夢空間の社長も一緒に飲み始めたという。この社長が酒乱の気があり、酒に強い一蔵さんと同じペースで呑むため最終的にはかなり絡まれてしまったようだ。「あれがどう編集されているのか、皆さん見てみてください。……という長い宣伝でした」。3月末配信だそうで、ちょっと見てみたい。
そんな酒乱の話から『禁酒番屋』に。
ネタおろしだと思うが、やや粗い感じはするかな。
番屋の侍が味わいながらゆっくり試し飲みをするというのはあまり見ないが、いかにも酒飲みという感じがしていい。
酒屋のふたりめの手代が油屋になりすまして行った時も完全に飲み屋で「お代わりがきた」という空気なのがおかしい。

三席め、春のセンバツが始まったが、あれを見て涙が出そうになるという。高校野球はすぐエラーするので一瞬後にどうなるかわからないのがいいという。一度負けてしまったら終わりという状況で汗を流す球児たちを見てると泣けるのだとか。
「ああいうのを見てると『相撲も見習え!』と思いますね。今場所も横綱不在で……」といろいろ昨今の相撲事情にご不満がある様子。「今の相撲取りは全員甲子園に見学しに行った方がいい」といいながら、大相撲も好きなので、と噺に入っていく。
先月のひとりの会でも3年振りに『らくだ』を掛けたが、この『阿武松』も3年振りだという。
途中で「麹町……」と言ったきり「えーっとあれ? ちょっと待ってくださいね……」という場面も。でも確かにこの噺は年表や戦績、歴代横綱など数字をズラッと並べるところが多いんだな。これをさらっと流して聴かせるんだから噺家はすごいよなあ。
気弱な長吉の様子や、無骨な錣山の感じも一蔵さんらしさがよく出ていると思う。
タグ:春風亭一蔵
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扇辰日和 vol.78 [落語]

扇辰日和 vol.78 「扇辰、胸を貸す!」
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰ぢろ『金明竹』
入船亭扇辰『片棒』
入舟辰乃助『匙加減』
入船亭扇辰『たちきり』

昨日は彼女と自分のmacを10年ぶりに新調する。
2台のセットアップしようとしたが、まあ10年ぶりだしいろいろ忘れてる。「移行オプション」アプリを使うと簡単にできるのはいいが、メールの設定まではやってくんないのね。結局AppleCareに電話して解決。電話で話しながら画面共有してその場でいろいろ教えてくれるってすごい世の中になったもんだ。
とはいえいろいろセキュリティセキュリティといっていて、セキュリティを盾にあれはできないこれはできないといっていながら、シリアル聞くだけでネットワーク飛び越えてリモートできるって、そっちの方が素人目にはセキュリティどうなってんだと思うが。画面覗けるだけで何もできないんだろうけどね。
さてまだ自分のマシンのセットアップも残ってるんだよな……。ケチって「データはほとんど外付けに入れてるからストレージは小さいモデルでいいや」と思っていたら、「移行オプション」でごっそり移行するには容量が足りないときた。まいったなあ。次に買うときは大きい容量のものにしなくでは。
さらに新しいマシンではこれまで使ってたモニターも使えない模様。急遽新しいモニターも購入する。これはまあどさくさに紛れてこれまでのよりも大型のものを買えたのでいいんだけど。
そんなこんなで昨日からバタついている。
天気が好転したので猫のトイレなども洗っていたらあっという間に家を出る予定の時間を超えていた。
先週扇辰師が言っていた通り、辰ぢろさんの出番までに間に合わないか? と思っていたが、道がかなりスムーズに流れており無事間に合う。むしろ余裕があるくらい。

辰ぢろさん、『金明竹』をフルに聴くのは久しぶりだと思いつつ、ガチガチの硬さが目立つ。
と思ったら当たり前で、扇辰師によればネタおろしなのだそうだ。「お客様は『今日の前座は長いな』と思った25分でしょうが、ネタおろしだから短くしようがないんだ。まあ珍しい機会に当たったと思ってください」とフォローが入る。

