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高円寺演芸まつり(第10回) おしくら饅頭、四派でドカン [落語]

高円寺演芸まつり(第10回) おしくら饅頭、四派でドカン
於:高円寺 座・高円寺

林家やまびこ『堀の内』
林家彦いち『という』
瀧川鯉昇『千早振る』
三遊亭兼好『茶の湯』
立川談笑『イラサリマケー』

横浜から高円寺に移動。高円寺はいつもバイクなので、電車で来るのは久しぶり。

やまびこさん、名乗りもせずにいきなり噺に入る。最初は気づかず、誰だっけなんか見覚えはあるんだけど……と思いながら今日の顔付けの弟子たちを考えて彦いち師のとこのやまびこさんだと思い出す。
天然の人が粗忽者の噺をするってのもなんかシュールというか。

彦いち師、「さっき出てきた人ね、私の弟子なんですけど」と渋々といった感じで素性を明かす。
やまびこさんは去年の夏に正雀師が寄席で『真景累ヶ淵』を掛けたときに幽霊役として出たのだがそこでしくじったそうで、次の日に菓子折り持って彦いち師が謝りに行ったのだとか。そういう彦いち師も前座時代にやはり正雀師の『真景累ヶ淵』の幽霊役でしくじったらしく、そのときは師匠が誤りにいったそうな。
『という』は半年くらい前に一度聞いた噺。そのときは話の筋がよくわからないという印象だったが、二回目となるとよくわかる。が、やはり最後のオチのあたりはなかなか不条理というかカオスな感じ。ちょっと怖い。

鯉昇師、古典落語なのに微妙に(というか割と大幅に)現在風にアレンジされた『千早振る』を。前にも聴いたことがあるが、その大胆なアレンジを淡々とというか飄々と語っているのが楽しい。これも名人芸なんだろうなあ。

兼好師、「噺家という伝統芸能は師匠に惚れ込んで入門するわけで、師匠のDNAをどんな形でも残したいと思うのでしょう」という。なんの話かと思ったら、「まだ談笑師匠がきていない」という。「そんなところまで談志師匠に似せなくってもねえ。もしかしたら今日は来ないかもしれませんよ。私が降りて彦いち師匠が出てきたら『ああ来なかったんだな』と思ってください」。
噺はいつもどおりの面白さ。今日はやや上手側の席だったのだが、ちょうど上下をきったときに目線がくる席で、定吉がご隠居を追い詰めているときの目の表情が正面から見ると本当にすごかった。あんな目つきで追い込まれたらそらタジタジになるわ。
ご隠居のいれるお茶は沸騰したお湯でいれるのでめちゃくちゃ熱いという演出があるのだが、その設定はいつもはご隠居と定吉の最初のお茶の席でしか使われていなかった。
今日は三軒長屋の豆腐屋たちや、最後にお茶を習いに来る友人の場面でもその設定が生かされており、みんながみんな茶碗を持ってまずは「熱っつ!」と手を離すというくすぐりがまぶされていた。この細かさが本当に面白い。

談笑師はどうやら間に合ったようで。前の仕事が沼津であり、思いがけずに伸びてしまって本来の一本後の新幹線で戻ってきたのだとか。着流しに袴のスタイルのまま新幹線に乗り、その格好にデイパックという出で立ちで品川駅から乗り継いできたそうな。
でようやく着いたと思ったら「兼好さんが長くって。長いなーと思っていたら終演予定まであと15分。……私は終演時間は守る方なので」とのこと。
『イラサリマケー』は6年半ぶりくらい。『居酒屋』の改作でシモネタ満載のくだらないっちゃくだらない噺なんだけど、そのくだらなさがとにかくおかしい。
途中で客席に子どもがいることに気づいたらしく、ちょっと固まって困っていた。けれどもややヤケクソ気味に開き直って大きな声でシモネタを叫ぶ姿がまたおかしい。

今日は昼の回も含め、一席一席が全部濃厚だったなー。
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第三十一回 にぎわい倶楽部 西のかい枝・東の兼好 [落語]

第三十一回 にぎわい倶楽部 西のかい枝・東の兼好
於:桜木町 横浜にぎわい座

立川かしめ『子ほめ』
三遊亭兼好『手紙無筆』
桂かい枝『星野屋』
桂かい枝『屁臭最中』
三遊亭兼好『佐々木政談』

さて出かけようかと思ったときにいつも前売り券を入れているところにチケットがない。
申し込みだけしてチケット引き取ってないんだっけと思いつつも、いやーにぎわい座のチケットセンターで受け取った記憶あるなー……。
会員として買ったから座席番号とかはわかるだろうし、いよいよとなったらチケット忘れたとでも言い張るか……? とまで思ったが、いやいやそれはさすがにいかんだろと自問自答する。というかカバンにもチケット入れにもないとなると思い当たるところがない。途方に暮れながらもチラシをまとめて置いてあるところをパラパラとめくってみたらにぎわい座のチケット袋がチラシに紛れて現れ、中からチケットが。あっぶねぇー! よかったー……。
やっぱりチケットは買ったらすぐにいつもの場所に保管しておかなくてはと反省した次第。
出がけに思わぬ時間を食ったせいで昼メシの時間がまともに取れなくなってしまった。

