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第九十四回 一蔵ひとりの会 スペシャル [落語]

第九十四回 一蔵ひとりの会 スペシャル
於:池袋演芸場

三遊亭ごはんつぶ『子ほめ』
春風亭一蔵『ちりとてちん』
春風亭一蔵『雛鍔』
春風亭一蔵『死神』

浅草演芸ホールから池袋演芸場に。さすがに寄席二軒をかけもちってのは記憶にないな。

ごはんつぶさん、さすがに演芸場での出番では新作ではなく古典なのか。しかしまったくそつなくこなしている。さすが天どん師の弟子。最近天どん師が聴きたいのだが機会がなく、仕方ないのでCDを聴き返している。天どん師聴きたいなあ。

一蔵さんの一席め、ふう丈さんやつる子さんがYouTubeでやっている、キャストが噺家のドラマにゲストで出た話をマクラに。変な衣装を着させられた上に一蔵さんの声が大きすぎて、撮影場所の公園で職質をされてしまったそうだ。
『ちりとてちん』は久しぶりに聴いた。二席めのマクラで語っていたところによると、季節を先取りするのはいつものことだが、本来『ちりとてちん』はもっと暑いときの噺。3月4月になると掛ける人が増えるらしい。そこで「この時期にやっておけばまず間違いなく今シーズン最初の『とてちん』になるわけです!」だそうだ。
最初にご馳走になる六さんのヨイショがさすがに過剰な感じ。「アタクシ〇〇というものがある、と聞いたことはあるんですが、やったことはなくて……。いいですよね、口に入れたときの歯応えと旨さが口に広がって……」と明らかにすでに食べたことがあり、ご隠居にもツッコまれる。まあそれくらい突き抜けてるのも一蔵さんぽいといえばぽいが。
ちりとてちんを一気に流し込んだ寅さんが口の中で上がり下がりするたびに合わせて腕も大きく上がり下がりするオーバーアクションも楽しい。

二席め、たびたびマクラに登場する上の娘さんが20歳になったそうだ。大人になったんだからマクラにするなと釘を刺されたらしいが。大学に入ってなんと落研に入り、「パパ『〇〇』教えて」などと言われていたそうだが、3か月で辞めたのだそうだ。理由は「誰ひとりとして入船亭小辰知らないような落研にいたって仕方ない」偉い!! 場内拍手。そういえば前にも言っていたが、娘さんの好きな噺家のセンスいいんだよな。……いや単に私の趣味と似ているってだけだけど。
子どもは思い通りにいかないというところから『雛鍔』に。一蔵さんでは初めてか。
植木屋の熊さんの妻子への当たりが結構強い感じ。
お店の旦那に謝られて「こちらから謝りに行こうと思ってもきっかけがなくて……。火事でもあれは見舞いに行けるんですが。いっそのこと明日あたり火をつけに行こうかと……」というのは一之輔師と同じ型。
羊羹を出す際におかみさんに小言を言う場面では、勢い余って旦那にまで怒鳴ってしまうのがおかしい。

三席め、YouTuberとして競艇のチャンネルをもっているそうだが、撮影や編集をしている志ん松さんの発案で5レースはずしたら罰ゲームという企画をやったとかで、カードを引いて当たったのが「48時間ミンティア生活」だったとか。飲み物以外はミンティアしか食べられないというもので、2日で2.6kg落ちたそうだ。
罰ゲームのは他に何があるのかとチラッと見てみたら「〇〇師匠に後ろからケリを入れる」などがあり、「そんなことしたら俺はクビだ! アイツは頭おかしい」。
自分は借金をしてまでギャンブルはしないが……と噺に入る。
死神と会う場面では「そんなに太った死神がいるのかよ。死神ってのはもっと痩せてるもんじゃねえのか」という問いに対して「喬太郎。白酒。歌武蔵。一蔵」「結構いるな!」という会話がおかしい。
運が良かったのは男ではなくその女房で、別れたことで運気が下がるというのは他で聞いたことがない。誰の型なんだろ。
男に裏切られた死神の敵意がものすごく、ろうそくを灯す場面では「死ねぇー、死ねぇ!」と圧をかける。やっぱり「死ね」という言葉はパワーワードで、落語であまり本気の「死ね」というのは出てこないので、なんというか当てられそうになる。最後のサゲの一言にも合わない気がするので、あんまり言わないほうがいいと思うんだけど。

8時ぴったりに終演。さすがに今日は落語疲れが……。
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浅草演芸ホール 二月下席 昼の部 桂宮治真打披露興行 [落語]

浅草演芸ホール 二月下席 昼の部 桂宮治真打披露興行
於:浅草演芸ホール

三遊亭こと馬『からぬけ』
桂しん乃『狸札』
三遊亭遊子『強情灸』
おせつときょうた 漫才
春風亭昇々『指定校推薦』
瀧川鯉八『俺ほめ』
瞳ナナ マジック
三遊亭竜楽『味噌豆 七カ国語メドレー』
春風亭柳好『禁酒番屋』
コント青年団 コント
桂右團治『動物園』
桂小文治『手数のかかる話』
林家今丸 紙切り
柳家蝠丸『パブロン』
真打昇進披露口上
東京ボーイズ 歌謡漫談
春風亭柳橋『魚根問』
桂伸治『あくび指南』
ボンボンブラザーズ 曲芸
桂宮治『蛙茶番』