扇辰師の一席め、これまでのようにゲストが呼べなくなってしまった状況を嘆きつつ、「小遣い程度で呼べるのは弟子しかいない」と会の趣旨を話す。
「しかし弟子ってのは私が募集したわけではないんです。なのに上のふたりはどう調べたんだか自宅までやってきて土下座までして。ヤダよやられる方の身にもなってくださいよ」と入門の経緯を話す。
「なのに、ですよ。私から『きてください』とお願いしたわけじゃないのに、アイツら半年もしたらアタシの言うことなんて聞きゃあしねえの。腹立つんだ。(袖を覗いて)辰ぢろはね、まだどこか遠慮してるところがありますがね。保つのはあと3か月くらいかな? ……辰乃助はね、特に二ツ目になってからヒドいですよ。こんなヤツとは思わなかった」とこぼす。
前にも聞いたことがある扇辰師が大事に取っておいた瓶詰めを確認もなく食べられてしまったエピソードを。器ちっちゃ。もちろん扇辰師はそれを込みで話しているのだろう。そのセコさがまたどこか平和な面白さがある。弟子との仲の良さが伝わってくる。
「うちには子どもがおりませんので、血が繋がってはいませんが弟子たちが息子のようなもので……。けど親子の縁というのは……」と噺に入る。
扇辰師の『片棒』は久しぶり。『片棒』といいつつ三男は最初っから出てこないというか存在さえしていないので「片棒」という言葉は一切出てこない。
が、その分長男と次男にたっぷりと時間を使える。
特に次男の祭囃子の場面は本当に見事。ここは音楽に縁があるというか、歌の上手い師匠ほど面白いと思う。ということで扇辰師の音程やリズム感、強弱などはさすがとしか言いようがない。ただひとつ残念なのは、個人的にはひとりで盛り上がりすぎた次男に大旦那が突然「うるせえーーーっ!」とブチ切れる型が好きなのだが、扇辰師は祭囃子が上手すぎて中手起きてしまい、「突然ブチ切れる」となりにくいところ。ホント上手すぎ。

辰乃助さん、「こないだYouTubeの企画で『しくじった話』というのを収録しまして。私にピッタリのテーマ。『四季のしくじり』がありますから」と『あくび指南』のようなことを言い出す。「ちなみにさっきの瓶詰めの話は『夏のしくじり』です」とのこと。面白いなあ。
噺はちょうど一週間前にここで扇辰師のを聴いたばかりのネタ。どうしたって比べてしまう。辰乃助さん、それを分かった上でのネタ選びなのだろうか。
テキストとしては扇辰師のものとほぼ一言一句一緒。
明るいキャラの辰乃助さんにはこの噺は似合わないのでは? と最初は思ったのだが、これはこれで楽しく聴ける。
この後の扇辰師の評では「叶屋が悪すぎるよねえ。もうちょっと愛嬌がなきゃ」とあり、それは確かに思った。最初から悪代官に媚びる悪徳商人そのものだったし。
その他にもいろいろ大味だなあと思うところは多々あれど、決して悪い印象はない。これが辰乃助テイストだといわれたら「いいと思います」と答えると思う。
扇辰師ももう一点ダメ出しをしていたが、「今後も見守ってやってください」的なお言葉でどことなく嬉しそう。

扇辰師の二席め、やっぱりこの噺自体は好きになれない。落語にはいろいろ登場人物の行動原理に同意できないものがあるが、その中でもこの噺は誰にも同意できない。
だがしかしそれとは別に扇辰師は上手いとしみじみ思う。
何も知らない若旦那が置屋のおかあさんに「どうしてそんなことに?」ときいたときにおかあさんが返す「どうしてって聞かれたら……『若旦那に殺された』って言いたくなるじゃありませんか!」と声が徐々にせり上がっていくところなどは感情の表し方としてお見事。

ゲストもなく(?)3時間近くたっぷりと。聴き応えがありました。   
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第六十九回 よこはま落語会 三遊亭兼好・春風亭一之輔二人会 [落語]

