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にほんばし落語会 平成最後の桂宮治独演会 [落語]

にほんばし落語会 平成最後の桂宮治独演会
於:人形町 日本橋社会教育会館

桂伸び太『弥次郎』
桂宮治『道灌』~平成を振り返る~
桂宮治『宿屋の仇討ち』

私の平成最後の落語会。夜に兼好師の会もあるんだけど、さすがに7000円は高くて行けない……。まだGW中にいくつも落語会行くからなあ。

伸び太さん、なるほどドラえもんののび太のような風貌。
まだ入門したてのようで、ホール落語での高座は初めてということで緊張しているとのこと。
声を張り上げ仕草も大げさで、まあいかにも入門したてって感じがする。
なぜか常に足がバタバタと動いていて、着物がはだけてしまっているのはちょっと見苦しいかなあ。
宮治さんによればなんとミャンマー人なのだそうだ。とはいえ日本育ちなのでミャンマー語は聞き取る程度で話せないそうだが。へえー。落語界もインターナショナルになってきてるなあ。

宮治さんの一席め、「平成最後の日にこんなに多くの方に来ていただいて……。でも今日は20人くらい予約しているのにまだ来ていないらしいですよ。いつもは10時からなかの芸能小劇場でやってるのでそっち行っちゃてるんじゃないですかね。まあチケットは当日引き換えじゃなくてすでにお金もらってるので別に来なくても大丈夫ですけど。主催者のオフィス10もぜんぜん気にしてませんでしたから!」とぶっちゃける。
「今日は落語やる気ないです」と懐からなにやらメモを取り出し、平成元年からの事件やニュースなどを読み上げてそれらにまつわるエピソードなどを語る。なのだがなぜか末廣亭の楽屋が全面禁煙になった話とか、東大卒の兄弟子から暴行を受けた話とかいろいろ。
たっぷりとマクラ(?)を振りながら平成16年くらいまでが終わったところで「さ、そろそろ落語やろ」と唐突に落語に入る。そんな乱暴な。
マクラで時間を使いすぎたためか「短い噺を」と言いながらも、「趣味は書画骨董」と至るまでご隠居と八っつぁんのやり取りがだいぶ長く取られていた。千代田城が太田道灌から家康に売られた、という「いえやすギャグ」もたっぷり。いかにも宮治さんらしい。
『弥次郎』と『道灌』で1時間以上かかるってどんな会だ。

二席めも平成の振り返りをマクラに。つい最近だと思っていたらすでに4~5年経っていてビックリした。さすがに前半よりはあっさりめにして噺に入っていく。
宮治さんの『宿屋の仇討ち』は初めて。
源兵衛が色ごとの話をしているときになぜかものすごくキリッとしたいい声で話すのがおかしい。また、その後の「源ちゃんは色事師、色事師の源兵衛」という囃し立てになぜか源兵衛まで自分から加わってミュージカル仕立てになるのがたまらない。これもまた宮治流というか。

……あああああっ! これ書いてるときに浅草演芸ホールの夜席のトリが遊馬師だったの思い出した! 浅草演芸ホールの平成大トリだったんだ、行かなきゃって前々から思ってたのに忘れてたー! 20時半……もう間に合わない……。あー平成最後の大しくじりだぁー……。
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第404回ノラや寄席 遊雀・遊かり親子会 [落語]

第404回ノラや寄席 遊雀・遊かり親子会
於:中野 なかの芸能小劇場

三遊亭遊雀『つる』
三遊亭遊かり『鉄砲のお熊』
三遊亭遊かり『千早振る』
三遊亭遊雀『花見の仇討』

今日は昼間っからビールとハイボール。あっひゃっひゃっひゃ。GWですから。まあ明日出社ですけれども。

さて遊雀師。
この会場は以前はよく使っていたのだが、名前が遊雀になってからは初めてだそうだ。
昨日は丸ビルのロビーで落語をやったそうで、「いわゆる『タダ』の仕事よ。ロビーだから人は通るし声は散っちゃうし、まともに聴いてくれないんだ。でもいいお客さんだったから笑ってくれたんだけど、我々にはあまり会場が似合わない。で、終わったら兄弟子と有楽町のガード下にいって『やっぱここだよなあ』なんて言いながら呑んでた」そうで。
今日は名古屋の方で仕事があるからと言ったそうだが、逆に「じゃあここから新幹線に乗ればいいな」と言われて朝までつきあわされたそうだ。新幹線の中では隣が親子連れで子どもが『お弁当箱』をずっと繰り返し歌っていたそうで、まったく眠れなかったらしい。さらに会場はものすごく寒く、演る方も見る方も縮こまっていてまっっったくウケなかったそうで、「その時のネタをやります」とリベンジマッチ。
なぜこれがウケなかったのかというほど面白い。

遊かりさん、久しぶりに聴いたけど、なんか俺の苦手な女流の方向に行ってる感じ……。
なんというか女性が演じるためのアレンジがされていて、それがあまりしっくりこないというか。
つまらないとか下手とかではなく、あくまでも私の趣味とは合わないというだけなので誤解のなきよう。実際会場ではウケてたし。