二日続けての浅草は初めてか。
昨日あらかじめ聞いていたため、整理券をもらいに8時半頃に一度演芸ホールまで。その時点で72番。マジかよみんな早すぎねえ? 俺は近いから一回帰るけど、みんな近くで暇潰しているのだろうか。余計なお世話ですね。
10時50分に来いとのことなので一旦帰り、朝食を摂って再び浅草演芸ホールへ行くと、もう大勢の人だかりができていた。
72番めだけれども前から6列目のど真ん中という好位置をゲット。やったぜ。

遊子さん、灸をすえるときに左腕をまくると「宮治」の文字が。「一番尊敬している兄さんの名を彫っているんだー!」だそうだが「最近古典をいじりすぎて新作みたいになってる。灸をすえてやる!」と「宮治」の文字の上にもぐさを乗せる。割とあっという間に「あっつい!」とギブアップし、「宮治」の文字に口づけをする。サゲは「いやあ俺は熱くなかったが、今日の宮治の高座は熱く燃え上がるだろう」。するとそこにダブルピースでカニ歩きの宮治さんが乱入して場を沸かせる。なおちなみに遊子さんの右腕には「大好き♡」と入っていた。

昇々さん、早稲田大学に現役で推薦合格するために通知表の評価が低かった音楽の先生に交渉に行く生徒の新作。いろんな伏線が張られ、それが回収されていくのが楽しい。

鯉八師、個人的には苦手な噺が多いのだが、これは面白かった。

蝠丸師、なんとも言えないふわっとしたオーラというかフラのある感じ。
なんか聴いていて落ち着くというか。

真打披露の口上は鯉八師が司会で、伸治師、竜楽師、小文治師、蝠丸師、柳橋師が並ぶ。
伸治師は「いろいろ考えたんですが、あまりコレといったエピソードがない」とのこと。「しかしそれはつまりしくじらないということ。しくじりがないのであまり記憶に残らない。いろんなことに気がつくし、落語も皆さんご存知の通り。はっきりいって『よい』です」と手放しで褒める。なるほど以前に宮治さんが「師匠のこと大好き」といっていたのもわかるし、伸治師も宮治さんのことが大好きそう。
宮治さんが二ツ目に昇進した頃、誕生日プレゼントとしてウォシュレットを贈ってもらった話を嬉しそうに話し、「つまりそれから宮治にお尻を洗ってもらっているようなもので、今日も宮治に洗ってもらいました」とか。真ん中で真面目な顔を保とうとしている宮治さんも思わず吹き出す。
「それから毎年誕生日にいろいろもらってるんですが、5年くらい前には冷蔵庫か炊飯器かということになって、……あれは一門の弟子みんなで買うってことだったんだっけ?」と宮治さんに問いかける。それまでガマンして口を利かずに真面目な顔を保とうとしていた宮治さんもとうとう「師匠、披露目は質問形式ではないので……」と苦笑しながらツッコむ。こんな口上初めて見た。

伸治師を聴くのは実は初めて。
柔らかい雰囲気でなんだか常にほんわかした気分にさせてくれそうな印象。兼好師のインスタに上がっていたが、宮治さんの高座を袖から嬉しそうに眺めているのだとか。なんだかそれもわかるような気がする。なんというか、初めて聴いたにもかかわらず「この人を嫌いっていう人いるのかな?」とまで思ってしまう。なぜこんな穏やかな師匠からあんな猛毒劇物のような弟子が……。

さて宮治さん、じゃなくてもう宮治師、あいかわらずいろんな方向にまんべんなく毒を吐き、「これSNS禁止で」とか「すみません、もうちょっと笑っていただかないとホントに単なるワルグチになっちゃうんで」という話のオンパレードのマクラ。特に演劇界の演技のわざとらしさをたっぷりといじる。
また、落語協会の二ツ目も遊びにきているらしく、「あいつらバカだから」みたいなことをいったらたま平さんやつる子さんたち4人が高座に乱入。さすがに4人乱入は初めて見た。つーかつる子さんの私服始めてみたけどスタイルいいんだね。
演劇の話から芝居の話になって『蛙茶番』に。噺に入ってからもさまざまな悪ふざけを繰り出し、定吉の腹黒さや半次のバカっぷりをあぶり出す。
なかでも一番の悪ふざけはようやく舞台番に上がった半次が、想い人のみいちゃんを探して着物の裾をまくりあげた仕草のまま、客席に向かって「みいちゃん?」と聞き回るところ。もちろん実際に出しているわけではないが、相当下品で相当面白い。さらにそのさなかにぽそっと「落語は想像力」とマクラで話していた内容をもってくるのも面白い。

一度膜が閉まったあと、拍手が鳴り止まずカーテンコールで宮治師が登場。どうやら恒例になっているらしく、写真撮影OKタイムらしい。「まだ『いいよ』って言ってないのに撮り始めてる」と言っていたが、
伸治師も高座にあがり、ふたりでキャッキャと楽しそう。こんな事もあろうかと一眼持ってきといてよかったー。

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Nikon Df
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浅草演芸ホール 二月下席 夜の部 [落語]