第六十九回 よこはま落語会 三遊亭兼好・春風亭一之輔二人会
於:横浜 横浜市西公会堂

春風亭いっ休『桃太郎』
三遊亭兼好『のめる』
春風亭一之輔『花見の仇討』
春風亭一之輔『浮世床(本・夢)』
三遊亭兼好『明烏』

宮治師との二人会が終わり、やや時間が空く。
ファミレスとかで時間潰してもいいのだが、会場の周りには安く昼飲みをしてる店がたくさんある。
結局ハイボール2杯をトマト玉子炒めなどをツマミに飲む。
余裕を持って会場に戻ったつもりだったが時間を間違えたらしくすでにいっ休さんは「昔の子どもの場合」まで終えていた。あっぶね。
しかしいっ休さんは達者ですな。

兼好師の一席め、最近はコロナ、官僚の接待、政治家の不祥事、宮治の昇進と嫌なニュースばかりですね、とさらっと毒を混ぜて話し出す。
そんな中で明るいニュースは大坂なおみの優勝だという。といってもプレーにはあまり興味はないようで、インタビューのときの声が好きなのだとか。彼女は180cm以上の背丈があるし、鍛えているので身体もゴツいのに、どこから出ているのかわからないような高い声がギャップがあっていいのだという。
彼女は見た目と声のギャップがあっても受け入れられている数少ない例で、噺家などは見た目と声が合わないと売れないのだそうだ。
「一之輔くんだってあの見た目、アジア系が混ざったイタリアンマフィアでパスタ食べながら人が撃てるあの見た目に合った声をしてる」とわかるようなわからないような冷静を挙げる。
話しながら思い出したのか、「例外は白酒師匠ですかね。だってあんな面白い見た目してるのにあんないい声してるなんて……。声だけ聞いたらもっと背が高くてシュッとした人を想像しますよ」とすごく失礼ながらもとてもよくわかる例を出す。
『のめる』は最近よく聴く印象だったのだが、前回聴いたのは8月。思ったよりもあいていた。
やはり「いっぺえ呑める」の八っつぁんの無邪気っぷりが楽しい。

一之輔師は今年初。
「兼好師匠は昼の会もトリをとったみたいですが。仕方ないんですよ、先輩なんですから。こういう二人会では先輩がトリというのは決まりみたいなものですから」と話す。私は基本土日しか落語行けないので平日とか地方の会はわからないが、このふたりの二人会って結構レアなのでは……? 二ツ目時分にはよくやってたような気もするのだが。私自身は7年ぶりだった。いろんな人が出る会で共演してることは多いが。いやだからなんだって話ではあるのだが、なんとなーく二人会の場合は出番順で毎回攻防が繰り広げられていそうなイメージ。
「それにしてもあの兄さんはホント腹黒いですからね。見た目はいい人そうなのに。いるじゃないですか見た目から『性格悪そう』って感じの人が。紫の着物着てる人とか」というが、笑点のあの師匠のことなのか、一之輔師も今日紫の着物だしどっちなんだろ。書いてはいないが一席めのマクラの「声のギャップ」でさん喬師にも触れており、「さん橋師匠についてみんな思ってても言わなかったことを言ってしまうなんて。……圓楽一門はヤバい」。
「その圓楽一門の中で、あんな顔してますけど『自分が一番』だと思ってる」。……え、だって事実だから仕方ないんじゃないですか。そらまあ知名度とかは笑点メンバーにはかなわないだろうけど。
一之輔師は花粉症ではないらしいのだが、この季節は「花粉症大変ですね」と言われるのだとか。あの鼻にかかった声がそうとられるらしい。花の季節を少し先取りして『花見の仇討』に。
六十六部役である六さんの本所のおじさんのキャラが強烈で秀逸。耳が遠くて話を聞き返すときに「『パスタ食べながら銃を撃つ』とはなんだ!」と兼好師のパスをきっちりと受けるのはさすが。

二席め、やっぱりこういう若い男がわーわー言い合ってる噺はなんか無性に楽しい。一之輔師自身が「部室のノリの落語」といっているジャンルなのかな。男子高校生がふざけてバカ話をしているのを隣で聴いているような感じ。

