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和室カフェ 其の二十七 [落語]

和室カフェ 其の二十七
於:神保町 らくごカフェ

トーク
立川笑二『長短』
入船亭小辰『百川』
入船亭小辰『麻のれん』
立川笑二『妾馬』

水天宮から一度家に帰り、少し休憩してからまた出かける。
まずは恒例のふたりのオープニングトーク。
やはり小辰さんの真打昇進の話に話題が集中する。
真打披露興行のチケットの売り方が芸協とは異なるそうで、芸協は3つの寄席で共通の上、どの日に行ってもいいという。このため寄席のキャパ以上にチケットを売ることが可能なうえ、手売りしたチケットの代金は一度芸人の懐に入るという。その後、使われたチケットの半券の数に応じて半額を各寄席に払うのだそうだ。
「だから芸協の人たちは『来なくてもいいからチケット買って!』っていう。特に地方でも『祝儀代わりに買って』っていえるんだよなあ」「てことは宮治アニさんなんか家建てられるんじゃ……」「夢があるよなあ」「ありますねえ」。
一方落語協会は末廣亭以外は日付指定なので、各寄席のキャパ以上はチケットが売れないという。でもその分芸協はチケット持ってても入れないってことがあり得るけど、落協はチケット持ってりゃとりあえず入ることはできるから、私のように行ける日が限られてる人に取っちゃそっちのほうがありがたい。昨年の宮治師の披露目は行ける日が限られてたから、朝早く整理券取りに行ったもんなあ。逆に行けるかどうか当日にならないとわからないという場合は買いづらいよねえ。
「扇橋」になる実感はあるか、という問いには「まだ全然ない。ポスターに『扇橋』って書かれてるのを見ても完全に他人事。おそらく大初日に高座に上がったときに『扇橋です』って名乗ると思うんで、そのときに実感するんじゃないかなあ」とのこと。その日は午後休取って行くわ。
出囃子はどうするのかと聞かれると「大師匠の『俄獅子』は扇里師匠が使ってるから。それにうちの師匠や扇遊師匠も、二席やるときは一席は自分の出囃子で、もう一席は『俄獅子』で、って結構やってるんだよねえ。披露目の間だけ『俄獅子』を使わせてもらうかもしれないけど、『いっさいいっさいろん』のままじゃないかな。でも上方の二葉さんから『アニさんの出囃子使わせてください』っていわれて承諾したら、彼女あんなに売れちゃって。正月にテレビから『いっさいいっさいろん』が流れてきたのが聞こえてきて『なんで俺の出囃子が!』って焦った。……もうこうなると俺のほうが二葉さんの出囃子使わせてもらってるみたい」。いろいろ大変ですなあ。
また真打に昇進したらこの会を続けるのかということも話題に。そもそも「小辰(炬燵)」と「笑二(障子)」がらくごカフェでやる会だから「和室カフェ」なわけで、扇橋になったらそうは銘打てないという問題と、二ツ目同士でやっていた会が片方が昇進すると消滅する問題があるとか。特に後者は立場が違ってしまうことでトリが固定してしまうなどいろいろ問題が出てくるという。この会も最初のうちは笑二さんが前座だったので、毎回小辰さんが仲入りとトリを取っていたらしい。小辰さん個人としては続けたいらしいが。
「披露目のときに楽屋まで遊びに来てくれたら続けよう」「鈴本に行って大丈夫ですかね?」「……昇也アニさんでさえつまみ出されたらしいぞ」。鈴本ってなんでそんなに頑ななんだろ。
トークだけで40分。座布団を敷かずに話していたので笑二さんの足が限界だったようだ。

笑二さんの一席め、以前にも一度聴いたことのある『長短』。
この長さんは話し方や動作がのんびりしているのではなく、まんじゅうを手にしながらとにかくグダグダと話し続けてまんじゅうを食わなかったり、タバコに火をつけてから話し出してタバコを吸わなかったりととにかく他人をイライラさせる。小辰さんも「サイコパスだ」と評しており、ちょっと異常者だよなあ。
しかも人がイラついているのを楽しんでいる素振りさえ見せる。面白くないわけじゃないんだけど、これをずっと続けられるのはちょっとキツい。

小辰さんの一席め、祭の季節であることから『百川』に。
百兵衛を四神剣の掛合人だと兄貴分が言い張り、周りがそれに流されている中、最後まで「そうかなあ」とひとりだけ信じない弟分がいる。兄貴分に「(きんとんを飲み込めと)お前らからも頼め!」と促されてもひとりだけ気のない様子で「お願いしまーす」と流しているのがおかしい。このひとりがアクセントになっている。

仲入り時にホントは21日まで売っちゃダメらしいけど手売りは目をつぶられているというなんかのチケットを販売する。俺はこないだ買ったし。
「えーあと10枚売れたら笑二さんが後半で『乳房榎』を演りまーす」。

小辰さんの二席め、あれから10枚は売れなかったようで。
「思い出したことがひとつあって、『乳房榎』には悪い男が人妻に子どもを人質にとって関係を迫る場面がある。『枕を交わす』という表現が出てくるんですが、喜多八師匠がこの場面で『枕を交わすといっても″まくらなげしよー″ってんじゃないですよ』って言っていて……。満員の博品館で。袖で聞いててひっくり返った」とか。
『麻のれん』は扇辰師では何度か聴いているが、小辰さんでは初めて聴く。
もちろん扇辰師とも似ているのだが、いくぶん師匠よりもあっさりと軽くやっている感じ。クイツキにはちょうどいい。

笑二さんの二席め、『乳房榎』のあらすじを語り、「悪役の磯貝浪江は好きになった人が人妻だっただけ。ちょっと行動力がありすぎただけで、『紺屋高尾』の久蔵と心情は変わらない。浪江はなんてかわいそうなんだ……と力説したら、あんなに優しい柳枝アニさんに『気持ち悪いよ』っていわれた」。しょうがないんじゃないかなあ。やっぱり視点がちょっと違うんだろうな。
八五郎お鶴兄妹は母親ももう亡く、長屋の子どもとして育てられたという設定。大家を親と慕っており、お鶴が屋敷に奉公に上がる前日から描いている。
実の親がいないからなのか、八五郎は荒唐無稽な乱暴者というよりももう少し抑えられ、そこそこ敬語も使えたりする。殿様に都々逸を披露して馴れ馴れしくしたりもしない。
通常は「これから八五郎が出世をしたという『妾馬(八五郎出世)』というお話でした」と終わるが、ちゃんとサゲとなるセリフも用意されていた。
笑二さんということで「このままホントに終わるのか?」と身構えたものの、そのまま「いい話」として終わった。……うん。いい話なんだけど。なんかこれはこれで優等生すぎるというかあざとくない? 『長短』との振り幅が広すぎてちょっと戸惑うわ。
笑二さんはホント油断できないというか油断させてくれない。曲者というか、見えないところからフックが飛んでくるというか。もちろん褒め言葉です。
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