浅草演芸ホール 二月下席 夜の部
於:浅草演芸ホール

古今亭寿輔『シニア川柳』
ねづっち 漫談
三遊亭遊三『親子酒』
丸一小助 小時 太神楽
三遊亭遊馬『佃祭』

今日は父の祥月命日だったので菩提寺まで墓参に。いつもなら実家の兄貴が母たちを連れてくるのだが、今日は仕事だそうで、実家まで母と姉を拾い、寺まで。いつもなら寺まで1時間ちょいくらいなのだが今日は道がそこそこ混んでる上になぜか信号に引っかかる引っかかる。結局往復で5時間くらいかかる。
疲れた……が、遊馬師の浅草のトリを聴けるのがもう今日しか残っていない。なら行くしかない。19時割引になるのを待って客席へ入る。
……本来なら昼に宮治さんの真打披露興行のチケット持ってるし、たしか浅草は昼夜入れ替えなしだったので、昼夜通しで行きたかったんだけどなあ。宮治さんのは明日改めてだな。演芸場のスタッフに聞いてみたところ朝8時から整理券を配ってそれでも行列ができていたらしい。……マジすか。

ねづっちは相変わらず上手いことを連続で繰り出す。森騒動について「初心者のスキーと同じ。ボーゲン(暴言)で滑り落ちた格好(滑降)」というのはすごいと思った。
友だちのモロちゃんエピソードも面白い。

トリの遊馬師、やや時期外れ感はあるものの骨太に聴かせてくれる。
次郎兵衛さんの身体の特徴を聞き出すときに「たま命」という刺青があると話すお内儀さんが泣きながらも照れ笑いするという複雑な感情を表現していた。
次郎兵衛さんが無事戻ってきてめでたしめでたし、というところでサゲ。確かにありの実の部分はわかりにくいし蛇足感はあるのだが、なければないでちょっとさみしいような。

終わったらすぐに戻って今度は彼女を寮に送り届け。今日の移動量すげえな。
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けんこう一番!第十四回三遊亭兼好独演会 [落語]

けんこう一番!第十四回三遊亭兼好独演会
於:国立演芸場

三遊亭兼好『普段の袴』
三遊亭しゅりけん『一目上がり』
三遊亭兼好『辰巳の辻占』
三遊亭兼好『不動坊』

さてまたまた仕事が忙しくなってきており、ケツに火が着き始めた。本来ならばもうちょっと残業したかったのだが、チケット買っちゃってるんだから仕方ない。……土日もいろいろ予定詰まっちゃってるからなあ……。来週から本気出す。
チケット売り出してから緊急事態宣言が出たからか、市松模様にはできなかったようで、なんか客入りはまだらな感じ。

兼好師の一席め、緊急事態宣言が出る以前にやることが決まった会がキャンセルもできないので仕方なくやる、という会が地方で立て込んでいるのだとか。なのでこの事態なのに結構忙しいという。今は空港も人が少ないので、和服で「めで鯛」のガラガラを引きながら歩く兼好師は「歩く不要不急」として目立つそうだ。
将棋の藤井聡太二冠が高校を辞めたことに触れ、「素晴らしいですね」と絶賛しきり。同じく学校を中退した小痴楽師や萬橘師と絡めて爆笑に繋げる。「学校の勉強よりも将棋を極めたい、というこんな前向きな中退があるんですね。落語に出てくる人物はそんなことは考えず『とりあえず真似したい』という人しかいない」と噺に入っていく。
まあとにかくガラッ八のキャラクターの魅力的なことといったら。大家に袴を借りに行くのに「祝儀不祝儀どっちだ」と聞かれ、キョトンとした顔をたっぷりと時間をとって見せるのがたまらない。「墓参の帰りだ」というのを真似るときに「ボサノヴァの帰りだ」とするのも斬新。

しゅりけんさん、「師匠に挟まれまして……」と苦笑いで始める。
いろいろと覚える部分が多い噺ではあるが、もう噛む心配もいらないような上達っぷり。この一年でだいぶ変わったなあ。ところで主人公の八っつぁんが大家から「なんだ、ガラか!?」といわれてしまうのは『普段の袴』とモロづきだけどいいの?

兼好師の二席め、加藤官房長官のエルメス騒動に触れ、「最近の一番明るいニュース」とチクリ。「おそらく加藤さんは若い頃モテなかったんでしょう。『なんでこんなに優秀なのにモテないんだ』と思っていたところに地位とお金が手に入った。自民党の松潤あたりに『女性にはエルメスだよ』と聞いて一度プレゼントしてみたら喜ばれたんでしょうね。それで『エルメスを買うとモテるんだ!』とインプットされたんでしょう、買っては贈り買っては贈り……」と嬉しそうに話していると急に真顔に戻って「……コレ政治活動費ですか!?」。
女性に貢ぐつながりで『辰巳の辻占』に。
主人公の源公がお金を持ってきていないと知って、あからさまにぞんざいになるおたまの態度がおかしい。心中を持ちかけられ、「ちょっと待って、……うわあメンドくさーい」と本音がダダ漏れになるところも最高。
おたまが大川に飛び込んだと思い込んだ源公が「おたまー! 俺も行くぞ!」といって「ひのふのみっ!」と何度も声を出すが結局飛び込めず、「欄干高ーい……」と諦めてしまうのが面白すぎ。

