SSブログ

特撰落語会 [落語]

特撰落語会
於:王子 北とぴあ さくらホール

三遊亭歌つを『子ほめ』
桂宮治『権助魚』
三遊亭白鳥『萩の月の由来』
三遊亭兼好『粗忽の釘』
柳家権太楼『言い訳座頭』

中学校から戻ってブログを更新してからハシゴ。兼好師を1日2回というのも久しぶりだなあ。
終演後に彼女を迎えに行くために車で北とぴあまで。駐車場が安くて助かる。

歌つをさん、「私が初めてという方は『初ガツオ』、2度目だという方は『戻りガツオ』、こないだ師匠をしくじってひどく怒られて『カツオの叩き』……」というおそらく鉄板のつかみから噺に入る。
落ち着いてはいるがどことなく温かみのある口調。

宮治さん、「夫婦のことは周りからわからない」という話題を。フジモン夫妻も表向きは仲良さそうに見えていたのに実は険悪だったし、昇太師も口では新婚生活が辛いなどといいつつも実際にはいちゃいちゃ甘えモードになってるんじゃないかという妄想を実演したりする。
また、東出昌大は『落語ディーパー!』で共演している関係で小痴楽師の結婚式に家族でビデオメッセージを送ってきたという。「あの時は『この夫婦を見習わなきゃいけませんね』なんて司会で言ってしまってたんですが、今考えてみれば『不倫しろ』って言ってたようなもんですね!」とまあ嬉しそう。
そんなところから浮気の噺の『権助魚』に入る。ふんだんに時事ネタなどをくすぐりに盛り込みつつ、宮治さんらしくわーわーきゃーきゃーと噺が進む。メザシが藁を目に通すくだりはなかなかグロい。

白鳥師、宮治さんの噺を聴いて「……ヘンな古典でしたねえ。なので私もヘンな古典をやります」と言って『ねずみ』が元ネタの改作を。
私は初めて聴く。
左甚五郎は江戸っ子の職人っぽい感じで、宿の主人の卯兵衛は三代目のボンボン。彫物に造詣が深く、甚五郎が名乗っても本気にしないで「素人が」と何故か上から目線なのがおかしい。
「あれ虎ですか? 猫かと思った」で終わらず、虎がねずみを追いかけてぐるぐる回ってるうちにバターになり、そのバターを使って萩の月ができた、というもういろんなものが混ざりすぎててカオス。

兼好師、「白鳥師匠が宮治くんの噺を袖で聴いててずっと『ヘンな噺』って首を傾げてんですよ。……それあなたがいいますか?」という真っ当過ぎる指摘を入れる。さらに「あんなに萩の月が不味そうに聴こえるなんてすごいですよね」と一見黒いことのように聞こえるが、まあ事実だしなあ。
「これからはまともな落語ですから。というか私こういう役割多いんですよね。前がめちゃくちゃで私で空気を戻すという」。確かにそういうパターン何度も見ている。
昼の会でも言っていたインフルの話から肉体的な衰えで物忘れの話題になり、粗忽者へとシフトしていく。
粗忽者の亭主が引越し先に涙ながらに現れてそれまでの苦労を語っているときに、何度となく「ヨイショ」と箪笥を背負い直しているのがおかしい。聴いている方が心の中で「下ろせばいいのに」と思っているところに女房からの「下ろしてから話せば」というツッコミが入って一層の笑いとなる。
その後も女房から小言を食らうたびに「褒めて伸ばせよ」とか「口じゃ『ハイ』って言ってるけど、心の中じゃ従ってねえからな」と小さく反抗しているのも楽しい。

権太楼師、「兼好でようやくまともに……」とポツリとこぼす。
「ウケりゃあなんでもいいってわけじゃないんだ。あとで小言ですよ」と厳しいお言葉。「今日やろうと思っていたネタは甚五郎ものだったのに」。単なる八つ当たりのようでした。
ということでネタを選びなおさなければならず、「時季の噺ってのはその時季を逃すとずっとできなくなってしまう。私は『言い訳座頭』というネタを3年くらいやってないので演ります。『噺家の時知らず』といいますが、今日は2月ではなく大晦日だと思ってください」とぶっちゃける。
借金の言い訳を言って欲しいと同じ長屋の座頭に頼むという噺で、『睨み返し』や『掛け取り』など似たような噺はいくつかあるが、中でもこの噺は借金をしている側の言い訳の無茶苦茶さがすごい。言い訳を頼んだ側の甚兵衛さんが「もう払おうよ」と言ってしまうほどで、その無茶ぶりがおかしい。