遊雀師も「遊かりはどこへ向かってるのかねえ……。白鳥兄貴の方へ行くのはダメだと言っておいた」とのこと。そのついでというか白鳥師の噺の作り方の内幕も話す。曰く、噺の要点を5つくらい箇条書きにしてあるだけなのだとか。「だから噺の方向は変わらないけど、話す中身はいつも違う」。はーそれはやっぱり天才なんでしょうなあ。
噺に入ると「集まってもらったのは他でもねえ、花見の趣向よ」……ん? この時期にその噺? と思っていたら遊雀師自ら「おい窓の外見てみろよ、もう花散ってるぞ」とセルフツッコミ。が、「ふっふっふ、東京ならそうだがここは函館。ちょうど花見の時期よ。今日はGWの2日目、まだ行こうと思えばいける」という豪快な技を繰り出してきた。「そっかあ、この手を使えばこの噺まだできるんだ」「そうよ、この噺好きなんだよ、よくできてるからな。花見の時期にしかできねえのはもったいない」「てことはここから先は本寸法で演るんだな」とメタ的な茶番の後にキッチリとした噺へ移る。
六十六部がつかまる叔父さんはいつもなら「本所の叔父さん」なのに、ここも北海道の地名に変わってるのも芸が細かい。助太刀に入ろうとしている武士たちのアドバイスに従って、浪人役の熊さんを突こうとする巡礼兄弟たちもおかしい。

明日会社行くのヤダなあ。
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SKIPシティ落語会 一之輔・こしら二人会 [落語]

SKIPシティ落語会 一之輔・こしら二人会
於:川口 SKIPシティ彩の国ビジュアルプラザ

春風亭いっ休『桃太郎』
立川こしら『粗忽の釘』
立川こしら『短命』
立川こしら『鼠穴』
春風亭一之輔『粗忽の釘』
春風亭一之輔『鼠穴』

前回に続き、落語会の前に併設されている科学館のプラネタリウムへ。
チケット販売締切直前に滑り込む。あっぶねえ。こないだも思ったけど映像がリアルでちょっと酔いそう。けど美しい。

この会は結構早めにチケットを取っていた。最近は土日に気軽に行ける一之輔師の会がなくてなあ……。4000円近いとか大物と一緒で一席しかやらないとかが多くて、久しぶりにじっくり聴けるチャンスで楽しみにしていた。
10分前に会場に入ると結構びっしりと詰まっている。会場は最寄りの駅から車で10分という辺鄙な場所なのに。俺はバイクだからあんまり関係ないけどね。

二番太鼓のあとに『さつまさ』が流れ、前座もなく一之輔師? と思ったところマイクを持った一之輔師とこしら師が登場。
曰く、出番順で少しもめたとか。というのも前座、こしら、一之輔、こしら、一之輔の出番順になっていたのだとか。「それはちょっとおかしいでしょう」とこしら師。
……おいこの主催者またやったのか。前に行った扇辰兼好二人会でもそれやってたよな。あのさあ、落語の二人会ってのはABBA形式でやるもんなの。で、トリは普通香盤が上の人がとるの。
もういい加減に覚えろ! 噺家さんって結構そういうの気にしてるよ。
で、じゃんけんで出番を決めようという流れに。まあそれでいいんじゃないですか。
「じゃあじゃんけんで勝った人が好きな出番順を取っていこう。おい前座もこい!」……ん?
「前座も含めたら五席分の枠がある。3人でじゃんけんして、勝った人が好きな枠を取れることにしよう」……んん? 「じゃあいっ休が五連勝したら五席ってこと?」「そう!」……んんん? え、いや、ちょっと待って。ほらいっ休さんも「勘弁してください、開口一番で」って言ってるじゃない。「何言ってるんだオメェー! 前座のくせに最初に上がりたいって言ってんのかぁー!?」こしら師言ってることがメチャクチャです。
なんだかんだとグズグズになったが、それぞれの弟子のいっ休さんとかしめさんが代理でじゃんけんし、勝ったら好きな枠を取れることに。また、師匠は自分の希望を伝えてはいけないということに。
その結果、前座、こしら、こしら、こしら、一之輔となる。えええええ。
いや、こしら師嫌いじゃないよ。でも好きでもない。
正直一之輔師を聴きにわざわざ川口くんだりまで行ってるのであって、これはちょっと……。
「これでいいですか?」と言われ、思わず「やだ!」と声を上げてしまう。
いや、こしら師も一之輔師もサービス精神旺盛だから、ヤラシイ話木戸銭以上のことはやってくれるとはわかってるのよ? それでも「決まったんならそれでいいか」とそのままやってしまうおそれもなきにしもあらず、というか一抹の不安が残る。
そら兼好師や小辰さん一蔵さんレベルの頻度で聴いてるなら「まあたまにはいいか」とも思えるけど、久しぶりで楽しみにしてきたのに、万万が一にでもホントに一之輔師が一席しかやらなかったらそれはホントにシャレにならない。
こしら師を傷つけてしまったというかちょっと怒ってたみたいだけど、こっちだって必死ですよ。こしら師ホントすみません。
つーかなんで俺がこんなことでモヤモヤしなきゃなんないの? 主催者ホント腹立つ。お前らがちゃんとしないからこういうことになるんだろうが! 誰も得してないじゃんかよ。演者が座布団座ってお辞儀して頭上げても出囃子止めないのもイラっとする。あーもー落語全然知らないのもろバレじゃんかよ。
そんでもってこしら師曰く「もう『こしらこしらこしら一之輔』のネタ貼り出し用の紙プリントしてあった」ってそういうとこだけ仕事早いのか。あーホントマジムカつく。アンケートに滅茶苦茶クレーム書いたったけど、ここでも滅茶苦茶クレーム書いたる。

