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貴殿凄腕体当願候~柳亭こみち 三遊亭兼好に二人会を申込むの巻~ [落語]

貴殿凄腕体当願候 ~柳亭こみち 三遊亭兼好に二人会を申込むの巻~
於:深川江戸資料館 小劇場

オープニングトーク
柳亭こみち『紙入れ』
三遊亭兼好『質屋蔵』
三遊亭兼好『高砂や』
柳亭こみち『片棒』

こみち師が「自分がすごいなあと思う先輩」と一緒に会をやることで自分を鍛えるという主旨の会だそう。
その記念すべき1回めは兼好師。こみち師曰く、自分の客にはほとんど宣伝もせず、ほとんど兼好師の客だという。その空気の中で何でもできるようにならないといけないんだとか。まあでも兼好師の客ならこみち師のこと嫌いっていう人はそういないんじゃないかなあ。

前座の高座がない代わりとして出演者ふたりのオープニングトーク。
しかし開口一番にこみち師が「兼好兄さんがすっごいやる気のない顔をしている」と訴える。兼好師曰く、「自分は先のことを考えると目先のことがうまくいかないタチなので、先のことは考えないようにしている。この会の話を聞いたときも深く考えずに了承したが、昨日まで私はこみちさんの会のゲストとして真ん中で『粗忽長屋』でもやればいいと考えていた。そしたら昨日電話がかかってきて『二人会ですよ』っていわれて。ええーってなった」そう。こみち師によれば「こんなやる気のない顔を見るのは初めて」だそうだ。
この会は2回めがすでに決まっていて、会の相手は彦いち師だとか。彦いち師と話をしていたら、「オープニングトークで相手の盗みたいところを発表したほうがいい」とアドバイスされたので「さっき落語協会で書いてきました!」と紙に書いた漢字を見せる。
まずは「器」。「『器用』の『器』ということもありますし、以前に一緒に会をやったときに今日やるネタと今後やってみたいネタを聞いてくれて、それには一切つかないネタをやってくれた上に『これ打ち上げ代ね』と2万円くれた。そういう『器』の大きいところ」だそうだ。照れ隠しなのか「いい人でしょー」と兼好師は自画自賛。さらに「そういうときにそのネタをやっちゃうのが一之輔ね。アイツは悪いヤツなんだ。人の会で勉強してそれを地方でやって大ウケする」と暴露する。一之輔師とばっちり。でもやりそー。
もうひとつは「研」。「登場人物を研究している。あとこの字にはもうひとつ意味があって……なんだったかな……これ昇さんがいってたヤツなんですけど……」と言葉に詰まり「ダンナのネタ!?」と突っ込まれる。
一応二人会なので、オープニングトークで出番順を決めたいと事前に兼好師に提案したところ、それは拒否されたという。兼好師によれば「あなたが頑張る会なんだから」とのこと。
「わかりました……じゃあアミダで決めましょう」「私の拒否権は!?」というやりとりがあり、舞台に模造紙?が持ち込まれる。ここに縦線が10本書かれており、そこに兼好師とこみち師が横線を書き足した上で「兼」と書かれた場所に当たったら兼好師がトリ、というルール。「1/10くらいの確率ですからいいでしょう」と無理やり兼好師に承諾させる。
兼好師がスタート地点を選んだところでしゅりけんさんに「我々はトークしてるからくじをやっといて」と頼む。が、トークの間もしゅりけんさんは話に聞き入っており、くじをすすめる気配がない。しばらく経って「どうなった?」と聞かれたところで「まだやってなかったのか!」と突っ込まれる場面もありつつも、結局こみち師がトリ、という順番に決まる。

こみち師の一席め、「他の師匠の客の前でやることで鍛える」というコンセプトで始めたので、兼好師のように「噺を大きく変えることがありながらも、決して噺を壊すようなことはしない」噺をやらなくちゃ、と思ったという。が、「自分は女性視点に変えたりしているので、持ちネタとしてあまり(スタンダードなものが)ない」という。その中でも「もしかしたら自分の願望も入ってるんじゃないか」と『紙入れ』に。
『紙入れ』定番のマクラで豆腐屋の間男騒動があるが、これは男の演者なら与太郎が話を広めるところ、こみち師では長屋のおかみさんたちが井戸端で噂話をしているところに豆腐屋が棒手振りでやってくるという形になっており、このアレンジは見事。
噺の本編はほとんど中身を変えず、新吉視点で進む。お店のお内儀さんが必要以上にくねくねし、途中で「……気持ち悪いですか」と客に聞くのがおかしい。
従来のサゲのあとにお内儀さんから「新さんゆっくりしていって」ともう一言添えられるのだが、その一言がなんだか意味深な余韻を残す。新吉の受難はまだ終わりそうにない。

