SSブログ

和室カフェ 其の二十六 [落語]

和室カフェ 其の二十六
於:神保町 らくごカフェ

トーク
入船亭小辰『もぐら泥』
立川笑二『水屋の富』
立川笑二『饅頭こわい』
入船亭小辰『不孝者』

微妙に時間があくので野毛の地下道の立ち飲み屋でハイボール1杯だけ飲んで神保町へ。
乗換案内に出てきたとおり、東京駅から大手町の半蔵門線へ乗り継ぐ。普段はほとんど使わない乗り換えルートなので、東京駅から行けども行けども半蔵門線へたどり着けなくて焦る。案内表示に従って右に曲がったり左に曲がったり上がったり降りたりしてもまだホームは見えない。ようやく改札に入ったと思っても丸ノ内線ホーム経由とか。「まだ?」とちょっとイラッとする。今日は寒いかと思って完全防備で行ったのにさほどでもなく、むしろ歩き回って暑いくらい。まあ一杯入ってるってのもあるかもしれないが。いずれにしても半蔵門線てJRからのアクセスがあまりよくないよね。メトロと私鉄とは相性いいのに。

まずは小辰さんと笑二さん揃ってのオープニングトーク。
扇橋襲名が発表になってから私は初の小辰さん。オープニングトークではもちろんその話がメインとなる。
いつ襲名の話があったのか、とか、どういう手順を踏んだのか、とかの入船亭一門の裏話や「扇橋」という名前についての歴史やうんちくなどとりとめなく話していくが、それがいちいち興味深い。
おそらく今後も小辰さんの口から語られていくだろうからあまりここでは克明には書かないけれども、実はコロナ前に扇橋の名前をどうするか、という話は一門であったそうなのだが、コロナで話が止まっていたのだとか。コロナが落ち着き始めたタイミングで小辰さんの真打が決まり、「じゃあ」ということになったらしい。「だから棚ぼた襲名なんだ」とは謙遜して言っていたが、まさかそれだけではないでしょう。
そのほか「こないだ春蝶師匠が言っていたけど、落語家は四代目からは銀行から金が借りられるらしいですよ」と笑二さん情報。「芸人は普通ダメだけど、『四代目まで続く名前を継げるような人なら』ってことらしいですよ。ホントかどうか知らないけど」だそう。小辰さんも「へー。俺十代目だから借りられるかも。聞いてみよ」とノリノリ。
十代目ということについても「単純に言いにくいよね。それに『○代目』と『目』が付くのは亡くなってから。存命中は『○代なになに』っていう。『五代春風亭柳朝』とか」。へーそうなの? それは初めて知った。だってみんな「六代目圓楽」とか普通にいってるし。あ、「六代目の圓楽師匠」とかならいいのかな?
「それでいうと『十代入船亭扇橋』ってなんかさ、『お若いんですね』みたいになるじゃない。だからどうしようかと思って」「あー、『十代』って別の意味があるから……」「そうなのよ、それにどうしたって前に『ガラスの』とかつけたくなるじゃない」。とここで笑いが起きる。「よかった、昨日若いのに言ってみたらポカンとされた」そうで。だってもう35年も前の話だよそれ。俺が小学生の時だから小辰さんだってまだ学校入ってないんじゃないの?
「しかしそうするとこの会も次回あたりで最終回ですかねえ。『小辰(炬燵)と笑二(障子)で和室カフェ』だったのに意味が通じなくなっちゃう」と笑二さん。「うーん……。扇橋師(宣教師)と障子で和洋混淆……」苦しい。「いっそ笑二さんが談志を継ぐってどう? 『扇橋談志二人会』っていって出てくるの俺たちなの。怒られるぞー」と楽しそう。

さて小辰さんの一席め、正月は噺家は忙しいのだが二ツ目は当てはまらないんだそうで。まあ寄席の初席は真打たちが顔見世でひとり5~10分程度で回しているので二ツ目の出る場所はないだろう。「師匠たちは楽屋で酒飲んで高座上がったりしてますけど、二ツ目は単に家で酒飲んでるだけ」だとか。
それでもあるお客さんの自宅で落語をやり、リビングに家族と友人、それとリモートで数人に配信という仕事があったという。そういう仕事は以前にもやったことがあるそうで、寄席やホールとはまた違ったトラブルが起こるのだとか。「以前は高座中に宅配便がきたことがある。私本当にハンコ押しましたから」だそうだ。今回はインターホンも電話も切ったのだが、Googleアシスタントを切り忘れていて……ということがあったそうだ。これ面白いから多分いろんなところでマクラになるはずなので詳しくはそちらで。
噺は正月で縁起を担いで(?)泥棒のネタを。
オープニングトークで時間を使いすぎたのかちょっとあっさりめのように思えた。
泥棒が縛られたときに「お袋が病で薬も買ってやれず、ほんの貧の盗みの出来心」といったあとに「俺には六十五人の子分がいる」と吹き、「なんでそんな奴がお袋ひとり養えねえんだ」と主に論破され「……ごもっとも……」と納得してしまうのがおかしい。