とそんなぐるぐるした気持ちでいっ休さんを聴く。
面白いと思うけど、冷静な判断とかできないよ。ゴメンね。でも君がじゃんけん負け続けるのも悪いのよ。

で、こしら師。
『粗忽の釘』は初めて演ると言っていた。一之輔師の二ツ目時代のキラーコンテンツであるが、最近演ってないようなので自分が演ってみようと思う、と言って始める。
『鼠穴』もそうだけど、まあいわゆるこしら師の出してる「五分落語」のノリの噺。
ダイジェスティブにしながらも肝となる部分は外さないアレンジ力というか編集力はすごいと思う。やっぱり頭の回転が速いんだろう。さらに思わず大笑いしてしまうギャグを2〜3個ぶっ込んでくるし。
『短命』はややドギツイ直截的な表現があって目の前にいた小学生女児の母親に「お母さん耳を塞いでください!」と気遣うシーンもありながら、まあ思ったよりスタンダード。後で後輩である一之輔師にも「思ったより普通で驚いた。……というか落語が上手くなっててびっくりした」と言われていた。いやどゲス下ネタすごく面白かった。
こしら師が形式上三席となったため、『粗忽の釘』と『鼠穴』が中途半端な形で二席扱いになってしまったのが残念。『短命』と同じクオリティのをもう一席聴きたかったよ。おい主催者、コレお前のせいだからな。

さて満を持して一之輔師。
『粗忽の釘』を雑に扱われたのにムッとしたのか、「あれは大師匠の五代目柳朝の得意ネタで、思い入れがある」と噺に入る。
が、引越しのシーンをカットして釘を打つシーンから始めるのはこしら師と同じ。
ああー久しぶりの一之輔師の『粗忽の釘』面白えー。腹よじれるほど面白えー。実に3年半ぶりとかどうなってんだ俺。一時期聴き飽きるほど聴いてたのになあ。
ふぇーふぇー土星踊りとかヤバいね。

「明日っからここに箒掛けに来なきゃならねえ」といった後に袖に向かって「今何時?」いっ休さんの声で「15時20分です」と答えに「あと40分!」とこしら師の声が重なる。

そしてそのまま『鼠穴』に。
俺は信じてた。そうは言っても二席演ってくれるだろうと。でもまさかホントに『鼠穴』なんて大ネタがくるとは……。こっちも約3年半ぶり。あーいいなあーあーいいなあーと思っているうちに終わりまで。この人は相変わらず進化を続けてるんだなあ。

終演後、会場の近くにあった日帰り温泉施設に立ち寄る。
テレビで見ていたサウナのロウリューがあるところで、初めてロウリューを受ける。なるほどなかなか。
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三遊亭萬橘独演会 [落語]

三遊亭萬橘独演会
於:日暮里 にっぽり館

三遊亭まん坊『のめる』
三遊亭兼太郎『ん廻し』
三遊亭萬橘『片棒』
三遊亭萬橘『抜け雀』

先日オープンしたにっぽり館での独演会。
本当は今日こそ仕事行ければよかったんだけど、中学生に上がった姪っ子が吹奏楽部に入るというので、私の使っていないテナーサックスを譲ることにしたら取りにくるという。
兄貴も一緒にくるということなので朝から彼女と家の掃除。うちはとにかくどこにいても猫の毛がすごいのでモップやら掃除機やら。ソファについてる猫の毛を集めたらテニスボール大の毛玉ができた。獣毛アレルギーの人がきたら死ぬなこれは。まあ実家でも猫は飼ってるし姪っ子も猫好きだから大丈夫だろうけど。