三席め、これがまた絶品。
大家に縁談を持ち込まれた吉公が渋るのを見て、「なんだ、心に決めた女でもいるのか?」と尋ねられ、「いやまあ……」と遠い目をするのがおかしい。
相手がおたきさんだとわかった後の狂気と正気が入り混じった感情の揺れ動きが素晴らしい。最近聴いている兼好師の噺はこういう感情のグラデーションというか混ざり具合が複雑で、それをスムーズに表現しているのがすごい。
風呂屋へ行くのに嬉しすぎて何度も鉄瓶を持ち出し、最終的に諦めてしまう流れも最高。風呂の中でおたきさんとのやり取りを妄想をする場面では、独り言ではなく湯船にいたおじさんの手を握り目を見つめながら語りだす狂気がたまらない。
いやはや中ダレする場面もなく、全編爆笑の一席でした。
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高円寺演芸まつり(第11回) おしくら饅頭、四派でドカン [落語]

高円寺演芸まつり(第11回) おしくら饅頭、四派でドカン
於:高円寺 座・高円寺

三遊亭遊馬『佐野山』
林家彦いち『青畳の女』
立川談笑『猫と金魚』
三遊亭兼好『厩火事』

毎年恒例のこの会、なぜか芸協は毎年出演者が変わるが、今年は遊馬師。よおおおし! 俺得の顔付けきましたー! と初めて見たときに思わずガッツポーズが出る。毎年このメンバーで固定してくれないかな。

トップバッターの遊馬師は今年初。明日から浅草のトリだから行かなきゃな。昼席は宮治さんの披露興行でチケット持ってるんだけど、昼夜居続けはできるんだろうか。
遊馬師の声にはリラクゼーション効果があるんじゃないかと思う。
佐野山、谷風、八百屋の親方、地とそれぞれ異なる声音で性格を滲み出させていた。
ただ遊馬師はあまりこういう会に出ないからか、出るときにはおそらく自信のあるネタを出すのだろう、だいたい『佐野山』とか『阿武松』、『井戸の茶碗』とかになってしまうのがちょっと残念。
いろいろいいネタ持ってるのにー! とファンとしてはいいたい。

彦いち師、客席の半分が段ボールでできた人形(ひとがた)なのをみて「最初はちょっと驚きましたけど、慣れてくると紙のお客も笑うんですよ」と怖いことをいう。「落語に『半分垢』という噺がありますけど、これじゃ『半分紙』ですねえ」とポツリと言ったのが面白い。
最近はあまり客前に出る機会が減ったのか、なんだか嬉しそうにマクラを話していたのが印象的。あまりにも話しすぎて客席に「えーと今何分ですか」と時間を聴く。そういえばこの会場時計ないのね。「もうそんな時間? ……じゃあこれからやろうと思っていた噺はやめます」。気になる。「過去のネタ帳見て意外とやってなかった噺」を掛けようとしていたらしいのだが。
私は公演中はメモは取らず、仲入りなどにちょちょっと面白かったキーワードを入力しておくことがあるのだが、この高座では「黒髪」「森リモート」とある。何だったっけなあ……。ちょっと時間が経つとすぐ忘れてしまう。
噺はかなり前に一度聴いたことがある、恋する女性柔道家の大事な一戦の物語。座布団を相手の男に見立て、巴投げで無理やり口説くというアクロバティックな一席。実際に高座の上で一回転するのだが、そこで着地地点を見極めるために噺をしながら何度も後ろを確認しているのがおかしい。「池袋でやったときは『モニターから人が消えた!』と話題になった」というのも納得。

今日は音響機器の調子が悪いのか、談笑師の出囃子の途中でピタッと止まってしまう。しばらくしてまた音が出るようになったが、「リモート出囃子」と談笑師も苦笑い。
リモートでの落語会も増えているようで、「高座返ししているのは私の弟子なんですが、初高座が無観客ですからね。……これ初高座ていうのかな?」だそう。定席のない立川流だとそういうこともあるのか……。というか他の協会でも今後はありそうだなあ。
談笑師はリモートがあまり好きではないようで、「お客さんの反応がないからつまらない。せいぜい家族くらい。なので、家中のぬいぐるみを集めてカメラの周りに置いている」とか。スワローズファンなのでつば九郎のぬいぐるみが多いらしい。つば九郎お笑いに厳しそう……。
どんな話の流れでそうなったのかは忘れてしまったが、「これから皆さんの代弁をします。……○階さん○んじゃえばいいのに」ととんでもなくブラックかつ的確な一言を言い放つ。ほんこれ。
談笑師もマクラをたっぷりと振った分、噺は軽め。
……と思ったらこれがまた面白いのなんの。
番頭さんのアスペっぷりが元ネタよりもだいぶパワーアップされており、「金魚を(棚に)あげなさい」と旦那に言われたのに猫にあげてしまったり、素揚げにしてしまったり。逆に「金魚をおろせ!」と言われて三枚におろしたり。旦那にグーパンで殴られ「もしもしブラック企業相談室ですか」と電話するのもたまらない。
風呂屋の煙突に金魚をあげたら金魚鉢落とすし。

兼好師、なんかマクラからものすごく流れるように自然に噺に入ってったような覚えがあるんだけど全然思い出せない。……なんか今日は全然ダメだな。いや元から良くはないけれども。
髪結の女房は今日はおさきさんではなくおみっちゃんだったような。まあ冒頭で一度名前をいうだけなのでなんでもいいのだけれど。
兄貴分がなにか話すたびに毎回口を挟み、叱られて「ごめんなさい、続きどーぞ」というのがワンセットなのだが、「孔子」のところでは「ごめんなさい、牛だと思って。……モウ」と鳴いたり、「白馬」では「ごめんなさい、食べ物の話が続いてたからどぶろくかと思って。……ヒヒーン」と嘶いたりして兄貴分を苛立たせるテクニックが磨かれていた。
長屋に戻って食事を用意していた亭主に向かって「あなたは唐土の孔子♡」とささやくのもおかしいが、亭主の「その丼に触るのはよせ! そんなところに置くな! なんで金魚鉢の上に置くんだ!」と前の猫金と被せるのも楽しい。