この人数で2時間半。たっぷり。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:芸能

新春おもしろ落語 in 千寿青葉 [落語]

新春おもしろ落語 in 千寿青葉
於:北千住 千寿青葉中学校

三遊亭しゅりけん『堀の内』
三遊亭兼好『厄払い』
三遊亭兼好『うどんや』

年に一度のお楽しみ。
去年はなかったみたいだが。
というか会場となる中学校が建て替えで移転しており、町内会の掲示板にもお知らせが貼られておらず、危うく見逃してしまうところだった。
危ない危ない。
いつもは教室なのだが、今年は体育館で。
60名程度と書かれていたのでやや早めに行ったのだが体育館なので広々。かなりの余裕があった。体育館での会は初めてかも。

しゅりけんさん、やはり体育館なので音が反響してこもった感じになって聞き取りづらい。
まあそれはそれとして、しゅりけんさんとこの噺の相性はすごくいい。主人公の粗忽ぶりというかぼんやりとしたおかしさがしゅりけんさんのキャラにとても合っている。なんかずっと聴いていられる。
どうやら兼好師匠との型とは違うようだ。

兼好師の一席め、いつもよりもだいぶゆっくりではっきりとしゃべる。やはり学校寄席で体育館対策には慣れているのか、すごく聴き取りやすい。
「新春」と銘打たれているもののもう2月に入ってしまい、今年がねずみ年であることも忘れられているのではないかというところからネズミの話題をマクラに。ネズミには野ネズミと家ネズミがあり、家ネズミとは人間の家や食べ物を食べて暮らしているものであるという。「そう考えると浦安のあのネズミは家ネズミですね」。
家ネズミにはハツカネズミ、クマネズミ、ドブネズミの3種類があり、兼好師が築地で働いたときのネズミエピソードなども。
昔は2月4日の立春を正月とすることもあり、2月3日の節分が大晦日で厄払いの習慣があった、ということで「時期の噺なので」と『厄払い』に。
時期が限られる噺なので聴けない年も多く、この噺に当たるのは珍しい。こういう地域寄席で聴けるのは嬉しい。
「厄払いは頭のあまり良くない人がやることが多かった。……しゅりけんみたいな。あまり儲かる仕事ではないし、口上だけはなんとか覚えられる、くらいの人がやっていた」というひとことがなんか面白い。
厄払いの口上をたどたどしく読んでいるうちに英語みたいな発音になってきて、最終的には「ハロー、ハロー」としっかりいっているのがおかしい。「あ、『払おう払おう』か……」なるほど。

二席め、今度はコロナウイルスの話題をマクラに。「日本は島国なんだから水際で止められそうなんですけどねえ。……まあゴーンさんみたいな大きなものを逃がすくらいだから無理か」とゴーンネタも絡める。
とはいえまだインフルエンザの方が危ないんじゃないか、と自身のインフルエピソードを話しながら「昔は風邪を引いてもうどんを食べて暖かくして寝るくらいしかなかった」と『うどんや』に。
酔っ払いがメインの噺なので口調がゆっくりでもちょうどよく、これまた体育館でも全然聞き取りづらさがない。
鍋焼きうどんの売り声や、酔っぱらいの唸る鼻歌などいろいろ声を聴かせるところも多いのだが、ここらへんもお見事。
後半のうどんを食べている場面も湯気が見えそうなほど。大量注文を期待して客をうかがううどんやの表情と、その視線を受けた客の怪訝な表情が交わされるのがおかしい。

終演後に校長の謝辞というものがあったのだが、これがもう……。なぜか高座に座ってよくわからないネタ? 漫談? を長々と聞かされるという予想外の苦行を強いられる。兼好師は舞台袖で立ちながらそれを聞かされ、かなり戸惑っていた様子。兼好師のそんな姿はかなり珍しく、それはそれで貴重なものを見せてもらったかもしれない。
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:芸能