掃除も半端なところで、あまり掃除の役に立たない私はお役免除ということで落語に。役立たずですみません。

まん坊さん、前座らしくあっさりめに。
ちょっと固さが見えるかな。

兼太郎さんは今日勉強できていたそうなのだが、「着物持ってるなら出ていきなよ」と飛び入り参加だそうだ。
んーーー……正直また『ん廻し』かよ! って感じ。だって直近で10回聴く機会があったうち、6回は『ん廻し』か『寄合酒』なんだぜ。これは「またかよ」って言っていい頻度だと思う。「たまたま」っていうレベルじゃないような。もうさすがに書くことないよ。
ううん……兼太郎さんの会じゃないことも多いから、どうしても冒険しないで鉄板ネタを置きにいってしまうのかもしれないけど、それはそれで鉄板ネタはこのふたつしかないんかい、ってなっちゃうし。『宗論』とか『新聞記事』とか面白いネタ持ってんのに。

萬橘師の一席め、AAAのリーダーの事件に触れ、「すごいねー『俺のこと知らねえのか』って殴っちゃうわけでしょ、我々の意識と違いますね」。たしかになあ。落語界ではかなりの大物でもフツーに電車で移動しているらしいし。まあ仕事着が着物だから洋服になったら気づきにくいけれども。萬橘師は浴衣で街を歩いていたら「お客さん、落語いかがですか」と大学の落研に声をかけられたらしい。それは「俺のこと知らねえのか」って怒っていいと思う。
萬橘師の『片棒』はインターナショナル。お坊さんはスリランカから呼ぶし、料理は中華風のイタリアンフレンチのアメリカンサイズ、お骨をガンジス川に流しに行くという。銀次郎もモチーフは「祭」ということでリオのカーニバルを助っ人に呼ぶ、という。まあそのカオスっぷりがめちゃくちゃでいかにも萬橘師らしい。「親の顔が見てみたい。……毎朝見てるな……」と老け込む大旦那がおかしい。

二席め、萬橘師が落語家になるときに親に止められなかったのか、とよく聞かれるが、そんなことはなかったという。それよりも大学を留年したときのほうがショックだったそうで、大学を中退しようとしたときに、友達に騎馬戦の騎馬を作ってもらい、それに乗って学生部にいったというエピソードが面白い。
「落語家になることは反対されなかったけれど、昔は子どもに就いてもらいたくない職業があったそうで、それが駕篭かき」とフリを入れる。
雀が絵から抜け出ることを周りに説明しているときのテンパった表情と、周りのかわいそうなものを見る表情がたまらなくおかしい。
また、「お前のまみえの下でピカピカ光ってるものはなんだ」というお決まりの文句を受けて、3回目は先回りして「銀紙です。銀紙が入ってます」と開き直る主も楽しい。

夕方、兄貴と姪っ子がやってくる。
シュガーは人懐っこいのですぐに「なでてなでてー」と擦り寄っていくが、ミルクはビビリなので遠巻きに見ているだけ……と思いきや、手土産のちゅ~るにあっさり陥落。
ちょろいちょろすぎる。
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桃月庵白酒 三遊亭兼好 二人会 [落語]

桃月庵白酒 三遊亭兼好 二人会
於:三鷹市芸術文化センター 星のホール

桃月庵ひしもち『垂乳根』
三遊亭兼好『だくだく』
桃月庵白酒『化け物使い』
桃月庵白酒『尿瓶』
三遊亭兼好『花筏』

ヤバい仕事終わらない。これはマジでうちの会社ヤバくなるヤツじゃねえのか……。はー40代も半ばを過ぎてまた履歴書とか書きたくねーぞ。
など思いつつ落語に。ホントは会社出た方がいいんだけど、せっかく救済サイトでチケット手に入れた即完売の会なんだから行かなきゃ。

ひしもちさん、ハキハキとした口跡で聴きやすい。
いかにも本格派の弟子です、って感じがする。

兼好師の一席め、昨年芸歴20周年だったことに触れ、「でも20年なんて大したことないんですよ、ピエール瀧さんのコカイン歴と同じくらい。ある意味同期」とまた黒いことをいう。
「でも20年やってたのにその間捕まらなくて、今回が初犯扱い。で、もし今回の騒動をみて『俺もやってみよう』と思って初めてやった人が捕まっても初犯。これってなんか納得いかない。立川流みたい」とわからない主張を始める。曰く、「我々が二ツ目に昇進したばかりの頃は今のように落語会も多くなく、たまに二ツ目のコンテストがあって張り切って行くとやけに落ち着いて上手い人がいる。家元が健在の頃は二ツ目真打に昇進できない人がゴロゴロいて、二ツ目なのに芸歴20年、なんて人もいてその人が賞を持っていく……どうも賛同を得られないみたいですが……」ってシチュエーションが特殊過ぎて。
「でも悪いことをするなら今です、元号が変わって恩赦があるから。小さな窃盗なら立件されないみたいですよ、ただ暴力事件は対象じゃないそうです」とこれまた黒いことをいい、「昔も許される罪と許されない罪があった、空き巣は出来心だろうと許されることも多かった」と噺に入る。
兼好師の『だくだく』も久しぶり。
「○○を○○しているつもり」がテンポよく重なり、どんどんスピードアップしていくのが心地いい。ちょっとでも噛んだりもたついたりしたら、このグルーヴ感は出ないだろうなあ。