ロビーにはチャリティオークション用に高円寺演芸まつりに出演した噺家の色紙がずらりと並んでいた。兼好一門の兼太郎さんや好二郎さんのもあったし、小辰さんや一蔵さんのものも。兼好師のはなぜか圓生師の似顔絵なのだが超絶似てる。こら高値つくだろうなーと入札は諦める。
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清瀬けやき亭 落語応援会(第107回) そうだじゅげむきこう。 [落語]

清瀬けやき亭 落語応援会(第107回) そうだじゅげむきこう。
於:清瀬 清瀬けやきホール

入船亭小辰『高砂や』
春風亭一花『明烏』
春風亭一花『のめる』
入船亭小辰『替り目』

久しぶりの清瀬。本当はくるつもりではなかったのだが、午前中の小辰さんの会へ行ってみたら満員札止。なんてこった。バイクの置き場所に悩み、一度置いた場所から移動とかしてるうちに埋まってしまったようだ。別に駐禁の場所じゃなかったんだからどこでもよかったのに「こっちの方がいいかな」なんて悩んだ俺のバカ。
ということで急遽清瀬まで追いかけてきた。
この会も本来ならば3階の和室で開かれていてせいぜい60〜80人くらいしか入れないのだが、ソーシャルディスタンスを保つためにと大ホールで開かれた。
それでも8割方埋まっているように見えたから、和室だったら入れなかったかも。さすが人気二ツ目たち。
小辰さんも一花さんもこればかりはコロナのおかげと話していた。

さて小辰さん、一花さんは一蔵さんの妹弟子なので「親友の妹」みたいな感覚でいたのだが、最近ではなにかちょっといじったりすると「やめてください、私人妻ですよ!?」といわれるようになったらしい。「なんかそう言われると逆に意識してしまう。これまでなんとも思ってなかったのに、なんか色気みたいなものを感じてしまう」だそう。
……でですね、今日は朝の会に行こうと思って早く起きたとか、コタツで寝ちゃって眠りが浅かったとか、直前に昼メシの餃子定食を食べたとか、例年にない暖かさだったとか、聞き慣れすぎた二席だったとか、いろいろな要因が重なって夢の国へ行ったりきたり。とても偉そうに感想を書けるような状態ではございませんでした。

一花さんは小辰さんほど聞き慣れてはいないためもう少し意識を保っていたが、気がつくと噺が数秒飛んでいたり。
『明烏』は若旦那のひょろひょろっぽさや、お巫女頭のおばさんはいいのだけれど、いかんせん源兵衛太助の町内の札付きが軽過ぎる感じは否めない。いっそ兼好師のように、源兵衛は底抜けに明るいというキャラにしたら面白いのかも。
『のめる』はご隠居にお茶を出してもらったときに「ありがてぇ、一杯のめる」と口癖を出す。最初はいい工夫だと思ったが、コレはこの噺を知ってる人じゃないと成立しないよなと思う。多分初めて聞く人にしてみれば、「いきなり何言い出すんだコイツ」としか思わないんじゃなかろうか。
隠居から計略を授けられて「あっコレ『詰まらねえ』って言う! 言う!」と手を叩きながら指さしたり、長屋の戸に網を張ったりと兼好師っぽいところは端々にあるのだが、全体的に見るとそうでもない。誰の型なんだろう。
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第九十三回 一蔵ひとりの会 [落語]

第九十三回 一蔵ひとりの会
於:神保町 らくごカフェ

春風亭一蔵『洒落番頭』『夢の酒』『らくだ』

中野から高円寺に飯食いに行き、そこから神保町へ。
ちょっと早めに着いたので公園で少し時間を潰してかららくごカフェに向かう。相変わらずボンデイは「ソーシャルディタンス上等」って感じで密着して並んでますなあ。
らくごカフェは現在30席限定にしているそうで、今日は満員だそうだ。

一蔵さんも「今日は『小太郎の真打昇進を祝う会』がさん喬喬太郎がゲストで開かれているのでこっちはガラガラだと思っていた」とのこと。うん、もう私の席にはチラシなかったからね。チラシほとんど持ってこなかったらしい。その代わり小太郎さんとの連名手ぬぐいは持ってきているようで、「女性のお客さん! 知り合いの男性のお客さんに久しぶりに今日会って、何もチョコを用意してなかったんなら手ぬぐいをあげればいいんです!」だそうだ。
今日はバレンタインということでバレンタインの思い出をマクラに。小学校3~4年生の頃の近所の女の子との初恋の話も飛び出す。バレンタインにはいい思い出がないそうで、それを聞きながら同じくい思い出なんてない私も嫌な思い出を思い出す。バレンタインなんて滅べばいいのに。まあ今は彼女というかまあほぼ嫁がいろいろくれるからまだいいけど、若い頃はホントなんもいいことなかったからなあ。
閑話休題、ホワイトデーに初恋の女の子が言ったダジャレから『洒落番頭』(庭蟹)に。一蔵さん曰く最近は寄席でもよく掛かっていて、ちょっとした流行りなのだそうだ。そういや私も最近何度か聴いたな。それまではほとんど聞いたことなかったが。一蔵さんが前座の頃はほとんど演る人がいなかったに、といっていたが、流行りに乗り遅れないためか今日がネタおろしだそうだ。