兼好師の二席め、若旦那の天然なところが際立つ。おばさんに手を取られて「触れられると瘡をかく」といってしまい、思いっきり笑顔でひっぱたかれるのもおかしい。
また、町内の札付きである源兵衛の突き抜けた明るさも楽しい。
さすがにここらへんまでくるとハイボールの余波が出てきてしまう。ということで感想薄め。うーんやっぱり会の前にアルコール入れちゃうのはあんまりよくないな。
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第六十八回 よこはま落語会 三遊亭兼好・桂宮治二人会 [落語]

第六十八回 よこはま落語会 三遊亭兼好・桂宮治二人会
於:横浜 横浜市西公会堂

三遊亭しゅりけん『一目上がり』
三遊亭兼好『紀州』
桂宮治『大工調べ』
桂宮治『お菊の皿』
三遊亭兼好『徂徠豆腐』

なんか薄曇りで微妙に肌寒い。

兼好師の一席め、宮治師の真打披露興行に触れ、「このコロナの時期に当たったら普通は心折れますよ。なのにパーティーもちゃんとやって。……まあ料理は出さないけど」。馬るこ師がパーティーの様子をポッドキャストで話してたが、エビアンの小さいペットボトルだけだったそうな。
「真打昇進披露はまあ噺家生活の中で一番のイベントでしょう。大きな名前でも襲名しない限り。それをスタートに大きく羽ばたく人と、それをゴールとして記念にしてしまう人がいますが」となかなか辛辣なひと言。宮治師は明らかに前者だろうが、後者の人も結構いそうだよなあ。
兼好師の『紀州』は2回め。軽い噺だし、ホール落語だとあまり当たらないのかもしれない。
吉宗が「しかしながら」の任官を受けたというところで「この『しかしながら』というのはいけません。一度断るのは日本人の美徳じゃないですか。謙って話すのも『まさか向こうは額面通りに受け取らないだろう』という思いがあるから言うのであって、『愚妻です』と紹介して『ああ愚かしそうですね』なんて答えられたら大変なことになりますよ」と憤ってみせる。「王楽くんが『今日は割り勘にしましょう』と言ったのに萬橘くんが『しかしながら』と断って払わされたのが腹が立つ」と私憤につなげるのがおかしい。

宮治師、寄席の真打昇進披露興行の最中にこんなホール落語もこなすとは。
これだけ毎日寄席があると新宿を終えて浅草の半分くらいで朝起きたときに「今日も寄席かあ〜」と思ってしまうのだとか。まあ何十日も毎日出勤して周りに気を遣って……となるとそうなるだろうなあ。
「後輩とかが『兄さん手伝いにきました!』ってくるんだけど、高い弁当と祝儀きったりしなきゃならないから途中から『くんな!』って思うようになる」そうだ。
新宿も池袋もひと席おきということができていないらしく、「緊急事態宣言治癒ってわかってるんですかね?」とのこと。浅草は座席はひと席ごとになっていたが、そのかわり立ち見はギッチリ入れたそうで、「花とかたくさんいただいていたのに、『花があると人が入れられない』って撤去していた」らしい。
さすがの宮治師も疲れが隠せないようで、空元気というか無理にテンションを上げているようにも見える。
らしくないいい間違えや噛んだりするところもありつつ、言い立てはキッチリと乗り切る。
言い分としては大家の方が正しいのだろうが、言い方が嫌味ったらしく、因業ぶりが際立つ。

宮治師の二席め、「この会場は初めてですが、……なんかいますね。池袋と同じ空気がする」と池袋演芸場の楽屋で起きる怪奇現象を話す。「これマジですからね。話してて鳥肌立ってきた」。まあ池袋って土地自体が結構オカルト的だからなあ。ちなみに私は幽霊系のオカルト大好物です。
そんなところから時期外れの『お菊の皿』に。
徐々にスレていくお菊の様子がおかしい。宮治師だけに大げさなのが楽しい。

兼好師の二席め、おめでたい噺なのは宮治師へのご祝儀か。
上総屋吉兵衛の女房がヤキモチ焼きで、徂徠へ差し入れしてるのを「おからで女を口説いてるんだろう!」とねじ込んでくるのがおかしい。
そのくせ火事で焼け出された後に誰かから渡された十両を前に、皆で「これは『置いてく詐欺』じゃねえのか」と言ってるときに、「あたしのことを手に入れようと……?」と独り合点し、周りもなんだかんだでその説を受け入れているのも兼好師らしい。