白酒師の一席め、臍ヘルニアで手術したらしい。
お腹を切るというのに一泊二日って、そんなんでいいの?
手術は全身麻酔で行ったそうで、事前の説明では最悪の事態のことしか言わないので、散々脅されたという。
いろいろと病院には思うところがあったようで、愚痴というか恨み言というか結構際限なく出てくる。
ただ、クレーマーのような入院患者もいるようで、そんな人たちの相手で手を煩わされている看護師たちにも同情を示し、人使いの荒いご隠居の噺へと入っていく。
『化け物使い』は好きな噺なんだけど、あまり当たることがない。白酒師では6年ぶり。
雑巾掛けのスピードを目線だけで表現しており、杢助、一つ目小僧、大入道でそれぞれ速さが違うのが芸が細かい。
のっぺら坊が出てきたときのご隠居のテンションの上がりっぷりがおかしい。セクハラまがいのことを言って消えられてしまい、翌日虚空に向かって「出てきておくれ、下心なんてなかったんだ、ちょっとしか」というのがおかしい。

仲入りを挟んだ二席めは「前半おしゃべりが過ぎた」とあっさりめに。
「符丁を使うのは目の前にいる人にわかられたくないことが多いからで、胡散臭い商売が多い」と話す。
道具屋もそのひとつで「ションベン」という符丁について説明して噺に入る。『道具屋』でおなじみの符丁だが、そういやなんでションベンというのかは知らなかった。「買う」といって買わないことがションベンなのだが、一度買っておいて返品するのも含まれるという。人を「引っ掛ける」からションベンなのだそうだ。ほおー。
終演後の演目としては『花瓶』とあったけど、やっぱり『尿瓶』だよなあ。

兼好師の二席め、白酒師が手術したのを初めて知ったらしく、「ホントにやったんですかね、もしそうならもっとゲッソリするもんじゃないですか?」と相変わらずの兼好節。
オリンピックのチケットが発売される話から柔道の「ゴジラジャパン」の愛称の話に。「女性もいるのにゴジラはどうなんですかねえ……柔道はどうも国際化を進めてからなんだか媚びてるようで嫌ですね。それに比べて相撲は媚びなくていいですね」と相撲の話に。
久しぶりの『花筏』、やっぱり勧進元が花筏を土俵に上げてくれと頼みにきたときに、宿の板前や酒屋の小僧、芸者を再現VTRのように演じるところが面白い。

ああこんなに面白いのに、ずっと頭の片隅に「仕事ヤベエよヤベエよ」とグルグル回ってるのが嫌だ。金さえありゃあなあ……。

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みずほ笑ホール寄席 扇辰兼好二人会 [落語]

みずほ笑ホール寄席 扇辰兼好二人会
於:箱根ケ崎 瑞穂ビューパーク スカイホール小ホール

入船亭扇辰『悋気の独楽』
三遊亭兼好『宿屋の富』
三遊亭兼好『六尺棒』
入船亭扇辰『井戸の茶碗』

昼に彼女を寮まで送り、そのまま車で瑞穂町まで。早めに着いたので近くの温泉施設でひとっ風呂浴び、着替えてさっぱりして落語に向かう。やはり風呂はいい。この会場に来ると必ずこの風呂に入ってるな。
ちょっとのんびりしすぎていてギリギリ5分前に到着。いつも結構人が入っているのだが、今日は多少余裕があって前の方に座ることができた。

前座もなくいきなり扇辰師。
「そちらで見ているほど噺家はラクじゃない」といい、「噺を覚えることが大変でしょうと言われるけどそれはそこまででもない。一番大変なのはその会場でどんな噺をすればそこのお客様に喜んでもらえるかをチョイスすること」だという。会場をじっと見つめ、「わかりました」と噺に入る。
扇辰師の『悋気の独楽』は初めて。小辰さんでは結構聴いてるけど。
やはりお妾さんの色気のある声が艶かしくていい。
定吉に食べさせるものがまんじゅうではなく甘納豆というのが珍しい。この甘納豆を食べる仕草もいかにも子どもっぽく、堪能している感じがいい。

高座返しもなく、扇辰師が自らめくりをめくる。
登場した兼好師は座布団をめくらずにそのまま座る。やっぱり目上の人の後に上がるときは座布団返さないのかな。
日産のゴーン氏に触れ、せっかく保釈したのにあんなにすぐに再逮捕されるのは意地悪されているみたいと話す。が、「保釈金として10億払える人は少なくとも善人ではない」という。「います? この中で10億払える人。……払えたらこんなところにいない」と黒いことをいう。
普通の人は大金を一度に手に入れようとすると宝くじを買おうとするが、まず当たらない、という確率の話をする。とはいえ必ず当たっている人はいるはずで、そういう人は全員震えているのだという。なので、宝くじを買うよりは、銀行に震えながらきている人を見つけて奪ったほうが早い、という結論に。宝くじの話から『宿屋の富』に。
『宿屋の富』はやっぱり湯島天神での二番富の男の話の部分が一番面白い。