二席め、最近ようやくTwitterを始めたそうで、「つながるという感じがいいですね」とのこと。「これ楽しいですね、いろんな情報がどんどん入ってくる。『宮治の真打昇進披露興行に徹夜組が○人いて、始発組が○人、それに宮治が使い捨てカイロを差し入れた』とか出てくる。ダマサれるな!」だそうだ。
一花馬久夫婦のも見ているそうで、馬久さんが料理を作ったというツイートを一花さんがしているのを見て「そりゃ馬久の方がヒマだからね! 料理くらいしろって話ですよ!」と理不尽な八つ当たりから「仲がよすぎるのも……」と噺に入る。

夢の話とはいえ浮気する内容を嬉しそうに大はしゃぎしながら話す若旦那と、無表情ながらも初手から怒り心頭のお花の温度差というかコントラストが楽しい。入船亭だとお花は最初は弱々しいというか線の細い感じがするが、さすが一蔵さんはどストレートというかどっか骨太な感じがする。
大旦那も大旦那で若旦那の夢の話を聞いて「羨ましい!」と大声で放つという清々しいまでの正直者。なるほどこの大旦那ならすぐに酒の催促をするわ、と納得できる。

三席めは年末にも聴いた『らくだ』。兄貴分との力関係が一瞬で入れ替わり、「わからないことがあればこのアニイに聞きなさーい!」となる屑屋の豹変ぶりが楽しい。これまでずっと抑えつけられていた分、カタルシス感があるようだ。

日もまだ明るく温かいのでどこかに寄ってもよかったのだが特に思いつかず。スーパーでサバを買って数年ぶりにさば味噌煮なんぞを作って自分で食すという健全な休日を過ごす。
タグ:春風亭一蔵
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実力派二ツ目独演会 らくご長屋 小辰独演会 [落語]

実力派二ツ目独演会 らくご長屋 小辰独演会
於:中野 なかの芸能小劇場

入船亭小辰『子ほめ』『干物箱』『宿屋の仇討』

昨日の地震はびっくり。揺れる前にテレビや携帯からあのヴイッヴイッという警報が鳴り、寝ていた猫たちもパニックに。幸いパニックはすぐ収まったが、トイレに持っていこうと思って出していたトイレットペーパー床に落ち、ココアに狩られる被害が出た。ウチはその程度で済んだが、被災地の方にはお見舞い申し上げます。
しかしテレビ各局が地震ニュースに差し替えられる中、淡々といつもの番組を流すテレ東さんさすがです。土曜深夜はいつもほぼテレ東ばかり見ているのでいつもとあまり変わらない感じに。途中まで観てた『マツコ会議』、一番面白くなりそうなところで終わっちゃったけどどうなるんだろ。まあネットで見りゃいいんだろうけど。

小辰さんも「ああいう出し抜けはいけません。嫁は子どもを抱き抱えようとしてぬいぐるみを抱えてた」と話す。
「落語を聴きにくるお客様というのは、楽しみを知っているお方。その中でもこんな朝早くからくるというのは……、ちょっと斜め上を行っている」とか。「……私だってお世辞くらい言うんです。でもそれですごいなと思うのは桂宮治と春風亭一蔵ですよ。あのふたりは身体全体を使ってヨイショする。私はどちらかといえば性悪ですからそんなにできない。でもあそこまでやらなくても上手な人もいる。私の師匠も実は上手いんですよ。あんな感じでぶっきらぼうかと思わせてちょっと褒めたりして。ツンデレっぽいところがある」そうで。
お世辞の話からそのまま『子ほめ』へ。
やはり前座さんのものより聴いていて噺がわかりやすい。頭に情景が浮かびやすいというか。多分こういうのが聴きやすさってことなのかもしれない。
大人の褒めようを聴くときに、「50歳の人が来たら?」という問いに「55、6とでもいえばいいだろう」とより老けていってしまうというらしくないミスを犯す。が、「なるほど上に言えばいいんですね!」と多少強引ながらも自らネタにして消化していたのはさすが。
5年ぶりくらいに掛けたそうで、涼しい顔で「意外とできるもんですね」といっていたが、落語家の記憶力すげえな。いやまあ確かに毎日どこかしらで掛かっているだろうから、いつも耳にしているんだろうけども。

二席め、貸本屋の善公のちょっと足りない感じが楽しい。落語にはこうやって自分で役を作ってひとりで演じるといういわゆる「ひとり気狂い」みたいな噺がよくあるが、こんなのが周りにいたのだろうか……?