笑二さんの一席めはマクラも振らずすぐに噺に入る。
『水屋の富』は龍玉師で一度聴いただけで生高座はふたりめ。
富に当たったあとに悪夢を繰り返し見るのだが、そこも単なるリピートにならないように少しずつ変えているように工夫している。
また、いっぺんループから抜け出したかのように見せかけておいてやっぱりループだったりと聴いている方もどこが現実なのかがわからなくなってくる。
最後に金を盗まれた悔しさや苦悩からの安堵の表情へ変わるところなどは上手い。

二席め、笑二さんが地元の沖縄に帰ったときのエピソードをマクラに。
実家近くのコンビニへ行こうとしたところ、「マッキー!」と呼ぶ声が聞こえたという。これは笑二さんが中学のときに所属していたソフトボール部の2歳上の先輩たちしか使わない笑二さんのあだ名らしく(槇原敬之に似てるから、という理由らしい)、その世代の先輩たちは9人中5人が書類送検された経験があるというヤバい人たちばかりだという。
ケンサク先輩だ、やだなーと思った笑二さんは黙殺することに決めたそうだが、ずっと後をついてきて「マッキーマッキー」と呼ばれていたそうだ。結局コンビニまでついてこられ、入り口で仁王立ちで待ち構えていたケンサク先輩は「おいマッキー!」と笑二さんのマスクをおろしたという。「普通そんなことします? いくら後輩だからって。ケンサク先輩やべーなって思ったら、……」とケンサク先輩が発した意外な一言をオチに。
小辰さん曰く、「笑二さんの狂気は環境のせいなんじゃないかと……」とのことだが納得。
噺は「今日が誕生日だ」とみんなを集めるスタンダードな型。なのだが、「アリが怖い」といっていた男の悲しい理由や、「馬が怖い」といった与太郎の壮絶な過去が語られるというちょっと重く、「誕生日なのに……」とこぼす兄貴分がおかしい。
また、文句ばかりいう寅に対して、「おめえ今日は何しにここにきたんだ。みんなと話すためだろう。お前は誰かに連れてこられたのか? 自分からきたんだろう? なのにそんなに文句ばかり言って楽しいのか。だったらいいよ、けえんなよ。けえれけえれ。なあもう一度聞くぞ。お前に怖えモンはねえのか?」と正論で詰めていくのがちょっと怖い。そこから先は完全にスタンダードな形。なんか笑二さんだとどこかになにかぶっ込んでくるんじゃないかと気が抜けない。

小辰さんの二席め、上品な紫の着物。初めて見るな。きれいだし、新年でおろしたんだろうか。
落語には若旦那がよく出てくるが落語界にもたくさんおり、三木助師と小痴楽師を挙げ、「あれが若旦那の両極端でしょうね」という。俺三木助師は二ツ目時代になんどか聴いただけであまり印象にないんだけど、小痴楽師と対比してるんだからおとなしい系?
「三平師匠についても、最近お弟子さんをとって。柔道やってたからって『たたみ』っていう名前なんですけど。こないだ高座を袖で見ていて、『落語では師匠を抜いたな』と……。とこれでこうやって笑っていただける。ということは私は三平兄さんに助けられているんです」とのことだけど、本心かなあ……。
そんな若旦那のマクラから『不孝者』に。
前に聴いたときもよかったが、今回はさらに洗練されていたように感じた。とくにやっぱり芸者の欣也がいい。旦那に捨てられたと恨み言を打ち明けるところなどは真に迫っており、抑えつつも感情を爆発させるところなども実にスッと入ってくる。また着物がきれいなのが余計によく映えて見える。

オープニングトークでは「私の仕事は次に『扇橋』を継ぐ人に継ぎやすくすること」といっていたが、もっと大きくなることを期待させられますよ。
nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。