仲入りを挟んで兼好師の二席め。
クイツキなので軽めの噺。
相変わらず大旦那にスネを六尺棒でかっぱらわれそうになる場面で膝だけで跳ぶ跳躍力がすごい。あれどうやってるんだろ。
噺が終わった後、兼好師が座布団を返す。そんな姿も珍しい。

扇辰師の二席めの『井戸の茶碗』も扇辰師では初。
千代田朴斎の凛々しさは扇辰師の高座姿と重なり、映像化したらあんな感じなのかなと思わせる。
それと茶碗を細川のお殿様に見せるときも、殿様自ら茶碗の価値に気づくのも私好み。
人によってはこのお殿様がぼんやりしていたり、そもそもあまり興味がなかったりして周りが気づくというパターンもあるが、やっぱり『竹の水仙』などでも出てくるのだから細川のお殿様は目が利いてもらいたい。
やっぱりこの噺は上手な人が演るととてもいいなあ。

追い出しの「ありがとーございますありがとーございます」という声も兼好師か?
てことは仲入りの「おなーかーいりー」という声は扇辰師だったのか。

さすがに日曜の夜は道が空いているのでスムーズに帰れる。明日っからまた仕事かあ……。
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六本木伊〜菜亭 第47回 春風亭一蔵 [落語]

六本木伊〜菜亭 第47回 春風亭一蔵
於:六本木 伊菜

春風亭一蔵『鷺とり』『短命』『竹の水仙』

中野から戻るとハンパな時間。
桜はまだ少し残っているけれど、写真に撮るとなるとなあと思っていたところで、荒川河川敷にチューリップが綺麗に植えられていることを思い出す。着いてみるとそれは見事に見頃に咲いており、興奮して撮り始めたところ痛恨の一眼バッテリー切れ。持っててよかったGR II。
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RICOH GR II

一蔵さんは伊~菜亭は初出演。「前から出たかった」と持ち上げつつも、妹弟子の一花さんよりも後だったのがお気に召さない様子。とはいえとてもいい会と会場で、と前日にあった落語会の様子をマクラで話す。その会は市議だか町議だかが世話人らしく、いつもは会場に来るのだが、いまは統一選の真っ最中のため来られないという。それはしょうがないと高座に上がってマクラが終わったあたりでなにやら音が近づいてくるという。何かと思えばその議員の選挙カーで、「一蔵さんの落語会においでいただいているみなさん!」と会場の外から呼びかけられたという。しかもその状態で謎掛けまでしていったそうだ。
「そんなことあります? 会場の外からなにか言われたのは初めて」といいつつ、「そんなぼんやりとした人が出てくるのが落語のいいところ」と噺に入っていく。
『鷺とり』は久しぶりに聴いたなあ。というかここ数年一蔵さんでしか聴いていない。あまり演る人いないのかな。
スズメや鷺を捕まえる説明をするときに鳥を擬人化して説明するが、なぜかどちらも前歯が出ているという顔芸がおかしい。
捕まえた鷺に飛ばされるところまでは同じなのだが、飛ばされた先が浅草寺の五重塔ではなく兵庫の芦屋で、飛ばされた男が相撲取りになって貴景勝となった、というオチ。土浦に飛んで稀勢の里、というパターンも聴いたことがあるが……うーん、さすがにこのオチ強引すぎない? 相撲取りになる理由もわからないし……。

二席め、ご隠居のところにやってきた八っつぁんがバカにご立腹。なんだけどその腹を立てる理由がわからない。前にも一蔵さんに直接聞いたことがあるんだけど、教わったままやっているとのこと。怒りがパワーアップされていたけどその理由がわからないので、どうもこの噺の冒頭は集中できない。
八っつぁんのおかみさんもパワーアップされていて、ドスの利いた低音でしゃべるのがおかしい。

三席め、落ち着いた物腰の甚五郎がいい感じ。
また、お人好しながらもどんどん甚五郎に対してガサツな態度になっていく宿の主人もいい。
綿貫権十郎の「殿も人が悪い、そのような名器であれば先に言ってくれればいいものを」というつぶやきはごもっとも。上の人はちゃんと意図まで説明してくれないと困るよねえ。リーマンの愚痴。

帰り、バイクを有料駐輪場に置いていたのだが、1分の差で1時間分加算されてしまった。いや100円だからいいんだけど、ちょっと急ぎめできてたからなんか悔しい。我ながらセコい。
タグ:春風亭一蔵
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なかのらくご長屋 兼好毎月連続独演会 31年4月 [落語]

なかのらくご長屋 兼好毎月連続独演会 31年4月
於:中野 なかの芸能小劇場

三遊亭しゅりけん『垂乳根』
三遊亭じゃんけん『代脈』
三遊亭兼好『のめる』
三遊亭兼好『岸柳島』

なかの芸能小劇場が改装していたため、久しぶりの兼好師の朝の会。
これまではギリギリにきてもどこかしらに空席があったのだが、今日はぎっしり詰まっている。端っこにようやく空席を見つけてなんとか座る。