今日はこの後に一之輔師との二人会も。2時間近く空くのか……。
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らくご長屋 扇辰独演会 [落語]

らくご長屋 第8回扇辰独演会
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭辰ぢろ『子ほめ』
入船亭扇辰『紫檀楼古木』
入船亭扇辰『匙加減』

映画『幕末太陽傳』とセットの会。もちろん落語だけでもいいのだが、落語映画の傑作と言われている本作を観たことがなかったのでこの機会に観ることに。
なるほどなるほど、『居残り佐平次』をベースにいろんな廓噺のエッセンスが全体に散らばり、落語ファンにはたまらない。
……がWikipedia見てみたらすごい嫌なこと書いてあった。それだけで俺はもう観ることはないだろうなあ。そのシーンが見たくない。

扇辰師の一席め、辰ぢろさんが「親が教員なのに噺家になって親不孝だ」といった発言を受け、「……親が教員だからって噺家になるのは親不孝なのかね!? そんなこといったら俺の親父なんて税理士だよ? ……アイツは選民思想があるな」とチクリ。まあ教員てのは堅いイメージがあるけれど、確かに親はあんまり関係ないような。
「この会の前に『幕末太陽傳』の上映してたんだって。ご覧になってた方は……結構いるんだね。……しかしイヤミなことするねえ。あんな傑作の後じゃ今日は廓噺できねえな」と苦笑する。そんなことないけどね。むしろ『居残り』聴きたい。
扇辰師はもちろん何度も観たことがあるそうで、いろいろと思い入れのあるシーンなどについて話す。「一番いいのは花魁ふたりが中庭で乱闘するシーン。あれは何度でも観られるね」とのこと。
「しかし裕次郎、小林旭、岡田真澄っていう男前で売ってた役者ほど棒読みなんだよね」と笑いながら話す。俺もそれ思った。特に裕次郎。子どもの頃に『太陽にほえろ!』観てたくらいだけど、「こんなに演技下手なの? というか昭和の映画界ってこれでよかったの?」と思ったくらい。
「冒頭に昭和30年代の品川の風景が流れるんだけど、あれを見ると品川もだいぶ変わったねえ。特に海側なんて何もなかったのに、今じゃ未来都市みたいになってるからね」と話す。私は冒頭に出てきた第一京浜の陸橋のあたりを仕事で通ることがあるのだが、たしかに周りの風景は一変している。けどひと目見て「あれ、これ八ツ山橋のところじゃね?」なんとなくわかった。
昔と変わったものといって携帯電話の進化についても。「しかしまさか手ぬぐいでスマホを使う仕草をするなんて思いもよらなかった。しかもそれで通じるんだから」と話す。
そんなあたりから「昔はあって今はないもの」という流れで『紫檀楼古木』に入る。
『幕末太陽傳』を観た後だからか、主人公のひとりであるご新造が芸者あがりか花魁あがりのような色気を感じる。
また、下女のおきよのキャラクターがいい。叱られて不満げに視線を泳がせる仕草などはさすが。それだけで感情の揺れが伝わってくる。

二席め、来週行われる「扇辰日和」の宣伝を。「1時45分という半端な時間に開演になっていますが、2時前にきていただければ。45分にはあの選民思想があがってますから」と相変わらず弟子に厳しい。
噺は舞台は八丁堀だが品川も大きく関わる『匙加減』。どストレートな廓噺ではないけれど、絡み方の具合が絶妙なところ。どことなく品川の妓楼の雰囲気を感じられる。
小悪党の叶屋、それを上回るワルの大家、堅物の若先生、名奉行の大岡越前とどれもキャラクターがキッチリと立っていてとても聴きやすい。特に叶屋は最初は愛想が良かったのがどんどんと本性を表して卑しくなっていくその移り変わりが鮮やか。そしてその叶屋を手玉に取る大家のややクサいといえるほどの大げさなアクションも楽しい。

今日は二席とも「いかにも扇辰師!」という噺で大満足。
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