兼好師の一席め、最近の楽しい話題として純烈のリーダーに脅迫状と包丁が送られてきたというニュースを挙げる。「犯行理由が『自分の好きなメンバーが、リーダーから悪口をいわれたから』っていうのがいいですよね。でも私も他の人のことを高座でいろいろ悪くいったりしますけど、基本的にはその人のことが好きだからいうんです」という。その理由として「本当に嫌いだったら話題にしません。良くも悪くも宣伝になっちゃうから」というのはとてもリアルな気がする。
「私も気をつけないと包丁送られてくるかもしれませんね。……白酒あんちゃんなんか既に送られてそうですよね、いわないだけで。でもあのあんちゃんだったら送られてきた包丁を気にせず使いそうな気がするから怖い。『国宝のファンから送られてきた包丁、長いだけで使えねーな』とかいいそう」。何重にも悪口が重なっててもうなにがなにやら。
「そういう想いが怨念になる」と『質屋蔵』へ。
この噺自体は3年ぶり。
番頭さんが話す質草妄想ストーリーや小僧の定吉のこまっしゃくれたお使い、熊さんのひとり告白や蔵の中でのドタバタと、一席の中にいろんな要素が複雑に絡まりながら詰め込まれている。これは確かに凄腕じゃなきゃこんなに面白くできないよなあ。

二席め、最近定番の眞子さまいじりに続いて「昔は結婚するにもいろんなしきたりがあって大変だったんでしょうね」と『高砂や』に。
最近は小辰さんでばかり聴いていたが、兼好師は豆腐屋の真似のくだりなどはほぼ一度だけでさっぱりと。でも面白さの量は少しも変わらない。
……そうだよなあ、これで充分面白いんだよなあ。……いいにくいけど小辰さんのはちょっとくどすぎだよなあ……。もちろん繰り返しの面白さというのもあるけど、稽古の場面と本番の場面でなんども繰り返されるのはなあ。

こみち師の二席め、『高砂や』のマクラで兼好師にさんざん落語家と漫才師の組み合わせについていじられていたので「いいじゃないですかねえ、落語家と漫才師でも。この仕事してるといろんなものをいただける。今日身につけてるものも着物から帯、帯留めまで全部いただきもの。自分で買ったのはパンツくらい。前座の頃には楽屋のお弁当をたくさんいただくこともあるんですが、冷蔵庫がないからそんなにもたない。でも捨てたくないので見極めるのが上手くなりました」と傷んだ食べ物の見分け方のレクチャーが続く。
「何がいいたいのかといいますと、要は私はケチなんです」と『片棒』に。
以前にも寄席で聴いたことがあるが、途中はかなりの改変がされている。
今日は長男の金太郎案は大金をかけるのではなく、「鈴本演芸場を10日間借り切って興行をやりましょう」というもの。鈴本や落語協会の裏側がチラチラ見えて面白いが、多分アドリブなためかちょいちょい前後と整合性取れていないところが出てきてしまう。あと次男案と方向性が被る。
次男案はこの後の展開もあるため、祭囃子の口三味線を「ここは割愛しましょう! みんな知ってる」とカット。普通ならここが一番の盛り上がりどころなのだが、三番めの子で長女の鉄子が登場して「私を喪主にしてもらったらおとっつぁんの大好きな『(大人の事情のため割愛)』を歌ってあげる」とオンステージ。……これも次男案と被るな。
いろいろ盛り込みすぎてちょっととっ散らかった印象があるかな。サゲは従来通りなので余計そう思うのかもしれない。

オープニングでも話していたが、次回も既に決まっていて、予約も受け付けているという。面白そうだけど、丸1年後の来年の9月だそうだ。ちょっと先過ぎだなあ……。
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