しゅりけんさん、これまで長髪だったのにボウズになってる……! 前座らしいといえばらしいが、一見わからなかった。新しいお弟子さんかと思った。そういやこないだの「けんこう一番」での高座返しで見慣れない前座がいると思ったけど、あれもしゅりけんさんだったのか。
最初のうちはモゴついていた感じだったけど、名前の口上のあたりではサクッと。

じゃんけんさん、羊羹に執念を燃やす銀南がおかしい。煙草は隠れてしか吸わないという不良少年。

兼好師、仲間うちで元号当て勝負をしたそうで、ひとつの元号案を出すにつきいくばくかのナニを出していたという。兼好師は2案出そうと思い、まずは自分の名前をひっくり返した「好兼」。もうひとつは圓楽党なので「楽」の字を使おうと思ったそうだが、もう一文字が何を使っても一門の名前っぽくなってしまうという。「○楽(実在する名前)だと売れなそうだな……と思ってしまう」とさらっと毒を吐く。考えた末、萬橘しの「萬(万)」がよかろうと「万楽」で出したという。結局は当たった人は誰もなく、せめて漢字一文字でも当てた人が勝ちにしようということになり、「民和」で出していた人が総取りだったとか。民和にした理由は「和民で呑んでて考えたから」だそうな。
そんな勝負事の話から『のめる』に入る。
しかしまあこういう底抜けに明るい噺というのは兼好師の真骨頂ではなかろうか。
八っつぁんの天然ぶりや企みを見抜かれたときの表情がとてもおかしい。

二席め、先日電車の中で背の高いふたりが兼好師の頭の上ごしに喧嘩を始め、巻き添えを喰らいそうで怖かった、というところから『岸柳島』に。
癇癪の強そうな若侍に話しかける屑屋の度胸がすごい。というか今まではちょっとおっちょこちょいな感じだったのが、今日のはなんか計算高そうな感じでややイラッとさせる。これなら「斬る」と言われても仕方ないと思わせて、その匙加減が上手いと思う。

終演後は高円寺へ行き、いつものようにタイ料理屋へ行こうと思ったが途中にあった老舗の洋食屋になんとなく入る。まあ美味しかったけどなんとなくタイカレーの方がよかったかなあと心が残る。あんまり予定外のことをするもんじゃないね。
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オープン!にっぽり館 昼席 [落語]

オープン!にっぽり館
於:日暮里 にっぽり館

三遊亭まん坊『黄金の大黒』
林家たけ平『宿題』
おしゃべり 三遊亭萬橘 林家たけ平
三遊亭萬橘『火焔太鼓』

日暮里の夕やけだんだんに新しく落語の小屋のにっぽり館がオープン。萬橘師とたけ平師の組み合わせで谷中ってことは……去年ひと休みとなった谷中はなし処の後継ってことでいいのかな。んーと志の春さん……?
とにかくその杮落としとなる会に行ってみた。
本当に夕やけだんだんの階段のすぐ横にできており、観光客もなんだなんだと覗き込む。
中に入ってみると谷中はなし処のときよりもやや広め。とはいえギッチリなのは以前と同じ。ただ靴を脱がなくてもよくなった。今日もギッチリでほぼ満席。とはいえ「ふらっと入ってきた人います?」と萬橘師が聞いてみてもゼロ。全員この会を目当てに来ていたらしい。

さてこの会場で一番最初に高座に上がったのはまん坊さん。
あまりの客席と高座の近さに驚いたよう。
演目は縁起良く『黄金の大黒』。途中で時間がきてしまったのか、長屋の連中が口上を言っている場面で切り上げる。ここで切るのは珍しい。

たけ平師も「こんなに近いの?」と驚いた様子。
谷中について「食べ歩きとかしててね……。あ、今日食べ歩きした人います? ……あの連中……」と言ったところで一番手前の席で手を上げていた人がいたらしく慌てて引っ込める。「近すぎてわかんない」そうだ。
話題を「春休みが終わって子どもが学校に行くようになり、ホッとした顔をしている」と強引に軌道修正する。そこから学校寄席の話題になり、特に小学生の場合に送ってこられる感想文に触れる。「今日学校の先生います……? 今度は大丈夫だな」と先程の失敗を踏まえて慎重になった上で「あれいらないんだよ」とのこと。特に低学年の子どもたちは日本語がメチャクチャなので、悪気はないのだろうがナチュラルに傷つけられるのだそうだ。
そんなところから小学生の宿題の面倒を見る父親の噺に。
杮落としだから縁起のいい噺をすると思ったのだが……あーこれ「鶴亀」算の問題の噺だからか!?