さて前座のかしめさん、高座を聴くのは初めてか。あれ、二ツ目に昇進したんじゃなかったっけ? 決定しただけで実際にはまだなのかな。
思ったより、といったら失礼だけど、しっかりとスタンダード。
師匠が自由な感じだから似てるのかと思ってた。まあ「弟子には何も教えてない」って言ってたしね。

兼好師の一席め、やはりこのところのマクラといえば新型ウィルス。
「あのクルーズ船の対応はわからないですね。感染がわからないと降りられないんですよ? 逆ならわかるんですよ。感染者は船に戻して隔離して医療を受けさせればいい。で船が感染者でいっぱいになったら出航……」。なかなか黒い……。
「でもかわいそうですね、高いお金払って夢のクルーズ船乗ったらこんなことになるなんて。……皆さんクルーズに乗るような生活してなくてよかったですねえ」。また黒い。
「でもこの会場に感染してる方がいて、この後ここが閉鎖されて皆さん隔離される可能性だってあるわけですよ。そしたら私とかい枝兄貴とふたりで皆さんを退屈させないように、ネタが尽きるまで高座を努めます」。……それはそれですごく魅力的ではあるなあ……!
最近は情報が多過ぎるから余計に混乱する、昔は情報伝達方法は手紙くらいしかなく、と『手紙無筆』に入る。
弟分が無筆とわかったときの兄貴分の「この文明開化の世の中に! 残りわずかといわれた!」と嬉しそうな顔がたまらない。その分兄貴分も無筆と感づいたときの弟分の逆襲も楽しい。
……あれ、サゲ……これだと意味が通じないのでは?

かい枝さんの一席め、やはり話題は新型コロナウィルス。今朝大阪から東京にきたが、東京や横浜の人が普通にウィルスの心配をしているのに対して、大阪はそんな中でも話にオチをつけたがるのだそうで。
噺は江戸落語でもお馴染みの『星野屋』。
江戸ではお花の母親は最後に出てくるだけだが、上方なのかかい枝さんのは悪知恵を授ける重要な役回りになっている。
しかし上方弁だからか、最後の攻防のエグさがより際立っているように思える。

二席めはネタ出し。『屁臭最中』と書いて「へくさのさいちゅう」。
今では誰もやらなくなった噺を落語作家たちと掘り起こすという「発掘かい枝」という活動をしており、そこで掘り起こした噺だとか。「誰もやる人がいなくて私しかやってないので比べられるということがない。つまり世界一」とのこと。
噺の内容は恋煩いに罹った商家のお嬢さんが、お守りから出てきた神様に恋愛成就を頼むというもの。ただしその神様が願いを叶えるには願いを掛けた人が恥をかかねばならず、一番簡単なのが想い人の前で屁をして嗅いでもらうことで、臭ければ臭いほど強い願いを叶えられるというもの。
この神様がコテコテの河内弁。河内弁て大阪弁の中でも一番ガラが悪いんじゃなかったっけ。神様なのにガラ悪く下品なことをまくし立てるというそのシチュエーションが面白い。

兼好師の二席め、「先日誕生日を迎えて50歳になり、老人の側に入った。いろんなことを忘れるし覚えられないし、間違えるし……。しかも間違えたことに気づかない。指摘されて初めて『あれ、間違えてた!?』となる」。ハッキリとは言ってないけど、やっぱりさっきの高座のことだよね……。
自分が老けたというところから少子化の話になり、さらにそこから子どもの噺であるネタ出しの『佐々木政談』へ。
あれ、俺もしかして兼好師の『佐々木政談』初めてか? 前にたまたま行けなかった会で『佐々木政談』が掛かったということを他の人から聴いて悔しかった覚えがある。
こういう大きめで、いかにも兼好師がよく掛けそうなネタでも未聴があるんだから俺もまだまだですな。
兼好師の『佐々木政談』は佐々木信濃守と行動を共にしている与力の三蔵がすっとぼけていて楽しい。四郎吉がお奉行ごっこで「余は佐々木信濃守なるぞー」と名乗ると、怒るどころか「ええっ!」と間に受けた上、隣にいる佐々木信濃守に向かって「ではあなたは誰?」と聞いたり、「ごっこ遊びをする子どもというものは妙なものに憧れるものですなあ」とうっかり暴言を吐いたり。
お白州の場であまりにも自由に振る舞う四郎吉に振り回されてすぎて早々に目を回して伸びてしまうおとっつぁんもおかしい。

今日は次があるため、すぐに次の場所へ移動。
その電車の中でにぎわい座から電話がかかってくる。何かと思い乗り換え駅で折り返してみたら、どうやらにぎわい座のポイントカードを座席の近くに落としていたらしい。
しかも「チケットの予約状況を確認してみたら、この先にいらっしゃる予定がなさそうでしたので……」とのこと。いやすげえなにぎわい座。ポイントカードに会員番号が書いてあったかは覚えてないけど、それだけで電話してきてくれるんだ。
まあにぎわい座にはそんなに遠くない将来行くだろうし、取り置いてくれるとのことなのでそのように頼む。ちょっと感動した。
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