三席め、江戸の三人連れがとにかくうるさくて派手。『鋳掛けや』の悪ガキ共がそのまま大人になった感じ。
「源ちゃんは色事師」「色事師の源兵衛」と囃されているときに「お前らそんなのよさねえか」とちゃんとリズムに乗りながら自ら手拍子をとっている源兵衛が楽しい。

終演後はいつものように高円寺まで行ってタイ料理ランチを。今日はいつもよりも混んでいて店に入るまで待つほど。自分を棚に上げていうが、非常事態宣言どこに行った。
高円寺では恒例の演芸まつりも始まっているようで、街に流れているBGMも出囃子の三味線が鳴っている。HACOの前を通りがかったら、だるま食堂の特徴的な声が聞こえてきた。今年もいくつか行きたい会があるから調整しなければ。
タグ:入船亭小辰
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第二十一回おおとり寄席 入船亭扇辰・三遊亭兼好二人会 [落語]

第二十一回おおとり寄席 入船亭扇辰・三遊亭兼好二人会
於:鴻巣 鴻巣市文化センター

桃月庵あられ『まんじゅう怖い』
入船亭扇辰『道灌』
三遊亭兼好『崇徳院』
三遊亭兼好『元犬』
入船亭扇辰『甲府い』

彼女を職場に送ってからそのまま車で会場まで。だいぶ余裕を持って出たはずなのに環七が異常に混んでて全然進まない。到着予想時間もどんどん伸びて開演時間に間に合わない。こらまいった。とはいえ二人会ってことは前座が出るだろうし、最悪ちょっと遅れてもいいかーと思っていたら案の定開演5分後に会場に到着。しかし、……え、会場の文化センターの駐車場満車? これはまったく予想してなかった。しかも都内じゃないので逆にコインパーキングがない。パニック。おいおい! と思って5分ほど走っていたら近くに運動公園があってそこの駐車場に停められた。

とはいえこれで開演から15分経っている。こりゃ前座終わって一席め始まってるかなーと思っていたらあられさんが「いいよ、あいつはなんにも役に立ってないんだから死んじゃったって。まんじゅうで足んじゃったら『アン殺』だよ」というところだった。
まんじゅうの食べ方上手だね。

扇辰師、「……18分でしたね。これはあられさんのギャラから2千円引いておきます」。私は助かったけどね。
「自分で言うのもナンですけどね。私そこそこ売れてるんですよ。でも2週間ぶりの仕事ですよ」。えーマジ? まあ落語協会は寄席もいまないしね。
最近扇辰師の『道灌』をよく聴く。一度思い出したら気に入ったのだろうか。もちろんすべてにおいて高レベル。

兼好師の一席め、マクラは森発言について。「それにしても二階さんはすごいですね。かならず火に油をそそぐ妖怪なんじゃないですかね。サッカーで言えばPKなのにオウンゴール」というのはすごい表現。
噺に入ると熊さんのとにかく明るいキャラが楽しい。ここまでハイテンションなのは他の噺家でもなかなかないのではないだろうか。
若旦那から恋患いの告白をされたときの笑いをこらえている表情や吹き出し方がとにかく上手い。ポーカーフェイスを装いながらも思わず漏れ出す「くふっ」という声や、どうしても口角が上がってしまうところの表現がリアルでこちらも釣られて笑ってしまう。
一度若旦那を喜ばせてからの「相手のお嬢さんはどこの誰かわからねえんですか!? ……じゃあダメだ。あきらめなさい」という手のひら返し好き。最初に若旦那から「どこの誰かわからない」と言われるパターンと、大旦那に報告したときに「で、どこの誰なんだ」と聞かれて改めて若旦那に聞きに行くパターンがあるが、後者のほうがどんでん返し感があって面白いと思う。今日は後者のパターンだったので満足。

兼好師の二席め、ここ最近は上総屋さんに自分が元犬だと告白するパターンが多かったが、今日は明かさない通常のパターン。

扇辰師の二席め、第一声から「金公、なにやってやがんだ!」と一切のマクラなし。
豆腐の売り声をたっぷりとコブシを利かせて存分に長く聞かせる。もはや唄のようにノドを聴かせるためのツールになっているような。
サゲの「こーふぃーーーーー」の後にたっぷりと間をとってから「おまいーりー」につなげる。この余韻がとてもいい。

帰りも渋滞で往復5時間。疲れた……。
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落語まちね 三遊亭兼好独演会 [落語]