仲入りの前に「おしゃべり」と称してふたりのトーク。
この小屋を作ったいきさつなどを。
今後ははなし処のように固定の日時でやるのではなく不定期かつ開演時間もいろいろ変えるのだそうだ。それはわざとだそうで、通りすがりの人にもふらっと入ってきてほしいからだとか。
今後はゲストも呼ぶらしく、この「おしゃべり」のときにホワイトボードに「高い低い」とか「暑い寒い」のような対照の表を使ってトークをしていくという。今日はふたりでそのデモンストレーションを行う。
高座を降りるときに萬橘師が派手に梁に頭をぶつける。さっきトークの中で「この梁がなかったら反対側を高座にしてもっと広さに余裕ができた」とぼやいた報いなのか。

トリの萬橘師、おかみさんがキツいのは皆同じだが、特にキツい気がする。「侍に太鼓が売れた」と喜ぶ甚兵衛さんに対して「売れやしないよ」と冷水をぶっかけるときにも折檻の内容を事細かに話し、甚兵衛さんが「うわああぁー!」と叫び出すまで追い詰めるのがおかしい。そこまでキツくあたりながら小判を見たとたんにコロッと変わる落差がすごい。
侍の屋敷への往復で、そんなおかみさんに対して文句を並べてひとりでヒートアップしながら門番のところで冷静になるのも落差の面白さか。

終演後、まだ発売前の萬橘師のCDが受付に置かれていたので早速購入。萬橘師がお見送りに出ていたのでサインもしてもらい、ついでに写真も撮らせてもらう。

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Nikon Df
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三遊亭兼好独演会けんこう一番!春スペシャル [落語]

三遊亭兼好独演会けんこう一番!春スペシャル
於:大手町 よみうり大手町ホール

三遊亭兼好『千早振る』
三遊亭じゃんけん『道具屋』
三遊亭兼好『百川』
日比健治郎 伊東福雄 リコーダー・ギター
三遊亭兼好『井戸の茶碗』

久しぶりの兼好師。いやはや『四段目』『淀五郎』じゃないけど「待ちかねたァ……」。
先月は土日の会が少なかった上に、平日は落語に行けるような状況ではなく。
それに昨日クライアントと打ち合わせに行き、ここ数か月モヤモヤしていたことがほんの少し、ほんのすこーしだけ解消というか整理された感じになったのでちょっとだけ気が楽になる。とはいえあと数か月キツい状況なのは変わらないんだけど。はぁー。

そんな中で久々の兼好師の落語。沁みるわー。

一席め、新元号の「令和」について。決まってから発表前に陛下に報告するのに、宮内庁の職員が車に乗って御所まで行き、そこで電話をかけたことに「……車に乗る意味あります? 宮内庁の電話って電波の範囲狭いんですかね?」とチクリ。また安倍首相が陛下に報告に行くのが本来なのだろうが、滑舌が悪すぎて伝わらないことを恐れて首相ではなかったんだろうとの推理する。もし首相が報告に行っていたら、というモノマネがおかしい。
おかみさんが名付けたという兼好師の二番めのお嬢さんの名前に触れ、なんでその名前にしたのかを聞いたところ、「万葉集からつけた」と言われたそうな。「ウソつけぇ」というところから落語に出てくる適当なウソをつく先生の噺に入る。知ったかぶりの話から入らないってのはちょっと珍しい。
八っつぁんがずっと「あまっちょの娘」と通して直す気がないのがおかしい。
龍田川が断ちものをしたと聞いて「塩断ちしたんですか?」と聞いた八っつぁんに、「相撲取りが塩断ちしてどうするんだ、土俵際で何撒くの? 片栗粉? 龍田川の話してるんだよ、竜田揚げじゃないんだよ」というのが私には面白かったのだが会場ではあまり引っかからずに流れた。あれー?
落ちぶれた千早が龍田川の豆腐屋に現れたときの様子が浪曲仕立てになっており、それもまた上手くて兼好師の芸達者ぶりが際立つ。

二席め、人手不足と言われている中で留学生が年間700人も行方不明になっていることに触れ、「どうせそういう人たちもどこかで働かせられているんでしょうねえ」と話す。「700人って東京の噺家と同じくらいの人数ですよ、それが行方不明って。噺家では『この人どうやって生計立ててるんだろう』って不明の人はいますけど……」とさらりと毒を吐く。
「昔は人手が足りなくなると桂庵に頼んでいた」として百兵衛さんが口入れ屋で百川を紹介されているところから。
何度も言うようだけれどもやっぱり兼好師の田舎者はチャーミングだね。

リコーダーの日比健治郎さんとギターの伊東福雄さんのステージ。
どことなく哀愁のある音色がギターとよく調和する。
リコーダーは音の出し方は簡単だけど、その分さまざまな表現を出すのが難しそう。

兼好師の三席め、五十両の方に何かを高木作左衛門に渡す、という話になったときに渡すものを清兵衛さんに選ばせるというのは上手い。「屑屋なのに目が効かない」という設定にもなるし、茶碗が三百両に化けたときに「あの茶碗を選んだのは誰だ」といって割前を持ってかせる理由になっている。
それにしてもやっぱり井戸茶はよくできた噺だなあと改めて思う。
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