落語まちね 三遊亭兼好独演会
於:両国 江戸東京博物館大ホール

三遊亭兼好『黄金の大黒』
三遊亭しゅりけん『真田小僧』
三遊亭兼好『お見立て』
三遊亭兼好『やかんなめ』

前はギッチリ、後ろはスカスカ。これで客入り50%に抑えてコロナ対策してますってアタマ沸いてんのか主催者。
しかも前のじーさんの頭で高座が全然見えないし。もー。

兼好師の独演会でよくある最初から兼好師が出てくるパターン。はい全部で三席やってくれること確定。もう木戸銭よりだいぶお得なこと決定ですよ。やったやった。

一席め、「こんな状況の最中、おそらく多少の後ろめたさを感じながらおいでいただきありがとうございます。後ろめたいといえば、栃木は緊急事態宣言解除されたんですよね。それを栃木の人に言うと『いや……なんかスミマセン』と後ろめたそうに言われる。多分『首都圏』に含められるのが気まずかったんでしょうね。東京、神奈川、千葉、埼玉はわかる。そこに『私も混ぜて』というのは勇気がいりますよ」。……ああみんな思ってて口には出さなかったことを……。
「栃木出身の方いらっしゃると思いますけど、……栃木って別に行かなきゃいけない感じじゃないじゃないですか」。あーあーあー。いや日光とか中禅寺湖とか。埼玉出身の私の場合、ちょうどいい距離だからか、小学校の課外授業で結構栃木行ってるんだよなあ。
「多分他の地方の方からしたら、茨城とどっちがどっちだか区別できない。でも我々も富山と福井、鳥取と島根の区別つかないでしょ。……なんなら私『とっとり』の『鳥』と『取』どっちが先かわからないですもん」。……確かに鳥と取、どっちも「とっ」でも「とり」でもいけるんだ……! 気づかなかったなあ。
「私の住んでる足立区でも地域別に格差差別がある。私の住んでる北千住のあたりはまだいい。西新井とか梅田は『川向こう』と呼ばれる」。北千住は足立区内の港区です。
「でも梅田は今一部で盛り上がってる。『梅田』は読み方によっては『バイデン』だから。……そんなこと言ってるから……」。ヤベ、オレ会社にいる梅田さんに同じこと言っちゃった。
会場のある両国のあたりも吉宗以前は田舎扱いだったということから棟割長屋の話になって噺に入る。
長屋のワイワイとした雰囲気が感じられるのがいつもながら楽しい。しかもここの住人は発言をするのにみんないちいち「ハイッ」と挙手するのがおかしい。
大家の息子にいたずらされた鉄さんが、それを大家に報告するときに「あの生意気なガ……かわいらしい坊ちゃんが……」と本音と建前が入り混じるそのブレンド具合が素晴らしい。怒りの声と顔、建前の声と顔、たまに顔と声が入れ替わったりして面白い。

しゅりけんさん、「師匠の後に出るというのは……。お客様も『大丈夫か』と思われていると思いますが、安心してください、私も同じです」。そっかー。
こないだもやっていたけど、「過去の偉人の名言」をもとにした小咄をマクラに。「偉人」と「名言」が混ざっちゃって「名人」とか言ってたけど。そして微妙な空気に。……とりあえず他のパターンも聞いてみたい。
前回聴いたときは話の切れ目を「一部、二部」といっていたのが「一幕、二幕」になっていた。やっぱりそっちのほうがわかりやすい。
全体的に前回聴いたときよりも落ち着いて聴きやすくなっていた。

兼好師の二席め、「最近お客さんから『しゅりけんさん最近噛まなくなりましたね、噛んでたのが面白かったのに』と言われて、これどうすればいいんですか。菅総理の『長男は別人格です』じゃないですけど『弟子は別人格です』といいたい」だそうで。
マクラはやはりというか森発言について。「謝ってるけどあの人は反省してない。というか別にみんな驚いてないでしょ。発言の是非はともかくとして、失言するってみんな思ってたでしょ。あの人は『黒ひげ危機一髪』と同じで、タイミングがわからないだけで絶対にやるんですよ」。上手いこというなあ。
「それにしても二階さんはすごい。なんかあると必ず火に油を注ぎますからね。あのふたりで漫才してほしいですね。どっちがボケかわかりませんが。落語界だったらああいう不謹慎なことをいっても許されるから落語界にくればいいのに。もともと現職総理だった頃にも寄席にくるほど演芸好きだったんですから。結構な地位になってたと思いますよ。そうすれば『小三治の話は長い』って……」。
結局森会長は正直者で嘘がつけないんだろう、だからああいう態度になる、というところから反対に嘘の世界である花魁の噺に入る。
「喜瀬川は死んじゃいました」から始まることもあるが、今日は「風邪引いた」ところから。
風邪では引き下がらない杢兵衛お大尽に対して「風邪だけじゃなくていぼ痔も出て味覚がないという……」という喜助に、「えぼづ!? えぼづならスかたなかんべね」と諦めるのがおかしい。いぼ痔だと諦めるんだ。
お茶を手に泣き真似をする場面では最初は「ちょっと向こう向いてもらえますか」といっていたのに、繰り返すうちに何も言わずにアゴだけで横を向かせるのがおかしい。

三席め、花粉症の話から昔あった病気の話に。疝気の話が出たので『疝気の虫』かと思ったが、女性の癪の話に。合薬の説明をして『やかんなめ』に入る。兼好師の『やかんなめ』は初めてか。かなり前に聴いたことがあるような気もするけど……。というかそもそも『やかんなめ』ってほとんど朝也時代の三朝師ばっかりだな……。
しかしこれがまた絶品。
女中の慌てっぷりと侍の大物っぷりのコントラストが楽しい。
なかなか言い出せない女中に向かって「よくぞ身共を呼び止めた」と繰り返す独り合点の部分も腹が捩れるほど面白い。「お願いとはなんじゃ。はっきり申せ。……これだから女は話が長い」というのはさすが。
頭をなめられているときの侍の表情や声がまた最高。
で、その後に激怒していた侍が中間の可内(べくない)につられて次第に笑ってしまうまでの感情のグラデーションの表し方がすごくいい。上手いなあ。

終演後、5月にある独演会のチケットが売っていたのだが、今日の分は売り切れてしまったらしい。予約してお金を払えば後日用意してもらえるということになっていた。……ということを何度も説明されているのに全然理解せず、ずっと噛み付いてる夫婦連れがいた。……邪魔だなあ。「席の指定できないの? じゃあ意味ないじゃない!」とか言ってたけどそんなのネットでチケット買ったってほとんどの場合できないじゃん。そんでネットで買うと手数料やらチケット発券料やらいろいろかかるのがなくなるじゃん。そういうことわかんないのかねえ。早くどけよ。
で、私は買った。そしたら金払って紙に名前と電話番号とメアド書いておしまい。……いやなんかこちらに受け取りとかねえの? 金払ったという証拠ないじゃん。こっちは金払ったのにその受取ないとか商取引上ありえんでしょ。個人売買じゃないんだから。……大丈夫かこの主催。不安だ。
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